賃管士 管理実務 問31:管理実務(リフォーム・改修)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10)
賃貸住宅のリフォームおよびDIYに関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア国土交通省は「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のほかに、賃借人によるDIYを可能にする「DIY型賃貸借に関する契約書式例および解説」を策定しており、これによりDIYを許可する賃貸借の仕組みが整備されている。
- イDIY型賃貸借特約では、賃借人が施工した改修については、退去時に原状回復義務を負わないとする「原状回復免除型」と、原状回復義務を負う「通常型」の2種類が一般的である。
- ウ賃借人が賃貸人の承諾なく建物の構造部分(壁・床・柱等)を改修した場合、当該改修は有益費(民法608条)として賃貸人に償還請求できる。したがって、無断改修であっても賃借人は費用の返還を受けられる。正答
- エ賃借人が賃貸借契約期間中に自費でエアコンを設置した場合、退去時に当該エアコンを取り外して持ち帰る権利(収去権)を有するが、原状回復の観点からエアコン設置により生じた壁の穴等は修繕義務を負う。
- オ空室対策として大規模リノベーションを実施する際は、建築基準法・消防法等の法令を遵守する必要があり、用途変更・構造変更等を伴う場合には確認申請が必要な場合がある。
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正答はウです。
賃借人が賃貸人の承諾なく構造部分を改修した場合、その工事は無断工事(契約違反)であり、有益費の償還請求は原則として認められません。有益費(民法608条)の償還請求は、賃貸人の承諾を得た改良工事に限られる、というのが原則的な解釈です。無断工事は「不法行為」として原状回復義務が生じる場合があり、むしろ賃借人が費用を支払う側になります。
ア・イ・エ・オはいずれも正しい記述です。DIY型賃貸借の仕組み・収去権・リノベーション時の建築確認申請はいずれも実務重要事項です。
有益費と無断改修の法的関係:
| 工事の種類 | 賃貸人の承諾 | 有益費償還請求 |
|---|---|---|
| 通常の改良工事(承諾あり) | あり | 原則可(民法608条2項)|
| DIY型特約に基づく工事 | あり(特約が承諾)| 特約で定めた通り |
| 無断改修 | なし | 原則不可(契約違反)|
DIY型賃貸借の2類型:
| 類型 | 退去時の原状回復 | 特徴 |
|---|---|---|
| 原状回復免除型 | 入居者施工部分は原状回復不要 | 次の入居者へのリノベーション資産として残す |
| 原状回復義務型 | 入居者施工部分を元に戻す | 元の状態に戻す義務あり(費用は入居者負担)|
各選択肢の解説:
- ウ(誤・正答): 無断改修は契約違反であり、有益費の償還請求権は通常認められない。賃貸人の承諾が有益費償還の前提条件(民法608条の解釈)。無断工事には原状回復義務が生じ、むしろ損害賠償を請求される場合もある。
- ア(正): 国交省は「DIY型賃貸借に関する契約書式例及び解説」を策定し、空室対策・長期入居促進の手段として普及を推進。
- イ(正): DIY型には原状回復免除型と原状回復義務型の2類型がある。
- エ(正): 賃借人が設置した付属物(エアコン等)の収去権は民法242条・243条(付合の法理)・598条(付属物の撤去)から認められる。設置時の穿孔等の修繕は賃借人義務。
- オ(正): 大規模リノベーション(構造・用途変更)は建築確認申請(建築基準法6条・87条)が必要な場合がある。
【リフォーム・改修実務の深層——DIY型賃貸借・有益費・必要費・大規模リノベーションの法令対応・空室対策としてのリノベの設計】
有益費と必要費の区別(民法608条):
賃借人が支出した費用の賃貸人への請求権:
| 費用の種類 | 定義 | 請求時期 | 賃貸人の権利 |
|---|---|---|---|
