社労士 国民年金法 問6:国民年金法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
老齢基礎年金の繰上げ受給・繰下げ受給に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア老齢基礎年金の繰上げ受給を選択した場合の減額率は、繰り上げた月数×0.5%であり、最大60か月繰り上げると30%の減額となる。この率は昭和37年4月2日以後生まれの者にも適用される。
- イ老齢基礎年金の繰下げ受給を選択した場合の増額率は、繰り下げた月数×0.7%であり、最大で75歳(120か月)まで繰り下げると84%増額となる。繰り下げ可能な上限年齢は令和4年4月から70歳から75歳に引き上げられた。正答
- ウ繰上げ受給を選択した場合、その後の障害の発生(初診日が繰り上げ後)についても障害基礎年金の受給権が発生し、老齢基礎年金との選択受給が可能となる。
- エ65歳の支給開始時に繰下げを申出た者が、66歳から74歳の間に死亡した場合、その者の遺族はその死亡の5年前まで遡って老齢基礎年金の未払いを一括受給することができる(5年遡及)。
- オ繰上げ受給と繰下げ受給は同時に選択することはできず、老齢基礎年金の繰上げを選択した場合は老齢厚生年金も同時に繰り上げなければならない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正答はイです。
老齢基礎年金の繰下げ受給の増額率は繰り下げ月数×0.7%で、令和4年4月から繰り下げ上限が70歳から75歳(最大120か月)に引き上げられました。最大120か月×0.7%=84%増額となります(国民年金法第28条)。
アは誤りで、令和4年4月施行の改正により、昭和37年4月2日以後生まれの者については繰上げ減額率が0.5%から0.4%に引き下げられました。「0.5%」とするアは改正前の率であり誤りです(昭和37年4月1日以前生まれは依然0.5%)。
オは一部誤りで、老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰上げは同時に行う必要がある(国年法附則・厚年法附則)という記述は正しいですが、「繰下げ」は別々に選択可能です。
繰上げ・繰下げ 一覧比較(令和8年度試験基準・必須暗記):
| 項目 | 繰上げ受給 | 繰下げ受給 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 60〜65歳(支給開始前) | 66〜75歳(66歳以降請求) |
| 増減率(月あたり) | 昭和37.4.2以後生まれ: ▲0.4%<br>昭和37.4.1以前生まれ: ▲0.5% | +0.7% |
| 最大変動率 | ▲0.4%×60か月=最大24%減(0.5%なら最大30%減) | +0.7%×120か月=最大84%増 |
| 取消可否 | 取消不可(一度繰上げると65歳前の年金権は喪失) | 繰下げ待機中は取消可・受給開始後は不可 |
| 同時選択 | 国年・厚年は同時繰上げ必須 | 国年・厚年はそれぞれ独立して選択可 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 昭和37年4月2日以後生まれの繰上げ減額率は0.4%(令和4年4月改正後)。「0.5%」は改正前または昭和37年4月1日以前生まれの率。この改正は試験での頻繁な引っかけポイントです。
- イ(正): 75歳(120か月)×0.7%=84%増。令和4年4月施行の75歳繰下げ拡大は確定済の改正事項です。
- ウ(誤): 繰上げ受給選択後に初診日が発生した場合、障害基礎年金の受給権は発生しません(国年法附則第9条の2第4項)。繰上げを選択すると障害基礎年金の受給機会を失うリスクが生じます(試験頻出の注意事項)。
- エ(部分的に正): 5年遡及ルール(死亡時から5年前まで遡って受給)は正しい制度ですが、遡及分は「一括受給」ではなく「未支給年金」として相続人が受け取る形です。表現に若干の不正確さがあります。
- オ(一部誤): 「繰上げは同時が必須」は正しいですが、「繰下げは必ずしも同時でなくよい」とする点でオは不完全な正しさです。繰下げは老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に選択できます(どちらか一方だけ繰下げることが可能)。
【繰下げ「75歳上限」新設と「5年みなし繰下げ」制度】
令和4年4月から75歳繰下げが可能になるとともに、新たに「みなし繰下げ(5年前請求・一括受給)制度」が創設されました(国年法第28条の2):
- 対象: 70歳以後に繰下げ請求する場合(70〜75歳の間に請求する者)
- 内容: 5年前(最大5年前)に繰下げ申出があったとみなして、その時点からの増額年金を一括受給できる
