社労士 厚生年金保険法 問4:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
加給年金額および振替加算に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア加給年金額は、老齢厚生年金の受給権者が65歳に達した時点で、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あり、かつ生計を維持する配偶者または子がいる場合に加算される。配偶者の加給年金額は受給権者の配偶者が65歳に達すると消滅する。
- イ振替加算は、加給年金額の対象であった配偶者が65歳に達し老齢基礎年金の受給権を取得した時に、その配偶者の老齢基礎年金に加算される額であり、昭和41年4月2日以後生まれの配偶者についても振替加算が支給される。
- ウ加給年金額の対象となる「配偶者」は、受給権者によって生計を維持されている配偶者で、配偶者の年収が850万円未満(または将来の見込み収入が850万円未満)であることが必要である。
- エ受給権者の配偶者が老齢厚生年金(厚生年金保険の被保険者期間が20年以上のもの)の受給権を取得したとき、受給権者の加給年金額は支給停止となる。配偶者の被保険者期間が20年未満の老齢厚生年金受給権では支給停止されない。正答
- オ振替加算の額は、加給年金額と同額であり、毎年マクロ経済スライドによる年金額改定の対象となる。
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正答はエです。
受給権者に加給年金額が加算されている場合、その対象の「配偶者」が被保険者期間20年以上の老齢厚生年金(または退職共済年金)の受給権を取得したとき、受給権者の加給年金額は支給停止となります(厚生年金保険法第44条の3第1項第1号)。エはこれを正確に記述しています。「20年未満では停止されない」という部分も正確です。
イは誤りで、振替加算は昭和41年4月1日以前生まれの配偶者に支給されるものです(昭和41年4月2日以後生まれには振替加算は支給されません)。昭和41年4月2日以後生まれの者は厚生年金・国民年金に十分加入できた世代として、振替加算の対象外とされています。
オは誤りで、振替加算は加給年金額と同額ではない(生年月日別の逓減額・昭和41.4.1生まれが最少)。なお振替加算の額は改定率に連動して毎年度改定される(マクロ経済スライドそのものではないが「固定額」ではない)。「加給年金額と同額・マクロ経済スライドの対象」とするオは誤り。
加給年金額 支給の要件(受給権者側):
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 被保険者期間 | 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上(または坑内員・船員の特例15〜19年) |
| 生計維持 | 受給権者が配偶者または子の生計を維持していること(年収850万円未満等) |
| 配偶者の年齢 | 配偶者が65歳未満(65歳到達で消滅・振替加算に移行) |
| 子の年齢 | 18歳年度末まで(または障害1・2級の20歳未満) |
振替加算 支給の条件(配偶者側):
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 昭和41年4月1日以前生まれの配偶者 |
| 発生時期 | 配偶者が65歳に達し老齢基礎年金の受給権取得時 |
| 金額 | 生年月日による逓減額(昭和41年4月1日に近いほど少額・最少は昭和36.4.2〜昭和41.4.1生まれの15,732円/年程度・令和8年度) |
| スライド | 改定率連動で毎年度改定(加給年金額と同額ではない点が試験頻出) |
加給年金額が支給停止される事由(厚年法第44条の3):
| 停止事由 | 内容 |
|---|---|
| 配偶者が老齢厚生年金(20年以上)受給権取得 | 最重要・試験頻出 |
| 配偶者が障害厚生年金受給権取得 | — |
| 配偶者が老齢基礎年金受給権取得(繰上げ含む) | 繰上げで65歳前に受給した場合も停止 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 被保険者期間20年以上・65歳到達・生計維持の要件は正しい。「配偶者の加給年金額は受給権者の配偶者が65歳に達すると消滅する」は概ね正しい(正確には「振替加算に移行」)。ただし「消滅」という表現は若干不正確で、「支給停止」→「振替加算への転換」という流れを正確に押さえることが重要。
- イ(誤): 振替加算の対象は「昭和41年4月1日以前生まれ」。「昭和41年4月2日以後生まれ」には振替加算は支給されない。この生年月日の切れ目は試験の頻出ひっかけポイントです。
- ウ(正): 生計維持の認定基準は年収850万円未満(または将来収入850万円未満見込み)が正しい(厚年法施行令第3条の9)。850万円という金額は試験出題実績のある数値です。
- エ(正): 配偶者の被保険者期間「20年以上」の老齢厚生年金取得で停止。20年未満では停止しないという区分が重要です。
- オ(誤): 振替加算の額は加給年金額と同額ではなく、生年月日別の逓減額(昭和41.4.1生まれが最少)。また「マクロ経済スライドの対象」とする点も誤り(改定率連動で改定はされるがマクロ経済スライド調整そのものの対象ではない)。本問の「同額」「マクロ経済スライド」の2点が誤りとなります。
【「加給年金」と「振替加算」という「バトンタッチ」の設計思想】
加給年金額と振替加算は、「配偶者(主に専業主婦等)の老後の生活保障」を「受給権者(主に会社員夫)の年金への上乗せ」から「配偶者自身の老齢基礎年金への上乗せ」へとシフトする仕組みです:
1. 受給権者が65歳に到達し老齢厚生年金の受給開始→ 配偶者(65歳未満)に加給年金額が加算
2. 配偶者が65歳に到達し老齢基礎年金を受け取り始める→ 受給権者の加給年金額が消滅し、代わりに配偶者の老齢基礎年金に振替加算が上乗せ
