問題
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はオ(正しい記述)です。
均等法第9条第4項では、妊娠中または出産後1年を経過しない女性労働者の解雇は無効とし、事業主が妊娠・出産・産前産後休業等を理由とする解雇でないことを証明したときはこの限りでないと定めています。これは「証明責任の転換(事業主が無実を証明しなければならない)」という強力な保護規定です。
アは誤りです。募集・採用での性別限定も、芸術・芸能分野や職務の特性上合理的な理由がある例外があります。イは誤りです。均等法の「職場」は出張先・社外懇親会・SNS等も含む広い概念であり、措置義務の対象外ではありません。ウは誤りです。均等法第11条の3はマタハラに関する明確な「雇用管理上の措置義務」を事業主に法律上課しており、単なる行政指導の対象ではありません。エは誤りで、施行規則第2条の3類型の3つ目は「昇進に当たり、異なる事業場への配置転換の経験があることを要件とするもの」であり、「労働者コースの転換要件」ではありません。
男女雇用機会均等法の差別禁止の体系:
| 条文 | 規制内容 | 対象局面 |
|---|---|---|
| 第5条 | 採用差別禁止(男女どちらかを排除する扱い) | 募集・採用 |
| 第6条 | 雇用管理差別禁止 | 配置・昇進・降格・教育訓練・福利厚生・解雇等 |
| 第7条 | 間接差別禁止(施行規則第2条の3種類) | 募集・採用・昇進・職種の変更 |
| 第9条 | 婚姻等不利益取扱禁止 | 婚姻・妊娠・出産・産前産後休業 |
| 第11条 | セクハラ措置義務 | 職場(出張先・社外含む) |
| 第11条の3 | マタハラ措置義務(妊娠・出産・育休等) | 女性労働者(均等法) |
産後1年以内の解雇無効規定(オの根拠):
均等法第9条第4項:
> 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
「証明責任の転換」により、使用者が「妊娠・出産と無関係の理由で解雇した」ことを証明できない限り、解雇は無効とされます。
セクハラの「職場」の範囲(イの誤りの核心):
厚生労働省指針(セクハラ指針・平成18年告示第615号)では「職場」を以下のように定義しています:
- 通常就業場所(会社内)だけでなく
- 出張先・取引先・訪問先
- 社外での懇親会・宴会
- SNS・メール等によるオンライン上の行為
「業務上関係のある者が活動する場所全般」が職場であり、物理的な会社の建物に限定されません。
間接差別の3種類(エの根拠):
施行規則第2条で定める間接差別(性別に中立な条件だが実質的に一方の性を不利に扱うおそれがある3種類):
1. 募集・採用時の身長・体重・体力要件
2. 募集・採用・昇進・職種の変更時の住居の移転を伴う配置転換に応じることの要件
3. 昇進時の異なる事業場への配置転換の経験の要件
【マタニティハラスメント防止措置義務の「2本立て」体制(ウの正確な理解)】
マタハラ防止の法的根拠は均等法と育介法の2本立てです。
| 根拠法 | 条文 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|---|
| 均等法 | 第11条の3 | 女性労働者(妊娠・出産・産前産後休業等) | 職場における妊娠・出産等に関するハラスメント防止措置義務 |
| 育介法 | 第25条 | 全ての労働者(男女問わず・育休・介護休業等) | 育児休業・介護休業等に関するハラスメント防止措置義務 |
ウの「均等法第11条の3は法律上の措置義務とは位置付けられない単なる行政指導の対象にとどまる」は誤りです。均等法第11条の3は2017年1月改正で新設された明確な「事業主に対する雇用管理上の措置義務」を規定する条文であり、行政指導の根拠ではなく法律上の義務です。さらに育介法第25条が育休等のハラスメント防止について男性も含む全労働者に対する措置義務を明文化しており、両法を合わせて職場のマタハラ・育休ハラの法的防止枠組みが完成しています。
【「制度利用ハラスメント」と「状態ハラスメント」の区分】
マタハラ指針(厚生労働省告示)では、マタハラを以下の2種類に区分しています:
