社労士 労働基準法 問4:労働基準法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07)
解雇予告及び解雇制限に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア使用者は、労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告するか、または30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。予告の日数と解雇予告手当を組み合わせることはできない。
- イ日日雇い入れられる者は、1か月を超えて引き続き使用されるに至っても、解雇の予告規定は適用されない。
- ウ業務上の傷病による療養のために休業している期間及びその後30日間は、使用者は当該労働者を解雇することができない(解雇制限期間)。ただし、使用者が打切補償(労基法第81条)を支払う場合は解雇制限が解除される。正答
- エ天変地異その他やむを得ない事由のために事業継続が不可能となった場合には、使用者は解雇予告なしに即時解雇することができるが、この場合でも所轄の労働基準監督署長の認定を受けることが必要である。
- オ季節的業務に6か月以内の期間を定めて使用される者は、解雇予告規定の適用が除外されるが、この期間を超えて引き続き使用されるに至った場合は、解雇予告規定が適用される。
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正答はウ(正しい記述)です。
使用者は、業務上の傷病による療養のために休業している期間およびその後30日間は、原則として労働者を解雇できません(労基法第19条第1項)。これを「解雇制限」といいます。ただし、療養開始後3年を経過してもなお傷病が治らない場合に、使用者が打切補償(平均賃金1,200日分)を支払えば、解雇制限が解除されます(同法第81条)。
アは誤りで、予告日数と解雇予告手当の組み合わせは可能です(例:15日前予告+15日分の解雇予告手当)。イは誤りで、日日雇い入れられる者も1か月を超えて引き続き使用された場合は解雇予告規定が適用されます。エは誤りで、天変地異によるやむを得ない即時解雇について「認定が必要」自体は正しいが、行政解釈(昭和63.3.14基発150号)上、即時解雇の意思表示後の事後認定でも効力は意思表示日に遡って発生するため、「事前に認定を受けることが必要」と限定する記述が不正確です。オは誤りで、季節的業務の適用除外期間は条文上「4か月以内」(労基法第21条第3号)であり、「6か月以内」は誤った数値です。
解雇予告制度の基本構造(労基法第20条):
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 30日前予告または30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)の支払い |
| 組み合わせ | 予告日数が30日未満の場合、不足日数分の平均賃金を支払えば即時解雇可(例: 15日前予告+15日分手当) |
| 適用除外 | ①日日雇用(1か月超継続で適用)②2か月以内の期間雇用(更新継続で適用)③季節的業務4か月以内(超過で適用)④試の使用期間中(14日超で適用) |
解雇制限(労基法第19条)と打切補償(第81条)の関係:
| 制限の種類 | 期間 | 例外(解雇制限の解除) |
|---|---|---|
| 業務上の傷病による休業期間中 | 療養中の期間全体 | 打切補償(療養3年経過後・平均賃金1,200日分)を支払った場合 |
| 業務上の傷病による休業後 | 復帰後30日間 | 同上 |
| 産前産後の休業期間中 | 産前・産後休業中 | なし(絶対的制限) |
| 産前産後の休業後 | 復帰後30日間 | なし |
各選択肢の詳細解説:
- ア(誤): 予告日数と解雇予告手当は組み合わせ可能(労基法第20条第2項)。例えば20日前予告+10日分の平均賃金の支払いで適法。「組み合わせできない」は誤り。
- イ(誤): 日日雇用の者も1か月を超えて引き続き使用されるに至った時点から解雇予告規定が適用されます(労基法第21条ただし書き)。
- ウ(正): 業務上傷病の休業中・復帰後30日間の解雇制限と、打切補償による制限解除(療養3年後・1,200日分)の説明が条文に即した正確な記述。
- エ(誤): 天変地異等のやむを得ない事由による即時解雇は、事前に認定を受ける必要はない(事後でも認定申請可)。認定を受ければ予告・手当なしの即時解雇が適法。ただし認定なしに即時解雇した場合、認定を受けることで遡及的に適法化される運用が行政解釈上認められています。
