賃管士 民法 問15:民法(賃貸借契約の基本)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10)
令和2年4月施行の改正民法における賃借物の返還と原状回復義務に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**の組み合わせはどれか。 ア. 賃借人は、賃貸借が終了したときは、賃借物を返還しなければならず、返還時に損傷がある場合は、原則として賃借人がその損傷を原状に復する義務を負う。 イ. 通常の使用収益によって生じた賃借物の損耗(通常損耗)は、原状回復義務の対象とはならず、賃貸人が負担する。 ウ. 賃貸借が終了した後、賃借人が賃借物を返還しない場合、賃借人は賃料相当額の損害賠償を支払わなければならないが、賃貸人から損害賠償の請求がない限り支払義務は生じない。 エ. 賃借物を受け取った後に自然災害(賃借人の責によらない事由)によって生じた損傷は、原状回復義務の対象とならない。 オ. 特約によって通常損耗についても賃借人に原状回復義務を負わせることは、どのような場合でも認められない。
- aアとイ
- bアとエ
- cイとオ
- dイとエ正答
- eウとオ
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正答はd(イとエ)です。
イ(正): 通常損耗(日常生活で避けられない自然な劣化)は賃借人の原状回復義務の対象外です。これは改正民法621条に明文化されました。
エ(正): 「賃借人の責めに帰することができない事由」による損傷も原状回復義務の対象外です(民法621条本文の除外規定)。自然災害はその典型例です。
ア(誤): 全ての損傷が原状回復義務の対象になるわけではなく、通常損耗・経年変化・賃借人の責によらない損傷は除外されます。
オ(誤): 特約による通常損耗の賃借人負担は、一定の条件(3要件)を満たせば有効とされています(最判平17.12.16)。
民法621条(R2改正)の原状回復義務の体系:
| 損傷の種類 | 原状回復義務 | 負担者 |
|---|---|---|
| 通常損耗(日常的な使用収益による損耗) | 対象外(621条ただし書) | 賃貸人(次の入居者のための改修費用として家賃に含まれる) |
| 経年変化(時間経過による自然劣化) | 対象外(621条ただし書) | 賃貸人 |
| 賃借人の故意・過失による損傷 | 対象(621条本文) | 賃借人 |
| 善管注意義務違反による損傷 | 対象(621条本文・400条) | 賃借人 |
| 賃借人の責によらない事由による損傷(自然災害等) | 対象外(621条本文・責に帰せない) | 賃貸人(保険対応等) |
各選択肢の整理:
- ア(誤): 「損傷がある場合は原則として賃借人が原状回復」という記述は、通常損耗・経年変化・賃借人の責によらない損傷の除外が考慮されていないため不正確。
- イ(正): 621条ただし書「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」の通り。
- ウ(誤): 賃借人が賃貸借終了後も占有を続けた場合の損害賠償は、賃貸人から請求されなくても法律上発生している(不法行為・不当利得・債務不履行の問題)。「請求がない限り生じない」は誤り。
- エ(正): 「賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷」で「賃借人の責めに帰することができない事由」による損傷は621条の原状回復義務から除外される。自然災害はその典型。
- オ(誤): 最判平17.12.16は「通常損耗についても賃借人負担とする特約は、一定の条件を満たせば有効」と判示。条件(3要件)を満たせば有効。「どのような場合でも認められない」は誤り。
【最判平17.12.16の3要件と原状回復特約の有効性判断】
通常損耗を賃借人負担とする特約の有効性について、最高裁平成17年12月16日判決は以下の3要件を示しました。
有効な特約の3要件(最判平17.12.16):
1. 特約の必要性があり、かつ暴利でないこと: オーナーにとって特約を設ける合理的な理由があり、賃借人に過度な負担を強いるものでないこと
2. 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことを認識していること: 特約の内容を賃借人が理解していること(認識可能性)
3. 賃借人が特約内容を明確に合意していること: 口頭ではなく契約書等で明確に合意されていること
この3要件は「高額ハウスクリーニング費用特約」や「畳の表替え費用賃借人全額負担特約」などの有効性判断に用いられます。
実務での特約の文言の重要性:
単に「原状回復は賃借人の負担とする」という一般的な文言では、通常損耗まで賃借人負担とする旨が明確でないとして無効と判断される傾向があります。有効な特約の文言例:
有効性が認められやすい文言(一例):
「本物件の退去時のハウスクリーニング費用(○○円)は、通常損耗・経年変化にかかわらず賃借人の負担とする。賃借人はこれを承諾する。」(金額明示+明示的合意)
有効性が疑われやすい文言(一例):
「退去時の清掃費用は賃借人負担」(通常損耗の範囲超過が不明確)
国交省原状回復ガイドラインの位置づけと法的効力:
国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版・平成23年)」は、法的拘束力を持つ規定ではありませんが、裁判所・ADR等で広く参照される基準として機能しています。
ガイドラインの主な内容:
- 通常損耗・経年変化の具体例(部位別の耐用年数・費用負担区分)
- 原状回復費用の計算方法(経過年数による減価の考え方)
- 特約の有効要件(最判平17.12.16の基準と整合)
- 退去時の立会確認の手順
管理会社は、入居時・退去時の「現状確認書」(チェックリスト)を活用してガイドラインに沿った記録を残し、退去精算でのトラブルを防止することが重要な実務です。
通常損耗の具体例(ガイドライン別表参考):
| 部位 | 通常損耗・賃貸人負担 | 賃借人負担 |
|---|---|---|
| クロス(壁紙) | 経年変化・自然な変色・使用範囲での軽微な傷 | タバコのヤニ汚れ・ペット爪痕・過失による穴・落書き |
| フローリング | 通常歩行による細かい傷・色落ち(経年) | 重い家具を引きずった傷・水濡れ放置による変色 |
| 畳 | 日焼けによる変色・通常使用での凹み | 飲み物こぼしによるカビ・ペット爪痕 |
| 設備 | 経年劣化による機能低下 | 不注意による破損・汚損の放置による腐食 |
根拠: 民法621条(e-Gov 法令検索)、最判平17.12.16(通常損耗特約の有効性)、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(H23)。確認日2026-06-10。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法621条(e-Gov 法令検索)、国交省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(H23)、最判平17.12.16 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法第64条/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。