問題
民法上の個人根保証契約と建物賃貸借における保証に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、民法の規定(令和2年4月1日施行の改正後)に基づいて答えること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答(誤っているもの)はアです。
民法465条の2第2項は「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」と規定し、同条3項は極度額の定めに書面要件(446条2項・3項)を準用しています。極度額の定めは書面による個人根保証契約の効力要件です(保証契約自体も書面が必要・446条2項)。アは「口頭での合意でも契約は有効」としていますが、個人根保証は書面なければ保証契約自体が無効(446条2項)であり、極度額を口頭で合意しても契約は有効に成立しません。
ウ・イ・エ・オは正しい記述です。特にイの「建物賃貸借の個人保証は個人根保証に当たり極度額が必要」という点は賃管士試験で重要な論点です。
R2改正で変わった個人根保証の規律:
| 改正点 | 内容 |
|---|---|
| 改正前 | 個人根保証(貸金等のみ)に極度額必要 |
| 改正後(R2) | 個人根保証(全ての主債務)に極度額必要 |
| 書面要件 | 保証契約全般に書面必要(446条2項)・極度額も書面で明示 |
アが誤りの理由:
465条の2第2項は「極度額を定めなければ、その効力を生じない」とし、同条3項は極度額の定めについて446条2項・3項(書面要件)を準用しています。極度額の定めは保証契約の効力要件です。また446条2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と定めています。口頭で合意した個人根保証は、書面要件を満たさないため無効です。
各選択肢:
- ウ(正): R2改正で全ての個人根保証に極度額必要(貸金等限定から拡大)。
- イ(正): 建物賃貸借の個人保証は個人根保証に該当→極度額設定必須(実務上の重要論点)。
- ア(誤・正答): 保証契約は書面必要(446条2項)・極度額も書面で明示必須。口頭での合意では無効。
- エ(正): 465条の4第1項3号「主たる債務者又は保証人が死亡したとき」は元本確定事由の一つ。
- オ(正): 極度額は個人根保証における保証人の責任の上限(465条の2第1項)。
【個人根保証の全体構造・建物賃貸借での実務・極度額の水準・元本確定事由の詳細】
1. R2改正の背景——家賃保証人の「終わりのない保証」問題
改正前の民法では、個人根保証(貸金等債務以外)には極度額の定めが不要でした。このため、建物賃貸借の連帯保証人は、更新後の賃料・損害賠償・原状回復費用まで含む「いくらになるかわからない保証」を強いられていました(保証人が予想外の多額の請求を受ける事例が続出)。
R2改正は、貸金等以外の個人根保証にも極度額を義務付けることで、保証人の責任の上限を明確化しました。
2. 建物賃貸借に適用される個人根保証の特徴
建物賃貸借の保証は「継続的に発生する賃料・損害賠償・原状回復費用等の一切を保証する」性質を持ち、「根保証(特定されていない不特定の債務を保証)」に当たります。個人が保証人であれば「個人根保証」の規律が適用されます。
保証の対象となる債務の例:
- 月々の賃料・共益費
- 賃料延滞に伴う遅延損害金
- 退去後の原状回復費用
- 無断転貸・用法違反による損害賠償
これらの総合を極度額で上限設定します。
3. 極度額の水準(実務上の目安)
法律は極度額の金額を定めていませんが、実務上の相場:
- 月額賃料の12〜24ヶ月分(1〜2年分)が目安
- 賃料が高い物件・長期契約は多め
- 家賃債務保証会社との組み合わせで連帯保証人の極度額を低く設定するケースも
重要: 極度額を超える部分についての保証人の責任は生じません。
4. 元本確定事由(465条の4)の全体
| 確定事由 | 内容 |
|---|---|
| 主債務者・保証人の死亡 | どちらかの死亡で元本確定(1項3号) |
| 保証人が破産手続開始の決定 | 保証人破産で確定(1項2号) |
| 保証人の財産への強制執行・担保権実行 | 手続の開始で確定(1項1号) |
主債務者の財産への強制執行・主債務者の破産は、貸金等債務を含む根保証に限った確定事由(465条の4第2項)で、賃料債務の保証には当たりません。元本確定後は「確定した時点での債務残高」のみが保証の対象となり、その後発生した賃料等には保証が及びません。賃借人(主債務者)の死亡も元本確定事由であり(1項3号)、死亡後に生じた賃料等には保証が及ばない点に注意が必要です。
5. 主債務者の情報提供義務(465条の10)
R2改正で新設された情報提供義務:
- 事業のために負担する債務(事業用物件の賃料債務等)の保証を委託するとき、主債務者(賃借人)が個人の保証人に対して財産・収支状況等の情報を提供する義務(465条の10。居住用の賃料債務の保証には適用されない)
- この義務を怠り保証人が誤った情報で保証した場合、保証人は契約を取り消せる
賃貸管理業者としては、連帯保証人に対して保証の内容・極度額・保証リスクを明確に説明することが重要です(管理業法上の義務ではないが、消費者保護・信義則上)。
6. 保証会社(家賃債務保証業者)との共存
R2改正後、個人保証人への極度額設定義務化により、家賃債務保証会社(法人保証)の利用が増加しています。法人保証には極度額設定義務がありません。賃貸管理業者としては、保証会社の使用を推奨しつつ、個人保証人を求める場合は極度額の適切な設定・書面化を徹底する必要があります。
- 民法第465条の2・第465条の4e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法第465条の2(個人根保証契約)・第465条の4(元本の確定)・R2改正 確認日: 2026-06-10 出典: e-Gov 民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。
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