問題
高齢者の医療の確保に関する法律(高齢者医療確保法)に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はオ(誤っている記述)です。
生活保護受給者は、生活保護法により「医療扶助」として医療費が給付されるため、後期高齢者医療制度の適用除外とされています。75歳に到達した生活保護受給者であっても、自動的に後期高齢者医療制度の被保険者となることはなく、引き続き医療扶助が適用されます(高齢者医療確保法第51条)。
ア・イ・ウ・エはいずれも正しい記述です。特に「被保険者は75歳以上」「保険者は広域連合」「費用は保険料約1割・支援金約4割・公費約5割」「前期高齢者の財政調整は保険者間で行われる」という基本構造は必ず確認しておきましょう。
後期高齢者医療制度の基本構造(最重要の整理):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 被保険者 | ①75歳以上の者(住所地の広域連合区域内) ②65歳以上75歳未満で一定障害の認定を受けた者 |
| 適用除外 | 生活保護を受けている世帯(保護停止中の世帯を除く)に属する者(法第51条第1号)・その他特別の理由がある者で厚生労働省令で定めるもの(同条第2号) |
| 保険者 | 都道府県単位の後期高齢者医療広域連合(全市町村加入) |
| 市町村の役割 | 保険料徴収事務・申請受付・窓口業務(実施機関として機能) |
| 保険料徴収 | 老齢等年金給付(老齢・障害・死亡を支給事由とする年金で政令で定めるもの=法第107条第2項)からの特別徴収が基本(年額18万円以上の年金受給者。介護保険法第134条・同法施行令第41条の基準を準用)。年額18万円未満の場合などは普通徴収 |
費用負担の3区分(エの根拠):
| 区分 | 負担割合(概数) | 内容 |
|---|---|---|
| 保険料 | 約10% | 後期高齢者本人が負担 |
| 後期高齢者支援金 | 約40% | 被用者保険・国保の各保険者が拠出(現役世代の負担・被用者保険者間は総報酬割) |
| 公費 | 約50% | 国・都道府県・市町村が分担 |
前期高齢者財政調整(ウの根拠):
- 前期高齢者(65〜74歳)は健保・国保・共済に分散して加入
- 国保には定年退職後の高齢者が多く集中→ 保険者間の財政力格差が生じる
- 各保険者の前期高齢者比率に応じて「前期高齢者交付金(受取)」「前期高齢者納付金(拠出)」で財政調整
- 国保は前期高齢者比率が高い → 交付金の受取側になる傾向(健保組合・協会けんぽは拠出側)
選択肢オの誤りの核心:
- 生活保護を受けている世帯(保護を停止されている世帯を除く)に属する者は「医療扶助」制度の対象 → 後期高齢者医療制度の被保険者から適用除外(法第51条第1号)
- 75歳到達後も「医療扶助」が継続し、後期高齢者医療保険への移行は生じない
【後期高齢者医療制度の成立背景と「老人保健制度」からの転換】
後期高齢者医療制度は2008年(平成20年)4月に施行されました。前身の「老人保健制度」(1983年〜)が財政的に行き詰まった状況を受けて創設されたものです。老人保健制度は「75歳以上の高齢者医療費を各保険者が拠出金で支える」仕組みでしたが、高齢化の進行とともに拠出負担が増大し、被用者保険と国保の財政格差も拡大しました。
高齢者医療確保法は「団塊の世代」が後期高齢者(75歳)に達する2025年問題(2025年以降に急増する後期高齢者数)を念頭に、①保険者の独立・責任の明確化(広域連合による一体管理)②被保険者自身の保険料負担の明確化(保険料=約10%)③世代間の費用分担の透明化(支援金と公費の明示的分離)という3点を核として設計されました。
【生活保護受給者が適用除外となる理由(制度の整合性)】
生活保護制度における「医療扶助」は生活保護法第15条に規定される現物給付(医療費の全額公費負担)です。後期高齢者医療制度に加入すると「医療費の一部を保険料として負担する義務が生じる」ため、保険料負担能力のない生活保護受給者を被保険者に含めることは制度の整合性に反します。このため高齢者医療確保法第51条は「生活保護法の規定による保護を受けている世帯に属する者」を被保険者から明示的に除外しています。
