社労士 厚生年金保険法 問14:厚生年金保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
厚生年金保険の適用事業所・任意単独被保険者・高齢任意加入被保険者に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア適用事業所に使用される70歳以上の者は、老齢年金の受給権の有無にかかわらず、被保険者資格は喪失しているが、引き続き在職老齢年金の支給停止調整の対象になるため「70歳以上被用者」として取り扱われ、事業主は資格喪失等届とは別に算定基礎届等の届出義務を負う。
- イ任意単独被保険者(適用事業所以外の事業所で使用される者が厚生大臣の認可を受けて被保険者となる制度)は、事業主の同意なしに本人の申出だけで被保険者資格を取得することができる。
- ウ高齢任意加入被保険者(70歳以上で老齢年金受給権がない者が任意加入する制度)の保険料は、事業主が同意する場合は労使折半(本人と事業主が半額ずつ負担)となるが、事業主が同意しない場合は本人が全額負担する。正答
- エ任意単独被保険者は、被保険者期間中にいつでも厚生大臣に対して申出を行うことで被保険者資格を喪失することができ、申出の翌月1日に資格を喪失する。
- オ高齢任意加入被保険者は、老齢年金の受給権を取得した時点で自動的に被保険者資格を喪失し、以後は任意加入の継続ができない。
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正答はウです。
高齢任意加入被保険者(70歳以上で老齢年金受給権がない者)の保険料負担は:
- 事業主が同意する場合: 通常の厚生年金保険料と同様に労使折半(本人と事業主が半額ずつ)
- 事業主が同意しない場合: 本人が全額負担
この点は厚生年金保険法附則第4条の3第6項・第7項に規定されており、ウはこれを正確に記述しています。
アは一部誤りを含み(70歳以上被用者の届出義務の詳細)、イは誤りで任意単独被保険者は事業主の同意が必要です(本人の申出だけでは不可)。オは誤りで高齢任意加入被保険者が老齢年金の受給権を取得した時点で喪失というのは正しいですが「以後継続できない」という表現は正確ではなく、喪失は自動的に起こります。
適用事業所・任意単独・高齢任意加入の3分類(必須整理):
| 区分 | 根拠条文 | 対象者 | 保険料負担 | 加入条件 |
|---|---|---|---|---|
| 強制被保険者 | 厚年法第9条 | 適用事業所の70歳未満従業員 | 労使折半 | 強制 |
| 任意単独被保険者 | 厚年法第10条 | 適用事業所以外の事業所の者 | 労使折半(事業主同意必須) | 任意(事業主同意+厚生大臣認可) |
| 高齢任意加入被保険者 | 附則第4条の3 | 70歳以上で老齢受給権なし | 事業主同意あり=折半/同意なし=本人全額 | 任意(本人申出) |
| 70歳以上被用者 | 厚年法第27条の2 | 70歳以上・受給権あり/なしを問わず適用事業所で使用 | 保険料なし | 強制的な取扱い(ただし保険料徴収対象外) |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 70歳以上被用者は在職老齢年金の調整対象(正)ですが、「算定基礎届等の届出義務を負う」という記述の範囲が不正確です。70歳以上被用者についても「70歳到達届」「算定基礎届」等の届出は必要ですが、ア全体の記述として誤りの可能性があります(出題上の論点はイとの比較でウが正解)。
- イ(誤): 任意単独被保険者は「本人の申出」「事業主の同意」「厚生大臣(厚生労働大臣)の認可」の3要件がすべて必要です(厚年法第10条第1項)。事業主の同意なしには成立しません。
- ウ(正): 高齢任意加入の保険料は「事業主同意あり=折半・同意なし=全額本人負担」という規定通りです(附則第4条の3第6項・第7項)。
- エ(誤): 任意単独被保険者が被保険者資格を任意に喪失するためには「事業主の同意」を得たうえで厚生労働大臣の認可を受ける必要があります(厚年法第11条)。本人の申出だけでは喪失できず、「申出の翌月1日に喪失」とする点も誤り(認可日に喪失するのが原則)です。
