労働基準法5労働基準法

社労士 労働基準法 問5:労働基準法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07

賃金の支払方法に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 賃金は、通貨で支払わなければならないが、法令または労働協約に別段の定めがある場合、あるいは厚生労働省令で定める賃金のデジタル払い要件を満たす場合には、通貨以外の方法で支払うことができる。
  • 賃金は、直接労働者本人に支払わなければならず、親権者その他の法定代理人に支払うことも、賃金の受領を他人に委任することも原則として認められない。
  • 賃金は、その全額を労働者に支払わなければならないため、使用者が労働者に対して損害賠償請求権を有する場合であっても、その額を賃金から一方的に控除することはできない。ただし、法令に別段の定めがある場合または当該事業場の労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合には、控除することができる。
  • 賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならないが、臨時に支払われる賃金・賞与その他これに準ずるものについては、この規定の適用がない。
  • 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、仮に労働者が実際に行った労働の成果が少なく賃金が低額となる場合にも、その賃金が最低賃金額を上回っていれば使用者が補填をする義務はない。正答
正答:出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、仮に労働者が実際に行った労働の成果が少なく賃金が低額となる場合にも、その賃金が最低賃金額を上回っていれば使用者が補填をする義務はない。

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正答はオ(誤っている記述)です。

労働基準法第27条は、出来高払制その他の請負制で賃金を定める場合、使用者は労働時間に応じた一定額の賃金(保障給)を保障しなければならないと定めています。したがって、実際の成果が少なく賃金が低くなる場合でも、使用者は一定の保障給を支払う義務があります。「最低賃金を上回っていれば補填義務なし」というオの記述は誤りです。

アは正しく、賃金のデジタル払い(2023年4月解禁)を含む通貨払い原則と例外を正確に述べています。イは正しく、直接払い原則の内容であり、使者(使いの者)による受領は可ですが、代理人への支払いは禁止されています。ウは正しく、全額払い原則と労使協定または法令による控除の例外を正確に述べています。エは正しく、臨時的賃金・賞与には毎月1回以上・一定期日の適用がないことを正確に述べています。

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賃金支払の5原則(労基法第24条)一覧:

| 原則 | 内容 | 例外 |

|---|---|---|

| ①通貨払い | 日本円(通貨)で支払う | 法令・労働協約に定めあり、または厚生省令指定の決済サービス(デジタル払い) |

| ②直接払い | 労働者本人に直接支払う | 使者(本人の意思による代理)は可。成年後見等の法定代理は例外的に認められる場合あり |

| ③全額払い | 賃金の全額を支払う | 法令による控除(所得税・社会保険料等)、労使協定による控除(購買代金・宿舎料等) |

| ④毎月1回以上払い | 少なくとも月1回支払う | 臨時賃金・賞与・1か月を超える期間の算定賃金は除く |

| ⑤一定期日払い | 一定の期日を設けて支払う | 同上 |

出来高払制の保障給(労基法第27条)の論点:

| 項目 | 内容 |

|---|---|

| 趣旨 | 出来高払いでは実績次第で賃金ゼロになる危険があるため、労働時間に応じた最低保障を義務化 |

| 要件 | 「労働時間に応じた一定額の賃金」(保障給)を支払うこと |

| 水準 | 最低賃金以上かつ通常の出来高を下回らない合理的な水準が必要(行政解釈) |

| 違反 | 保障給なしに実績ゼロ賃金を支払うことは労基法第27条違反 |

各選択肢の詳細解説:

  • ア(正): 賃金のデジタル払い(2023年4月解禁)は、厚生労働大臣の指定を受けた資金移動業者を通じた支払いで、上限額(現時点100万円)等の要件あり。通貨払い原則の例外として位置付け。
  • イ(正): 直接払いの原則。未成年者の賃金を親権者に支払うことも禁止(労基法第59条と連動)。使者(本人の依頼を受けた者)への交付は「直接」の実質を満たすと解される。
  • ウ(正): 全額払い原則と労使協定による控除の例外(法第24条第1項ただし書き)。損害賠償請求権との相殺は判例(昭電事件・最判昭和36年5月31日)で禁止されている。
  • エ(正): 毎月・期日払いの例外は「臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもの、または1か月を超える期間についての精算賃金」(施行規則第8条)。
  • オ(誤・正答): 法第27条違反。出来高払いでも保障給は必要。「最低賃金を上回れば補填不要」というのは誤りで、保障給は最低賃金とは別の義務です。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【賃金支払5原則の立法趣旨と各原則の関係性】

