社労士 労働一般常識 問23:労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度(民間企業の法定雇用率`2.5%`)を前提とすること。
- ア民間企業(常時雇用する労働者が45.5人以上の事業主)の法定雇用率は、令和8年度試験基準日(2026年4月10日)時点で`2.5%`である。国・地方公共団体は2.8%、都道府県等の教育委員会は2.7%の法定雇用率が適用される。
- イ常時雇用する労働者数が100人を超える事業主であって、法定雇用障害者数を下回る場合、不足1人につき月額`50,000円/月`の障害者雇用納付金を国(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED))に納付しなければならない。
- ウ常時雇用する労働者数が100人を超える事業主であって、法定雇用障害者数を超えて障害者を雇用している場合、超過1人につき月額`29,000円/月`の障害者雇用調整金が支給される。令和6年4月の改正で調整金は従来より引き上げられた。
- エ常時雇用する労働者数が100人以下の事業主であって、一定数(各月の常時雇用労働者数の4%の年度間合計または72人のいずれか多い数)を超えて障害者を雇用している場合、超過1人月につき月額`21,000円/月`の障害者雇用報奨金が支給される。なお、報奨金の財源は障害者雇用納付金制度から拠出されるため、納付金の納付義務がある100人超の事業主からも報奨金の申請が認められる。正答
- オ障害者雇用促進法では、障害者を雇用しない事業主の中に常時雇用する労働者数が100人以下の小規模事業主が含まれる場合でも、法律上の法定雇用義務(達成努力義務)は、すべての対象事業主(常時雇用45.5人以上)に課される。ただし、100人以下の事業主には納付金の納付義務はない。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「報奨金の財源は障害者雇用納付金制度から拠出されるため、納付金の納付義務がある100人超の事業主からも報奨金の申請が認められる」という点です。報奨金は常時雇用労働者100人以下の事業主のみが申請できます。100人超の事業主は、超過の場合に障害者雇用調整金(月2万9千円)が適用され、報奨金の支給対象にはなりません。
障害者雇用の納付金・調整金・報奨金の3種類の違いを整理します。納付金(100人超・不足分を負担)・調整金(100人超・超過分を受取)・報奨金(100人以下・超過分を受取)という構造であり、調整金と報奨金は事業規模で完全に分離されています。令和8年度試験基準日時点の法定雇用率は民間企業`2.5%`(2026年7月予定の2.7%は試験対象外)です。
障害者雇用率制度の対象区分(アの根拠):
| 対象 | 法定雇用率(試験基準日時点) | 義務対象規模 |
|---|---|---|
| 民間企業 | `2.5%`(2.5%) | 常時雇用45.5人以上 |
| 国・地方公共団体 | `2.8%`(2.8%) | 全機関 |
| 都道府県等の教育委員会 | `2.7%`(2.7%) | 全教育委員会 |
※ 2026年7月1日施行で民間2.7%・国等3.0%・教委2.9%に引上げ予定だが、試験基準日2026年4月10日時点では未施行のため出題対象外。
納付金・調整金・報奨金の比較(最重要整理):
| 種別 | 対象事業主 | 方向 | 金額(月/1人) | 概要 |
|---|---|---|---|---|
| 障害者雇用納付金 | 100人超・不足の場合 | 支払う | `50,000円/月`(5万円) | 不足数×5万円を毎年度末に申告・納付 |
| 障害者雇用調整金 | 100人超・超過の場合 | 受け取る | `29,000円/月`(2万9千円) | 超過数×2万9千円を支給(令和6年4月改正で2万7千円→2万9千円) |
| 障害者雇用報奨金 | 100人以下・超過の場合 | 受け取る | `21,000円/月`(2万1千円) | 月平均で基準数を「超える」部分を支給 |
報奨金の対象要件(エの誤りの詳細):
報奨金は常時雇用する労働者数が100人以下の事業主のみが申請できます。支給対象人数は「各月の常時雇用障害者数の年度間合計」が「各月の常時雇用労働者数の4%の年度間合計または72人のいずれか多い数」を超える部分です(JEED規程)。100人超の事業主は調整金(月2万9千円)の支給対象であり、報奨金の申請対象外です。エの「100人超の事業主からも報奨金の申請が認められる」は誤りです。
令和6年4月改正の調整金・報奨金の改定(ウの根拠):
2024年4月の改正で、調整金(2.7万円→2.9万円)と報奨金(独自改定)の単価が見直されました。ただし「年度間の支給対象人数が10人を超える部分」については逓減単価(調整金23,000円・報奨金16,000円)が適用されます。これは「1社が多数の障害者を雇用して調整金を大量に受け取る」ことへの対策です。
【障害者雇用納付金制度の「費用徴収・分配」の意義と課題】
障害者雇用納付金制度は、障害者を雇用することによる事業主間のコスト格差を調整する仕組みです。障害者を雇用する事業主は「バリアフリー対応・職業訓練・特別な雇用管理」等のコストを負担する一方、雇用しない事業主はそのコストを免れます。このコスト格差を是正するために、雇用しない事業主から納付金を徴収し、雇用する事業主に調整金・報奨金として分配します。
制度の課題:
1. 「罰金化」の問題: 雇用率を達成できない事業主の中には「5万円を払えば障害者を雇用しなくてよい」という発想が生じる懸念があります。実際には法定雇用率達成は義務(罰金ではなく行政指導の対象)であり、ハローワーク・厚労省による助言・指導・公表が行われます
