社労士 厚生年金保険法 問7:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
厚生年金保険の標準報酬月額および標準賞与額に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア厚生年金保険の標準報酬月額は、最低第1級(88,000円)から最高第32級(650,000円)まで設定されており、令和8年度の最高等級は65万円である。令和9年9月1日から最高等級が68万円に引き上げられる予定であるが、令和8年度試験では現行65万円が出題対象となる。
- イ標準賞与額は、その月の賞与の額から1,000円未満を切り捨てた額であり、1回の賞与支払いにつき上限は150万円とされている。1年間に4回以上支給される賞与は、その合計額が月額換算されて標準報酬月額として扱われる。
- ウ標準報酬月額の定時決定(算定基礎届)は、毎年7月1日現在の被保険者について、4月・5月・6月に支払われた報酬の平均額をもとに、**10月1日から翌年9月30日まで**適用される新しい標準報酬月額を決定する手続きである。正答
- エ標準報酬月額の随時改定は、被保険者の固定的賃金(基本給・住宅手当・役職手当等)が変動し、変動月以後の引き続く3か月間の報酬の平均額と現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた場合に行われる。
- オ標準報酬月額が最高等級(第32級・65万円)に該当する者の保険料は、標準報酬月額65万円に保険料率(事業主・被保険者各9.15%)を乗じた額となり、65万円を超える実際の報酬額には保険料が追加されない。
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正答はウ(誤っている記述)です。
ウの誤りは「10月1日から翌年9月30日まで適用される」という部分です。定時決定(算定基礎届)によって決定された新しい標準報酬月額は「9月1日から翌年8月31日まで」適用されます(健康保険法第41条準用・厚生年金保険法第21条)。「10月から」とするウは誤りです。「9月始まり」は毎年算定基礎届処理が7〜8月に行われ、9月分の保険料から新標準報酬月額が適用される実務スケジュールを覚えるのが重要です。
ア(第32級65万円・令和9年9月の68万円改正は対象外)・イ(150万円上限・1,000円未満切捨て・年4回以上は月額扱い)・エ(固定的賃金変動・3か月平均・2等級以上)・オ(上限超過は保険料計算外)はいずれも正しい記述です。
標準報酬月額の決定・改定の種類(必須整理):
| 種類 | タイミング | 基礎 | 適用期間 |
|---|---|---|---|
| 資格取得時決定 | 被保険者資格取得時 | 取得時の報酬額 | 最初の定時決定まで |
| 定時決定(算定基礎届) | 毎年7月1日現在の被保険者 | 4月・5月・6月の報酬平均 | 9月〜翌年8月 |
| 随時改定(月額変更届) | 固定的賃金変動後3か月経過後 | 変動後3か月の報酬平均 | 改定月の翌月〜次の定時決定まで |
| 育児休業等終了後改定 | 育児休業等終了後の職場復帰時 | 復帰後の実際の報酬 | 改定月の翌月〜次の定時決定まで |
| 産前産後休業終了後改定 | 産前産後休業終了後の復帰時 | 復帰後の実際の報酬 | 同上 |
標準賞与額の上限(試験頻出):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 1回あたりの上限 | 150万円(各回の賞与支払いについて) |
| 切り捨て | 1,000円未満切り捨て |
| 年4回以上の賞与 | 標準報酬月額として扱われる(月額の上限適用) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 第32級65万円・令和9年9月1日から68万円引上げ予定(対象外)は正確(VolatileBox: KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX・KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX_FUTURE)。
- イ(正): 1回150万円上限(厚年法第24条の5)・1,000円未満切り捨て(第24条の4第1項)・年4回以上は月額扱い(第24条の4第4項)は正確。
- ウ(誤・正答): 定時決定後の新標準報酬月額の適用期間は「9月1日から翌年8月31日まで」(厚年法第21条第3項)。「10月1日から翌年9月30日まで」とするウは1か月ズレており誤り。算定基礎届の処理時期(7月10日まで提出・8月中に決定通知)から「9月分保険料から新標準報酬」が試験頻出のひっかけポイント。
- エ(正): 固定的賃金の変動・変動後3か月・2等級以上の差は随時改定の正確な要件(厚年法第23条)。
- オ(正): 上限等級(65万円)以上の報酬は保険料計算の対象外(65万円ベースで保険料を計算)。高収入者の保険料は頭打ちになる。
【標準報酬月額の上限引上げ(令和9年9月1日・68万円)の政策的背景】
KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX(令和8年度時点: 65万円)は2020年9月1日から現行水準になっています(それ以前は62万円)。令和9年9月1日からの68万円引上げは、以下の背景があります:
