賃管士
法令の確認日 2026年9月13日e-Govと照合済み

賃管士 民法 問26|ハウスクリーニング特約の有効性

問題

賃管士 | 民法 | 令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-10-12

賃貸借契約書に「退去時のハウスクリーニング費用(3万円)は通常損耗・経年変化にかかわらず賃借人の負担とする。賃借人はこれを確認する。」という特約がある場合、この特約の有効性に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。

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正解は イ
  • ア
  • イ
  • ウ
  • エ
  • オ

自信の3択

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解説

正答はイです。

最高裁平成17年12月16日判決は、通常損耗について賃借人に原状回復義務を負わせる特約が成立するには、負担する通常損耗の範囲が契約書の条項自体に具体的に明記されているか、口頭の説明により賃借人が明確に認識して合意の内容としたと認められるなど、明確な合意が必要としています。国交省ガイドラインも、①特約の必要性があり暴利的でないなど客観的・合理的理由があること、②賃借人が通常の原状回復義務を超えた義務を負うことを認識していること、③賃借人が義務負担の意思表示をしていること、を特約の要件としています。

本問の特約は「金額明示(3万円)+賃借人の確認」という要素が含まれており、これらを満たす可能性があります。ただし現実の事案では個別事情による判断が必要です。

アの「常に無効」は誤り。エの「ガイドライン違反で無効」も誤りです(ガイドラインに法的拘束力はない)。

特約の有効性の判断要素(国交省ガイドラインの3要件。最判平17.12.16は特に③の明確な合意を要求):

要件内容本問の特約
①特約の必要性・暴利でないことオーナーにとって特約が必要な合理的理由があり、賃借人に過度な負担を強いないクリーニング費用3万円は一般的に合理的範囲→○
②賃借人の認識賃借人が通常の原状回復義務を超えた義務を負うことを認識している「通常損耗にかかわらず賃借人負担」と明記→認識可能→○
③明確な合意口頭だけでなく契約書等で明確に合意「賃借人はこれを確認する」という署名→○

本問の特約はこれら3要件を満たす可能性が高く、有効と判断される場合が多いと考えられます。

各選択肢の整理:

  • ア(誤): 「常に無効」ではない。負担の範囲が明確に合意されていれば有効となり得る(最判平17.12.16)。
  • イ(正): 負担の範囲の明記・明確な合意があれば有効となる可能性あり(最判平17.12.16の考え方)。適切な記述。
  • ウ(誤): 金額明示だけでは不十分。「賃借人の認識・合意(②③)」も必要。署名があることで有効性が高まる。
  • エ(誤): ガイドラインに法的拘束力はなく、「ガイドライン違反→無効」という効果はない。
  • オ(誤): 消費者契約法は「一方的に消費者の利益を害する条項」を無効とするが、3要件を満たす合理的な特約を一律に無効とするわけではない。「常に無効」は誤り。

【通常損耗特約の判断枠組み(最判平17.12.16・ガイドライン)—実務での有効な特約の作り方】

最判平17.12.16(賃貸人が契約書の負担区分表に基づき、通常損耗の補修費用を含む額を敷金から差し引いた事案)は、賃貸住宅の原状回復に関する最重要判例の一つです。判決の論理構造を丁寧に理解することが重要です。

判決の論理構造:

1. 賃借人の原状回復義務には、特約のない限り通常損耗に係るものは含まれず、その補修費用は賃貸人が負担すべきである(現在は民法621条に明文化)

2. これと異なる特約を設けることは、契約自由の原則から認められる

3. ただし、通常損耗を借主負担にする特約は借主にとって特別の負担となるため、成立を慎重に判断する

4. 少なくとも、負担する通常損耗の範囲が契約書の条項自体に具体的に明記されているか、口頭説明により賃借人が明確に認識し合意の内容としたと認められるなど、明確な合意が必要

ガイドラインの3要件を踏まえた特約の文言設計(実務的ポイント):

要件①(必要性・暴利でない)を満たすための文言:

  • 「本物件は退去後に専門業者によるハウスクリーニングを必ず実施する物件です」(必要性の明示)
  • 「清掃費用は○○円(専門業者の標準的な相場)」(暴利でないことを示す金額)

要件②(賃借人の認識)を満たすための文言:

  • 「この費用は、通常の使用収益によって生じた損耗(通常損耗)・経年変化にかかわらず、賃借人の負担とします」(義務の明確な記載)
  • 「賃借人は上記の費用負担を、本契約の重要な条件として理解しています」

要件③(明確な合意)を満たすための対応:

  • 契約書・重要事項説明書の双方に同内容を記載
  • 賃借人に署名・押印させる(「確認しました」「同意します」の欄)
  • 可能であれば入居説明時に口頭でも説明し、その記録を残す

消費者契約法10条との関係(実務的判断):

消費者が借主の場合、ハウスクリーニング費用特約が消費者契約法10条(消費者の利益を一方的に害する条項)として無効になるかどうかが争われることがあります。

裁判例・調停例の傾向:

  • 費用が合理的な範囲(2〜5万円程度)で明示され、契約時に説明済みの場合→消費者契約法10条違反ではなく有効
  • 費用が著しく高額(例:15万円以上のクリーニングを新居前から原状回復費として請求)→無効とされる可能性
  • 金額が不明示で「専門業者費用全額負担」という包括的な特約→無効とされる可能性

賃貸住宅管理業者(管理会社)の説明義務:

賃貸住宅管理業法13条の重要事項説明は、管理受託契約の締結前に委託者(オーナー)に対して行うものです。入居者への特約の説明は同法の明文の義務ではありませんが、業務処理の原則(業法10条「信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならない」)の観点からも、特約の内容を正確に伝えることが望まれます。

ハウスクリーニング特約について「退去時にこれだけかかります」ということを入居前に明示・説明することは、賃借人の自己決定権を尊重し、後のトラブルを防止する管理会社の専門性の核心部分です。

根拠: 民法621条(e-Gov 法令検索)、最判平17.12.16(通常損耗補修特約の成立要件)、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」、消費者契約法10条(e-Gov 法令検索)。確認日2026-06-10。

この問題の根拠条番号はe-Govの本文と機械で照合しています(2026-09-13)。照合の方法
訂正の記録この問題の訂正はありません(サイト全体の記録)
出典と作り方

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法621条(e-Gov 法令検索)、最判平17.12.16(通常損耗補修特約の成立要件)、国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法施行規則第19条第1号/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。

執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

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