社労士 厚生年金保険法 問17:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
厚生年金保険の受給権者が負う届出義務に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア老齢厚生年金の受給権者は、住所を変更した場合、原則として「年金受給権者住所変更届」を日本年金機構に提出する必要があるが、マイナンバーが日本年金機構に収録され基礎年金番号と紐付いている受給権者については、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)の異動情報の活用により住所変更届の提出が原則不要とされている。
- イ老齢厚生年金の受給権者で加給年金額の対象となる配偶者と離婚した場合は、「加算額・加給年金額対象者不該当届」を速やかに提出する必要がある。一方、配偶者が65歳に到達した場合は加給年金は加算されなくなるが、年金額の改定は自動的に行われるため、原則として届出の必要はない。
- ウ厚生年金保険の受給権者は、かつては毎年誕生月に「現況届(生存確認)」の提出が必要であったが、マイナンバーを活用した住民基本台帳との連動整備により、現在は現況届の提出が原則として不要となっている。
- エ受給権者(老齢厚生年金・障害厚生年金・遺族厚生年金)が死亡した場合、その遺族は速やかに受給権者死亡届を日本年金機構に届け出なければならない。この届出は、受給権者のマイナンバーが日本年金機構に収録されている場合であっても省略することはできない。正答
- オ障害厚生年金の受給権者は、その障害の程度に変更が生じた(軽減・悪化など)と認められる場合に、障害の現状に関する届出(障害状態確認届)を提出する義務を負う。
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正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「マイナンバーが収録されている場合であっても省略することはできない」という部分です。現行の運用では、受給権者のマイナンバー(個人番号)が日本年金機構に収録されている場合、住民基本台帳ネットワークとの連動によって死亡情報が機構に通知されるため、「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出を原則として省略することができます(日本年金機構の公式運用)。「省略することはできない」とするエは誤りです。
ア(マイナ収録者は住所変更届省略可・住基ネット連動)、イ(離婚は届出必要/配偶者65歳到達は自動改定で届出不要)、ウ(現況届の原則廃止)、オ(障害状態確認届)はいずれも現行制度の正確な記述です。なお、未支給年金を併せて請求する場合は「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」の提出が必要であり、この場合は省略できない点に注意が必要です。
受給権者の届出義務一覧(厚年法第98条・日本年金機構運用):
| 届出事由 | 届出内容 | マイナンバー収録時の省略 |
|---|---|---|
| 住所変更 | 変更後の住所を届出 | 可(住基ネット連動で原則不要) |
| 氏名変更 | 変更後の氏名を届出 | 可(住基ネット連動) |
| 加給年金の対象者変動(離婚・対象者死亡・対象者の年金受給権取得等) | 加算額・加給年金額対象者不該当届を提出 | 原則不可(事案ごと個別判断) |
| 配偶者の65歳到達(加給年金停止事由) | 届出不要(自動改定) | ― |
| 受給権者の死亡 | 遺族が死亡届を提出 | 可(マイナ収録者は原則省略可。ただし未支給年金請求を併せる場合は不可) |
| 現況届(生存確認) | 生存を届出 | 原則廃止(住基ネット連動で原則不要・海外居住者等は要提出) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 受給権者の住所変更は原則として住所変更届の提出が必要だが、マイナンバーが日本年金機構に収録され基礎年金番号と紐付いている受給権者については、住基ネットの異動情報活用により提出が原則不要とされる(日本年金機構公式運用)。アは「原則必要だがマイナ収録者は省略可」という現行運用を正確に記述している。
- イ(正): 配偶者と離婚した場合は「加算額・加給年金額対象者不該当届」の提出が必要(届出漏れは過払い・返還リスク)。一方、配偶者が65歳に到達した場合は加給年金が加算されなくなるが、年金額の改定は日本年金機構が自動で行うため届出は不要(日本年金機構公式・全国市町村職員共済組合連合会FAQで明示)。イは両方の場合分けを正確に記述している。
