問題
Aはその所有建物をBに賃貸した。Bは賃貸借契約においてAの承諾なく第三者に転貸することを禁じられていたが、AへCへの転貸承諾申請をしないまま、Cに建物の一部を転貸した。この場合に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
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答え合わせ
- a
- b
- c
- d
- e
自信の3択
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解説
正答はbです。
無断転貸があっても「信頼関係を破壊しない特段の事情」がある場合、解除は認められません(最高裁判例・信頼関係破壊の法理)。無断転貸であれば常に解除できるというわけではないことがポイントです。
aが誤りなのは「直後に意思表示すれば当然に解除できる」という部分です。信頼関係の有無を判断する必要があります。
cは誤りで、BがAの承諾なく転貸しているため「適法な転貸」ではなく、民法613条(転借人の直接義務)の前提(適法な転貸)が欠けます。
dは誤りで、無断転貸に基づく転借権はAに対抗できません。
無断転貸の解除と信頼関係破壊の法理:
| 状況 | 解除の可否 |
|---|---|
| 無断転貸(信頼関係が破壊された) | 解除可(612条2項) |
| 無断転貸だが信頼関係を破壊しない特段の事情がある | 解除不可(最判昭28.9.25) |
| 賃貸人の承諾を得た適法な転貸 | 解除事由なし |
「信頼関係を破壊しない特段の事情」の例:
- 賃借人の夫婦関係の解消で配偶者が使用継続(実質的に家族内の権利関係)
- 賃借人の会社と子会社間の利用(実質的同一体)
- 賃借人が事情を誤解して承諾を得たと思っていた場合等
各選択肢の整理:
- a(誤): 無断転貸でも信頼関係破壊の判断が必要。「直後・当然に」は誤り。
- b(正): 最判昭28.9.25の法理。「信頼関係を破壊しない特段の事情があれば解除不可」。
- c(誤): 民法613条の転借人の直接義務は「適法な転貸」が前提。無断転貸は適法な転貸でないため、Cは賃貸人Aに直接義務を負わない(承諾なき転貸借関係は有効かという問題はあるが、少なくとも直接義務の根拠となる613条は適用外)。
- d(誤): 賃貸人の承諾なき転借権は、賃貸人に対抗できない。AがBとの契約を解除すれば、CはAに対して占有権原を主張できない(CはBに対して損害賠償請求はできるが)。
- e(誤): AはBとの賃貸借契約を解除して、BおよびCに対して明渡請求できる。「Bを訴えることができない」は誤り。
【無断転貸と信頼関係破壊の法理の発展—サブリースへの応用】
信頼関係破壊の法理は最高裁昭和28年の判決が起源とされていますが、その後も多くの判例が集積し、実務上の判断基準が形成されてきました。
無断転貸の解除が認められた事例(判例の傾向):
- 不特定多数の第三者に賃借物を反復継続して利用させた
- 営業目的・反社会的勢力への転貸
- 転貸によりオーナーの本来の使用目的が大きく損なわれた
無断転貸の解除が認められなかった事例(特段の事情あり):
- 法人借主が組織再編(合併等)により実質的な同一体として使用継続
- 承諾を求めようとしたが賃貸人と連絡が取れなかった等の事情
サブリース(転貸借)の承諾問題:
賃貸住宅管理業法の規制対象となる特定賃貸借契約(マスターリース)では、オーナー(賃貸人)がサブリース業者に「転貸を承諾する」ことがマスターリース契約に明記されています。
問題が生じやすいのは「オーナーが転貸を承諾した後に転売(オーナーチェンジ)した場合」です。
オーナーチェンジ時の転貸承諾の承継問題(民法605条の2との関係):
R2改正で新設された民法605条の2は、賃貸不動産が譲渡された場合の賃貸人の地位移転を規定しています。新オーナーは旧オーナーの地位(転貸を承諾した賃貸人の地位)を承継するため、新オーナーも転貸承諾を撤回できないのが原則です。
ただし、新オーナーが転貸承諾の事実を知らずに買主が売買後に無断転貸の問題を主張するケースがあります。管理会社は物件売却時に「転貸借の状況(サブリースを含む)」を正確に開示する義務があります(宅建業法35条の重要事項説明・業法13条の管理受託契約の重要事項説明)。
転貸と原賃貸借終了の関係(613条3項・判例):
賃貸人と賃借人(サブリース業者)の合意解除が行われた場合、転借人(入居者)に対して対抗できるか?
民法613条3項本文は、適法な転貸がある場合、賃貸人は賃借人との賃貸借を合意により解除したことを転借人に対抗できないと定めています(R2改正で従来の判例を明文化)。ただし、解除の当時に賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたとき(例:サブリース業者の家賃滞納が解除できる程度に達していたとき)は対抗できます(同項ただし書)。
また最判平14.3.28は、転貸を前提とした事業用ビルの賃貸借が賃借人の更新拒絶により期間満了で終了した事案で、賃貸人は信義則上その終了を再転借人に対抗できないとしました。
このため、合意解除や期間満了でマスターリース契約が終わっても、入居者(転借人)を直ちに退去させられない場合があります。オーナーは終了原因ごとに転借人への対抗の可否を確認する必要があります。
実務上、マスターリース契約終了時の「入居者対応」が非常に複雑な問題となることから、賃管士は契約締結時から「マスターリース終了シナリオ」を踏まえた管理設計が求められます。
根拠: 民法612条・613条(e-Gov 法令検索)、最判昭28.9.25・最判平14.3.28(判例)。確認日2026-06-10。
- 民法第613条・第605条の2・第612条e-Govで原文を読む
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律e-Govで原文を読む
- 宅地建物取引業法第35条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法612条・613条(e-Gov 法令検索)、最判昭28.9.25(信頼関係破壊の法理・無断転貸) 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法施行規則第19条第1号/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

