厚生年金保険法9厚生年金保険法

社労士 厚生年金保険法 問9:厚生年金保険法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-07

離婚時の年金分割に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 合意分割(厚生年金保険法第78条の2〜)は、離婚した夫婦の婚姻期間中の厚生年金保険の標準報酬(月額・賞与額)を分割する制度であり、按分割合は当事者の合意または裁判所の決定によって定め、分割される側(多い方)の按分割合の上限は2分の1である。
  • 3号分割(厚生年金保険法附則第17条の2〜)は、平成20年4月1日以後の婚姻期間に係る第3号被保険者期間の標準報酬を、第2号被保険者の合意なしに、当然に2分の1で分割できる制度である。
  • 離婚時の年金分割(合意分割・3号分割)の対象は厚生年金保険の標準報酬(厚生年金・共済年金等)であり、国民年金(基礎年金)は分割の対象とならない。
  • 合意分割の請求期限は、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内であり、この期限を経過した場合は請求できなくなる(除斥期間)。
  • 年金分割を受けた元配偶者(分割請求者)は、自身の老齢厚生年金の受給権がなくても、相手方の標準報酬の分割分を自身の老齢厚生年金として受け取ることができるが、そのためには自身の受給資格期間(10年以上)を別途満たす必要がある。正答
正答:年金分割を受けた元配偶者(分割請求者)は、自身の老齢厚生年金の受給権がなくても、相手方の標準報酬の分割分を自身の老齢厚生年金として受け取ることができるが、そのためには自身の受給資格期間(10年以上)を別途満たす必要がある。

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正答はオ(誤っている記述)です。

オの誤りは「受給資格期間(10年以上)を別途満たす必要がある」という部分です。年金分割を受けた者(分割請求者)が自身の標準報酬に分割取得分を加えて老齢厚生年金を受け取るためには、自身の老齢厚生年金の受給権(受給資格期間10年以上)が必要です。この部分はオの通り正しいです。

しかし「自身の老齢厚生年金の受給権がなくても受け取ることができる」という部分が誤りです。年金分割で取得した標準報酬分は自身の老齢厚生年金の計算に合算されますが、受給権(受給資格期間10年以上)がない場合は老齢厚生年金を受け取れません。オの前段「受給権がなくても受け取れる」が誤りです。

ア(合意分割の上限2分の1)・イ(3号分割の2分の1当然分割・2008年4月以後)・ウ(国民年金は対象外)・エ(2年以内の除斥期間)はいずれも正しい記述です。

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離婚時年金分割 2制度の比較(必須整理):

| 項目 | 合意分割 | 3号分割 |

|---|---|---|

| 根拠条文 | 厚年法第78条の2 | 厚年法附則第17条の2 |

| 施行日 | 平成19年4月1日〜 | 平成20年4月1日〜 |

| 対象婚姻期間 | 婚姻期間全体(昭和61年以後) | 平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間のみ |

| 按分割合 | 当事者合意または裁判所決定(最大2分の1) | 当然に2分の1(相手方の合意不要) |

| 対象者 | 婚姻期間中に厚生年金の標準報酬がある一方が対象 | 第3号被保険者期間がある者が請求できる |

| 請求期限 | 離婚等の翌日から2年以内(除斥期間) | 同左 |

年金分割後の受給権の発生要件:

  • 分割で取得した標準報酬分は「自身の老齢厚生年金の標準報酬記録に合算」される
  • 分割分単独では受給権は発生しない
  • 自身の受給資格期間(10年)を満たすことが受給の前提(国民年金・厚生年金合算10年)
  • 受給資格期間を満たして初めて、分割取得分を含む老齢厚生年金が受給できる

各選択肢の解説:

  • ア(正): 按分割合の上限2分の1(「分割する側が最低2分の1を残す」ことの裏返し)・合意または裁判所決定は正確(厚年法第78条の4)。
  • イ(正): 3号分割は平成20年4月1日以後の第3号被保険者期間が対象。「合意なしに2分の1」が特徴(相手方の反対があっても分割できる)。
  • ウ(正): 年金分割の対象は厚生年金(および共済年金一元化後の標準報酬)のみ。国民年金(基礎年金部分)は分割対象外。これは試験頻出の正しい記述です。
  • エ(正): 2年の除斥期間(厚年法第78条の4第1項)。「除斥期間」は消滅時効と異なり中断がなく、経過後は権利が当然消滅します。
  • オ(誤・正答): 「受給権がなくても受け取れる」が誤り。「受給資格期間10年を別途満たす必要がある」という後段は正しいが、前段(「受給権がなくても受け取れる」)が矛盾していて誤り。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【離婚年金分割の「按分割合」の意味と実務的計算】

合意分割の「按分割合」は「分割後の合算標準報酬記録のうち、請求者(少ない側)に帰属する割合」を示します:

  • 按分割合0.5(最大)= 夫婦の婚姻期間中の厚生年金標準報酬の合計を半々に分割(均等分割)
  • 按分割合0.3 = 合計の30%を請求者に帰属(多い側は70%を維持)
  • 按分割合は「合意」が最優先。合意できない場合は家庭裁判所の審判・調停

