賃管士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

賃管士 管理実務 問52|不動産物権変動と賃借権の対抗要件——登記と引渡し

問題

賃管士 | 管理実務 | 令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-10-12

不動産の物権変動及び建物賃借権の対抗要件に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。

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答え合わせ

正解は オ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はオです。

借地借家法31条は「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる」と定めています。つまり、賃借権の登記がなくても、建物の引渡し(鍵の交付・入居等)があれば、その後にその建物を購入した新所有者にも賃借権を対抗できます。

アは誤りです。所有権の移転は当事者の意思表示のみで効力を生じ(民法176条)、登記は第三者に対抗するための要件です(177条)。イは誤りです。不動産登記法3条8号は賃借権を登記できる権利として明記しています。エは誤りです。31条は区分建物を除外していません。ウは誤りです。権利の登記は原則として共同申請です(不動産登記法60条)。

対抗要件の全体像:

制度内容条文
物権変動の効力発生当事者の意思表示のみで効力を生ずる民法176条
不動産物権変動の対抗要件登記をしなければ第三者に対抗できない民法177条
登記できる権利所有権・地上権・賃借権等(不動産登記法3条各号に列挙)不動産登記法3条8号
賃借権の登記の効力登記した不動産賃貸借は、物権を取得した者その他の第三者に対抗できる民法605条
建物賃借権の対抗要件の特則建物の引渡しがあれば、登記がなくても、その後の物権取得者に対抗できる借地借家法31条

各選択肢:

  • ア(誤): 176条により、所有権の移転は当事者の意思表示のみで効力を生ずる。登記は第三者に対抗するための要件(177条)であって、当事者間の効力発生の要件ではない。
  • イ(誤): 不動産登記法3条8号は「賃借権」を登記することができる権利として明記している。
  • オ(正・正答): 借地借家法31条どおり。建物賃貸借は引渡しにより対抗力を取得できる、民法177条の原則(登記が必要)に対する重要な特則。
  • エ(誤): 31条は「建物の賃貸借」一般に適用され、区分建物(マンションの専有部分)の賃貸借を除外する規定はない。
  • ウ(誤): 不動産登記法60条により、権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者(賃借人)と登記義務者(賃貸人)が共同してしなければならない。

【物権変動の対抗要件の原則と賃借権の特則の関係】

1. 民法177条の原則

民法176条は、物権の設定及び移転は「当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と定めています。売買契約によってオーナーが建物を売却した場合、所有権は登記をしなくても当事者間では移転します。そのうえで177条は「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法…その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。登記は、当事者以外の第三者に権利の変動を主張するための要件(対抗要件)であり、所有権の移転、抵当権の設定などの物権変動一般に適用されます。

2. 賃借権と登記

賃借権は本来、債権(賃貸人に対して目的物を使用収益させることを求める権利)であって物権ではありませんが、不動産登記法3条8号は「賃借権」を登記することができる権利として明記しており、賃借権についても登記制度が用意されています。民法605条は「不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる」と定めています。

もっとも、権利に関する登記の申請は登記権利者(賃借人)と登記義務者(賃貸人)の共同申請が原則であり(不動産登記法60条)、賃貸人の協力がなければ賃借権の登記はできません。このため、住宅の賃貸借で賃借権の登記がされることは多くありません。

3. 借地借家法31条による特則

このような実務上の困難を踏まえ、借地借家法31条は「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる」と定め、賃借人保護のための特則を設けています。すなわち、賃借人が建物の引渡し(鍵の交付・入居など)を受けていれば、賃借権の登記がなくても、その後にその建物の所有権を取得した第三者(買主等)に対して賃借権を対抗できます。

この31条の特則により、住宅の賃貸借実務では、賃借権の登記を行わなくても、入居(引渡し)によって事実上十分な対抗力を確保できることになり、賃借権の登記は実務上あまり利用されていません。

4. 適用範囲——区分建物への適用

31条は「建物の賃貸借」を対象としており、条文上、戸建て・共同住宅・区分建物(マンションの専有部分)といった建物の種類による区別は設けられていません。したがって、マンションの一室を賃借している場合であっても、引渡しを受けていれば、区分所有建物の売買・競売等により新たな区分所有者が現れた場合にも、賃借権を対抗することができます。

5. 実務上の留意点

管理業者は、オーナーの物件が売却された場合、賃借人(入居者)が売却より前に引渡しを受けていれば、賃借権を新所有者に対抗できることを前提に、賃貸借契約の継続について賃借人へ説明することになります。

注意したいのは、対抗できるかどうかが「どちらが先に対抗要件を備えたか」で決まる点です。31条が対抗できる相手は「その後その建物について物権を取得した者」です。引渡しより前に抵当権の設定登記がされていた建物が競売された場合、賃借人はその抵当権に後れる賃借権を買受人に対抗できません。このときは民法395条により、競売手続の開始前から使用している賃借人等は、買受人の買受けの時から6か月を経過するまで建物の引渡しを猶予されるにとどまります。また、賃借人がまだ引渡し(入居)を受けていない段階(契約締結後・入居前)では31条の対抗力は生じていないため、その間に物件が譲渡された場合の法律関係にも注意が必要です。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法176条(物権の設定及び移転)・177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)・605条(不動産賃貸借の対抗力)・395条(抵当建物使用者の引渡しの猶予)・不動産登記法3条(登記することができる権利等)8号・60条(共同申請)・借地借家法31条(建物賃貸借の対抗力) 確認日: 2026-09-30 出典: e-Gov 法令検索 民法 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089#Mp-At_176 / 不動産登記法 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123#Mp-At_3 / 借地借家法 https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000090#Mp-At_31 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。

執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

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