問題
遺族厚生年金の支給停止・失権に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はイです。
イの記述は、遺族厚生年金を受給している30歳未満の妻が、遺族基礎年金の受給権を有しないまま遺族厚生年金を受給し続けた場合に、5年間の受給で受給権が消滅(失権)するという「30歳未満妻の5年有期」制度を正確に記述しています(厚生年金保険法第63条第1項第5号イ)。
アは誤りで、再婚した場合は支給停止ではなく失権(受給権の消滅)であり、離婚しても再開されません。ウは誤りで、65歳以降は「遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整」があり、自身の老齢厚生年金相当額は支給停止となる(選択制ではなく調整制)。オは誤りで、婚姻による失権は年齢にかかわらず(60歳以上の配偶者にも)適用されます。
遺族厚生年金の失権・支給停止・5年有期の整理(必須):
| 事由 | 効果 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 死亡 | 失権(受給権消滅) | 第63条第1項第1号 |
| 婚姻(内縁関係を含む) | 失権(支給停止ではなく失権) | 第63条第1項第2号 |
| 直系血族・直系姻族以外との養子縁組 | 失権 | 第63条第1項第3号 |
| 子・孫が18歳年度末(または20歳)到達 | 失権 | 第63条第2項 |
| 30歳未満妻・遺族基礎年金非受給・5年経過 | 失権(5年有期) | 第63条第1項第5号 |
| 自身の老齢厚生年金受給(65歳以後) | 調整(老齢厚生年金の額に相当する部分が停止) | 第64条の2 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 配偶者(妻)が婚姻した場合は「支給停止」ではなく「失権(受給権の消滅)」です(厚年法第63条第1項第2号)。失権後は受給権が完全に消滅するため、その後に離婚しても受給権が復活することはありません。「再婚→支給停止→離婚→再開」という誤解が典型的な引っかけです。
- イ(正): 30歳未満妻が遺族基礎年金の受給権を取得しないまま5年経過した場合の失権(第63条第1項第5号イ)を正確に記述しています。
- ウ(誤): 65歳以後の配偶者は遺族厚生年金と老齢厚生年金を「どちらかを選択する」のではなく、「老齢厚生年金は全額受給し、遺族厚生年金のうち自身の老齢厚生年金の額に相当する部分は支給停止される(差額を受給する)」という調整制度が適用されます(第64条の2)。調整なしに両方を満額で受けることはできません。
- エ(誤): 子が父または母と養子縁組をした場合は、「直系血族または直系姻族との養子縁組」に該当するため、失権事由になりません(直系血族・直系姻族との養子縁組は失権事由から除外されています)。
- オ(誤): 婚姻による失権(第63条第1項第2号)には年齢制限がなく、60歳以上の配偶者も婚姻すれば失権します。
【「30歳未満妻の5年有期」制度の創設背景】
30歳未満の妻に遺族厚生年金が5年有期とされた制度(厚年法第63条第1項第5号)は、年金制度の改正で後から導入されたものです。導入前は、若い妻(例えば30歳未満の妻が子のいない状態)でも遺族厚生年金は婚姻などの失権事由に当たらない限り受給を続けられる仕組みでした。
制度設計の変更理由:
1. 就労・自立の促進: 若い妻が終身の遺族厚生年金によって就労意欲を失うことを防ぎ、自立した生活設計を促す。
2. 財政的考慮: 30歳未満の若い妻への終身支給は、平均余命を考えると非常に長期の給付となり財政的負担が大きい。
3. 子のいない場合の保障の位置づけ: 子がいる場合は遺族基礎年金が受給されるため、「子なし・30歳未満」の妻への遺族厚生年金を有期とすることで、若い世代の自立支援と子育て家庭の保護を両立させる。
【「遺族基礎年金の受給権を有しないまま5年」の正確な要件解析】
5年有期の適用要件を精密に分析します:
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 妻の年齢 | 遺族厚生年金の受給権を取得した当時「30歳未満」 |
| 遺族基礎年金の有無 | 同一の支給事由に基づく遺族基礎年金の受給権を取得しない場合(第63条第1項第5号イ) |
| 5年の起算点 | 遺族厚生年金の受給権取得日 |
| 5年経過の効果 | 受給権消滅(失権)—支給停止ではなく失権 |
もう一つの型:遺族基礎年金と遺族厚生年金を受けていた妻が、30歳に到達する前に遺族基礎年金の受給権を失ったときは、その消滅の日から5年を経過したときに遺族厚生年金も失権します(同号ロ)。子がいて遺族基礎年金を受けている間は5年有期の対象になりません。
【失権・支給停止の区別が重要な理由(試験・実務)】
失権と支給停止の区別は実務上も試験上も重要です:
| 違い | 失権 | 支給停止 |
|---|---|---|
| 受給権 | 消滅(受給権がなくなる) | 存続(受給権は残る) |
| 再開の可否 | 不可(受給権が消滅) | 可(事由がなくなれば再開) |
| 婚姻の場合 | 失権(再婚後の離婚→再開不可) | — |
| 夫・父母・祖父母が60歳未満 | — | 支給停止(60歳に達すれば支給。夫が遺族基礎年金の受給権を有するときは停止されない:第65条の2) |
選択肢アの「再婚→支給停止→離婚→再開」という誤解は、「失権を支給停止と混同した」ミスです。この混同を防ぐための暗記法:「結婚(婚姻)と死亡は一発失権・取り消し不可」という整理が効果的です。
【65歳以後の遺族厚生年金と老齢厚生年金の調整メカニズム(ウの補足)】
65歳以後の遺族厚生年金受給権者が自身の老齢厚生年金の受給権を取得した場合(選択肢ウ関連)の計算方法:
```
支給される遺族厚生年金の額 = 遺族厚生年金の本来額 − 自身の老齢厚生年金相当額
(マイナスになる場合は遺族厚生年金=ゼロ・老齢厚生年金のみ受給)
```
ただし「短期要件」と「長期要件」によって遺族厚生年金の本来額の計算が異なり、加えて「自身の老齢厚生年金+経過的加算」との比較も必要です。
具体的には:
- 遺族厚生年金(長期要件・遺族が受け取る場合)= 被保険者の報酬比例部分の3/4
- 自身の老齢厚生年金が高い場合、実質的に遺族厚生年金の「差額」がゼロになることも
この調整は「選択」ではなく「算定上の調整(一方が他方を相殺)」であり、選択肢ウの「同時に受給することができる」(調整なしで2つとも満額という意味の誤解)が誤りとなります。
社労士実務では、65歳以後の遺族厚生年金受給者の年金額改定(自身の老齢厚生年金が発生することによる調整申請)の手続きが必要で、これを見落とすと過誤支払い(受給しすぎ)が生じます。
- 厚生年金保険法第63条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第63条(遺族厚生年金の失権。30歳未満の妻の5年有期は第1項第5号)・第64条の2(65歳以上の老齢厚生年金との調整) 参照した数値: 中高齢寡婦加算 年額(令和8年度):635,500円/年(参照値)・(30歳未満5年有期・婚姻=失権=条文値) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