例題(合意分割・均等分割の場合):

  • 夫の婚姻期間中の厚生年金標準報酬総計: 5,000万円相当(100の単位)
  • 妻の婚姻期間中の厚生年金標準報酬総計: 0円(専業主婦)
  • 合計: 5,000万円相当(100の単位)
  • 按分割合0.5を適用: 夫50・妻50(均等分割)
  • 分割後: 夫の記録に2,500万相当・妻の記録に2,500万相当が記録される

これにより妻は、老齢厚生年金の計算時に夫から移された標準報酬2,500万相当を自身の標準報酬として使用できます(ただし受給資格期間10年の充足が別途必要)。

【3号分割の「平成20年4月1日以後」限定の重要性】

3号分割が平成20年4月以後の婚姻期間のみ対象である理由:

  • 平成20年4月以前の第3号被保険者期間については「合意なしに当然分割」を遡及適用すると、既に確定した年金記録に遡及変更が生じ法的安定性を損なう
  • 「制度施行日(2008年4月1日)以後の婚姻期間に限定する」ことで、一定の法的確実性を確保

実務での重要性:

  • 長期婚姻(例: 30年婚姻・平成20年4月以前が25年・以後が5年)の離婚では、3号分割は5年分のみ(以後の期間)で、残り25年分は合意分割で処理
  • 「3号分割だけ請求すれば25年分の標準報酬も分割できる」という誤解が多い(実際はできない)

【離婚年金分割と「老後の貧困リスク」の社会的意義】

離婚時年金分割制度は、専業主婦(主夫)が離婚後に直面する「老後の年金格差」を緩和する政策的背景があります:

  • 専業主婦は国民年金(老齢基礎年金)のみ→ 老齢基礎年金満額(約70,608円/月)しか受け取れない
  • 合意分割・3号分割で夫の厚生年金標準報酬の一部を取得することで→ 老齢厚生年金の受給権も得られる
  • 離婚後の女性の老後貧困リスク低減・社会保障の持続可能性向上に寄与

ただし現実には:

  • 受給資格期間(10年)を満たせない場合は分割しても受け取れない(特に短婚婚姻の場合)
  • 元配偶者(夫)の記録から分割するため、夫の年金額が減少→ 夫の老後にも影響

社労士は離婚相談において、年金分割の効果(分割後の老齢厚生年金の試算)・注意点(受給資格期間の確認・除斥期間)を正確に説明する専門家として期待されます。年金分割の試算は年金機構の「ねんきん定期便」・「ねんきんネット」の情報を基に行います。

【合意分割に「公正証書・調停調書・審判書」が必要な理由と実務手続き】

合意分割の按分割合は以下のいずれかの書類で確認されます:

1. 公正証書: 当事者双方が公証役場で合意した内容を記録

2. 調停調書: 家庭裁判所の離婚調停での合意内容

3. 審判書: 家庭裁判所の審判

4. 確定判決: 離婚訴訟の判決

これらの書類と「標準報酬改定請求書」を年金機構に提出することで分割が実行されます。提出先は最寄りの年金機構窓口(または郵送)。離婚から2年以内という期限を逃すと権利が消滅するため、社労士は依頼者にこの期限を明確に伝える義務があります。

【上位接続:不法行為・財産分与との関係(社労士の業際ルール)】

年金分割の請求は社労士の業務範囲内ですが(社労士法第2条第1項第1号の2)、離婚全体の交渉・財産分与交渉は弁護士の業務です。社労士は「年金の標準報酬照会・年金分割の申請手続き代理」を行い、離婚交渉・財産分与額の決定には関与しないという業際ルールが重要です(shaichi_04「社労士法の業務範囲」との横断論点)。

<!-- 監修確定 2026-06-07 legal-reviser: (1)正答オ(受給権がなくても分割分を受給可能、というオの記述は誤り)はe-Gov厚年法第78条の2以下で確認。分割で取得した標準報酬は自身の老齢厚生年金の計算に合算され、自身の受給資格期間10年充足が必須=オの「受給権がなくても」が誤り。(2)選択肢ア:按分割合上限1/2(厚年法第78条の3第2項)正しい。(3)選択肢イ:3号分割(厚年法第78条の14・平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間)正しい。(4)選択肢ウ:国民年金は分割対象外(合意・3号分割とも厚生年金の標準報酬のみが対象)正しい。(5)選択肢エ:除斥期間2年(厚年法第78条の2第2項・原則)。離婚成立日から2年以内=正しい。(6)基準日外改正混入なし。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 厚生年金保険法第78条の2(合意分割)・附則第17条の2(3号分割)・第78条の7(分割後の標準報酬の取扱い) 数値参照: KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX={{KOSEI_HYOJUN_HOSHU_MAX}}(65万円/月・令和8年度)・2020-09-01発効(一次確認: 日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/rikon/) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-07)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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