社労士 厚生年金保険法 問16:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
遺族厚生年金の支給停止・失権に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア遺族厚生年金を受給している妻(配偶者)が再婚した場合、再婚の翌月から遺族厚生年金の支給が停止されるが、離婚すれば再び支給が再開される。
- イ30歳未満の妻(遺族厚生年金の受給権者)が、遺族基礎年金の受給権を有しないまま5年間遺族厚生年金を受給した場合、5年を経過した日に遺族厚生年金の受給権が消滅(失権)する。正答
- ウ遺族厚生年金を受給している配偶者(妻・夫とも)は、自身の老齢厚生年金の受給権を取得した場合であっても、遺族厚生年金と老齢厚生年金を選択することなく同時に受給することができる。
- エ遺族厚生年金を受給している子(未成年)が、父または母と養子縁組をした場合、養子縁組の翌月から遺族厚生年金の支給が停止される。
- オ遺族厚生年金の失権事由には「死亡」「直接の受給権者(配偶者・子)の婚姻」「養子縁組(直系血族・直系姻族以外との養子縁組)」が含まれるが、60歳以上の配偶者については婚姻による失権は適用されない。
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正答はイです。
イの記述は、遺族厚生年金を受給している30歳未満の妻が、遺族基礎年金の受給権を有しないまま遺族厚生年金を受給し続けた場合に、5年間の受給で受給権が消滅(失権)するという「30歳未満妻の5年有期」制度を正確に記述しています(厚生年金保険法第65条の2)。
アは誤りで、再婚した場合は支給停止ではなく失権(受給権の消滅)であり、離婚しても再開されません。ウは誤りで、65歳以降は「遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整」があり、自身の老齢厚生年金相当額は支給停止となる(選択制ではなく調整制)。オは誤りで、婚姻による失権は年齢にかかわらず(60歳以上の配偶者にも)適用されます。
遺族厚生年金の失権・支給停止・5年有期の整理(必須):
| 事由 | 効果 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 死亡 | 失権(受給権消滅) | 第63条第1項第1号 |
| 婚姻(内縁関係を含む) | 失権(支給停止ではなく失権) | 第63条第1項第3号 |
| 直系血族・直系姻族以外との養子縁組 | 失権 | 第63条第1項第4号 |
| 子・孫が18歳年度末(または20歳)到達 | 失権 | 第63条第1項第2号 |
| 30歳未満妻・遺族基礎年金非受給・5年経過 | 失権(5年有期) | 第65条の2 |
| 自身の老齢厚生年金受給(65歳以後) | 調整(老齢厚生年金相当分が停止) | 第65条の3 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 配偶者(妻)が婚姻した場合は「支給停止」ではなく「失権(受給権の消滅)」です(厚年法第63条第1項第3号)。失権後は受給権が完全に消滅するため、その後に離婚しても受給権が復活することはありません。「再婚→支給停止→離婚→再開」という誤解が典型的な引っかけです。
- イ(正): 30歳未満妻が遺族基礎年金の受給権を有しないまま5年経過した場合の失権(第65条の2)を正確に記述しています。
- ウ(誤): 65歳以後の配偶者は遺族厚生年金と老齢厚生年金を「どちらかを選択する」のではなく、「老齢厚生年金は全額受給し、遺族厚生年金のうち自身の老齢厚生年金相当額を超える部分(差額)を受給する」という調整制度が適用されます(第65条の3)。同時受給と調整受給は異なります。
- エ(誤): 子が父または母と養子縁組をした場合は、「直系血族または直系姻族との養子縁組」に該当するため、失権事由になりません(直系血族・直系姻族との養子縁組は失権事由から除外されています)。
- オ(誤): 婚姻による失権(第63条第1項第3号)には年齢制限がなく、60歳以上の配偶者も婚姻すれば失権します。
【「30歳未満妻の5年有期」制度の創設背景(2007年改正)】
30歳未満の妻に遺族厚生年金が5年有期とされた制度(厚年法第65条の2)は、2007年(平成19年)改正で導入されました。制度創設前は、若い妻(例えば30歳未満の妻が子のいない状態)でも遺族厚生年金は生涯受給できる終身制でした。
