問題
在職老齢年金(在職中に老齢厚生年金を受給する場合の支給停止の仕組み)に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はア(正しい記述)です。
在職老齢年金の支給停止調整額は令和8年度から月額65万円に引き上げられました(令和7年度は51万円)。この調整額を超えた分の年金額の2分の1が停止されます。これは「基本月額+総報酬月額相当額が65万円を超えた場合、超過額の2分の1が停止」という仕組みです。
ウは誤りで「超過額の全額が停止」は誤りです。超過額の2分の1が停止です(年金が全額停止になるのは超過額が基本月額の2倍以上になる場合等)。エは誤りで、令和4年4月の改正により、60〜64歳(低在老)と65歳以上(高在老)の調整額は一本化されています(令和8年度は統一65万円)。オは誤りで、支給停止された年金がさかのぼって支払われることはありません。退職や70歳到達のときは、在職中の被保険者期間を加えて以後の年金額が改定されるだけです。
在職老齢年金 支給停止の計算式(令和8年度版・65万円基準):
```
基本月額 = 老齢厚生年金の月額(加給年金額を除く)
総報酬月額相当額 = 標準報酬月額 + 直近1年の標準賞与額合計 ÷ 12
[判定]
基本月額 + 総報酬月額相当額 ≤ 65万円 → 全額支給(停止なし)
基本月額 + 総報酬月額相当額 > 65万円 → 超過額 × 1/2 = 停止額
ただし停止額 > 基本月額 → 基本月額分が全額停止(受給者側の月額がゼロ)
```
改正前後の比較(令和8年度試験の最重要改正):
| 年度 | 支給停止調整額 | revision_type |
|---|---|---|
| 令和7年度(前年) | 51万円/月 | — |
| 令和8年度(2026年4月〜) | 650,000円/月(65万円) | structural(閾値ロジック変更) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 65万円・令和7年度51万円からの引上げ・超過額の2分の1停止、すべて正確。この改正により、働きながら年金を受け取りやすくなりました(在職老齢年金による就労抑制の緩和が政策目標)。
- イ(部分的に誤): 基本月額は「加給年金額を除く」老齢厚生年金の月額が正確です(「加給年金額を含む」は誤り)。総報酬月額相当額の説明は正しい。
- ウ(誤): 停止されるのは超過額の2分の1。「全額停止」は誤り。ただし基本月額が少なく超過額が大きい場合は全額停止になることはある(計算の結果として)。
- エ(誤): 令和4年4月の改正により、60〜64歳(特別支給)と65歳以上(本来支給)の停止計算式が一本化されました(それ以前は60〜64歳は28万円の別基準があった)。令和8年度は年齢を問わず65万円が統一基準。
- オ(誤): 支給停止された年金は、あとからさかのぼって支払われることはありません。退職改定(退職して1か月経過後)・70歳到達時の改定では、在職中の被保険者期間を加えて以後の年金額が再計算され増額されますが、停止された分が戻るわけではない点に注意が必要です。
【在職老齢年金の歴史的変遷と令和8年度大改正の政策背景】
在職老齢年金制度は、「働いて収入があるのに年金も全額もらうのは二重取りではないか」という政策的議論から生まれました。直近の2回の見直し:
- 令和4年(2022年)4月: 60〜64歳の在職老齢年金の支給停止の基準を、賃金と年金月額の合計28万円から47万円に緩和し、65歳以上と同じ基準にした(年金制度改正法・令和2年法律第40号。厚生労働省の公表)
- 令和8年(2026年)4月: 支給停止調整額を51万円→65万円に大幅引上げ(令和7年年金制度改正法・令和7年法律第74号。日本年金機構の公表)
今回の65万円への大幅引上げの政策目標:
1. 高齢者の就労促進: 年金の支給停止を避けるために就業時間を抑える「就業調整」の緩和
2. 少子高齢化への対応: 現役世代の労働力不足を補う高齢者就労の積極活用
【計算の落とし穴:「加給年金額」を基本月額に含めるか】
在職老齢年金の計算で頻繁に誤解されるのが「加給年金額の扱い」です:
- 基本月額: 老齢厚生年金(報酬比例部分+差額加算)の月額から加給年金額を除いた額
- 加給年金額: 支給停止の計算には含めず、別途、受給権者の状況に応じて支給または停止
つまり、在職老齢年金で一部停止になっても加給年金額は独立して支給判定が行われます。ただし配偶者が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金の受給権を有するようになると加給年金額は支給停止となり(厚年法第46条第6項)、配偶者が65歳に達すると加給年金額は加算されなくなります(同法第44条第4項第4号)。振替加算は、要件を満たす配偶者自身の老齢基礎年金に加算されるものです。この複雑な連鎖が社労士実務での年金相談の難所です。
【在職老齢年金と「在職定時改定」の交差点(難問・上位接続)】
令和4年4月から、在職中の老齢厚生年金の額を毎年改定する「在職定時改定」制度が新設されました(厚年法第43条第2項):
- 毎年9月1日(基準日)に被保険者である受給権者について、基準日の属する月前の被保険者期間を算入し、基準日の属する月の翌月(10月)分から年金額を改定(在職定時改定)
- 在職中の被保険者期間は、在職定時改定や退職時の改定(同条第3項)によって年金額に反映される(在職老齢年金で支給停止された額が後から支払われるわけではない)
これにより「在職中も働けば働くほど将来の年金が増える」というインセンティブが設計されており、高齢者就労と年金制度の両立を図る最新の政策転換です。社労士実務では、顧客(高齢就労者)に「今働くことで将来の年金が増える」という具体的計算を示すことが重要業務となります。
【標準報酬月額の上限と在職老齢年金の関係】
令和8年度の厚生年金標準報酬月額上限(65万円)と在職老齢年金の調整額(65万円)がたまたま同じ額であることは、試験での混同を招きやすいポイントです。これらは全く別の概念:
- 標準報酬月額上限(65万円): 報酬から保険料を算定する際の上限
- 支給停止調整額(65万円): 在職老齢年金の停止計算の閾値
令和9年9月〜の標準報酬上限(68万円への引上げ)後は両者の数値が異なるため、混同の機会は減りますが、令和8年度試験では「同じ65万円の二つの意味」を正確に区別できることが高得点のポイントです。
- 厚生年金保険法第46条・第43条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第46条(在職老齢年金・支給停止)、令和7年年金制度改正法(令和7年法律第74号・2026年4月施行) 数値: 在職老齢年金の支給停止調整額650,000円/月(65万円/月)(2026年4月1日から・令和7年度の51万円からの大幅引上げ・令和8年度試験の基準日時点で施行済)(一次確認: 日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/tokusetsu/zairoukaisei.html ・2026-09-30) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

