労働一般常識29労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)

社労士 労働一般常識 問29:労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision

個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(個別労働関係紛争解決促進法)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。

  • 個別労働関係紛争解決促進法は、事業主と個々の労働者との間に生じた労働関係に関する紛争(個別労働関係紛争)の解決を促進するために設けられた法律であり、「都道府県労働局長による助言・指導」「紛争調整委員会によるあっせん」の2つの制度を設けている。
  • 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争について、当事者の双方または一方からの申請または自らの判断により、当事者に対して「助言」または「指導」をすることができる。助言・指導の対象となる紛争には、解雇・雇い止め・配置転換・出向・昇進・昇給・職種変更等の事項が含まれる。
  • 都道府県労働局に置かれる「紛争調整委員会」は、法律・労働関係・社会保険に関する専門的な知識・経験を有する学識経験者(弁護士・労働問題専門家・社会保険労務士等)で構成される第三者機関であり、労使から独立した立場でのあっせんを実施する。
  • 紛争調整委員会のあっせんは、申請のあった紛争について、あっせん委員(委員会の委員の中から指名)が当事者の間に立って話し合いを促進し、合意形成を目指す手続きである。あっせん申請後、相手方(主に使用者側)は正当な理由なく参加を拒否することは認められておらず、不参加には過料の制裁が設けられている。正答
  • 特定社会保険労務士(特定社労士)は、紛争調整委員会のあっせん手続きにおいて、依頼者(労働者または事業主)を代理して「あっせんの申請」「あっせん手続きへの参加・陳述」を行うことができ、社会保険労務士の独占業務として認められている(社会保険労務士法第2条第1項第1号の6)。
正答:紛争調整委員会のあっせんは、申請のあった紛争について、あっせん委員(委員会の委員の中から指名)が当事者の間に立って話し合いを促進し、合意形成を目指す手続きである。あっせん申請後、相手方(主に使用者側)は正当な理由なく参加を拒否することは認められておらず、不参加には過料の制裁が設けられている。

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正答はエ(誤っている記述)です。

エの誤りは「あっせん申請後、相手方は正当な理由なく参加を拒否することは認められず、不参加には過料の制裁が設けられている」という部分です。個別労働関係紛争解決促進法によるあっせんは任意の手続きであり、相手方(使用者側)はあっせんへの参加を拒否することができます(参加は強制されない)。参加を拒否した場合に過料等の制裁はありません(法第11条)。ただし、参加を拒否した場合は「あっせんを打ち切る」ことができ(法第16条)、打ち切り後は労働審判・訴訟等に移行することになります。

個別労働関係紛争解決促進法の2制度は「①都道府県労働局長による助言・指導」「②紛争調整委員会によるあっせん」であり、どちらも申請は無料・弁護士費用なしで利用できる簡易な紛争解決手続きです。

標準試験対策の基準レベル

個別労働関係紛争解決促進法の2制度(アの根拠):

| 制度 | 実施主体 | 申請者 | 効果 |

|---|---|---|---|

| 助言・指導 | 都道府県労働局長(労働局の職員) | 当事者一方または双方 | 当事者に対する非拘束的な助言・指導(勧告に近い行政指導) |

| あっせん | 紛争調整委員会(委員1〜3名) | 当事者一方(申請) | 双方の主張を聴き、解決策(あっせん案)を提示→合意で解決 |

あっせんの「任意性」(エの誤りの核心):

個別労働関係紛争解決促進法第11条:

> 委員会は、関係当事者に対して、あっせん手続きへの参加を求めることができる

「求めることができる」は任意の参加要請であり、相手方は参加を拒否できます。

| 段階 | 相手方(使用者)の行動と結果 |

|---|---|

| あっせん申請 | 申請は一方当事者(労働者)が単独でできる |

| 参加の諾否 | 相手方は参加を拒否できる(義務なし・制裁なし) |

| 拒否した場合 | 委員会は「あっせんを打ち切る」ことができる(法第16条) |

| 打ち切り後 | 申請者は労働審判・通常訴訟・労働局の助言・指導等に移行 |

これは行政型ADR(裁判外紛争解決)の特徴であり、裁判所の訴訟手続きとは異なります(訴訟では被告は応訴義務がある)。

特定社労士のあっせん代理(オの根拠):

特定社会保険労務士は、紛争調整委員会のあっせん手続きにおいて:

  • あっせんの申請の代理(申請書の作成・提出)
  • あっせん手続きへの参加・陳述の代理(当事者に代わってあっせん委員に対して陳述する)

が可能です(社労士法第2条第1項第1号の6)。これは特定社労士の取得により解放される業務であり、特定社労士の受験(紛争解決手続代理業務試験)が必要です。

紛争調整委員会の構成(ウの根拠):

紛争調整委員会は、法律・労働関係・社会保険に関する学識経験者で構成されます。典型的な委員の属性:

  • 弁護士(法律的見地)
  • 社会保険労務士(労働社会保険の専門家)
  • 大学教員・研究者(労働関係の専門家)

あっせん委員は1〜3名が指名され、原則として調停・裁定ではなく「合意形成の促進」を行います。

上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【個別労働関係紛争の「解決窓口の多様化」と各手続きの選択基準】

