問題
賃金の支払方法に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はオ(誤っている記述)です。
労働基準法第27条は、出来高払制その他の請負制で賃金を定める場合、使用者は労働時間に応じた一定額の賃金(保障給)を保障しなければならないと定めています。したがって、実際の成果が少なく賃金が低くなる場合でも、使用者は一定の保障給を支払う義務があります。「最低賃金を上回っていれば補填義務なし」というオの記述は誤りです。
アは正しく、賃金のデジタル払い(2023年4月解禁)を含む通貨払い原則と例外を正確に述べています。イは正しく、直接払い原則の内容であり、使者(使いの者)による受領は可ですが、代理人への支払いは禁止されています。ウは正しく、全額払い原則と労使協定または法令による控除の例外を正確に述べています。エは正しく、臨時的賃金・賞与には毎月1回以上・一定期日の適用がないことを正確に述べています。
賃金支払の5原則(労基法第24条)一覧:
| 原則 | 内容 | 例外 |
|---|---|---|
| ①通貨払い | 日本円(通貨)で支払う | 法令・労働協約に定めあり、または厚生労働省令で定める確実な支払方法(口座振込・デジタル払い等。労働者の同意が必要) |
| ②直接払い | 労働者本人に直接支払う | 使者への支払は可と解されている。親権者等の法定代理人・任意代理人への支払は不可 |
| ③全額払い | 賃金の全額を支払う | 法令による控除(所得税・社会保険料等)、労使協定による控除(購買代金・宿舎料等) |
| ④毎月1回以上払い | 少なくとも月1回支払う | 臨時賃金・賞与・1か月を超える期間の算定賃金は除く |
| ⑤一定期日払い | 一定の期日を設けて支払う | 同上 |
出来高払制の保障給(労基法第27条)の論点:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 趣旨 | 出来高払いでは実績次第で賃金ゼロになる危険があるため、労働時間に応じた最低保障を義務化 |
| 要件 | 「労働時間に応じた一定額の賃金」(保障給)を支払うこと |
| 水準 | 条文上の数値はない。労働時間に応じた保障であることが必要で、最低賃金とは別の義務 |
| 違反 | 保障給なしに実績ゼロ賃金を支払うことは労基法第27条違反 |
各選択肢の詳細解説:
- ア(正): 賃金のデジタル払い(2023年4月解禁)は、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者を通じた支払いで、上限額(現時点100万円)等の要件あり。通貨払い原則の例外として位置付け。
- イ(正): 直接払いの原則。未成年者の賃金を親権者に支払うことも禁止(労基法第59条と連動)。使者(本人の依頼を受けた者)への交付は「直接」の実質を満たすと解される。
- ウ(正): 全額払い原則と労使協定による控除の例外(法第24条第1項ただし書き)。使用者が損害賠償請求権を自働債権として賃金と一方的に相殺することは全額払原則に反し許されない(関西精機事件・最判昭和31年11月2日)。
- エ(正): 毎月・期日払いの例外は「臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金」(第24条第2項ただし書)。省令(施行規則第8条)は1か月を超える期間の出勤成績による精勤手当・勤続手当・奨励加給又は能率手当を定める。
- オ(誤・正答): 法第27条違反。出来高払いでも保障給は必要。「最低賃金を上回れば補填不要」というのは誤りで、保障給は最低賃金とは別の義務です。
【賃金支払5原則の立法趣旨と各原則の関係性】
賃金は労働者の生活の糧であり、その安定的・確実な受領を保障することが5原則の根本にあります。戦前の「前借金・身売り」「現物支給・会社店舗での購買強制」等の搾取的慣行を排除するために、通貨払い・直接払い・全額払いが法定されました。毎月1回以上・一定期日払いは生活設計上の予測可能性を保障するものです。
【全額払い原則と相殺禁止の判例法理】
全額払い原則(第24条第1項)の核心は、使用者が一方的に賃金から控除・相殺することを禁止する点にあります。重要判例の整理:
- 関西精機事件(最判昭和31年11月2日): 使用者が労働者に対する損害賠償請求権をもって賃金と相殺することは、全額払原則に反し許されない。「使用者の一方的な相殺」は不可。
- 日新製鋼事件(最判平成2年11月26日): 労働者の同意を得て行う相殺は、その同意が労働者の自由な意思に基づくと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するときは、全額払原則に反しない。「自由な意思」は厳格に判断される。
- 福岡県教組事件(最判昭和50年3月6日): 過払賃金の清算のための調整的相殺は、過払のあった時期と合理的に接着した時期に行われ、労働者の経済生活の安定をおびやかすおそれのない場合には、全額払原則に反しない。
社労士試験では「相殺が全額払い原則に反するか」という判例ベースの問いが頻出です。
【出来高払制の保障給(第27条)の実務的意義】
第27条の保障給は「労働時間に応じ一定額の賃金の保障」を義務付けますが、「一定額」の具体的水準は条文上明示されていません。条文上のポイントは、保障が労働時間に応じたものであること(労働時間に関係なく一律の額を定めるだけでは足りない)と、最低賃金法の最低賃金とは別の義務であることです。
- 実務上の重要場面: 営業員の歩合給制度などで、実績が少ない月に賃金が極端に低くなることを防ぐ設計が求められます。
【賃金のデジタル払い(2023年4月解禁)の詳細】
通貨払い原則の例外として2023年4月から認められた賃金のデジタル払い(資金移動業者の口座への支払い。施行規則第7条の2第1項第3号)は、以下の要件を充たす場合に限られます:
1. 労働者の同意: 労働者の同意を得た場合に限られる(同項柱書)。
2. 厚生労働大臣の指定: 受け取り先は厚生労働大臣が指定した資金移動業者。
3. 口座残高の上限: 口座の残高が100万円を超えないようにする措置、または超えた場合に速やかに100万円以下にする措置が講じられていること。
4. 保証・換金性: 破綻時に口座残高の全額を速やかに弁済する保証の仕組みや、現金で払い出せる仕組みがあること。
試験では「デジタル払いを本人の同意なく会社が一方的に導入できるか(→できない)」「指定なき業者への振込で代替できるか(→できない)」が問われる可能性があります。
【5原則違反のサンクションと特別法との関係】
5原則違反は、いずれも労基法第120条の30万円以下の罰金(通貨払い・直接払い・全額払い・毎月1回以上・一定期日払いのいずれも第24条違反として第120条適用)の対象です。また全額払い違反の場合、労働者は未払賃金を民事上請求でき、消滅時効(経過措置として当分の間3年)の範囲内で遡及的に請求可能です。最低賃金法との関係では、出来高払制の賃金であっても実際に支払う賃金が最低賃金額を下回れば、最低賃金法第4条により最低賃金額以上の支払が必要で(下回る部分の定めは無効)、地域別最低賃金の違反には同法第40条の罰則(50万円以下の罰金)があります。第27条の保障給とは別の義務として両方を満たす必要があります。
根拠: 労働基準法第24条(賃金支払方法)・第27条(出来高払制保障給)・第59条(未成年者の賃金)・第120条(罰則)、最低賃金法第4条(最低賃金の効力)。
- 労働基準法第27条・第24条・第59条・第120条の30e-Govで原文を読む
- 最低賃金法第4条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第24条(賃金の支払方法)、同法第27条(出来高払制の保障給)、最低賃金法 数値根拠: 本問は数値依存なし(条文の要件・例外規定が論点)。 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

