問題
個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(個別労働関係紛争解決促進法)に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウ(正しい記述)です。
個別労働関係紛争解決促進法第6条は「都道府県労働局に、紛争調整委員会…を置く」「委員会は、前条第一項のあつせんを行う機関とする」と定めています。都道府県労働局長は、あっせんの申請があり必要があると認めるときに、この紛争調整委員会にあっせんを行わせます(第5条第1項)。
アは誤りで、助言・指導は「当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合」に限って行うことができ、自らの判断のみでは行えません(第4条第1項)。イは誤りで、あっせんの委任先は地方裁判所ではなく紛争調整委員会です(第5条第1項)。エは誤りで、あっせんの代理(社会保険労務士法第2条第1項第1号の4)は紛争解決手続代理業務に当たり、特定社会保険労務士に限り行うことができます(同条第2項)。オは誤りで、援助を求めたことを理由とする不利益取扱いは禁止されています(第4条第3項)。
個別労働関係紛争解決促進法4条〜6条の条文どおりの整理:
| 条文 | 見出し | 内容 |
|---|---|---|
| 第4条第1項 | 当事者に対する助言及び指導 | 都道府県労働局長は、当事者の双方又は一方から援助を求められた場合に、助言又は指導をすることができる |
| 第4条第3項 | 不利益取扱いの禁止 | 事業主は、労働者が援助を求めたことを理由として不利益な取扱いをしてはならない |
| 第5条第1項 | あっせんの委任 | 都道府県労働局長は、当事者の双方又は一方からあっせんの申請があり必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせる(労働者の募集及び採用に関する紛争は対象外) |
| 第6条 | 委員会の設置 | 都道府県労働局に紛争調整委員会を置く。委員会はあっせんを行う機関 |
各選択肢の正誤:
- ア(誤): 助言・指導は当事者からの求めが要件で、局長の自らの判断のみでは行えない。
- イ(誤): あっせん先は紛争調整委員会。地方裁判所ではない。
- ウ(正): 5条・6条どおり。
- エ(誤): 社労士法2条2項により、1号の4〜1号の6の紛争解決手続代理業務は特定社会保険労務士に限られる。
- オ(誤): 不利益取扱いは第4条第3項で禁止されている。
社労士法2条1項1号の4の正確な位置づけ: 社労士のあっせん代理は、個別労働関係紛争解決促進法の紛争調整委員会のあっせんだけでなく、障害者雇用促進法・労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・労働者派遣法・育児介護休業法・パートタイム有期雇用労働法の各紛争解決手続(調停等)についても同じ号(1号の4)で代理できると定められています。
【4条・5条・6条の関係と行政ADRの二段階構造】
個別労働関係紛争解決促進法は、労働者と事業主の間の個別労働関係紛争(募集・採用に関する求職者との紛争を含む)を解決するため、次の二段階の行政ADR(裁判外紛争解決手続)を用意しています。
1. 第一段階(助言・指導): 第4条第1項に基づき、都道府県労働局長が、当事者の双方又は一方から援助を求められた場合に、必要な助言又は指導を行います。これは比較的簡易・迅速な手続で、局長が事案の内容に応じて口頭・書面での助言等を行うものです。第2項は、局長が助言・指導をするため必要があると認めるときは、産業社会の実情に通じ労働問題に関し専門的知識を有する者の意見を聴くものとすると定めています。
2. 第二段階(あっせん): 第5条第1項に基づき、都道府県労働局長は、当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において、当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとします。紛争調整委員会は第6条により都道府県労働局に置かれる機関です。なお、第1条の定義上、個別労働関係紛争には募集及び採用に関する求職者と事業主との紛争も含まれますが、第5条第1項はあっせんの対象から「労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争」を除いているため、この種の紛争は助言・指導の対象にはなってもあっせんの対象にはなりません。また、労働関係調整法上の労働争議に当たる紛争などは第4条第1項により助言・指導の対象からも除かれています。
いずれの手続も「当事者からの求め・申請」が起点となっており、都道府県労働局長が職権のみで紛争に介入する仕組みにはなっていません。これは、私人間の民事的な紛争への行政の関与を当事者の意思に委ねるという、行政ADRの基本的な設計思想を反映したものです。
【第4条第3項の不利益取扱い禁止の射程】
第4条第3項は「事業主は、労働者が第一項の援助を求めたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定めています。第5条第2項も、あっせんの申請をした場合について第4条第3項の規定を準用しており、助言・指導の求めだけでなく、あっせんの申請についても同様に不利益取扱いが禁止されています。
【社会保険労務士法2条1項1号の4のあっせん代理】
社会保険労務士法第2条第1項第1号の4は「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第六条第一項の紛争調整委員会における同法第五条第一項のあつせんの手続」と、障害者雇用促進法・労働施策総合推進法・男女雇用機会均等法・労働者派遣法・育児介護休業法・パートタイム有期雇用労働法に基づく調停の手続について、「紛争の当事者を代理すること」を社会保険労務士の業務として定めています。同条第2項は、第1号の4から第1号の6まで(都道府県労働委員会のあっせん・民間紛争解決手続の代理を含む)を「紛争解決手続代理業務」とし、紛争解決手続代理業務試験に合格し、かつ付記を受けた特定社会保険労務士に限り行うことができるとしています(エの誤りの核心)。
【1号の4・1号の5・1号の6の区別】
1号の4は紛争調整委員会のあっせん・各法の調停、1号の5は都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争のあっせん、1号の6は厚生労働大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続(紛争の目的の価額が120万円を超える場合は弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る)の代理です。いずれも特定社会保険労務士の業務である点は共通です。
【社労士実務との関係】
特定社会保険労務士は、あっせんの手続の代理に加えて、紛争解決手続についての相談、手続の開始から終了までの和解の交渉、成立した和解の合意を内容とする契約の締結も行うことができます(社会保険労務士法第2条第3項)。当事者の一方の代理人としてあっせんに関与するには特定社会保険労務士である必要がある、という業務範囲の違いを正確に理解しておくことが実務上重要です。
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出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第1条(個別労働関係紛争の定義)・第4条第1項(助言・指導は当事者の双方又は一方からの求めが要件)・第3項(不利益取扱いの禁止)・第5条第1項(あっせんは紛争調整委員会に行わせる・募集及び採用に関する紛争を除く)・第6条(紛争調整委員会の設置)、社会保険労務士法第2条第1項第1号の4(紛争調整委員会におけるあっせんの代理)・第2項(紛争解決手続代理業務は特定社会保険労務士に限る) 一次ソース: e-Gov 法令API v2 `law_data/413AC0000000112`(個別労働関係紛争解決促進法)・`law_data/343AC1000000089`(社会保険労務士法)を2026-04-01時点(asof 指定)で取得し、1条・4条・5条・6条・社労士法2条の条文全文で正誤を確認した。 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