| 必要費(608条1項) | 目的物の維持・保存に必要な費用(雨漏り修理等)| 即時(支出後直ちに)| 選択不可 |
| 有益費(608条2項) | 目的物の価値を増加させる費用(増設・改良等)| 契約終了時 | 現価または支出額のいずれかを選択できる |
有益費の要件:
1. 賃貸人の承諾を得ていること(判例・通説の前提)
2. 目的物の価値が現に増加していること
3. 賃借人が費用を支出したこと
無断改修は①の要件を欠くため有益費として認められないのが原則です。ただし例外的に、賃貸人が無断改修の事実を知りながら長期間容認した場合(黙示の承諾)に有益費として認める判例もあります。
DIY型賃貸借の詳細(国交省契約書式例):
国交省が策定したDIY型賃貸借の仕組みは、空室の長期化・老朽化した物件の活性化を目的としています。主なポイント:
1. 事前協議・書面化: 賃借人が計画する工事内容をオーナーと事前協議し、書面で合意する
2. 工事費用の負担: 賃借人が全額負担(またはオーナーと分担を取決め)
3. 退去時の扱い: 原状回復免除型なら退去時にそのままでOK(次入居者へのリノベ資産化)
4. 工事の品質担保: 専門業者への発注を条件とする場合もある(無資格工事の禁止)
オーナー側のメリット:
- 入居者負担でリノベーションが進む(コスト削減)
- 入居者の愛着が増し長期入居につながる
- 空室物件を「自分好みにできる物件」として差別化
大規模リノベーション時の建築確認申請:
建築基準法第6条・第87条(用途変更)・第86条の6(大規模修繕等)により、以下の工事では確認申請が必要です:
| 工事の種類 | 申請の必要性 |
|---|---|
| 大規模な修繕(主要構造部の1/2超の修繕)| 必要(6条1項1〜3号建築物)|
| 大規模な模様替え | 必要(同上) |
| 用途変更(住宅→事務所等)| 必要(確認対象200㎡超)|
| 内装のみの改修 | 不要(構造・用途変更なし)|
| 増築(10㎡超・防火地域内)| 必要 |
管理業者はオーナーのリノベーション計画を受けた際、建築確認申請の要否を事前に確認し、必要な場合は専門家(建築士)への相談を勧めることが善管注意義務の一環です。
空室対策としてのリノベーション戦略:
| 戦略 | 内容 | 投資回収期間の目安 |
|---|---|---|
| プチリノベ(クロス・設備交換)| 30〜100万円 | 1〜3年 |
| フルリノベ(水回り・LDK改修)| 200〜500万円 | 5〜10年 |
| コンセプトリノベ(ペット可・DIY可)| 50〜200万円 | 2〜5年 |
| バリアフリー改修 | 100〜300万円 | 補助金活用で短縮 |
リノベーション前後の賃料・入居率の変化を試算し、投資対効果をオーナーに提示することが管理業者の付加価値サービスとなります。国交省の「高齢者向け改修費補助」・地方自治体の「空き家・空室改修補助」等の活用も案内できます。
収去権(民法617条の2の解釈):
賃借人が契約期間中に設置した造作物(エアコン・棚・照明等)の撤去権(収去権)は民法から認められます。ただし:
- 壁・床・天井等に不可逆的な工事(釘打ち・穿孔等)をした場合、その痕跡の修繕は原状回復義務の範囲内
- 付合(民法242条)が成立する固定的な工事(フローリング張り等)は収去できない場合あり
- 造作買取請求権(借地借家法33条)は、賃貸人の同意を得た造作に限り認められる
<!-- 独自性ログ: 民法608条・民法242条・借地借家法33条・建築基準法6条・国交省DIY型賃貸借契約書式例を一次ソースに独立創作。無断改修と有益費の関係を正答核心として設計。過去問文面の複製なし。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法第608条(有益費)/民法第703条(不当利得)/国土交通省「DIY型賃貸借に関する契約書式例」 確認日: 2026-06-10 出典: 国土交通省 https://www.mlit.go.jp/ 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。