問題
老齢基礎年金の繰上げ受給・繰下げ受給に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はイです。
老齢基礎年金の繰下げ受給の増額率は繰り下げ月数×0.7%で、令和4年4月から繰り下げ上限が70歳から75歳(最大120か月)に引き上げられました。最大120か月×0.7%=84%増額となります(国民年金法第28条)。
アは誤りで、令和4年4月施行の改正により、昭和37年4月2日以後生まれの者については繰上げ減額率が0.5%から0.4%に引き下げられました。「0.5%」とするアは改正前の率であり誤りです(昭和37年4月1日以前生まれは依然0.5%)。
ウは誤りで、繰上げ受給権者には事後重症(第30条の2)の規定が適用されません(附則第9条の2の3)。エは誤りで、繰下げ待機中に死亡した場合の未支給年金は65歳時点の額(増額なし)で決定されます。オは誤りで、老齢厚生年金の繰上げ請求ができる者は、老齢基礎年金の繰上げ請求を老齢厚生年金の繰上げ請求と同時に行わなければなりません(附則第9条の2第2項)。
繰上げ・繰下げ 一覧比較(令和8年度試験基準・必須暗記):
| 項目 | 繰上げ受給 | 繰下げ受給 |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 60〜65歳(支給開始前) | 66〜75歳(66歳以降請求) |
| 増減率(月あたり) | 昭和37.4.2以後生まれ: ▲0.4%<br>昭和37.4.1以前生まれ: ▲0.5% | +0.7% |
| 最大変動率 | ▲0.4%×60か月=最大24%減(0.5%なら最大30%減) | +0.7%×120か月=最大84%増 |
| 取消可否 | 取消不可(一度繰上げると65歳前の年金権は喪失) | 繰下げ待機中は取消可・受給開始後は不可 |
| 同時選択 | 国年・厚年は同時繰上げ必須 | 国年・厚年はそれぞれ独立して選択可 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 昭和37年4月2日以後生まれの繰上げ減額率は0.4%(令和4年4月改正後)。「0.5%」は改正前または昭和37年4月1日以前生まれの率。この改正は試験での頻繁な引っかけポイントです。
- イ(正): 75歳(120か月)×0.7%=84%増。令和4年4月施行の75歳繰下げ拡大は確定済の改正事項です。
- ウ(誤): 附則第9条の2の3は、繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権者について、第30条第1項(第2号=初診日に60歳以上65歳未満の元被保険者)・第30条の2(事後重症)・第30条の3(基準障害)などを「適用しない」と定めています。したがって繰上げ後は事後重症による請求はできません。繰上げを選択すると障害基礎年金を受けられなくなる場面があるのが試験頻出の注意事項です。
- エ(誤): 繰下げの申出は本人しかできず、繰下げ待機中に死亡した場合は、65歳時点の額(増額なし)で決定したうえで、過去分が未支給年金(第19条)として遺族に支払われます(日本年金機構)。「増額を加えた額」は誤りです。なお、請求時点から5年以上前の分は時効(第102条第1項)で受け取れません。
- オ(誤): 附則第9条の2第2項は、厚生年金保険法の規定により老齢厚生年金の支給繰上げの請求ができる者は、老齢基礎年金の繰上げ請求を「当該請求と同時に行わなければならない」と定めています。基礎年金だけを先に繰り上げることはできません。一方、繰下げは老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に選べます(日本年金機構)。
【繰下げ「75歳上限」と「5年前のみなし繰下げ」】
令和4年4月から繰下げの上限が75歳になりました(昭和27年4月1日以前生まれの者は70歳まで・日本年金機構)。あわせて、繰下げを知らないまま70歳を過ぎた人を想定した「5年前の日に繰下げ申出があったとみなす」規定が第28条第5項に置かれています:
- 対象: 繰下げ申出ができる者が、70歳に達した日後に老齢基礎年金を請求し、その際に繰下げの申出をしないとき
- 内容: 請求した日の5年前の日に繰下げの申出があったものとみなし、その時点の増額率による年金の過去5年分を一括で受け取る
- 除外: 請求時に80歳に達した日以後にあるとき、または65歳に達した日から請求日の5年前の日までの間に他の年金たる給付の受給権者となったとき(同項ただし書各号)
- 税務上の注意: 一括受給額は全額が「請求した年」の収入として課税対象(所得税・住民税)となるため、税負担と手取り額を比較する必要がある
