社労士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

社労士 労働一般常識 問10|労働組合法

問題

社労士 | 労働一般常識 | 令和9年度(2027年度)試験対応・数値確認日 2026-10-01

労働組合法に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。

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答え合わせ

正解は ア
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はアです。

労働組合法第7条の「不当労働行為」は、使用者の行為のみを規制する制度です。「不当な労働組合の行為を使用者が申し立てる制度ではない」という点が重要です。アは「使用者の行為のみを対象とする」と正確に述べており、正しい記述です。労働組合がストライキ等の団体行動を行うことについては、刑事免責・民事免責(労組法第1条・第8条)が認められていますが、「不当労働行為(労組法第7条)」として申し立てることはできません。

イ(第7条第1号の「労働者」は雇用形態を問わず、パートタイム労働者にも適用される)・ウ(申立期限は1年・「2年」は誤り)・エ(再審査申立期限は15日以内・「30日」は誤り)・オ(救済命令で損害賠償を命じることはできない。罰則も「10万円以下の罰金」ではない)はいずれも誤り。

不当労働行為の4類型(労働組合法第7条):

号類型内容
第1号不利益取扱い・黄犬契約組合員であること・加入・結成・正当な行為を理由とした解雇その他不利益取扱い、又は組合に加入しないこと・脱退することを雇用条件とすること
第2号団体交渉拒否雇用する労働者の代表者との団体交渉を正当な理由なく拒むこと
第3号支配介入・経費援助組合の結成・運営に支配・介入すること、または組合の運営費用を援助すること(ただし書の例外あり)
第4号報復的不利益取扱い労働委員会への申立て・再審査の申立て・証拠提示等を理由とした解雇その他不利益取扱い

各選択肢の正誤詳細:

  • ア(正): 不当労働行為の主体は「使用者」のみ(第7条の文言)。労働組合の行為(ストライキ等)は不当労働行為制度の対象外。ストの刑事免責・民事免責は別条文(第1条・第8条)が根拠。
  • イ(誤): 不利益取扱い禁止(第7条第1号)の「労働者」は雇用形態を問わず、パートタイム労働者にも適用される。「正規労働者にのみ適用」は誤り。
  • ウ(誤): 不当労働行為の救済申立期限は「行為の日(継続する行為の終了日)から1年以内」(労組法第27条第2項)。「2年以内」は誤り。
  • エ(誤): 都道府県労働委員会の救済命令等に対する中央労働委員会への再審査申立期間は「交付を受けたときは15日以内」(労組法第27条の15第1項)。「30日以内」は誤り。
  • オ(誤): 救済命令は「原状回復」(原職復帰・バックペイ・組合活動の妨害をやめる等)を命じるものであり、損害賠償金の支払いを命じる制度ではない。使用者が救済命令に従わない場合の制裁も「1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金」ではない(確定した救済命令等の違反は50万円以下の過料:第32条、確定判決で支持された救済命令等の違反は1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は併科:第28条)。

不当労働行為の救済手続きのフロー:

```

申立て(都道府県労働委員会・行為日から1年以内)

→ 調査・審問(証拠調べ)

→ 合意(和解・不問)or 命令(救済命令 or 棄却命令)

→ 中央労働委員会への再審査申立て(命令交付日から15日以内)

→ 裁判所への取消訴訟(行政事件訴訟法・救済命令確定後)

```

【労働組合法の「不当労働行為制度」の思想的背景:使用者側だけを規制する理由】

労働組合法第7条が使用者の行為のみを不当労働行為として規制するのは、「労使間の構造的な力の非対称性(asymmetry)」を是正するための制度設計です。

個々の労働者は使用者(企業)に比べて経済的・組織的に弱い立場にあります。労働組合は「集合的な力(collective power)」によってこの非対称性を補正するものであり、使用者が組合結成・活動を妨害すれば制度の根幹が崩れます。このため「使用者側の組合妨害行為」を行政法的に禁止・是正する制度(不当労働行為制度)が必要とされました。