- ウ(正): 現況届(誕生月の生存確認書類)はマイナンバーを活用した住民基本台帳との連動整備により、マイナンバー収録者の大部分について提出が原則不要となった。ただし海外居住者・マイナ未収録者は引き続き提出が必要。
- エ(誤・正答): 受給権者のマイナンバーが日本年金機構に収録されている場合、住基ネット連動により死亡情報が機構に通知されるため、「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出を原則として省略できる(日本年金機構公式)。「省略できない」は誤り。なお、未支給年金を併せて請求する場合は「死亡届兼未支給年金請求書」の提出が必要で、この場合は省略できないが、これは未支給年金請求の手続きが省略できないだけであり、「死亡届そのものをマイナ収録者でも省略できない」とするエの記述は誤りで変わらない。
- オ(正): 障害厚生年金の受給権者は、年金機構から送付される「障害状態確認届(診断書)」を指定の診察日に医師の診断を受けて提出する義務を負う(厚年法第98条・施行規則)。等級の見直し・支給停止・失権の判断に使われる。
【マイナンバー活用による届出省略の法的根拠と実務上の限界】
令和3年(2021年)以降、日本年金機構はマイナンバーを活用した住民基本台帳情報との定期照合(毎月実施)により、受給権者の生存確認・死亡情報の取得を自動化しました。この仕組みの法的根拠は:
1. 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)第19条第8号: 行政機関等の情報連携に基づき、住民基本台帳の情報(死亡・住所変更等)を年金機構が取得可能
2. 厚生年金保険法第233条の2(社会保険等番号の利用): マイナンバーを年金事務処理に活用する根拠
省略できる届出 vs 省略できない届出(マイナンバー収録時・日本年金機構公式運用):
| 届出 | 省略可否 | 理由 |
|---|---|---|
| 現況届(生存確認) | 可(原則廃止) | 住基ネット照合で生存確認が可能(海外居住者等は提出継続) |
| 死亡届(年金受給権者死亡届) | 可(マイナ収録者) | 住民票の死亡情報が住基ネット経由で機構に通知 |
| 住所変更届 | 可(マイナ収録者) | 住基ネットの異動情報活用で原則不要(成年後見・住民票と異なる居所の場合は要提出) |
| 氏名変更届 | 可(マイナ収録者) | 住基ネット連動 |
| 加給年金額対象者不該当届(離婚・対象者死亡等) | 原則不可 | 離婚・対象者の年金受給権取得等は住基ネットから自動取得困難 |
| 加給年金(配偶者65歳到達による停止) | 届出不要(自動改定) | 機構が年齢到達を内部把握し自動で年金額改定 |
【現況届廃止の「原則」と「例外」の整理】
現況届が「原則廃止」とされているにもかかわらず、以下の対象者は引き続き現況届の提出が必要です:
1. マイナンバーが収録されていない者: 年金機構に個人番号が登録されていない受給権者(国外転出者等)
2. 海外居住者: 日本の住民基本台帳に記載がないため、外国での生存確認ができない
3. 共済組合の特例対象者: 旧共済組合系の年金など、一部は独自の現況確認手続きを継続
社労士実務では、高齢の受給権者(特に海外赴任歴のある方・帰国後に住民票未登録の方)について現況届の要否を確認することが重要です。
【加給年金の届出義務と「支給停止・失権」の実務リスク】
加給年金(厚年法第44条)は、老齢厚生年金の受給権者に生計維持している配偶者・子がいる場合に加算されますが、支給停止・失権事由が発生した際には事由ごとに届出要否が分かれます。
事由ごとの届出要否(日本年金機構公式運用):
| 事由 | 届出 | 根拠 |
|---|---|---|
| 配偶者が65歳到達(振替加算へ移行) | 不要(機構が自動改定) | 年齢は機構が内部把握。届出義務なし |
| 配偶者と離婚 | 必要(加算額・加給年金額対象者不該当届) | 戸籍情報は機構自動取得対象外 |
| 配偶者・子の死亡 | 原則必要(ただし住基ネットで死亡確認できる場合は省略可。過払い防止のため連絡推奨) | マイナンバー収録時は住基ネット連動 |
| 配偶者が老齢厚生年金等(被保険者期間20年以上)の受給権を取得 | 必要 | 受給権発生情報は自動連携困難 |
届出が必要なのに漏れた場合のリスク:
| 届出漏れのケース | 生じるリスク |
|---|---|
| 配偶者と離婚したのに未届 | 加給年金の停止漏れ(過払い分の返還義務) |
| 配偶者が20年以上の厚生年金期間を持つ年金の受給権を取得したのに未届 | 加給年金の停止漏れ(過払い分の返還) |
| 配偶者・子の死亡を未届(住基ネット未連携の場合) | 失権後も加給年金を受け続ける(返還義務) |
なお、平成26年改正・平成28年改正・令和4年改正により、配偶者加給年金の支給停止要件は順次見直されており、令和4年4月以降は「配偶者が老齢厚生年金等の受給権を有するとき」は実際に受け取っていなくても加給年金が停止される運用となっている点も社労士実務で重要です。
