問題
賃貸人の修繕義務と賃借人の修繕権に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。なお、民法の規定(令和2年4月1日施行の改正後)に基づいて答えること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はイです。
民法607条の2は令和2年改正で新設された条文で、「賃借人の修繕権」を明文化しました。賃貸人に修繕の必要性を通知したにもかかわらず相当期間内に修繕しない場合、または急迫の事情がある場合には、賃借人自らが修繕を行えます。イが正しい記述です。
アは誤りで、賃借人の故意・過失による損傷の修繕費用は賃借人が負担します(606条1項但書)。ウは誤りで、急迫の事情がある場合は事前通知なしで修繕可能です(607条の2第2号)。エは誤りで、611条1項により賃料は請求を要せず当然に減額されます。オも誤りで、全部滅失等の場合は616条の2により賃貸借は当然に終了します。
賃貸人の修繕義務とR2改正新設の賃借人修繕権:
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法606条1項 | 賃貸人は必要な修繕をする義務→ただし賃借人の故意・過失による損傷は除外 |
| 民法607条の2(R2新設) | 賃借人の修繕権:通知後相当期間不修繕 or 急迫の事情があれば賃借人が修繕可 |
| 民法611条(R2改正) | 賃貸物の一部滅失・一部使用不能→賃料は当然に(自動的に)減額 |
| 民法616条の2(R2新設) | 賃貸物の全部滅失→賃貸借は当然終了 |
賃借人修繕権の2つのルート(607条の2):
1. 通知後相当期間不修繕: 賃借人が通知→賃貸人が相当期間内に修繕しない→賃借人が修繕可
2. 急迫の事情: 急迫性がある場合は通知なしで修繕可(607条の2第2号)
ウは「急迫の事情があっても事前通知必須」としている点が誤りです。
エ・オの誤り(611条・616条の2):
オは誤りで、616条の2により賃借物の全部が滅失その他の事由で使用収益できなくなった場合、賃貸借は当然に終了します(解除の意思表示は不要)。エについては次の通りです。
R2改正後の611条は「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」と定めています。請求を要せず当然に減額されるため、「請求しなければ減額されない」は誤りです。ただし減額幅をめぐって後日紛争になるリスクがあるため、実務では賃貸人との協議が望まれます。
【修繕義務の範囲・修繕費用の負担・R2改正の全体像・実務上の修繕トラブル対応】
1. 賃貸人の修繕義務の範囲
民法606条1項「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない」
修繕義務が生じる範囲:
- 経年劣化・自然損耗による修繕(給湯設備の故障・雨漏り・外壁の劣化等)
- 賃貸人が修繕義務を負うのは「使用収益に必要な修繕」であり、単なる美観上の改善は含まれない
賃借人の責任範囲:
- 故意・過失による破損は賃借人が自己費用で修繕する義務を負う
- 善管注意義務違反(不適切な使用・管理)による損傷も賃借人負担
2. R2改正の位置づけ——改正前後の比較
| 比較 | R2改正前 | R2改正後 |
|---|---|---|
| 賃借人の修繕権 | 規定なし(解釈で認める場合あり) | 607条の2で明文化 |
| 賃料の一部減額 | 「減額を請求することができる」(旧611条) | 「減額される」=当然に減額に変更(611条) |
| 全部滅失時の終了 | 解釈で処理 | 616条の2で明文化 |
| 賃借人の通知義務 | 615条に規定(改正前から) | 615条(ただし書で賃貸人が既に知っているときは不要) |
3. 賃借人修繕権の実務的意義
607条の2の制定により、賃貸人が長期間修繕を放置した場合の対応が明確化されました。
実務フロー(賃借人が修繕権を行使するまで):
1. 修繕の必要性を賃貸人に通知(書面が望ましい)
2. 相当期間を設定(一般的に2週間〜1ヶ月程度)
3. 相当期間内に修繕なし→賃借人が修繕実施
4. 修繕費用を賃貸人に請求(必要費の償還請求・民法608条)
急迫の事情(607条の2第2号):
- 漏水による水漏れが進行中・設備の緊急故障等
- 事前通知なしで修繕可・費用は後日賃貸人に請求
4. 賃料減額の実務(611条)
「当然に減額」という改正後の条文は、減額を主張するために賃貸人の同意や裁判を経る必要はないことを意味します。しかし実務上:
- 一方的に減額して支払うと「賃料不払い」と評価されるリスクがある
- 安全のためには賃貸人と協議して合意した金額を支払うか、差額を供託する
- 紛争になった場合は最終的に裁判で判断される
減額の割合は「使用不能となった部分の割合」ですが、これの算定も争いになりやすく(例:エアコン故障で全室使用不能か部屋の一部機能喪失か)、実務では当事者間の交渉が先行します。
5. 必要費と有益費の区別
| 種類 | 内容 | 請求権 |
|---|---|---|
| 必要費(608条1項) | 使用収益に必要な費用(修繕費・電球交換等) | 直ちに償還請求可 |
| 有益費(608条2項) | 物件の価値を増加させた費用(内装改良等) | 賃貸借終了時に償還請求可(価値増加が残存する場合) |
修繕費は必要費として、賃借人が立て替えた場合は直ちに賃貸人に償還請求できます。
- 民法第607条の2・第606条・第611条・第616条の2・第608条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法第606条(賃貸人の修繕義務)・第607条の2(賃借人の修繕権)・第611条(賃料の減額)・R2改正 確認日: 2026-06-10 出典: e-Gov 民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。
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執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