2. 精神障害者の算定特例: 2018年4月から精神障害者保健福祉手帳を持つ者が雇用率の算定対象に加わりました。週20〜30時間勤務の精神障害者を初めて雇用した場合(2023年3月31日まで特例措置)は1人を2人分としてカウントする特例があります(現在は延長措置の状況確認が必要)
3. 非正規・パートタイムの扱い: 週20時間以上の非正規・パートタイム雇用も障害者雇用率の算定対象ですが、週30時間未満は0.5人としてカウントされます(フルタイムは1人、短時間は0.5人)
【「雇用義務」と「合理的配慮義務」の二本立て】
2016年4月施行(2013年法改正)で、障害者雇用促進法に「合理的配慮義務」が追加されました。
| 義務 | 対象 | 内容 |
|---|---|---|
| 雇用義務(雇用率) | 事業主(45.5人以上) | 一定割合の障害者を雇用する義務 |
| 合理的配慮義務 | すべての事業主(規模問わず) | 障害者の申出に対して、過重な負担にならない範囲で配慮する義務 |
合理的配慮の具体例:
- 身体障害者: 車椅子対応設備・段差解消・点字での案内
- 視覚障害者: スクリーンリーダー対応PC・音声案内
- 精神障害者: 業務量の調整・短時間勤務・在宅勤務・周囲への開示サポート
- 発達障害者: 口頭指示より文書化・業務手順書の整備・専任担当者との相談機会
社労士は「合理的配慮を就業規則・雇用契約書に明記する」「ジョブコーチ制度(障害者就業・生活支援センターとの連携)の活用」を企業にアドバイスできます。
【法定雇用率2.5%時代の「実雇用率」と中小企業の実態】
厚生労働省の令和5年度「障害者雇用状況の集計結果」(2024年公表)によると:
- 民間企業全体の実雇用率: 2.33%(法定2.3%を上回る初の達成・当時)
- ただし2024年4月から法定が2.5%に引上げ→達成企業割合が改めて課題
特に中小企業(100人以下・納付金対象外)は雇用率達成への財政的インセンティブが限られるため、雇用率未達成の割合が高い傾向があります。報奨金制度(月2万1千円)だけでは雇用の動機付けとして不十分という指摘があり、中小企業向けの助成金(特定求職者雇用開発助成金・障害者雇用助成金等)との組み合わせが実務上重要です。
【社労士実務:障害者雇用の「実務設計」と「精神障害者の特性理解」】
社労士が企業の障害者雇用を支援する際の実務的な論点:
1. 雇用率計算の正確性: 週20〜29時間(0.5カウント)・週30時間以上(1カウント)の正確な集計・申告
2. 精神障害者雇用の職場環境整備: 在宅勤務・フレックス・業務量の段階的拡大等の「最初の6か月の定着支援」が最も重要(離職率が高い時期)
3. トラブル対応: 精神障害者の症状悪化・欠勤増加時の対応(休職・復職支援・主治医・産業医との連携)は社労士の専門性が発揮される場面
4. 助成金の活用: 障害者雇用安定助成金(雇用管理支援機器購入等・3年間)・特定求職者雇用開発助成金(初回雇用時の賃金補助)の申請支援は社労士の1号・3号業務の典型例
【上位資格(産業カウンセラー・キャリアコンサルタント)との連携】
精神障害者・発達障害者の雇用では、「就労可能な状態かどうかの判断」「合理的配慮の内容決定」「定着支援の計画立案」に産業カウンセラー・キャリアコンサルタント・精神科医・産業医が関与します。社労士は「手続き・就業規則・助成金」を担当し、カウンセラーは「個人支援・職場環境の心理的安全性確保」を担当するという役割分担が実務上の最適解です。障害者雇用の分野は、多職種連携の実践を通じて社労士の「経営パートナー」としての価値を最大化できる領域の一つです。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 障害者雇用促進法第43条(雇用義務・2.5%)・第53条(障害者雇用納付金・100人超)・第50条(雇用率算定の対象労働者)・障害者雇用納付金制度関係(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構・JEED) 報奨金の対象: 常時雇用労働者100人以下の事業主で月平均4人を超える(「4人を超える」= 4.5人以上≒5人目から)→エの「4人以上」という記述と「4人を超える」を確認 調整金の改正: 2024年4月(令和6年)改正で27,000円→29,000円(`{{SHOUGAISHA_CHOSEIKIN_MONTHLY}}`) 一次ソース: JEED 障害者雇用納付金制度 https://www.jeed.go.jp/disability/about_levy_grant_system.html ・厚労省 障害者の法定雇用率引上げ https://www.mhlw.go.jp/content/001064502.pdf <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser)改訂: ア正しい(民間2.5%・国等2.8%・教育委員会2.7%)。イ正しい(100人超・不足1人月5万円納付)。ウ正しい(100人超・超過1人月2万9千円・令和6年4月改正で引上げ)。エ誤り(報奨金の支給対象は「常時雇用労働者100人以下」の事業主に限定されており、100人超の事業主が報奨金の申請をすることはできない。100人超の事業主は不足の場合は納付金・超過の場合は調整金が適用される。「100人超の事業主からも報奨金の申請が認められる」は誤り。なお、支給要件は「各月の常時雇用労働者数の4%の年度間合計または72人のいずれか多い数を超える」で、設問前段は正確)。オ正しい(雇用義務は45.5人以上のすべての事業主・納付金義務は100人超のみ)。正答エ確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。