社労士 厚生年金保険法 問3:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
老齢厚生年金の報酬比例部分に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア老齢厚生年金の報酬比例部分の額は、被保険者期間の平均標準報酬額(平成15年4月以降の被保険者期間)に給付乗率(1000分の5.481)を乗じて被保険者期間の月数を掛けた額を基本として算出される。
- イ平成15年4月より前の被保険者期間(旧報酬比例部分)については、平均標準報酬月額(賞与を含まない月額のみ)に給付乗率1000分の7.125を乗じて計算する。
- ウ報酬比例部分の計算に用いる「平均標準報酬額」は、被保険者期間全体(平成15年4月以降)の標準報酬月額と標準賞与額を合算し、被保険者期間の月数で除した額であり、各年度の再評価率で再評価(現在価値化)したものを用いる。
- エ老齢厚生年金の受給に必要な被保険者期間は1か月以上であり、1日でも厚生年金保険の被保険者であれば受給権が発生する(ただし老齢基礎年金の受給資格期間10年を別途満たしている必要がある)。正答
- オ給付乗率(1000分の5.481)は、共済年金との一元化(平成27年10月)により厚生年金・共済年金で統一された乗率であり、生年月日による読替えが行われる場合がある。
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正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「1日でも厚生年金保険の被保険者であれば受給権が発生する」という部分です。老齢厚生年金には1か月以上の被保険者期間が必要です(厚生年金保険法第42条第2号「被保険者期間を1か月以上有すること」)。月単位の管理が厚生年金の原則で、「1日」という単位は受給権発生の単位として認められていません。「老齢基礎年金の受給資格期間10年」が別途必要であることは正しい記述ですが、最低被保険者期間「1か月」を「1日」と誤って記載している点でエは誤りとなります。
アは正しく、平成15年4月以降の給付乗率5.481/1000は試験頻出の数値です。
老齢厚生年金 報酬比例部分の計算式(必須暗記):
| 期間 | 計算式 | 乗率 |
|---|---|---|
| 平成15年4月以降 | 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 被保険者月数 | 5.481(総報酬制導入後) |
| 平成15年3月以前 | 平均標準報酬月額 × 7.125/1000 × 被保険者月数 | 7.125(旧法・月額のみ) |
※ 生年月日による読替え乗率あり(昭和21年4月1日以前生まれ等の経過措置)
なぜ乗率が2種類?:
- 平成15年4月に「総報酬制」が導入され、標準賞与額も保険料・年金額の計算に算入されるようになった
- 総報酬制導入前(旧制度)は賞与を除いた月額のみで計算していたため、乗率が高め(7.125/1000)に設定されていた
- 導入後は賞与を含む「報酬総額」で計算するため、同じ年収でも月額単価が下がり、乗率を5.481/1000に引き下げて水準を維持する設計
各選択肢の解説:
- ア(正): 5.481/1000×平均標準報酬額×月数が令和8年度試験の基本計算式。この数値は試験でそのまま出題される最重要数値のひとつです。
- イ(正): 旧法(平成15年3月以前)の乗率7.125/1000・平均標準報酬月額(賞与を含まない)は正しい。
- ウ(正): 平均標準報酬額は再評価率(過去の標準報酬を現在価値に換算する率)で調整します。再評価率は毎年改定されます(被保険者期間が長い人の過去の報酬を現在の賃金水準に近づける仕組み)。
- エ(誤・正答): 「1日でも」という表現が誤り。厚生年金保険法第42条第2号は「被保険者期間を1か月以上有すること」と規定。受給権発生の最低被保険者期間は1か月であり、「1日でも」は条文と異なります。
- オ(正): 共済年金との一元化(平成27年10月)により、旧共済年金は厚生年金に統合。乗率は統一されていますが、旧共済の一部では生年月日読替えが残ります。
【「総報酬制」導入(2003年)の政策的意義と計算への影響】
平成15年(2003年)4月の総報酬制導入は、厚生年金保険史上最大級の制度変更のひとつです。
導入前の問題:
- 賞与(ボーナス)は「特別保険料」(一律1%)として別途徴収されていたが、年金額の計算には含まれなかった
- 結果として、高賞与の会社員は「保険料を払っているのに年金額に反映されない」という不公平が生じていた
- また、月例給与を下げて賞与を上げる「報酬設計」によって保険料逃れができる抜け穴があった