個別労働関係紛争(解雇・ハラスメント・未払い賃金等)を解決するための手続きは、現在多岐にわたります。

| 手続き | 実施機関 | 費用 | 拘束力 | 所要期間 | 特徴 |

|---|---|---|---|---|---|

| 都道府県労働局 助言・指導 | 都道府県労働局長 | 無料 | なし | 1〜2週間 | 最も手軽・勧告的 |

| 紛争調整委員会あっせん | 紛争調整委員会 | 無料 | 合意後は拘束力あり | 1〜2か月 | 任意・非公開・簡易 |

| 都道府県の労働相談センター(ADR) | 都道府県機関 | 都道府県による | 合意後は拘束力あり | 1〜2か月 | 各都道府県の独自制度 |

| 労働審判 | 裁判所(労働審判官+労働審判員2名) | 申立て手数料 | 異議申立てなければ確定 | 3か月以内(3回以内の期日) | 簡易・迅速・法的効力あり |

| 通常民事訴訟 | 裁判所 | 訴訟費用 | 判決に拘束力 | 1〜2年以上 | 時間・費用が大きい |

選択の判断基準:

  • 金額が小さい・話し合いで解決できそう: あっせん→費用ゼロ・迅速
  • 金額が大きい・相手が参加しない: 労働審判→速く・法的効力あり
  • 複雑な法律問題・証拠が必要: 通常訴訟

【「任意のあっせん」が有効に機能する場面と機能しない場面】

任意のあっせんは、使用者側が参加した場合に「解決率が高い」特徴があります(全国のあっせん統計では参加した場合の解決率60〜70%程度)。

使用者側がよく参加する理由:

  • 「訴訟・労働審判になれば費用・時間・風評リスクが大きい」という判断
  • 「誠実に対応することで解決したい」という姿勢
  • 「労働局からの呼びかけに応じることで誠意を示す」という判断

使用者側が拒否するケース:

  • 「主張に全く応じる気がない」「訴訟でしっかり争う」という判断
  • 「あっせんで合意すると社内先例になる」という懸念
  • 複数の類似案件を一括して対応するために訴訟で決着をつけたい場合

【特定社労士の「あっせん代理」と訴訟代理との区別】

特定社労士が代理できる手続きと代理できない手続きの明確な境界:

| 手続き | 特定社労士の代理 |

|---|---|

| 都道府県労働局 助言・指導申請 | 可能(書類作成・申請代理) |

| 紛争調整委員会あっせん | 可能(あっせん代理・1号の6業務) |

| 都道府県の労働相談センターADR | 可能な場合あり(各センターの規定による) |

| 労働審判(裁判所) | 不可(弁護士のみ・一部例外) |

| 民事訴訟(裁判所) | 不可(弁護士のみ) |

特定社労士の「あっせん代理権」は、社労士が「書類作成(1号業務)」と「相談(3号業務)」に限定されていた時代から一歩進めて、裁判外紛争解決の代理人として活動できるようになったものです。代理権の範囲は「紛争調整委員会のあっせん」に限定されており、裁判所の手続きには及びません。

【個別労働紛争の増加傾向と社労士の「予防法務」の重要性】

厚生労働省「個別労働紛争解決制度の施行状況(令和5年度)」によると:

  • 総合労働相談件数:約125万件(高水準が継続)
  • 都道府県労働局 助言・指導申請:約8,000件
  • 紛争調整委員会あっせん申請:約4,000件

特に増加している紛争類型:

1. ハラスメント関連(いじめ・嫌がらせ・パワハラ・セクハラ):相談件数のトップ

2. 雇い止め・有期雇用の不更新:非正規雇用増加に伴い増加

3. 自己都合退職と会社都合退職の認識齟齬:離職票の記載を巡る紛争

社労士の「予防法務」の具体的施策:

  • 就業規則の定期見直し(ハラスメント規定・懲戒規定の整備)
  • 採用時の雇用契約書・労働条件通知書の厳密な記載
  • 解雇・雇い止めを行う場合の「文書管理・証拠保全」の指導
  • 管理職への「ハラスメント研修・労働法コンプライアンス研修」の実施支援

紛争が発生した後の対応(事後対応)よりも、紛争が発生しない職場環境の構築(事前予防)に社労士の付加価値が最も高く発揮されます。個別労働関係紛争解決促進法の制度を正確に理解した上で、企業に対して「手続きの使い方」と「使わないための予防策」の両面をアドバイスできる社労士こそが、真の経営パートナーとして機能します。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第6条(助言・指導)・第10条(あっせん申請)・第11条(あっせんへの参加)・第12条(あっせん委員の指名)・第16条(あっせんの打ち切り) あっせんの任意性: 個別労働関係紛争解決促進法第11条(相手方はあっせんへの参加を強制されない・参加は任意) 特定社労士のあっせん代理: 社会保険労務士法第2条第1項第1号の6(特定社労士のあっせん代理権) 一次ソース: 厚生労働省 個別労働関係紛争解決制度 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minkan/index.html ・e-Gov 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律 https://laws.e-gov.go.jp/law/413AC0000000112 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): ア正しい(助言・指導とあっせんの2制度)。イ正しい(都道府県労働局長による助言・指導・対象紛争の種類)。ウ正しい(紛争調整委員会=学識経験者・弁護士・社労士等の第三者機関)。エ誤り(紛争調整委員会のあっせんは任意の手続きであり、相手方(使用者側)はあっせんへの参加を拒否することができる(個別労働関係紛争解決促進法第11条第1項)。参加を拒否した場合にも、過料等の制裁はない。「正当な理由なく参加を拒否することは認められず・不参加には過料の制裁が設けられている」という記述は誤り。これは個別労働関係紛争解決促進法によるあっせんが「任意のADR(裁判外紛争解決)」であることの根幹に関わる重要事項)。オ正しい(特定社労士のあっせん代理権・社労士法第2条第1項第1号の6)。正答エ確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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個別労働関係紛争解決促進法・あっせん・指導助言・紛争調整委員会・特定社労士との関係頻出度A

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