- オ(誤): 高齢任意加入被保険者は老齢年金の受給権を取得した時点で「資格を喪失する(当然喪失・附則第4条の3第4項)」という点は正しいですが、「以後継続できない」という表現が正確ではありません(喪失後は高齢任意加入の制度趣旨上再加入はできませんが、「継続できない」という表現より「当然喪失する」が正確です)。
【任意単独被保険者制度の歴史的背景と現状】
任意単独被保険者制度(厚生年金保険法第10条)は、「適用事業所以外の事業所(個人事業主が5人未満の個人事業、農業・林業・水産業等の一部非適用業種)で使用される者が、事業主の同意と厚生大臣の認可を得て厚生年金に加入できる」制度です。
この制度は制度創設当初(1954年〜)から存在しますが、現代では次の理由で活用が限られています:
1. 適用事業所の拡大: 特定適用事業所(51人以上・2024年10月施行)・任意特定適用事業所への移行など、強制加入の範囲が段階的に拡大しており、任意単独での加入が必要なケースが減少。
2. 事業主の同意要件: 非適用事業所の事業主は厚生年金保険料の事業主負担分を想定しておらず、同意を得ることが困難なケースが多い。
3. iDeCo・国民年金基金の普及: 第1号被保険者として自営業者向けの上乗せ年金制度が整備されたため、任意単独による厚生年金加入の相対的な優位性が低下。
【高齢任意加入被保険者の「保険料全額本人負担」と実務上の問題】
事業主が同意しない場合の高齢任意加入被保険者は保険料を全額本人負担します(通常の労使折半の倍)。この負担の重さから事業主同意が得られず加入を断念するケースも多く、制度の無年金・低年金防止という趣旨が実現しにくい問題があります。保険料率の具体的な計算は任意単独被保険者(本問イ・エ)の事業主同意要件と同じ構造で理解できます。
【70歳以上被用者の取扱い(在職老齢年金との関係)】
70歳以上被用者(老齢年金受給権者)は保険料の徴収対象外ですが、在職老齢年金の支給停止調整(ZAIRO_TEISHI_CHOSEI=65万円)の対象となります。これは「保険料は払わないが、就労による報酬があれば年金の一部が停止される可能性がある」という特殊な立場です。
事業主には70歳以上被用者についても「70歳到達届」「算定基礎届(7月)」の届出義務があります(保険料徴収がないため「資格取得届」ではなく「70歳到達届」として処理)。選択肢アで「算定基礎届等の届出義務」という記述があるのはこの点を指しており、おおむね正確ですが「資格喪失等届とは別に」という表現が不正確(70歳到達=資格喪失後の別制度として届出)です。
【適用拡大と任意単独・高齢任意加入の将来展望】
2026年10月の社会保険適用拡大(賃金要件撤廃)・2035年10月(企業規模要件段階撤廃)と段階的に強制加入の範囲が拡大するにつれて、任意単独被保険者が必要なケースは更に減少します。一方、高齢任意加入被保険者(70歳以上・老齢受給権なし)は、70代での就労継続が普及するにつれて制度活用のニーズが高まる可能性があります。
社労士試験の観点では、適用拡大の各施行日(令和8年度試験基準日2026-04-10時点)と任意単独・高齢任意加入の要件を精確に区別することが求められます。「任意加入=自由に入れる」という誤解(事業主同意・大臣認可が必要という手続きを見落とす)が典型的な誤答パターンです。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 高齢任意加入の保険料負担(事業主同意あり=折半・なし=本人全額)は厚年法附則第4条の3第6項・第7項、任意単独被保険者の事業主同意要件(第10条)・任意脱退の事業主同意(第11条)、70歳到達による当然喪失(第12条)、70歳以上被用者(第27条の2以下)を確認。設問エの説明(事業主同意が任意脱退に必要)に修正済。設問正答ウ確定。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法附則第4条の3(高齢任意加入被保険者)・第10条(任意単独被保険者)・第12条(70歳到達による資格喪失)・第27条の2以下(70歳以上被用者) 数値参照: 70歳・任意単独の事業主同意要件・高齢任意加入の保険料分担方式=条文値 確認日: 2026-06-08 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。