問題
健康保険における保険給付の種類と被扶養者(家族)への給付に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「家族傷病手当金・家族出産手当金は健康保険の給付として設けられている」という部分です。健康保険において、被扶養者(家族)に対する傷病手当金・出産手当金に相当する給付は存在しません(健保法第52条の給付の種類に含まれない)。傷病手当金・出産手当金は被保険者本人の「労務不能による所得補填」を目的とした給付であり、被扶養者は被保険者として働いていないため、そのような給付は設計されていません。
他の選択肢は正しく、被扶養者への家族療養費(原則7割・義務教育就学前8割)(ア)、家族出産育児一時金は被保険者へ支給・産科医療補償制度の対象となる出産で50万円(イ)、家族埋葬料5万円(ウ)、現物給付と現金給付の違い(オ)はいずれも正確です。
健康保険の給付の種類(被保険者分・被扶養者分)の比較:
| 給付名(被保険者) | 対応する家族給付(被扶養者) | 給付率・額 |
|---|---|---|
| 療養の給付 | 家族療養費(第110条) | 原則7割(就学前は8割) |
| 療養費(第87条) | 家族療養費に含まれる | 同上 |
| 高額療養費(第115条) | 高額療養費(世帯合算) | 同上 |
| 傷病手当金(第99条) | 家族傷病手当金:存在しない | — |
| 出産育児一時金(第101条) | 家族出産育児一時金(第114条) | 施行令第36条の額(産科医療補償制度の対象となる出産で50万円・それ以外48.8万円。被保険者に支給) |
| 出産手当金(第102条) | 家族出産手当金:存在しない | — |
| 埋葬料(第100条) | 家族埋葬料(第113条) | 5万円 |
| 移送費(第97条) | 家族移送費(第112条) | 実費相当 |
| 訪問看護療養費(第88条) | 家族訪問看護療養費(第111条) | 原則7割(就学前は8割) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 家族療養費の給付率は原則7割(被保険者本人の療養の給付と同率)。ただし6歳に達する日以後の最初の3月31日以前(義務教育就学前)の被扶養者は8割給付(2割負担)となります(第110条第2項第1号ロ)。70歳以上の高齢受給者は別途の給付率規定が適用されます。
- イ(正): 家族出産育児一時金は「被扶養者が出産した場合に被保険者に対して」支給されます。支給先が「被扶養者本人ではなく被保険者」である点は健保法第114条の明文規定通りです。額は「第百一条の政令で定める金額」で本人の出産育児一時金と同額です。施行令第36条は本則48万8千円、産科医療補償の要件を満たす病院等の医学的管理の下の出産には3万円以内で保険者が定める額を加算するとしており、その場合が50万円です(肢はこの場合に限定しています)。
- ウ(正): 埋葬料(被保険者死亡)・家族埋葬料(被扶養者死亡)はともに5万円。被保険者に生計を維持されていた者がいない場合の「埋葬費(実費・上限5万円)」の区別も正確です。
- エ(誤・正答): 家族傷病手当金・家族出産手当金という制度は健康保険に存在しません。被扶養者は被保険者として就労していないため、労務不能による所得補填給付は設計されていない。被扶養者が療養を必要とする場合は、家族療養費(医療費の補填)のみが適用されます。
- オ(正): 現物給付(療養の給付:保険医療機関での保険診療)と現金給付(療養費:いったん全額自己負担→後払い)の区別は正確です。療養費(第87条)が適用される典型例として「海外での受診」「保険医療機関以外での緊急受診」「鍼灸・あん摩等の施術」等があります。
【健康保険の給付体系:医療系給付・現金給付・付加給付の3層構造】
健康保険の給付は大きく以下の3層で理解すると体系的です。
第1層:医療系給付(現物給付・現金給付)
- 療養の給付(第63条〜・現物給付の中心): 保険医療機関での保険診療の提供
- 療養費(第87条・現金給付): 現物給付が不可能な場合の後払い
- 入院時食事療養費(第85条): 入院中の食事(標準負担額との差額)
