社労士 労働一般常識 問20:労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
最低賃金法に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
- ア最低賃金は、地域別最低賃金と特定最低賃金(旧産業別最低賃金)の2種類がある。地域別最低賃金は都道府県ごとに設定される。令和7年度(2025年10月発効)の全国加重平均は`1,121円/時`であり、東京都は`1,226円/時`と最も高い。
- イ特定最低賃金は、特定の産業に適用される最低賃金であり、地域別最低賃金よりも高い水準に設定される場合と低い水準に設定される場合がある。使用者は特定最低賃金と地域別最低賃金のうち、いずれか高い方を労働者に支払わなければならない。正答
- ウ最低賃金の適用除外として、精神または身体の障害のために著しく労働能力の低い者については、厚生労働大臣または都道府県労働局長の許可を受けた場合に最低賃金の一部または全部を適用除外とすることができる(最賃法第7条)。
- エ使用者が地域別最低賃金または特定最低賃金を下回る賃金しか支払わなかった場合、最低賃金の差額支払義務が生じ、差額を支払わなければならない(最賃法第4条)。また、最低賃金法違反として使用者には50万円以下の罰金が科される(最賃法第40条)。
- オ最低賃金の比較対象となる賃金は、毎月支払われる賃金から、臨時に支払われる賃金・一定の期間ごとに支払われる賃金(賞与等)・時間外・休日・深夜割増賃金・精皆勤手当・通勤手当・家族手当を除いたものである。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正答はイ(誤っている記述)です。
イの誤りは「地域別最低賃金よりも低い水準に設定される場合がある」という点です。最低賃金法第15条では、特定最低賃金は「地域別最低賃金を上回る額で定めるもの」と規定されています。特定最低賃金が地域別最低賃金を下回ることは法律上認められていません。
特定最低賃金は、特定の産業・職種で地域別よりも高い賃金水準が慣行として成立している場合に、その水準を下支えするものです。適用される場合は地域別最低賃金と特定最低賃金のうち高い方(必然的に特定最低賃金の方が高いので特定最賃が適用)を守る必要があります。令和7年度の全国加重平均は`1,121円/時`で、前年比+{{SAITEI_CHINGIN_AVG_UP}}の過去最大の引上げとなりました。
最低賃金の2種類(イの誤りの核心):
| 種別 | 設定単位 | 水準 | 設定機関 |
|---|---|---|---|
| 地域別最低賃金 | 都道府県ごと | 各都道府県の実情に応じた最低水準 | 都道府県労働局長が決定 |
| 特定最低賃金 | 特定の産業・職種ごと | 地域別最低賃金を必ず上回る額(最賃法第15条) | 都道府県労働局長が決定 |
イの「地域別より低い場合がある」は完全な誤りです。特定最低賃金は地域別の上乗せとして機能し、地域別を下回ることは制度上不可能です。
令和7年度改定の重要数値(アの根拠):
| 指標 | 数値 | 発効日 |
|---|---|---|
| 全国加重平均 | `1,121円/時`(前年比+66円・過去最大の引上げ) | 2025年10月1日 |
| 最高(東京都) | `1,226円/時` | 2025年10月1日 |
| 最低(高知/宮崎/沖縄等) | `1,023円/時` | 2025年10月1日 |
最低賃金の比較に含まない賃金(オの根拠):
最低賃金との比較対象から除外される賃金(最賃法施行規則第1条):
1. 臨時に支払われる賃金(結婚祝い金等)
2. 一定の期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
3. 時間外・休日・深夜の割増賃金部分
4. 精皆勤手当(出勤率に応じた手当)
5. 通勤手当(交通費補填)
6. 家族手当(扶養家族に応じた手当)
したがって「基本給+職務手当+技能手当」などの「毎月・固定的に支払われる基本的な賃金」が最低賃金との比較対象です。
罰則の整理(エの根拠):
- 地域別最低賃金・特定最低賃金を下回る支払い: 差額支払義務(最賃法第4条)+50万円以下の罰金(第40条)
- 最低賃金の周知義務違反: 30万円以下の罰金(第41条)
【最低賃金の「適用除外」制度の現状と「障害者最低賃金問題」】
最低賃金法第7条は、精神・身体の障害により著しく労働能力の低い者について、許可を得て最低賃金の一部または全部の適用除外を認めています。この制度は障害者雇用の促進という観点から設けられたものですが、現在は以下の問題が指摘されています。
1. 「賃金ゼロ」が合法化されるケース: 就労継続支援A型・B型の一部事業所では、最低賃金適用除外許可を受けて実質的に無給に近い労働が行われているとの指摘があります
