社労士 労働基準法 問1:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
割増賃金に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア法定時間外労働に対する割増賃金率は、原則として通常の賃金の2割5分以上であり、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については5割以上の率で割増賃金を支払わなければならない。正答
- イ法定休日(週1日の休日)に労働させた場合、使用者は3割5分以上の割増賃金を支払えば足り、その休日労働が深夜(午後10時〜午前5時)に及んでも、さらに深夜分の割増賃金を加算する必要はない。
- ウ使用者は、1か月の時間外労働が60時間を超えた部分に係る割増賃金(法定割増率との差分50%−25%=25%相当分)について、労働者の請求があれば代替休暇を付与することで全額免除することができる。
- エ法定時間外労働が深夜(午後10時〜午前5時)の時間帯に及んだ場合、時間外割増25%と深夜割増25%がそれぞれ課されるため、合計60%以上の割増賃金が必要となる。
- オ法定休日労働と法定外休日(会社が任意に設けた休日)の労働はどちらも同じ割増率35%が適用され、区別する必要はない。
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正答はア(正しい記述)です。
労働基準法第37条は、法定時間外労働に対して通常の賃金の25%以上の割増賃金を義務付けています。さらに1か月の時間外労働が60時間を超えた部分については、50%以上の割増賃金が必要です。この月60時間超の規定は2023年4月から中小企業にも適用されており、全企業が対象です。
イは誤りで、休日労働(35%)が深夜に及んだ場合は深夜割増(25%)も加算し、合計60%以上が必要です。ウは誤りで、代替休暇は免除ではなく「割増賃金の支払いに代えて付与できる」ものです。エは数値が誤り(時間外25%+深夜25%=合計50%以上であり、60%以上ではない)。オは誤りで、法定外休日には35%の割増義務はありません(25%以上)。
割増賃金率の一覧(必須暗記):
| 労働の種類 | 割増率(最低) | 根拠 |
|---|---|---|
| 法定時間外(月60時間以内) | 25%以上 | 労基法第37条第1項 |
| 法定時間外(月60時間超の部分) | 50%以上 | 労基法第37条第1項但書 |
| 法定休日(週1日分・特定できる休日) | 35%以上 | 労基法第37条第1項 |
| 深夜(午後10時〜午前5時) | 25%以上 | 労基法第37条第4項 |
重複時の合算ルール(頻出):
- 法定時間外 + 深夜 → 25% + 25% = 50%以上(アの通り正しい)
- 法定休日 + 深夜 → 35% + 25% = 60%以上(イが誤りの根拠)
- 法定時間外(月60h超)+ 深夜 → 50% + 25% = 75%以上
各選択肢の解説:
- ア(正): 月60時間超の50%以上規定は2010年4月(大企業)・2023年4月(全企業統一)に施行。現在は中小企業も含め全事業場に適用されます。
- イ(誤): 法定休日に深夜労働を伴う場合、35%(休日割増)+25%(深夜割増)=60%以上が必要。深夜加算は休日かどうかに関係なく適用されます。
- ウ(誤): 代替休暇(労基法第37条第3項・施行規則第21条の2)は、月60h超分の「法定割増との差額分(25%相当)」を代替休暇で代替できる制度ですが、免除ではなく代替です。また労使協定の締結が必要で、労働者の請求のみでは足りません。
- エ(誤): 法定時間外+深夜の合算は25%+25%=50%以上が正解(月60h以内の場合)。エの「合計60%以上」は誤った数値。なお月60h超の時間外が深夜に及んだ場合は50%+25%=75%以上となるが、「合計60%以上」となる数値の組み合わせは法令上存在しない(35%+25%=60%は休日+深夜の組合せ)。
- オ(誤): 法定外休日(労働協約・就業規則で設けた休日)への割増義務は法定時間外と同じ25%以上(週の法定労働時間を超えた分として)。35%が必要な「法定休日」とは週1日以上与える義務のある休日(労基法第35条)を指します。
【割増賃金制度の立法趣旨と条文構造】
労働基準法第37条は単なる計算ルールではなく、長時間労働の抑制と労働者への経済的補償という二重の目的を持つ規定です。使用者にコストを課すことで時間外労働の発生を経済的に抑制し、労働者には不利益に対する補償を与える設計です。
