社労士 労働保険料徴収法 問19:労働保険料徴収法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働保険料徴収法における二元適用事業に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア二元適用事業とは、労働保険(労災保険・雇用保険)の保険関係を別々に成立させ、それぞれ独立して申告・納付を行う事業であり、一元適用事業とは申告・納付の方法が異なる。
- イ建設業は二元適用事業であり、現場の建設工事(有期事業)に係る労災保険と、事務所等の雇用保険を別々に申告・納付する。
- ウ二元適用事業において、労働保険料の概算申告期限・確定申告期限は、労災保険と雇用保険それぞれについて個別に設定されており、一元適用事業と同じ期限が各々に適用される。
- エ港湾運送業は二元適用事業に指定されており、労災保険と雇用保険を別々に成立させる必要があるが、申告・納付の実務は一元的に処理できる。正答
- オ国の直営事業および官公署の事業は、一般に労働保険の強制適用を受けるが、二元適用事業には該当せず、特例的な一元管理が認められている。
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正答はエです。
エは「港湾運送業は…申告・納付の実務は一元的に処理できる」としていますが、二元適用事業の本質は労災保険と雇用保険を完全に別個に申告・納付することにあります。一元的処理は一元適用事業の特徴です。港湾運送業は確かに二元適用事業ですが、「実務上は一元的に処理できる」という記述は誤りです。
アは正しく、二元適用事業では保険関係を別々に成立させ、別々に申告・納付します。イは正しく、建設業は現場労災(有期事業)と事務所雇用保険(継続事業)を別々に申告します。ウは正しく、概算・確定の申告期限は各保険関係に個別に適用されます。オは正しく、国・官公署の直営事業は特例として取り扱われます(一般の二元適用とは異なる扱い)。
二元適用事業の種類(施行規則第6条の2):
| 二元適用事業 | 理由 |
|---|---|
| 建設業(有期事業) | 現場ごとに労災保険(有期事業)を別管理。事務所の雇用保険は継続事業として分離 |
| 港湾運送業 | 日雇労働者が多く雇用保険の適用が特殊(港湾労働法)。労災と別管理 |
| 農林水産業(一部) | 暫定任意適用事業の取扱いが複雑なため別管理 |
| 官公署の直営事業 | 国・地方公共団体の事業は特例適用(一般事業主扱いとは別) |
一元適用事業 vs 二元適用事業の違い:
| 項目 | 一元適用事業 | 二元適用事業 |
|---|---|---|
| 保険関係 | 労災+雇用を1本で管理 | 労災と雇用を別々に管理 |
| 申告書 | 1枚(両者合算) | それぞれ別に申告 |
| 申告期限 | 共通 | 各保険関係ごとに適用 |
| 労働保険番号 | 1個 | 労災と雇用でそれぞれ別番号 |
各選択肢の精査:
- ア(正): 二元適用事業の定義(別個の保険関係・別々の申告納付)を正確に記述。
- イ(正): 建設業の実態(現場有期労災+事務所継続雇用保険)を正確に記述。
- ウ(正): 概算・確定申告の期限は各保険関係に個別適用。建設業の有期事業は完成時確定申告等の特殊な期限あり。
- エ(誤・正答): 「申告・納付の実務は一元的に処理できる」は誤り。二元適用は必ず別々に処理する。
- オ(正): 国・官公署は特例的取扱い(労働保険料の徴収方法等が特例)であり、通常の二元適用の強制適用とは異なる扱い。
二元適用における労働保険番号の実務:
建設業者は「事務所用(継続・雇用)」「現場用(有期・労災)」の2つの労働保険番号を持ちます。保険料申告も2系統に分かれるため、社労士実務では番号の混同に注意が必要です。
【二元適用事業制度の立法趣旨:建設業の特殊構造への対応】
建設業が二元適用事業とされる最大の理由は「労働者保護の対象が複層的である」ことです。一つの建設プロジェクトには元請・1次下請・2次下請・職人(一人親方等)が関与し、それぞれ「労災保険の適用事業主が誰か」「雇用保険はどの会社で加入しているか」が異なります。建設業の労災保険は「現場ごとの有期事業」として元請が一元的に引き受ける仕組みですが(一括有期・個別有期)、雇用保険は各会社が継続事業として各自の労働者を被保険者とします。この「労災は元請一本化・雇用保険は各社独立」という二分法が、建設業における二元適用の本質です。
【港湾運送業の特殊性:港湾労働法との連動】
港湾運送業が二元適用事業とされるのは、「港湾労働法」という特別法が港湾労働者の雇用関係を規律しているためです。港湾では日雇的・短期的な雇用形態が多く、港湾労働者プール制度(港湾労働者の登録・派遣制度)が存在するため、通常の継続的雇用関係を前提とした一元適用事業の仕組みになじみません。港湾労働法の対象港湾(東京・横浜・名古屋・大阪・神戸・関門の6港)では、港湾運送事業者が雇用保険と労災保険を別個に管理する二元適用の手続きを採ります。試験では「港湾運送業も二元適用事業に含まれる」という知識の有無が問われます。
【建設業の二元適用実務:社労士がつまずく番号管理】
建設業を顧問に持つ社労士が実務でしばしば直面する問題は、「事務所の継続事業(雇用保険)」と「工事現場の有期事業(労災保険)」で労働保険番号が異なるため、「年度更新の申告書類を2種類管理する必要がある」ことです。工事現場の労災保険(有期事業)は、工事完了時に確定保険料の申告を行い保険関係を消滅させる必要があります(継続事業の年度更新とは別の処理)。一方、事務所の雇用保険は毎年6月1日〜7月10日の年度更新サイクルで申告します。この2系統の申告書類・期限・番号を正確に管理できることが、建設業顧問の社労士に求められる実務能力の核心です。また一括有期事業(概算保険料1,600,000円円未満・請負金額180,000,000円円未満)と個別有期事業の区分判定も、建設業社労士実務の重要テーマです。
根拠: 労働保険料徴収法第3条(二元適用事業の定義)・施行規則第6条の2(指定業種)。厚生労働省「労働保険(労災保険・雇用保険)の適用事業について」(確認日2026-04-10)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働保険料徴収法第3条・第33条(二元適用事業)、徴収法施行規則第6条の2(二元適用事業の種類) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。