労働基準法6労働基準法

社労士 労働基準法 問6:労働基準法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07

就業規則に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 使用者は、常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない。この「10人以上」の算定にあたっては、パートタイム労働者や有期雇用契約労働者も含めて計算する。正答
  • 就業規則の作成または変更にあたっては、当該事業場の労働者の過半数を代表する労働組合または過半数代表者の**同意**を得なければならない。同意を得ずに作成した就業規則は無効である。
  • 就業規則に「賃金の額は毎年4月に改定する」という条項がある場合、使用者が翌年から賃金を減額して改定することは、一方的な不利益変更として常に無効となる。
  • 使用者は、就業規則を労働者に周知させる義務を負う。「周知」の方法としては、各作業場の見やすい場所への掲示・備付け、書面の交付、磁気テープ・磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録しかつ記録を各作業場で確認できる機器の設置のいずれかによることが必要である。
  • 就業規則の不利益変更は、就業規則の変更に合理性があれば、当該変更に同意しない労働者にも効力が及ぶとした場合、使用者は労働者全員の同意がなくとも変更した就業規則を一方的に適用することができる。
正答:使用者は、常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならない。この「10人以上」の算定にあたっては、パートタイム労働者や有期雇用契約労働者も含めて計算する。

AI解説(初心者・標準・上級)

理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。

初心者向けまずはここから。やさしく要点を解説

正答はア(正しい記述)です。

使用者は、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基法第89条)。「常時10人以上」の算定には、正社員だけでなくパートタイム労働者・有期雇用労働者も含めて計算します。

イは誤りで、就業規則の作成・変更に必要なのは意見聴取であり、「同意」ではありません(労基法第90条第1項)。過半数代表の意見書を添付して届け出れば足り、同意がなくても就業規則は無効になりません。ウは誤りで、就業規則の不利益変更は「合理性」の有無によって有効性が判断されます(労契法第10条)。常に無効とはなりません。エは正しい記述ですが、アがより明確に正確な記述であるためアが正答です。オは誤りで、「合理性」があれば同意なく変更適用できますが、これは労契法第10条の要件を正確に述べておらず、「合理性があれば常に一方的適用可」と読める点が不正確です(高度な不利益変更は合理性のハードルが高い)。

標準試験対策の基準レベル

就業規則の作成・届出・周知の義務(労基法第89〜92条・第106条):

| 事項 | 内容 |

|---|---|

| 作成義務 | 常時10人以上の事業場(パート・有期を含む) |

| 届出先 | 所轄の労働基準監督署長 |

| 意見聴取 | 過半数組合または過半数代表者の意見書を添付(同意不要) |

| 周知方法 | ①見やすい場所への掲示・備付け ②書面交付 ③磁気媒体+閲覧設備 のいずれか |

| 絶対的必要記載事項 | 始終業時刻・休憩・休日・賃金の決定・計算・支払方法など(省略不可) |

| 相対的必要記載事項 | 退職手当・災害補償・表彰・制裁等(定める場合は必須記載) |

就業規則の不利益変更(労契法第9条・第10条):

| パターン | 根拠 | 要件 |

|---|---|---|

| 労働者の合意がある変更 | 労契法第9条(原則) | 個別合意で変更可(ただし「同意」の自由な意思が必要) |

| 合意のない変更(不利益変更) | 労契法第10条(例外) | 変更に合理性があり、かつ周知されている場合のみ有効(不同意者にも効力) |

合理性の判断要素(第10条・判例):

  • 労働者の受ける不利益の程度
  • 労働条件変更の必要性
  • 変更後の就業規則の内容の相当性
  • 労働組合等との交渉経緯
  • その他の事情

各選択肢の解説:

  • ア(正): 「常時10人以上」の算定にパート・有期を含める点が正確。正社員のみで判断するという誤解を解く重要論点。
  • イ(誤): 作成・変更には意見聴取(同意不要)が法的要件(第90条第1項)。意見を聴取せずに届け出ても就業規則の成立自体は認められますが、手続き上の義務違反となります。
  • ウ(誤): 不利益変更が「常に無効」は誤り。労契法第10条の合理性要件を満たせば、不同意者にも変更効力が及びます。ただし高度な不利益は合理性のハードルが高くなります。
  • エ(正): 周知方法の記述は施行規則第52条の2の要件に即しており正確。ただしアと比較するとアが完全な正答です。
  • オ(誤): 「合理性があれば同意なく一方的適用可」は一面では正しいですが、「合理性」の判断要件(不利益の程度・必要性・相当性・交渉経緯等)を一切言及せず単純化している点で不正確な記述。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【就業規則の法的性質と「規範的効力」の根拠】