このバトンタッチの際に重要なのは「加給年金額の額 ≠ 振替加算の額」という点です:
- 加給年金額(配偶者分・令和8年度・受給権者が昭和18.4.2以後生まれ): 基本額243,800円/年円+特別加算179,900円/年円=合計423,700円/年円/年(423,700円)・スライドあり(毎年度改定)
- 振替加算: 生年月日による逓減テーブルに基づく額(年齢が若いほど少額・昭和41年4月1日生まれは最少額・スライド対象)
振替加算が「昭和41年4月1日以前生まれ」限定の理由:
- 昭和41年4月1日以前生まれの者が65歳になるのは2006年4月以降
- 国民年金の全国民強制適用(昭和61年4月・1986年)当時、既に20歳以上だった世代は「強制加入から外れていた期間が長く、厚生年金・国民年金に十分加入できなかった」
- 昭和41年4月2日以後生まれの者は「昭和61年4月の改正時に20歳未満で、20歳から60歳まで国民年金に強制加入できる」世代として制度設計上の補償(振替加算)が不要とされた
【加給年金と在職老齢年金の交差点】
在職老齢年金(pilot kounen_01参照・支給停止調整額650,000円/月)で老齢厚生年金の一部が停止されている場合、加給年金額はどうなるか:
- 在職老齢年金による停止の計算では「基本月額(老齢厚生年金の月額・加給年金額除く)」を計算基礎に使う(厚年法第46条・pilot kounen_01のadvancedで解説)
- つまり在職中でも加給年金額は別途独立して支給される(在老で停止される計算式には加給年金額が入らない)
- ただし、老齢厚生年金の「本体部分(報酬比例)」が全額停止となる超高収入の場合は、加給年金額も支給停止となる(厚年法第46条第6項:本体年金額が全額支給停止される場合は加給年金額も停止)。
【配偶者の「20年以上」基準と各種年金の「20年」の意味】
厚生年金保険で「20年」という数字が出てくる場面:
1. 加給年金の受給権者側の要件: 被保険者期間20年以上(または坑内員・船員特例15〜19年)
2. 加給年金の停止事由(配偶者側): 配偶者の老齢厚生年金の被保険者期間が20年以上
3. 遺族厚生年金の長期要件: 被保険者期間25年以上での死亡(これは25年)
4. 中高齢寡婦加算(遺族厚生年金の加算): 40歳以上の妻→死亡した夫の被保険者期間20年以上等
これらの「20年」「25年」「15年(坑内員・船員特例)」を混同しないことが社労士試験の重要ポイントです。
【振替加算の廃止議論と今後の展望】
振替加算は「昭和41年4月1日以前生まれ」限定のため、対象者が年々高齢化し、将来的には自然消滅します(最も若い対象者が昭和41年4月1日生まれで2026年に65歳到達・受給開始)。
2026年以降、新たに振替加算の受給権が発生する者は(昭和41年4月1日以前生まれの者が順次65歳到達)減少し続け、2040年代には受給者数がほぼゼロとなる見込みです。社労士試験では「振替加算は昭和41年4月2日以後生まれには支給されない」という選択肢が誤りとして提示され続けるため、令和8年度試験でも重要な知識です。
<!-- 監修確定 2026-06-07 legal-reviser: (1)正答エ(配偶者の被保険者期間20年以上の老厚受給で加給年金停止)は厚年法第46条第6項及び施行令で確認・正しい。(2)選択肢ア:「20年以上」「生計維持」「65歳到達」は厚年法第44条で確認、概ね正しい。(3)選択肢イ:振替加算は昭和41.4.1以前生まれ対象=「昭和41.4.2以後にも支給」は誤りで作問の意図通り。(4)選択肢ウ:生計維持「年収850万円未満」は厚年法施行令第3条の5で確認・正しい。(5)選択肢オ:振替加算は加給年金額と同額ではない(生年月日別逓減)・改定率連動で改定されるためマクロ経済スライドが直接の対象ではない=誤りで作問の意図通り。「振替加算は固定額」という旧解説の誤りは是正した。(6)加給年金配偶者額(令和8年度・昭和18.4.2以後生まれ受給権者)合計423,700円(基本243,800+特別加算179,900)はvolatile_masterに登録済。子の加算1・2人目243,800円・3人目以降81,300円も同様。本体年金全額停止時の加給年金停止規定(厚年法第46条第6項)は条文通り。基準日外改正混入なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第44条(加給年金額)・第44条の3(加給年金額の支給停止)、国民年金法附則第14条(振替加算) 数値参照: KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX={{KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX}}(65万円/月・令和8年度)・KAKYU_HAIGUSHA_BASE={{KAKYU_HAIGUSHA_BASE}}(配偶者基本額243,800円/年)・KAKYU_HAIGUSHA_TOKUBETSU_S1842={{KAKYU_HAIGUSHA_TOKUBETSU_S1842}}(特別加算179,900円/年・昭和18.4.2以後生まれ)・KAKYU_HAIGUSHA_TOTAL_S1842={{KAKYU_HAIGUSHA_TOTAL_S1842}}(合計423,700円/年)・KO_KASAN_1_2_NIN={{KO_KASAN_1_2_NIN}}(子の加算1・2人目243,800円/年)・KO_KASAN_3_NIN_IKO={{KO_KASAN_3_NIN_IKO}}(3人目以降81,300円/年)・2026-04-01発効(一次確認: 日本年金機構 加給年金額と振替加算 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html・令和8年4月分からの年金額等 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。