実務上の注意点:
- 生活保護受給者が75歳到達後に保護廃止となった場合は、その時点で後期高齢者医療制度の被保険者となる
- 在宅医療や入院中の保護受給者の医療費は、ケースワーカー(社会福祉事務所)が管轄する医療扶助で処理される
- 社労士試験では「生活保護受給者=適用除外」と「障害認定者(65〜74歳)=被保険者になれる」の対比が頻出
【後期高齢者支援金の「総報酬割」と財政問題】
後期高齢者支援金(約40%)は、当初「加入者数割」で負担していましたが、被用者保険者間では段階的に「総報酬割(加入者の総報酬額に応じた負担)」へ移行し、現在は全面総報酬割となっています。「加入者数に応じて負担する」という説明は現行制度では不正確です。
総報酬割への移行の意味:
- 大企業の健康保険組合(高報酬の被保険者が多い)→ 支援金負担増
- 中小企業の協会けんぽ(低報酬の被保険者が多い)→ 支援金負担減
- 国保 → 総報酬割は被用者保険者の間での按分方法であり、国保と被用者保険との間は引き続き加入者数に応じて按分される
この結果、大企業健保組合からは「現役世代の負担が過大」という批判が続いており、健保組合の財政悪化→解散(協会けんぽへの移行)という問題が社会保障審議会で議論されています。
【前期高齢者財政調整の仕組み】
前期高齢者(65〜74歳)の財政調整は「前期高齢者にかかる給付費を各保険者が加入者数に占める前期高齢者比率に応じて分担する」仕組みです(高確法第32条以下)。具体的には:
1. 全保険者の「前期高齢者加入率の全国平均」を基準値として設定
2. 加入率が基準を「上回る保険者」(主に市町村国保)→ 前期高齢者交付金を受け取る
3. 加入率が基準を「下回る保険者」(健保組合・協会けんぽ・共済組合など被用者保険の多く)→ 前期高齢者納付金を拠出する
前期高齢者の財政調整についても、被用者保険者間で報酬水準を考慮する見直しが行われています(具体的な内容・施行時期は本問の範囲外)。
【社労士・上位資格(FP・医療事務)への接続】
後期高齢者医療制度の窓口負担割合(原則1割・現役並み所得者3割・2022年10月から一定所得者2割)は医療費計算の実務に直結します。社労士は「従業員・家族が75歳になった場合の資格喪失手続き」「生活保護受給者の医療保険と医療扶助の適用判断」「75歳到達で健保・国保から後期高齢者医療へ移る際の被扶養者の手続(被保険者本人が後期高齢者医療に移ると、75歳未満の被扶養者は健保の被扶養者でなくなり国保等への加入が必要)」など、後期高齢者医療制度と他制度の境界を実務で扱います。75歳以上になれば任意継続被保険者を含め健保の被保険者でいることは選べません(健保法第3条第1項第7号)。FP資格では「医療費実費のシミュレーション・高額療養費・後期高齢者負担割合の変化」がライフプランニングの核となります。
- 高齢者の医療の確保に関する法律第51条・第32条e-Govで原文を読む
- 生活保護法第15条e-Govで原文を読む
- 介護保険法第134条e-Govで原文を読む
- 健康保険法第3条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 高齢者の医療の確保に関する法律第48条(後期高齢者医療広域連合)・第50条(被保険者)・第51条(適用除外・第1号 生活保護を受けている世帯に属する者)・第52条(資格取得の時期)・第32条以下(前期高齢者に係る保険者間の費用負担の調整) 統計・費用負担割合: 厚生労働省「後期高齢者医療制度の概要(令和8年度)」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/koukikourei/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