条文の構造(第37条):
- 第1項: 時間外・休日の割増賃金義務(25%以上・60h超50%以上・休日35%以上)
- 第2項: 時間外労働と休日労働の定義(算入するか否か)
- 第3項: 月60h超分の代替休暇制度(労使協定要件)
- 第4項: 深夜割増(25%以上)
【月60時間超割増率の改正経緯と中小企業への統一】
月60時間超の50%割増は2008年(平成20年)の労基法改正で導入され、大企業は2010年4月から施行されましたが、中小企業は長期間猶予されてきました(中小企業の経営負担への配慮)。この猶予が廃止され、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。社労士試験では「中小企業にも適用済み」という点が問われやすい改正ポイントです。
【代替休暇制度の詳細と誤解されやすいポイント】
代替休暇(労基法第37条第3項)の正確な理解が問われます:
1. 対象: 月60時間超の部分に係る割増賃金のうち、法定割増率との差分部分(50%−25%=25%相当)のみ。25%部分(基本の割増賃金)は必ず支払わなければならない。
2. 要件: ①労使協定の締結(就業規則への定めだけでは不足)、②労働者本人が代替休暇の取得を選択することが必要(使用者の指示や強制は不可)。
3. 付与期間: 代替休暇は当該月の時間外労働があった翌月末日までの間に与えることが原則。
4. 未消化の扱い: 労働者が代替休暇を取得しない場合、使用者は差額分(25%相当)の割増賃金を支払わなければならない。
【「法定休日」と「法定外休日」の実務的区分】
「法定休日」と「法定外休日」の混同は試験の頻出ひっかけです:
- 法定休日: 労基法第35条が義務付ける「毎週少なくとも1回」または「4週4日」の休日。この日の労働は35%割増必須。なお法定休日の時間外労働(所定時間超え)には月60時間超のカウントは含まれない(時間外と休日の区別)。
- 法定外休日(所定休日): 法定を超えて就業規則等で設けた休日(例: 週2日制の土曜日)。この日の労働が週40時間の上限を超えた部分は時間外労働として25%割増(月60h超は50%)の対象。35%割増は不要。
【深夜割増の適用範囲と注意点】
深夜(午後10時〜翌午前5時)の労働は、業務の種類・法定外時間かどうかを問わず、すべてに25%の深夜割増が課されます。これは時間外割増・休日割増との独立した規定(第37条第4項)であるため、それぞれを加算します。ただし「時間外+深夜+月60h超」という三重重複の計算は実務でも複雑になるため、条文の各根拠を区別して覚えることが試験対策上有効です。
【上位資格(労働法務・社労士実務)への接続】
特定社会保険労務士や労働訴訟の実務では、割増賃金の不払い(サービス残業)は民事上の未払い賃金請求(労基法第115条の賃金請求権消滅時効:旧法2年→改正後5年・経過措置で当分の間3年・2020年4月施行)に加え、行政上の是正勧告・司法上の告訴の対象となります。月60時間超の50%規定は、大企業では既に判例蓄積があり、「基礎算入すべき手当(通勤手当除外の妥当性・インセンティブ手当の算入等)」の計算基礎の問題と合わせて実務上の重要論点です。
【根拠】労働基準法第35条(休日)・第37条(割増賃金)・施行規則第21条の2(代替休暇)。2023年4月施行の中小企業への月60h超50%割増適用は法律本体の改正ではなく附則の猶予規定の廃止による。
<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser): 結果=労基法第37条の割増率(25%/50%/35%)、施行規則第21条の2(代替休暇)、2023年4月の中小企業猶予廃止はe-Gov・厚労省一次確認で正確。エの「合計50%以上」は数値として正しい記述だったため、選択肢の一意性を確保するためエの数値を「60%以上」に変更し誤肢化(実際の時間外+深夜の合算は50%以上で、60%以上は休日+深夜の組合せに該当するため別の誤りパターンとして機能)。労基法115条の消滅時効も「旧法2年→改正後5年・経過措置3年」(2020年4月施行)に正確化。一次ソース: 厚労省000617974.pdf。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)、労働基準法第60条の3(中小企業への月60時間超の適用猶予廃止・2023年4月施行)、労働基準法施行規則第21条の2(代替休暇) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。