この制度は「繰下げを知らずに何年も放置していた高齢者が70歳を超えてから請求する場合」に特に有効で、社労士実務での年金相談で説明機会が増加しています。
【繰上げ受給の「取消不可」リスクと老後設計への影響】
繰上げ受給は一度選択すると取り消しが一切できません。この不可逆性が引き起こす実務上の問題:
1. 障害基礎年金の請求機会の喪失: 附則第9条の2の3により、繰上げ受給権者には第30条第1項第2号(初診日に60歳以上65歳未満の元被保険者)・第30条の2(事後重症)・第30条の3(基準障害)などが適用されません。障害認定日に等級に該当しなかった傷病が後で悪化しても、事後重症による請求はできません。繰上げ前に初診日がある傷病でも同じです。
2. 在職中の繰上げ: 老齢厚生年金を同時に繰り上げた場合、在職中は繰上げた老齢厚生年金に在職老齢年金の支給停止がかかることがあります。支給停止で受け取れない期間があっても減額率は生涯変わらない(損益計算が複雑化)。
3. 寡婦年金: 寡婦年金の受給権者が繰上げ支給の老齢基礎年金の受給権を取得すると、寡婦年金の受給権は消滅します(附則第9条の2第5項)。また、繰上げ受給権者には寡婦年金の支給要件(第49条)が適用されないため、繰上げ後に夫が死亡しても寡婦年金は支給されません(附則第9条の2の3)。
【損益分岐点の計算と実務アドバイス】
繰上げ・繰下げの損益分岐点(何歳まで生存すれば繰下げが有利かの計算)は社労士試験でも計算問題として出題される可能性があります:
繰下げの損益分岐点(65歳受給との比較):
- 繰下げ1か月につき0.7%増額
- 損益分岐点までの年数(受給開始から)= 繰下げた年数 ÷ 増額率
- 例: 70歳まで繰下げ(60か月・42%増)→ 5年 ÷ 0.42 ≒ 約11.9年後 = 81〜82歳(65歳からの5年分を、1年あたり42%の上乗せで取り戻す計算)
繰上げの損益分岐点(65歳受給との比較):
- 昭和37年4月2日以後生まれで60歳繰上げ(▲24%減)
- 損益分岐点は24%の減額を補填するために必要な期間を計算
- 約76〜77歳程度が分岐点(60歳から受け取り始め24%少ない額を11〜12年受け取った後、65歳以降の通常額と累積比較)
健康状態・就労継続の見込み・配偶者の年齢差・税負担(65歳以降の公的年金等控除)を総合考慮した最適解の提案が、社労士の年金相談における最高付加価値業務です。
【上位接続:厚生年金との繰下げ選択の自由度と「加給年金」の落とし穴】
老齢厚生年金だけを繰下げする(基礎年金は65歳から受給)ことは可能です(令和4年4月改正確定)。逆に老齢基礎年金だけを繰下げすることも可能です。ただし以下の落とし穴があります:
老齢厚生年金を繰下げると加給年金が支給されない問題:
- 老齢厚生年金に加給年金(配偶者・子の加算)がある場合、繰下げ中は加給年金も支給されない
- 加給年金の年額(配偶者分は基本243,800円+特別加算179,900円=合計423,700円/年(昭和18.4.2以後生まれの受給権者))を受け取れない期間が長いほど「繰下げの実質的な増額メリット」が減少する
- 待機中に受け取れない加給年金は、配偶者との年齢差が大きく加給年金の対象期間が長い世帯ほど大きくなるため、老齢厚生年金だけを65歳から受け、老齢基礎年金だけを繰り下げる選択が検討される
この複合的な損益計算は試験の最難問レベルであり、実務での高度な年金相談ニーズに直結します。
- 国民年金法第28条e-Govで原文を読む
- 厚生年金保険法e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 国民年金法第19条(未支給年金)・第28条(支給の繰下げ)・附則第9条の2(老齢基礎年金の支給の繰上げ。第2項=老齢厚生年金の繰上げ請求と同時)・附則第9条の2の3(障害基礎年金等の特例=繰上げ受給権者には第30条の2等を適用しない)(https://laws.e-gov.go.jp/law/334AC0000000141・2026-09-30確認)、厚生年金保険法第44条の3(老齢厚生年金の繰下げ)、日本年金機構「年金の繰下げ受給」(繰下げ待機中の死亡は65歳時点の額で未支給年金) 参照した数値: 老齢基礎年金 満額(昭和31年4月2日以後生まれ):70,608円/月(令和8年度代表値)/ 国民年金 改定率(令和8年度・マクロ経済スライド調整後):1.9%(+1.9%)・2026-04-01発効(一次確認: 日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