総報酬制導入後の変化:
- 標準賞与額(上限年間540万円→現在は各回150万円・年4回以上支給時は月額扱い)も保険料・年金額の計算対象に
- 乗率を7.125/1000→5.481/1000に変更(賞与を含めて計算するため単価を引き下げ・実質的な給付水準は維持)
- 「平均標準報酬月額」→「平均標準報酬額」に呼称変更(「月額のみ」→「月額+賞与を月割りした額」の意味に変化)
この変化が試験に問われるポイント:
- 「平均標準報酬額」と「平均標準報酬月額」の使い分け(前者は平成15年4月以降・後者は以前)
- 乗率の使い分け(5.481vs7.125)と適用期間の境目(平成15年3月以前 / 4月以降)
- 標準賞与額の上限(各回150万円・厚年法第24条の4)← KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAXは月額上限65万円だが賞与の上限は別途150万円(令和8年度試験ではこの混同を狙う出題あり)
【再評価率の仕組みと「世代間公平」の確保】
平均標準報酬額の計算では「再評価率」(厚年法附則第17条の3)を使って過去の報酬を現在の賃金水準に合わせて引き上げます:
- 例: 1990年代の標準報酬月額20万円は、2026年の賃金水準で30万円相当とみなして計算される(再評価率が約1.5倍の場合)
- 再評価率は毎年度改定され、日本年金機構から発表される
- 再評価しないと「若い時代の低賃金での保険料が老後の年金に過小に反映される」世代間不公平が生じる
再評価率は試験に数値として直接出題されることは少ないですが、「なぜ再評価するか」の仕組みは選択式問題の空欄として問われることがあります。
【老齢厚生年金の受給権発生要件:なぜ「1か月でも可」か】
厚生年金保険の老齢厚生年金は、老齢基礎年金の受給資格期間(10年=120か月)を満たしていれば、厚生年金の被保険者期間が1か月でも存在すれば報酬比例部分(老齢厚生年金)の受給権が発生します(厚年法第42条)。これは:
- 老齢基礎年金は「10年以上の受給資格期間」が必要(絶対要件)
- 老齢厚生年金は「受給資格期間を満たした上で」厚生年金の被保険者期間が1月以上あれば発生
という二層構造になっているためです。会社勤めを1か月しかしなかった人でも、自営業期間等で10年の受給資格を満たしていれば、1か月分の老齢厚生年金を受け取れます。
【上位接続:特別支給の老齢厚生年金(60〜65歳)の存在】
本問は65歳からの「本来支給」の老齢厚生年金を扱いますが、60歳から受け取れる「特別支給の老齢厚生年金」も重要です:
- 対象: 昭和36年4月1日以前生まれの男性、昭和41年4月1日以前生まれの女性
- 受給要件: 老齢基礎年金の受給資格期間10年以上・厚生年金被保険者期間1年以上
- 構成: 報酬比例部分(60歳から)・定額部分(生年月日による段階的縮小・現在は多くの者が対象外)
- 令和8年度試験での重要性: 特別支給の対象者が減少中で、今後の試験では「特別支給の受給権がない世代(昭和36年4月2日以後生まれの男性等)」に関する問題が増加
報酬比例部分の計算式(5.481/1000・7.125/1000)は特別支給でも同じ計算式が適用されるため、この計算式の理解は試験全体を通じた基礎知識です。
<!-- 監修確定 2026-06-07 legal-reviser: (1)正答エ(「1日でも」は誤り→正しくは「1か月以上」)は厚年法第42条第2号で確認。(2)給付乗率5.481/1000(平成15.4以降)・7.125/1000(平成15.3以前)は厚年法附則別表で確認・正しい。(3)選択肢オ「共済年金との一元化(平成27年10月)」は厚年法改正で正しい。(4)厚年標準報酬上限65万円(KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX)令和8年度試験基準日時点の出題対象・整合。(5)基準日外改正混入なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第43条(老齢厚生年金の額)・第44条(加給年金)・附則第9条の2(旧報酬比例部分の計算)・第3章(被保険者期間) 数値参照: KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX={{KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX}}(65万円/月・第32級・令和8年度)/ KAITEI_RITSU_KOKUNEN={{KAITEI_RITSU_KOKUNEN}}(+1.9%・令和8年度基礎年金改定率)・2026-04-01発効(一次確認: 日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。