制度設計の変更理由:
1. 就労・自立の促進: 若い妻が終身の遺族厚生年金によって就労意欲を失うことを防ぎ、自立した生活設計を促す。
2. 財政的考慮: 30歳未満の若い妻への終身支給は、平均余命を考えると非常に長期の給付となり財政的負担が大きい。
3. 子のいない場合の保障の位置づけ: 子がいる場合は遺族基礎年金が受給されるため、「子なし・30歳未満」の妻への遺族厚生年金を有期とすることで、若い世代の自立支援と子育て家庭の保護を両立させる。
【「遺族基礎年金の受給権を有しないまま5年」の正確な要件解析】
5年有期の適用要件を精密に分析します:
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 妻の年齢 | 受給権取得日または30歳到達前から「30歳未満」 |
| 遺族基礎年金の有無 | 「有しないまま」= 受給権取得から5年間、一度も遺族基礎年金の受給権を取得しなかった場合 |
| 5年の起算点 | 遺族厚生年金の受給権取得日 |
| 5年経過の効果 | 受給権消滅(失権)—支給停止ではなく失権 |
重要な例外:5年の期間中に子が生まれて遺族基礎年金の受給権を取得した場合、5年有期が解除されます(子が18歳年度末まで遺族基礎年金とともに遺族厚生年金も受給できる)。「遺族基礎年金の受給権を有しないまま」という条件が失われるためです。
【失権・支給停止の区別が重要な理由(試験・実務)】
失権と支給停止の区別は実務上も試験上も重要です:
| 違い | 失権 | 支給停止 |
|---|---|---|
| 受給権 | 消滅(受給権がなくなる) | 存続(受給権は残る) |
| 再開の可否 | 不可(受給権が消滅) | 可(事由がなくなれば再開) |
| 婚姻の場合 | 失権(再婚後の離婚→再開不可) | — |
| 就職(所得増加等) | — | 支給停止(事由消滅で再開可) |
選択肢アの「再婚→支給停止→離婚→再開」という誤解は、「失権を支給停止と混同した」ミスです。この混同を防ぐための暗記法:「結婚(婚姻)と死亡は一発失権・取り消し不可」という整理が効果的です。
【65歳以後の遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整メカニズム(ウの補足)】
65歳以後の遺族厚生年金受給権者が自身の老齢厚生年金の受給権を取得した場合(選択肢ウ関連)の計算方法:
```
支給される遺族厚生年金の額 = 遺族厚生年金の本来額 − 自身の老齢厚生年金相当額
(マイナスになる場合は遺族厚生年金=ゼロ・老齢厚生年金のみ受給)
```
ただし「短期要件」と「長期要件」によって遺族厚生年金の本来額の計算が異なり、加えて「自身の老齢厚生年金+経過的加算」との比較も必要です。
具体的には:
- 遺族厚生年金(長期要件・遺族が受け取る場合)= 被保険者の報酬比例部分の3/4
- 自身の老齢厚生年金が高い場合、実質的に遺族厚生年金の「差額」がゼロになることも
この調整は「選択」ではなく「算定上の調整(一方が他方を相殺)」であり、選択肢ウの「同時に受給することができる」(調整なしで2つとも満額という意味の誤解)が誤りとなります。
社労士実務では、65歳以後の遺族厚生年金受給者の年金額改定(自身の老齢厚生年金が発生することによる調整申請)の手続きが必要で、これを見落とすと過誤支払い(受給しすぎ)が生じます。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 失権事由(厚年法第63条第1項各号)・婚姻は失権(停止ではない)、30歳未満妻5年有期(第65条の2・H19改正)、65歳以後の遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整(第64条の2・第65条の3)、直系血族・直系姻族との養子縁組は失権事由から除外を確認。CHUKOREI_KAFU_KASAN=635,500円(令和8年度)整合。設問正答イ(正しい:30歳未満5年有期失権)確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第63条(遺族厚生年金の失権)・第65条の2(30歳未満妻の5年有期)・第65条の3(支給停止) 数値参照: CHUKOREI_KAFU_KASAN={{CHUKOREI_KAFU_KASAN}}(参照値)・(30歳未満5年有期・婚姻=失権=条文値) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。