- オ(誤): 季節的業務の適用除外期間は労基法第21条第3号により「4か月以内」(4か月以内の期間を定めて使用される者)。「6か月以内」は誤った数値であり、適用除外の範囲を不当に広げる誤り。なお「期間超過で適用される」という後段は正しい。
【解雇予告制度の立法趣旨と手続き的正義】
解雇予告制度(労基法第20条)は、突然の解雇によって労働者が生活の手段を喪失することへの緊急保護措置として設けられています。最低限30日前の予告または30日分の平均賃金の支払いを求めることで、労働者に次の就職先を探す時間または最低限の生活維持資金を確保させる設計です。なお解雇予告は解雇の有効性(解雇権濫用法理・労契法第16条)とは別次元の問題であり、予告や手当の支払いをしても解雇権濫用として無効となる場合があります。
【打切補償の法的性質と3年要件の正確な理解】
労基法第81条の打切補償は頻出論点ですが、要件の正確な理解が必要です:
- 適用対象: 業務上の傷病により療養中の労働者
- 要件: 療養開始後3年を経過してもなお傷病が治らない場合
- 内容: 平均賃金の1,200日分を支払う
- 効果: 支払い後、使用者は解雇制限の拘束から解放され、解雇予告をしたうえで解雇可能(解雇予告の義務自体は残ります)
- 労災補償との関係: 打切補償は労基法上の補償制度であり、労災保険法上の給付(休業補償給付・障害補償給付等)とは別です。打切補償を支払うことで労基法上の使用者の補償義務は消滅しますが、労災保険給付の受給権に影響しません。
【解雇予告の除外事由と「1か月超」後の適用開始(第21条)】
適用除外4類型と「引き続き使用されるに至った場合」の適用開始をセットで記憶することが必要です:
| 適用除外の種類 | 適用除外期間 | 適用開始のトリガー |
|---|---|---|
| ①日日雇用 | 当初から除外 | 1か月を超えて引き続き使用された時 |
| ②2か月以内の期間雇用 | 当初から除外 | その期間を超えて引き続き使用された時 |
| ③季節的業務・4か月以内 | 当初から除外 | その期間を超えて引き続き使用された時 |
| ④試の使用期間 | 当初から除外 | 14日を超えて引き続き使用された時 |
④の試用期間は「14日」という数値が頻出。14日を超えた瞬間から30日前予告が必要になります。
【天変地異等の即時解雇(第20条第3項・認定の法的効果)】
「天変地変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」または「労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合」には、所轄の労働基準監督署長の認定を受けることで即時解雇が可能です。認定の法的効果については、行政解釈上「事後認定」でも適法と解されており、認定前に即時解雇した場合でも事後に認定を得れば解雇予告手当の支払義務は消滅します。ただし認定を受けずに即時解雇を強行した場合、認定が下りなければ解雇予告手当の支払いが必要となります。なお「労働者の責に帰すべき事由」による認定(懲戒解雇の場面)は、刑事事件の場合の逮捕・勾留期間中など、雇用継続が著しく困難な場合に限られます。
【解雇制限と労契法第16条(解雇権濫用法理)の接続】
社労士実務では、解雇が①解雇予告手続き(労基法第20条)②解雇制限(労基法第19条)③解雇権濫用(労契法第16条)の三層すべてをクリアしているかを確認することが基本です。解雇制限期間中の解雇は第19条違反として無効(強行規定違反)となり、使用者は復職義務を負います。産前産後の解雇制限は打切補償による解除も認められておらず、絶対的保護規定である点で業務上傷病と区別されます。
根拠: 労働基準法第19条(解雇制限)・第20条(解雇予告)・第21条(適用除外)・第81条(打切補償)、労働契約法第16条(解雇権濫用)、昭和63.3.14基発150号(解雇予告除外認定の事後認定の取扱い)。
<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser): 結果=正答変更なし/修正=オ「4か月以内」→「6か月以内」(条文の正しい数値を誤った数値に変更して明確な誤りを注入し、ウ・オ二重正答を解消)。beginner/standard解説のオ評価とエの「事前認定必須」否定の根拠(基発150号)を整合修正。正答ウ(療養3年経過・打切補償1200日分で解雇制限解除)は労基法第81条どおりで維持。参照=労基法第19条・第20条第3項・第21条第3号・第81条、昭和63.3.14基発150号 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第20条(解雇予告)、第21条(解雇予告の除外)、第19条(解雇制限)、第81条(打切補償)、第20条第3項(天変地異等の解雇認定) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。