1. インフレ・賃金上昇への対応: 2022〜2025年の物価・賃金上昇により、高収入者の実際の報酬が65万円を大きく超えるケースが増加
2. 年金財政への寄与: 上限引上げにより、高収入者の保険料収入が増加(年金給付は報酬比例のため将来の給付増にもなるが、現役世代の収入増への貢献度が大きい)
3. 健保との整合: 健康保険の標準報酬月額上限(139万円・KENPO_HYOJUN_HOSHU_MAX)とのバランス(厚年は健保の約半分の上限という伝統的な設計が続いていたが、今回の改定で乖離が拡大)
試験での出題ポイント: 「令和8年度試験基準日(2026-04-10)では65万円・令和9年9月以降68万円」という切り替えを正確に把握すること。在職老齢年金の支給停止調整額(ZAIRO_TEISHI_CHOSEI: 65万円)とたまたま同額(令和8年度のみ)という紛らわしい状況が解消されるのは令和9年9月以降です(pilot kounen_01との横断論点)。
【「年4回以上の賞与は標準報酬月額扱い」制度の意義と実務への影響】
年4回以上支給される賞与(一般的には「夏・冬・春・決算期」等の4回以上)は、総報酬制(平成15年4月〜)の下でも「標準賞与額」としては扱わず「標準報酬月額」として算定します(厚年法第24条の4第4項)。
趣旨:
- 賞与を分散して毎月払いに近い形で支給する「賞与の分割払い」によって標準賞与額の上限(150万円/回)の適用を回避するスキームの防止
- 4回以上の支払いが「実質的な賞与(年1〜2回の大型支給)ではなく報酬の分割払い」とみなされる
実務への影響:
- 決算賞与を年1回(3月)に追加支給する企業では「年3回」となり通常の標準賞与額扱い
- 四半期ごとにインセンティブを支給する外資系企業等では「年4回」となり月額扱いに
- 社会保険手続き(月額変更届・標準賞与額届出)の判定で社労士の実務知識が問われる
【随時改定の「固定的賃金」の解釈と実務的確認事項】
随時改定(月額変更届)の要件:
1. 固定的賃金の変動(昇給・降給・各種手当の変動等)
2. 変動後3か月間の報酬の平均が現在の標準報酬月額と2等級以上差異
「固定的賃金」と「非固定的賃金(残業代・歩合給等)」の区別:
- 固定的賃金: 基本給・家族手当・住宅手当・役職手当等(毎月固定的に支払われる)
- 非固定的賃金: 時間外割増賃金・歩合給・皆勤手当等(実績連動)
重要な落とし穴: 固定的賃金が変動していなくても「残業代の大幅増加」により2等級以上の差が生じた場合は随時改定の対象外(固定的賃金変動が前提要件のため)。社労士試験では「固定的賃金の変動がない場合の随時改定不要」が選択式の空欄として問われることがあります。
【標準報酬月額と「報酬」の定義:何が「報酬」に含まれるか】
厚年法第3条第1項(報酬の定義)において、報酬に含まれる・含まれないものの判断は実務で頻繁に問われます:
| 含まれる(報酬) | 含まれない(報酬外) |
|---|---|
| 基本給・各種手当・通勤手当 | 年3回以下の賞与(標準賞与額で別途処理) |
| 現物給与(食事・住宅の提供等) | 解雇予告手当・退職金 |
| 割増賃金・深夜手当 | 見舞金・慶弔費 |
| 育児休業給付金受給前の給与(復帰時) | 出張費の実費弁償 |
通勤手当が「報酬」に含まれる点(健康保険も同様)は試験頻出です。健康保険の標準報酬月額と厚生年金の標準報酬月額は原則として同額で決定されますが、上限等級が異なる(健保は第50級・139万円まで・厚年は第32級・65万円まで)点が重要な違いです。
<!-- 監修確定 2026-06-07 legal-reviser: (1)選択肢ウを「9月1日から翌年8月31日まで」(条文通り=正しい記述)から「10月1日から翌年9月30日まで」(誤り)に変更し、正答キー「ウ」と整合させた。これは厚年法第21条第3項に基づく試験頻出論点。(2)選択肢ア:標準報酬月額第32級65万円(KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX)・令和9年9月の68万円改正は基準日後=対象外、整合。(3)選択肢イ:標準賞与額150万円上限(厚年法第24条の4第2項)・年4回以上の月額扱い(同条第3項)は条文通り。(4)選択肢エ:随時改定の固定的賃金変動・3か月平均・2等級差(厚年法第23条)は条文通り。(5)選択肢オ:上限等級超過の保険料計算外は条文通り。基準日外改正混入なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第20条(標準報酬月額の決定)・第21条(定時決定)・第23条(随時改定)・第24条の4(標準賞与額)・第24条の5(標準賞与額の上限) 数値参照: KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX={{KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX}}(65万円/月・第32級・令和8年度)・2020-09-01発効(一次確認: 日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/ryogaku/ryogakuhyo/20200825.html) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。