- 入院時生活療養費(第85条の2): 65歳以上の療養病床の生活費相当
- 保険外併用療養費(第86条): 評価療養・患者申出療養・選定療養を受けた場合の、保険診療と共通する基礎的部分への給付(特別料金部分は自己負担)
第2層:所得補填系給付(現金給付)
- 傷病手当金(第99条): 労務不能時の所得補填
- 出産手当金(第102条): 産前産後休業中の所得補填
- 出産育児一時金(第101条): 出産費用の補填
第3層:その他の現金給付
- 高額療養費(第115条): 自己負担限度額超過分の返還
- 埋葬料・埋葬費(第100条): 葬儀費用への一部補填
- 移送費(第97条): 緊急移送費用の補填
被扶養者への家族給付(第110条〜第114条・給付の種類は第52条第6号〜第8号)は、この体系に対応した「家族版」ですが、「所得補填系給付(傷病手当金・出産手当金)」には対応する家族給付がありません。
【被扶養者給付が「所得補填」に対応しない理由】
傷病手当金・出産手当金が「被保険者の労務不能=収入喪失への補填」を目的とするのに対し、被扶養者は被保険者として就労しているわけではなく、そもそも保険料を負担していない立場です。被扶養者の生計は被保険者の収入により支えられているため、被扶養者の療養中の「所得補填」は設計上不要とされています。
ただし実務では、被扶養者として健保の給付を受けているパートタイム労働者が疾病で働けなくなった場合、健康保険の傷病手当金は受けられないという問題が生じます。
【家族療養費の給付率と「7割・8割」の境界の実務】
家族療養費の給付率:
- 6歳に達する日以後の最初の3月31日の翌日以後、70歳に達する日の属する月以前の被扶養者: 7割(3割自己負担) — 被保険者本人と同じ
- 6歳に達する日以後の最初の3月31日以前(義務教育就学前)の被扶養者: 8割(2割自己負担)
- 70歳に達する日の属する月の翌月以後の被扶養者(高齢受給者): 8割。ただし現役並み所得者(第74条第1項第3号に該当する被保険者等)の被扶養者は7割(第110条第2項第1号ハ・ニ)
「6歳未満」ではなく「6歳に達する日以後の最初の3月31日以前」(小学校入学前)が正確な基準です。試験では「6歳未満」という表現の誤りが問われる場合があります。
【市区町村の子ども医療費助成との関係(上位資格への接続)】
健保の家族療養費(8割給付)に加え、多くの市区町村が独自の「子ども医療費助成」で自己負担分の全部または一部を助成しています。自治体の助成は健保の給付(8割)の後に残る自己負担分を対象とするもので、健保の給付率そのものは変わりません(第110条第2項第1号ロ)。
社一(社会保険一般常識)では、こうした公費助成と健保給付の関係が問われることがあります。試験では健保法上の給付率(8割)を答えることが必要です。
【療養費(現金給付・第87条)が適用される場面】
療養費(第87条)の適用例:
1. 海外での受診: 海外では保険医療機関以外での受診となるため、全額立替→帰国後に療養費として申請。ただし「日本の保険診療基準での換算額」が上限。
2. 保険医療機関以外での急性発症: 船上・登山中等で保険医療機関に受診できない場合
3. 鍼灸・あん摩・マッサージ(施術療養費): 医師の同意書がある場合に限り療養費として支給
4. コルセット等の治療用装具: 医師の指示に基づく装具費用
これらは社労士実務での「被保険者からの相談」でよく問われる場面であり、試験の選択式対策としても重要な知識領域です。
- 健康保険法第52条・第114条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第52条(給付の種類)・第110条(家族療養費)・第113条(家族埋葬料)・第114条(家族出産育児一時金)・第87条(療養費)・第100条(埋葬料・埋葬費)、健康保険法施行令第35条(埋葬料5万円)・第36条(出産育児一時金の額) 確認日2026-09-30(e-Gov 現行条文) 出典: 協会けんぽ 給付の種類 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/ 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