一方、労働組合の「不当な行為」(ストライキ中の暴力・財物損壊・不当な圧力)については:

  • 刑事法(刑法): 傷害・器物損壊等として対応
  • 民事法(不法行為・労働契約法): 不法行為責任・契約違反として対応
  • 労働組合法第1条第2項: 「刑事免責」は「正当な行為」のみに限定

不当労働行為救済制度は「行政救済(原状回復命令)」であり、損害賠償は民事上の不法行為訴訟で別途求める必要があります(オの誤りの核心)。

【「黄犬契約(Yellow Dog Contract)」の歴史と法的規制】

第7条第1号後段が禁止する「黄犬契約」は、労働者が「労働組合に加入しない・脱退する」ことを雇用条件とする約束のことです。19世紀〜20世紀初頭のアメリカで使用者が多用した慣行であり、労働組合の形成を封じ込める手段として機能しました。

日本では、労働組合法第7条第1号後段がこれを不当労働行為として禁止しています。

【団体交渉拒否(第2号)の「正当な理由」と判断基準】

使用者が団体交渉を拒否できる「正当な理由」(第7条第2号)は限定的であり、以下の事情があれば正当な理由と認められません:

  • 「今は忙しい」「担当者が不在」等の形式的理由
  • 「○○組合とは交渉しない」という特定組合の排除(組合の適正な代表性が確認されている場合)
  • 「既に決定したことだから交渉の余地はない」(交渉事項性あり)

「正当な理由あり」として団交拒否が許容される場合:

  • 交渉事項が使用者の管理・処分権の外にある事項(本社決定の経営方針の根幹部分等)
  • 相手方が労働組合法上の「労働組合」でない場合(法内組合でない)
  • 交渉の申込みが著しく誠実さを欠く場合(誠実交渉義務違反は双方向)

【中央労働委員会と都道府県労働委員会の役割分担】

労働委員会は「労使の公正な第三者機関」として機能します:

  • 都道府県労働委員会: 不当労働行為の初審(一審)・労働争議のあっせん・調停・仲裁
  • 中央労働委員会: ①都道府県労働委員会命令に対する再審査(二審) ②全国規模の労働争議への関与

再審査申立期間の「15日以内」(第27条の15第1項。エの誤りの指摘)は非常に短く、実務上の注意点です。命令書を受け取ってから15日以内に中労委への申立てをしないと再審査機会を失います。なお再審査の申立ては救済命令等の効力を停止しません(同項ただし書)。

【「誠実交渉義務」と社労士実務・特定社労士の関与】

2000年代以降の労働委員会命令では「使用者の誠実交渉義務違反(第7条第2号)」の事案が増加しています。誠実交渉義務とは「単に交渉の場に出てくるだけでなく、具体的な情報の提供・説明・反論の検討等、誠実に交渉する義務」です。

社労士の関与場面(相談・助言の範囲):

1. 団体交渉への備え: 誠実交渉義務を踏まえた交渉準備・記録の整備の助言

2. 社内の組合対応マニュアル・規程の整備: 不当労働行為にあたらない適正な組合対応の仕組みづくり(就業規則等のレビュー)

(労働委員会の不当労働行為審査手続での代理の可否は社会保険労務士法の規定で確認が必要)

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働組合法第7条(不当労働行為)・第27条第2項(申立ては行為の日から1年以内)・第27条の15(再審査の申立て:交付を受けたときは15日以内)・第28条(確定判決で支持された救済命令等の違反:1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又は併科)・第32条(確定した救済命令等の違反等:50万円以下の過料) 出典: 厚生労働省「労働組合法・不当労働行為制度の概要」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukumiaiseido/index.html 中央労働委員会「不当労働行為救済申立制度」https://www.mhlw.go.jp/churoi/shinsa/roudou/ 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。