社労士 労働保険料徴収法 問17:労働保険料徴収法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働保険事務組合に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア労働保険事務組合は、中小事業主(中小企業)のみが設立できるものであり、商工会・商工会議所・事業協同組合等は労働保険事務組合の認可を受けることができない。
- イ労働保険事務組合に労働保険料の徴収等に関する事務を委託できる事業主は、常時使用する労働者数が一定規模以下の事業主に限られており、金融業・保険業・不動産業・小売業については常時使用する労働者数が100人以下の事業主が対象となる。
- ウ労働保険事務組合に事務を委託した中小事業主(法人の役員を含む特定の者)は、労災保険の特別加入(第1種特別加入)の申請を行うことができ、業務上の災害に対する保護を受けることが可能となる。正答
- エ事業主が労働保険事務組合に事務を委託した場合、当該事業主は労働保険料の申告・納付義務からは解放されるが、毎年の年度更新に係る申告書類の記載内容については事業主自身が確認・承認を行う義務が残る。
- オ労働保険事務組合の認可は都道府県知事が行うものであり、厚生労働大臣または都道府県労働局長による認可ではない。
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正答はウです。
労働保険事務組合に事務を委託した中小事業主は、第1種特別加入(中小事業主等の特別加入)として労災保険の特別加入が可能になります(ウが正しい)。事務組合への委託が第1種特別加入の前提条件の一つです(労災保険法第33条第1号・第34条)。
アは誤りで、労働保険事務組合は商工会・商工会議所・事業協同組合等の事業者団体が設立・運営するものです。中小事業主が直接設立するのではありません。イは誤りで、金融業・保険業・不動産業・小売業については常時使用する労働者数が50人以下が委託対象です(100人以下は卸売業・サービス業等)。エは誤りで、事務委託後は委託範囲の事務(申告・納付等)は事務組合が行い、事業主の「確認・承認義務が残る」という規定はありません(委託の効果として事業主の事務負担が代替される)。オは誤りで、労働保険事務組合の認可権者は厚生労働大臣であり、その権限は都道府県労働局長に委任されています(徴収法第33条第2項・第3項、施行令)。都道府県知事ではありません。
労働保険事務組合の委託可能事業主の業種別規模基準(法第33条):
| 業種区分 | 常時使用労働者数の上限 |
|---|---|
| 金融業・保険業・不動産業・小売業 | 50人以下 |
| 卸売業・サービス業 | 100人以下 |
| その他の業種(製造業・建設業・農業等) | 300人以下 |
各選択肢の精査:
- ア(誤): 事務組合を設立・運営するのは商工会・商工会議所・事業協同組合等の事業者団体。中小事業主自身が設立するのではない。
- イ(誤): 金融・保険・不動産・小売は50人以下(100人以下は卸売・サービス)。
- ウ(正・正答): 事務組合委託 + 中小事業主要件充足 → 第1種特別加入(業務上災害の保護)が可能。
- エ(誤): 委託後は委託事務は事務組合が担当。「確認・承認義務が残る」という法定義務はない。
- オ(誤): 認可権者は厚生労働大臣(権限は都道府県労働局長に委任)。都道府県知事ではない。
第1種特別加入(中小事業主等)の前提条件:
①労働保険事務組合に事務委託していること、②当該事業について一般の保険関係が成立していること、の両方を満たす必要があります。事務組合への委託が第1種特別加入の「入口」となっている設計です(労災法第33条第1号)。第2種特別加入は一人親方等、第3種特別加入は海外派遣者が対象であり、第1種との混同に注意。
認可権者の確認(誤りやすい点):
労働保険事務組合の認可権者は厚生労働大臣で、権限が都道府県労働局長に委任されています。都道府県知事ではないことが頻出の誤答ポイントです。
【労働保険事務組合の存在意義:中小企業の行政事務負担軽減】
中小企業にとって、労働保険(労災・雇用)の年度更新申告・保険料納付・各種届出は煩雑な行政手続きです。労働保険事務組合は「中小事業主に代わって、これらの事務を代行する」ことで中小企業の負担を軽減する仕組みです。全国的に商工会・商工会議所が事務組合を設置しており、会員企業が委託することで会費+事務手数料の負担のみでこれらの事務処理が可能です。特に従業員5人以下の零細事業主にとって、自力での手続きよりも事務組合への委託の方が効率的なケースが多いです。
【業種別規模基準の設計理由:金融・不動産・小売の50人規制】
金融・保険・不動産・小売業の委託上限が50人と他業種より低いのは、「これらの業種では中規模以上の企業が自社で事務処理できる体制を整えやすく、小規模事業者に特化した支援が必要」という発想に基づきます。製造業・建設業では300人以下と幅広くカバーしており、「製造・建設の中堅企業も事務組合を活用できる」設計です。
【第1種特別加入(中小事業主):社長・役員が労災から保護される仕組み】
通常、中小企業の代表取締役・役員は「使用者(事業主)」であるため、雇用保険・労災保険の一般の被保険者になれません。しかし第1種特別加入(中小事業主等の特別加入)を利用すると、中小事業主本人(法人であれば代表者・一人会社の役員等)が労災保険の適用を受けることができます。これにより「社長が現場作業中にケガをした」「一人社長が配達中に事故に遭った」という場合に、労災から治療費・休業補償を受けることが可能です。特別加入の保険料は「給付基礎日額(本人が選択)×料率」で決まります。労災保険法第33条は第1号〜第7号で特別加入対象者を列挙しており、第1号が中小事業主等(=第1種)、第3号〜第5号が一人親方等(=第2種)、第6号〜第7号が海外派遣者(=第3種)の構造です。
【労働保険事務組合の役割拡大:社労士との協業モデル】
近年、社労士事務所自体が労働保険事務組合の認可を受け、顧問先の中小事業主の事務処理を組合として一括代行するケースが増えています。社労士が「単なる手続き代行」から「事務組合として法的に事務を受任」に格上げすることで、顧問先との契約関係・責任範囲が明確化され、社労士業務の安定的な継続報酬を確保できます。厚生労働省も社労士が事務組合を設置して中小企業支援を行うモデルを推奨しており、社労士試験合格後の開業社労士の重要な業務形態の一つです。
根拠: 労働保険料徴収法第33条(事務組合への委託)・第34条(認可申請・認可権者)。厚生労働省「労働保険事務組合制度の概要」(確認日2026-04-10)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働保険料徴収法第33条(事務組合への委託)、労災保険法第33条第1号(中小事業主等の特別加入=第1種特別加入)、中小企業等の規模基準(業種別) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。