社労士 厚生年金保険法 問15:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
障害厚生年金の事後重症・初診日要件・併合改定に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア事後重症による障害厚生年金の請求は、障害認定日(初診日から1年6か月後等)においては障害等級(1〜3級)に該当していなかった者が、その後65歳に達する日の前日までの間に状態が悪化して障害等級に該当した場合に請求できる。
- イ事後重症による障害厚生年金の請求は、65歳に達する日の前日までに行わなければならず、65歳以後に状態が悪化しても事後重症請求はできない。
- ウ障害厚生年金を受給している者の障害の程度が変化した場合、受給権者の請求または厚生労働大臣の職権によって改定が行われる。受給権者が請求による改定を求める場合は、現に受けている障害厚生年金の支給事由となった傷病の初診日から起算して1年6か月を経過していれば請求できる。正答
- エ同一の受給権者が、既存の障害厚生年金を受給している状態で新たな障害(別の傷病)が発生した場合、両障害を合わせた程度で新たな障害厚生年金を受給する「併合改定」が行われることがある。
- オ事後重症による障害厚生年金の初診日要件は、初診日において厚生年金保険の被保険者であることが必要であり、被保険者期間中に初診日がなければ事後重症請求は認められない。
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正答はウ(誤っている記述)です。
ウの誤りは「受給権者が請求による改定を求める場合は、現に受けている障害厚生年金の支給事由となった傷病の初診日から起算して1年6か月を経過していれば請求できる」という後半の条件記述です。
障害厚生年金の額の改定請求(状態悪化による等級の引き上げ請求)は、「現に受けている障害厚生年金の受給権取得日(または前回の額の改定日)から起算して1年を経過した日以後」に請求できます(厚年法第52条第3項)。「初診日から1年6か月」という基準は障害認定日の計算方法であり、改定請求の時期基準ではありません。なお、平成26年4月以降は、施行規則で定める「明らかな障害程度の増進」22項目に該当する場合は1年待たずに改定請求が可能(同項ただし書)です。
ア・イ・エ・オはいずれも正しい記述です。
事後重症・額改定・併合改定の比較(必須整理):
| 制度 | 内容 | 請求期限・要件 |
|---|---|---|
| 事後重症請求 | 認定日に障害等級非該当→後に等級該当 | 65歳到達日の前日まで |
| 額の改定(悪化) | 受給中に状態が悪化→等級引上げ | 受給権取得日/前回改定日から1年後以後 |
| 額の改定(軽快) | 状態が軽くなった→等級引下げ(3級→手当金ではない・失権要件あり) | 厚労大臣職権または受給権者請求 |
| 併合改定 | 複数の障害がある場合の合算等級で改定 | 新障害が発生した場合に申請/職権 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 事後重症の要件「認定日に障害等級非該当→65歳前日までの間に等級該当」は正確です(厚年法第47条の2第1項)。
- イ(正): 事後重症請求は「65歳に達する日の前日まで」という期限があります。65歳以後は事後重症を請求できません。
- ウ(誤・正答): 額の改定請求の要件は「受給権取得日または直前の改定日から1年経過後」(厚年法第52条第3項本文)。「初診日から1年6か月」は障害認定日の計算基準(厚年法第47条第2項)であり、改定請求の時期基準ではありません。これが典型的な出題の引っかけです。例外として、施行規則で定める「明らかな増進」22項目該当時は1年経過前でも請求可能(同項ただし書・平成26年4月施行)。
- エ(正): 同一受給権者に複数の障害がある場合の「併合改定」は、両障害を合算した程度(併合認定)で年金額を改定する制度です(厚年法第48条)。
- オ(正): 事後重症請求の初診日要件は「初診日において厚生年金保険の被保険者であること」(または被保険者期間中に初診日があること)。被保険者資格喪失後の初診日では事後重症請求の基礎となりません。
【障害厚生年金の事後重症制度の立法趣旨と「65歳前日」という期限の意味】
障害認定日(初診日から1年6か月後、または1年6か月以内に症状が固定した日)時点では障害等級に該当しなかった者が、その後に悪化して等級に該当した場合に初めて請求できる制度が「事後重症」です。
「65歳に達する日の前日まで」という期限は以下の理由によります:
1. 老齢年金との代替関係: 65歳以後は老齢厚生年金が発生し、「障害年金ではなく老齢年金で生活保障が行われる」という制度設計があります。
2. 初診日要件の継続性: 事後重症の初診日は厚生年金被保険者期間中でなければなりませんが、被保険者期間は通常70歳上限であり、65歳以後は「受給権があれば在職老齢年金で処理」という設計です。
3. 給付の重複防止: 65歳以後は老齢厚生年金と障害厚生年金の両方の受給権が発生し得ますが、65歳未満の事後重症請求に限定することで制度の設計を简素化しています。
【額の改定請求「1年経過要件」の正確な起算点と誤答パターン】
選択肢ウの誤りは、額の改定請求(状態悪化による等級引上げ)の時期基準が「初診日から1年6か月」という誤解に基づいています。
| 時期基準 | 用途 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 初診日から1年6か月(または症状固定日) | 障害認定日の計算(障害年金の受給権の発生時点) | 厚年法第47条第2項 |
| 受給権取得日から1年、または前回改定日から1年 | 額の改定請求の可能時期(悪化による等級引上げ請求) | 厚年法第52条第3項 |
この2つの「1年(または1年6か月)」の混同が、社労士試験で頻出の誤答パターンです。
【障害厚生年金の等級と最低保障額】
3級・障害手当金の最低保障額の確認:
- 障害厚生年金3級最低保障額(S31.4.2以後): 635,500円/年(令和8年度)
- 障害手当金最低保障額: 1,271,000円(令和8年度)
事後重症や併合改定により等級が変化した場合、変更後の等級に対応した最低保障額が適用されます。3級から2級への改定(悪化)、または2級から3級への引下げ(軽快・一部停止要件)でも、最低保障額の適用状況が変わるため、改定後の年金額計算で最低保障額との比較が必要です。
【事後重症と「当該障害を支給事由とする障害厚生年金を受けている場合」の特例】
事後重症請求には重要な特例があります:当該傷病を支給事由とする障害厚生年金(または障害手当金)を既に受給している場合には、原則として事後重症請求はできません(厚年法第47条の2第1項ただし書)。これは「同じ傷病について二重に給付を受けられない」という趣旨によるものです。
ただし、障害厚生年金3級を受給している者が悪化して1級・2級相当になった場合は「事後重症」ではなく「額の改定請求(第52条)」で対応します。この「事後重症 vs 額の改定請求」の区別が実務上・試験上の重要ポイントです。
【併合認定・障害基礎年金との関係(複数障害の総合整理)】
同一受給権者に複数の障害がある場合の取扱いは複数のパターンがあります:
| パターン | 内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 同一傷病で複数の後遺症 | 総合的に等級認定 | 一つの障害厚生年金(合算等級) |
| 別傷病で前後に障害発生 | 後発障害発生時に「併合認定」を適用可 | 高い方の等級(または合算等級)で改定 |
| 障害厚生年金3級受給中に別傷病2級発生 | 後発障害が新たな受給権発生 or 改定 | 高い方の給付(2級)を支給(3級は停止) |
複数障害の併合認定では、「1級と2級を足しても1級を超えない(1級が最高)」という点、および「障害基礎年金の等級(1・2級のみ)と障害厚生年金の等級(1〜3級・障害手当金)」が異なる点に注意が必要です。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 事後重症(第47条の2・65歳到達日前日まで)、額の改定請求(第52条第3項本文・受給権取得日または前回改定日から1年経過後)、平成26年4月施行の22項目「明らかな増進」例外(同項ただし書)、併合改定(第48条)を厚年法・施行規則で確認。設問正答ウ(誤り:初診日から1年6か月という基準混同)確定。SHOUGAI_KOSEI_3KYU_MIN_NEW・SHOUGAI_TEATEKIN_MIN_NEWは令和8年度volatile_master登録済。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第47条の2(事後重症)・第52条(額の改定)・第48条(複数の障害の場合の取扱い) 数値参照: SHOUGAI_KOSEI_3KYU_MIN_NEW={{SHOUGAI_KOSEI_3KYU_MIN_NEW}}(令和8年度・障害厚生年金3級最低保障額)・(65歳・1年6か月=条文値) 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。