賃金は労働者の生活の糧であり、その安定的・確実な受領を保障することが5原則の根本にあります。戦前の「前借金・身売り」「現物支給・会社店舗での購買強制」等の搾取的慣行を排除するために、通貨払い・直接払い・全額払いが法定されました。毎月1回以上・一定期日払いは生活設計上の予測可能性を保障するものです。

【全額払い原則と相殺禁止の判例法理】

全額払い原則(第24条第1項)の核心は、使用者が一方的に賃金から控除・相殺することを禁止する点にあります。重要判例の整理:

  • 昭電事件(最判昭和36年5月31日): 使用者の労働者に対する損害賠償請求権と賃金の相殺は、労働者が自由な意思に基づいて同意した場合を除き、全額払い原則に違反して無効。「使用者の一方的な相殺」は不可。
  • 日新製鋼事件(最判平成2年11月26日): 労働者が自由な意思に基づいて行った相殺合意は有効(労働者側から申し出た相殺は可)。ただし「自由な意思」は厳格に解され、退職時の精算等で事実上強制された合意は認められない場合がある。
  • 関西精機事件(最判昭和44年12月18日): 過払い賃金の返還請求権との相殺について、近接する時期(同一賃金支払期)の過払いの清算的相殺は全額払い原則に反しないと判示。

社労士試験では「相殺が全額払い原則に反するか」という判例ベースの問いが頻出です。

【出来高払制の保障給(第27条)の実務的意義】

第27条の保障給は「労働時間に応じた一定額の賃金」を義務付けますが、「一定額」の具体的水準については条文上の明示がなく、行政解釈と判例が基準を示しています:

  • 行政解釈: 「通常の実績を下回らない合理的な水準」かつ「最低賃金以上」であることが必要。また保障給は労働時間を基礎として計算されることが要件(時間に比例しない固定額は保障給として認められない場合がある)。
  • 実務上の重要場面: ①営業員の歩合給制度での月収ゼロを防ぐ設計、②宅配ドライバーの個人事業主委託と労働者性の境界(保障給義務があれば実質的に労働者性あり)。フリーランス保護法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)との連動でこの論点が今後拡大する可能性があります。

【賃金のデジタル払い(2023年4月解禁)の詳細】

通貨払い原則の例外として2023年4月から解禁された賃金のデジタル払い(PayPayやd払い等の資金移動業者口座への支払い)は、以下の要件を充たす場合に限られます:

1. 労働者の同意: 同意は任意であり、強制または事実上の強制は不可。

2. 厚生労働大臣の指定: 受け取り先は厚生労働大臣が指定した資金移動業者(現金引出し可能・残高保証がある者)。

3. 上限額: 1つの口座あたり100万円(現行規制、逐次見直し予定)。

4. 換金性: 受け取った残高をATM等で現金に換えられる仕組みが必要。

この制度は導入企業が増加中であり、社労士の実務相談ニーズとしても増えています。試験では「デジタル払いを本人の同意なく会社が一方的に導入できるか(→できない)」「指定なき業者への振込で代替できるか(→できない)」が問われる可能性があります。

【5原則違反のサンクションと特別法との関係】

5原則違反は、いずれも労基法第120条の30万円以下の罰金(通貨払い・直接払い・全額払い・毎月1回以上・一定期日払いのいずれも第24条違反として第120条適用)の対象です。また全額払い違反の場合、労働者は未払賃金を民事上請求でき、消滅時効(経過措置として当分の間3年)の範囲内で遡及的に請求可能です。最低賃金法との関係では、出来高払いの保障給が最低賃金を下回る場合、最低賃金法違反(差額請求・罰則は50万円以下の罰金)も同時に成立します。

根拠: 労働基準法第24条(賃金支払方法)・第27条(出来高払制保障給)・第59条(未成年者の賃金)・第120条(罰則)、最低賃金法第6条。

<!-- 監修確定 2026-06-07(legal-reviser): 結果=修正なし/正答変更なし。正答オ(出来高払いでも保障給は最賃とは別に労働時間に応じた一定額の保障給を支払う義務)は労基法第27条どおり妥当(実務目安は平均賃金の6割程度)。ア(賃金デジタル払い2023年4月解禁)・イ(直接払い)・ウ(全額払い・労使協定)・エ(毎月1回・一定期日・賞与/臨時除外)はいずれも条文どおり。参照=労基法第24条・第27条、デジタル払いは厚労省「資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)」 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働基準法第24条(賃金の支払方法)、同法第27条(出来高払制の保障給)、最低賃金法 数値根拠: 本問は数値依存なし(条文の要件・例外規定が論点)。 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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