社労士として事業主・受給権者に加給年金の届出義務を周知徹底することは、後日の返還トラブル防止につながる重要な実務指導です。
【障害状態確認届の詳細と等級変更の実務】
障害厚生年金の受給権者は、年金機構(または共済組合)から送付される「障害状態確認届(診断書)」を指定の診察日に医師の診断を受けて提出することが求められます。この確認の結果:
- 等級が下がった(障害が軽減): 年金額が減額または支給停止
- 等級が上がった(障害が悪化): 年金額が増額(等級変更請求)
- 等級が変わらない: 継続支給
障害状態確認届の提出時期は等級により異なります(1〜3年ごとの定期確認・一定の安定した障害は「永久認定」で確認不要)。社労士として障害年金受給者の支援を行う場合、この定期確認のスケジュール管理と医療機関との連携サポートが実務上の重要業務です。
<!-- 審査前書換え 2026-06-08(content-quality-officer): 旧版は「不服申立て(審査請求・再審査請求の期限)」論点でkenpo_16との実質重複かつ正答誤り(社審法第32条では再審査請求は2か月が正しいのに「2か月=誤り」として正答にしていた)。全面角度替え:不服申立てテーマを廃し「受給権者の届出義務(住所変更・加給年金対象者変動・現況届廃止・マイナンバー省略の限界)」に特化。正答エ(死亡届はマイナ収録者なら省略可=「省略できない」は誤り)。事実編集あり(届出義務の詳細・マイナンバー連動運用・加給年金届出漏れリスク)。 -->
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser・品質ゲート編集分の再検証): 論点変更(不服申立て→受給権者の届出義務)は妥当。ただし品質ゲート編集版には正答一意性に係る重大な事実誤りが含まれていたため修正実施:(1) 旧ア「住所変更は受給権者の届出義務」→修正後ア「マイナンバー収録者は住基ネット連動で住所変更届省略可」(日本年金機構公式運用)。旧版のままだとアも「誤り」となり正答が複数化していた。(2) 旧イ「配偶者65歳到達も届出義務」→修正後イ「離婚は届出必要、配偶者65歳到達は自動改定で届出不要」(日本年金機構公式・全国市町村職員共済組合連合会FAQ)。旧版のままだとイも「誤り」となり正答が複数化していた。(3) 解説standard/advancedの省略可否表・届出漏れリスク表を上記事実に整合させて全面書換。(4) 出典に公式URL6本を追加(e-Gov・年金機構FAQ群・共済連合会FAQ)。kenpo_16(不服申立て)との論点重複は完全に解消(こちらは受給権者の届出義務に特化)。正答エ(死亡届はマイナ収録者なら省略可=「省略できない」は誤り)は一意で配信可。YMYL観点クリア。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第98条(受給権者の届出)・同法施行規則(届出様式・障害状態確認届)、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)に基づく住基ネット情報連携、日本年金機構の事務処理運用 数値参照: マイナンバー収録時の死亡届・住所変更届・現況届の省略運用、配偶者65歳到達時の自動改定運用(条文・公式運用) 確認日: 2026-06-08 出典URL: - e-Gov 厚生年金保険法 https://laws.e-gov.go.jp/law/329AC0000000115 - 日本年金機構「マイナンバーが収録されている場合に省略できる届出は何ですか」 https://www.nenkin.go.jp/faq/seidozenpan/mynumber/myna_shoryaku.html - 日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140731-01.html - 日本年金機構「年金を受けている方が誕生月を迎えたとき(現況届)」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140421-11.html - 日本年金機構「年金を受けている方が年金の受取機関や住所を変更するとき」 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/tetsuduki/kyotsu/jukyu/20140421-13.html - 全国市町村職員共済組合連合会「加給年金と加給年金額対象者に係る届出について」 https://ssl.shichousonren.or.jp/pensioner/qa05.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。