1. 制度等の利用への嫌がらせ型(制度利用ハラスメント): 産前産後休業・育休・時短勤務等の制度利用を申し出た・利用したことへの不利益示唆・嫌がらせ(「育休を取ったら昇進は難しい」「そんなに休みを取るなら辞めてほしい」等)
2. 状態への嫌がらせ型(状態ハラスメント): 妊娠・出産という「状態」に対する嫌がらせ(「妊娠するのは非常識」「子どもができたなら会社の戦力外」等)
管理職・同僚のいずれによるハラスメントも防止措置義務の対象であり、社労士は就業規則・ハラスメント防止規程・研修の設計で具体的な支援を行います。
【間接差別「全国転勤要件」の現代的課題:在宅勤務普及後の問題】
間接差別の類型として禁止される「全国転勤要件」は、女性(特に育児・介護を担う女性)が転居を伴う転勤に応じにくい社会的実態を前提としています。テレワーク・リモートワークの普及により「転勤しなくても業務を遂行できる」環境が整いつつある現在、「転勤なしでも業務可能な職務で全国転勤要件を維持すること」は間接差別として問題になる可能性が高まっています。
社労士の実務論点:
- 総合職採用基準から「全国転勤への同意」要件を削除・緩和する就業規則改定
- 転勤命令の有効性(権利濫用の法理・育介法第26条の配慮義務)との関係整理
- 「転勤に応じる意思があること」を採用要件とした場合の間接差別リスクの評価
【「婚姻妊娠解雇」と「事業主の証明」の裁判例】
均等法第9条第4項により、妊娠中・産後1年以内の解雇は、事業主が妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを証明しない限り無効となるため、使用者側には解雇理由を客観的に説明できる記録が求められます。
社労士が使用者側顧問として重要な点:
- 妊娠報告後の評価・処遇変更は記録を詳細に残す(理由の明確化)
- 妊娠報告前から問題として指摘されていた事項の文書化
- 人事考課の基準・手続きの透明化(妊娠とは無関係の客観的基準の存在を証明できるようにする)
【上位資格(FP・産業カウンセラー)への接続】
FP試験では「育児・介護のための法律(均等法・育介法)の概要」がライフプランニング科目で出題されます。産業カウンセラー・EAP(従業員支援プログラム)の視点では、マタハラ・セクハラが当事者(特に被害者女性)のメンタルヘルスに与える影響・復職支援との関連が重要です。社労士はハラスメント防止規程の整備・社内研修・相談窓口の設置という「組織的防止策」を担う立場として、カウンセラー・EAP専門家と連携する機会が増えています。
- 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第11条・第11条の3・第9条e-Govで原文を読む
- 労働基準法第65条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 男女雇用機会均等法第5条(募集・採用)・第6条(配置等)・第7条(間接差別)・第9条(第3項=妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い禁止、第4項=妊娠中・産後1年を経過しない女性労働者の解雇は無効。ただし事業主が妊娠・出産等を理由とする解雇でないことを証明したときを除く)・第11条(セクハラ措置義務)・第11条の3(マタハラ措置義務)・均等法施行規則第2条(間接差別の3種類:①募集・採用の身長・体重・体力要件、②募集・採用・昇進・職種の変更の転居を伴う配置転換に応じることの要件、③昇進の異なる事業場への配置転換経験の要件) セクハラの「職場」の範囲: 厚労省指針(平成18年10月厚生労働省告示第615号)で「職場」は業務を遂行する場所全般(出張先・社外懇親会も含む)と定義 マタハラ措置義務の対象: 均等法第11条の3(女性のみ)・育介法第25条(男性含む)の2本立て 一次ソース: e-Gov 男女雇用機会均等法 https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113 ・厚労省 均等法指針(セクシュアルハラスメント) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/danjokintou/seisaku11.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