2. 障害者雇用促進法との緊張関係: 障害者雇用率制度(2.5%)は障害者の一般就労を促進するものですが、最低賃金の適用除外は「一般企業での雇用ではなく福祉的就労での低賃金雇用」を増やす方向に機能する可能性があります
3. ILO条約との整合性: ILO第131号条約(最低賃金の確立)では障害者への最低賃金適用除外を認める条項があるものの、国際的には廃止または縮小の方向性が見られます
【「全国加重平均`1,121円/時`」の算出と地域格差の問題】
全国加重平均は、各都道府県の最低賃金に当該都道府県の労働者数を掛け合わせて加重平均したものです。東京・神奈川・大阪等の大都市圏の労働者数が多いため、最高額の都市部に引っ張られた平均値になります。
地域格差の現状(令和7年度):
- 最高(東京):`1,226円/時`
- 最低(高知/宮崎/沖縄等):`1,023円/時`
- 最高と最低の差:約200円(過去最大水準)
この格差は「地方では最低賃金を雇用コストの基準として使いやすい(実質的な標準賃金化)」「高賃金地域と低賃金地域の間での労働移動の不均衡」という問題に接続します。
【特定最低賃金と「産業別最低賃金」の変遷】
特定最低賃金(旧称:産業別最低賃金)は、2008年の最低賃金法改正で名称・位置づけが変更されました。改正前は「地域別より低い産業別最低賃金」も設定可能でしたが、改正後は「地域別を上回る場合のみ設定可」という現行の制度に統一されました。これによりイのような「低い水準に設定される場合がある」という旧制度の知識が誤りとして出題されやすい論点となっています。
社労士実務では、特定最低賃金が設定されている産業(製造業・建設業等)の事業所では、地域別と特定最低賃金の双方を確認し、高い方を適用する義務があります。特に転職・異動で他の産業から移ってきた労働者の賃金設定時に見落としが発生しやすい点です。
【最低賃金引上げの「中小企業への影響」と社労士の支援業務】
令和7年度の+66円引上げ(全国加重平均`1,121円/時`)は、中小企業の人件費に直接影響します。社労士が中小企業に提供すべき支援:
1. 賃金台帳の点検: 現行の時間給が新最低賃金を下回っていないか確認(10月1日発効前に対応完了させる)
2. 就業規則・賃金規程の改定: 最低賃金改定を受けた賃金テーブルの見直し・就業規則の変更届出
3. 業務改善助成金の活用: 最低賃金引上げ・生産性向上に取り組む中小企業向けの助成金(厚生労働省)の申請支援は社労士の重要業務
4. コスト上昇への対応策の提案: 賃上げに見合う価格転嫁・業務効率化・処遇改善補助金の活用等を総合的にアドバイスする「経営者のビジネスパートナー」としての機能
【上位資格(FP・中小企業診断士)への接続】
FP試験では「最低賃金と所得の関係(フルタイム換算での年収水準)」「地域格差と労働移動」が出題されます。中小企業診断士では「最低賃金引上げの中小企業財務への影響(人件費率・経常利益率への影響)」「賃上げと価格転嫁の戦略的課題」が問われます。社労士は最低賃金の「法的義務」の専門家として、FP・診断士と連携して企業の賃金戦略全体を支援できる立場にあります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 最低賃金法第2条(定義)・第4条(最低賃金の効力)・第7条(適用除外)・第15条(特定最低賃金の要件・地域別最低賃金超過が要件)・第40条(罰則50万円以下) 特定最低賃金の要件: 最賃法第15条「地域別最低賃金より高い金額で定めるもの」(地域別を下回る特定最賃は設定不可) 最低賃金の比較方法: 最賃法施行規則第1条(除外賃金項目) 一次ソース: e-Gov 最低賃金法 https://laws.e-gov.go.jp/law/331AC0000000137 ・厚労省 最低賃金制度の概要 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/ <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): ア正しい(SAITEI_CHINGIN_AVG=1,121円・SAITEI_CHINGIN_MAX=東京1,226円・令和7年度)。イ誤り(特定最低賃金は「地域別最低賃金よりも高い水準に設定される」と最賃法第15条で規定されており、「地域別よりも低い水準に設定される場合がある」は誤り。特定最低賃金は地域別を上回ることが要件であり、下回る設定はできない)。ウ正しい(第7条・障害による適用除外・許可制)。エ正しい(差額支払義務・罰金50万円以下)。オ正しい(除外賃金7項目)。正答イ確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。