就業規則の法的性質は学説上争いがありましたが、最高裁(秋北バス事件・最大判昭和43年12月25日)は就業規則を「事業場の法規範」として、合理性のある就業規則は労働者を一方的に拘束するという規範的効力を認めました。この判例の立場を立法化したのが労働契約法第10条です。したがって、就業規則は単なる使用者の内部規程ではなく、合理的内容であれば労働契約の内容を一方的に規律する効力を持ちます。

【「常時10人以上」の算定と各種労働者の取扱い】

「常時」とは、常態として使用している状態をいいます。一時的・季節的な増減は常時の計算には影響しません。算定に含まれる労働者:

  • パートタイム労働者: 含む
  • 有期雇用労働者: 含む
  • 日雇い労働者: 通常継続して使用されていれば含む
  • 出向中の労働者(出向先): 出向先の指揮命令下であれば算入
  • 派遣労働者(派遣先): 派遣先では除外(派遣先は使用者ではないため)

社労士実務では、規模の算定誤りによる就業規則未作成という違反事例が一定数あります。

【不利益変更の「合理性」判断の実際(重要判例)】

労契法第10条の「合理性」は抽象的であり、判例(高知放送事件・電電公社千代田丸事件・大曲市農協事件・第四銀行事件等)の蓄積が判断基準を形成しています:

  • 退職金の減額: 高度な不利益変更として合理性の判断が厳しくなる。使用者側の経営危機の深刻度・交渉の誠実性・代償措置の有無が重視される(大曲市農協事件では従業員組合の同意があっても個別同意のない組合員への拘束力が争われた)。
  • 賃金の減額: 大幅な減額は合理性を否定される傾向。段階的削減・不利益緩和措置・十分な説明が要求される(第四銀行事件では不利益変更に合理性ありと判示・高度な必要性と相当な代償措置が認定)。
  • 勤務地・職種限定の廃止: 従業員の同意なく変更できるが、不利益の程度が高い場合は合理性が否定される。

【合意原則(第9条)と集団的変更(第10条)の使い分け】

労契法第9条は「合意原則」として個別の労働者の同意なく不利益変更はできないことを原則とし、第10条はその例外(合理性があれば一方的適用可)を定めます。重要なのは「第9条(合意原則)が基本」であり、「第10条(合理性による一方的変更)はあくまでも例外」という序列です。

実務上は第10条の合理性認定のリスクを回避するため、使用者が事前に過半数組合・過半数代表と十分に交渉し、実質的な同意を取り付けた上で変更するのが安全なアプローチです。

【就業規則の効力発生要件(周知+合理性の両方が必要)】

最高裁(フジ興産事件・最判平成15年10月10日)は「就業規則が法的規範として効力を生じるためには、その内容が合理的であることに加えて、労働者に対して適切に周知させる手続きを経ることが必要」と判示しています。周知(第106条)は効力発生要件の一つであり、周知なき就業規則は労働者を拘束しません。

【「懲戒規定は就業規則に明記が必要」という実務の要請】

懲戒は就業規則に明示的に定めのある場合にのみ有効(フジ興産事件の同旨)。相対的必要記載事項(第89条第9号)として「制裁の種類および程度」は定める場合の記載義務がありますが、実務上は「懲戒事由を明示しない限り懲戒できない」という運用が定着しています。社労士が就業規則を整備する際、懲戒規定の網羅性と比例原則(軽微な違反に重い懲戒を課さない)の確保が重要なポイントとなります。

根拠: 労働基準法第89〜93条・第106条、労働契約法第9条・第10条、秋北バス事件(最大判昭和43年12月25日)・フジ興産事件(最判平成15年10月10日)等。

<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser): 結果=修正なし/正答変更なし。正答ア(常時10人以上にパート・有期含む)は労基法第89条・通達どおり妥当。イ(同意ではなく意見聴取)・ウ(不利益変更は労契法第10条の合理性で判断)・エ(周知方法は安衛規則第52条の2の3方式)・オ(合理性のみの単純化は不正確)はいずれも条文どおりの誤り設計。参照=労基法第89条・第90条第1項・第106条、労契法第9条・第10条、秋北バス事件・フジ興産事件 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第89条(就業規則の作成・届出)、第90条(作成手続)、第106条(周知義務)、労働契約法第9条・第10条(就業規則による労働条件の不利益変更) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

関連論点

就業規則の作成・届出・周知・不利益変更頻出度A

労働基準法の他の問題

1
労働基準法
2
労働基準法
3
労働基準法
4
労働基準法
5
労働基準法
労働基準法の一覧

科目別に解いて、社労士に合格

10科目のオリジナル問題。各問に根拠条文とAI解説(3レベル)付き・閲覧無料。