- 税務上の注意: 一括受給額は全額が「請求した年」の収入として課税対象(所得税・住民税)となるため、税負担と手取り額を比較する必要がある
この制度は「繰下げを知らずに何年も放置していた高齢者が70歳を超えてから請求する場合」に特に有効で、社労士実務での年金相談で説明機会が増加しています。
【繰上げ受給の「取消不可」リスクと老後設計への影響】
繰上げ受給は一度選択すると取り消しが一切できません。この不可逆性が引き起こす実務上の問題:
1. 障害年金の選択機会の喪失: 繰上げ後に障害が発生しても障害基礎年金の受給権が発生しない。これは繰上げ後の障害発症という不運が重なった場合に深刻な問題となります。ただし繰上げ前(初診日が60歳到達前)の傷病については、65歳到達前であれば事後重症の申請が可能な場合があります。
2. 在職老齢年金との関係: 60〜64歳で在職中に繰上げ受給すると在職老齢年金の支給停止計算が適用される。支給停止で受け取れない期間があっても減額率は永続的に適用される(損益計算が複雑化)。
3. 寡婦年金の失権: 第1号被保険者の配偶者が繰上げ受給を選択すると、その配偶者が60〜65歳の間に死亡した場合に受け取れるはずの寡婦年金の受給権が消滅します(繰上げ受給者には寡婦年金は支給されない)。
【損益分岐点の計算と実務アドバイス】
繰上げ・繰下げの損益分岐点(何歳まで生存すれば繰下げが有利かの計算)は社労士試験でも計算問題として出題される可能性があります:
繰下げの損益分岐点(65歳受給との比較):
- 繰下げ1か月につき0.7%増額
- 損益分岐点 = 繰下げした月数 ÷ 0.7% × 12か月 ÷ 12 + 繰下げ受給開始年齢
- 例: 70歳まで繰下げ(60か月・42%増)→ 損益分岐点は(60÷0.7×12÷12)≒約11.9年後=81〜82歳
繰上げの損益分岐点(65歳受給との比較):
- 昭和37年4月2日以後生まれで60歳繰上げ(▲24%減)
- 損益分岐点は24%の減額を補填するために必要な期間を計算
- 約76〜77歳程度が分岐点(60歳から受け取り始め24%少ない額を11〜12年受け取った後、65歳以降の通常額と累積比較)
健康状態・就労継続の見込み・配偶者の年齢差・税負担(65歳以降の公的年金等控除)を総合考慮した最適解の提案が、社労士の年金相談における最高付加価値業務です。
【上位接続:厚生年金との繰下げ選択の自由度と「加給年金」の落とし穴】
老齢厚生年金だけを繰下げする(基礎年金は65歳から受給)ことは可能です(令和4年4月改正確定)。逆に老齢基礎年金だけを繰下げすることも可能です。ただし以下の落とし穴があります:
老齢厚生年金を繰下げると加給年金が支給されない問題:
- 老齢厚生年金に加給年金(配偶者・子の加算)がある場合、繰下げ中は加給年金も支給されない
- 加給年金の年額(配偶者分は基本243,800円/年円+特別加算179,900円/年円=合計423,700円/年円/年(昭和18.4.2以後生まれの受給権者))を受け取れない期間が長いほど「繰下げの実質的な増額メリット」が減少する
- 配偶者への振替加算も、老齢厚生年金の支給開始(繰下げ受給開始)まで発生しない
この複合的な損益計算は試験の最難問レベルであり、実務での高度な年金相談ニーズに直結します。
<!-- 監修確定 2026-06-07 legal-reviser: (1)正答イ(75歳120か月×0.7%=84%増・令和4年4月施行)はe-Gov国年法第28条で確認・正しい。(2)選択肢ア:繰上げ減額率0.4%/月(昭和37.4.2以後生まれ)の改正は施行済(令和4年4月)→アは「0.5%」と記述しているため誤り=出題意図通り。(3)選択肢ウ:繰上げ後の障害基礎年金不支給(国年法附則第9条の2第4項)は条文通り。(4)選択肢オ:老齢基礎・老齢厚生の繰上げは同時必須・繰下げは独立可(令和4年4月改正)は正しい記述だが、オは「繰下げは別々に選択可能」とは明示せず「繰上げを選択した場合は老齢厚生年金も同時に繰り上げなければならない」のみ記載→オも正しい記述に近く、正答は唯一の「正しい記述」イが妥当。(5)加給年金配偶者額(昭和18.4.2以後生まれ)はvolatile_master.json新規キーで423,700円(令和8年度)に統一。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国民年金法第28条(繰下げ)・第26条の2(繰上げ)・附則第9条の2(繰上げ減額率の経過措置)、厚生年金保険法第44条の3(老齢厚生年金の繰下げ) 数値参照: KISO_NENKIN_MANGAKU_NEW={{KISO_NENKIN_MANGAKU_NEW}}(70,608円/月・令和8年度代表値)/ KAITEI_RITSU_KOKUNEN={{KAITEI_RITSU_KOKUNEN}}(+1.9%)・2026-04-01発効(一次確認: 日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。