社労士 労働一般常識 問12:労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
厚生労働省が実施する賃金構造基本統計調査(賃金センサス)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和5年(2023年)調査結果(令和6年2月公表)を参照すること。
- ア賃金構造基本統計調査は、厚生労働省が毎年1月に調査期間を設けて実施する統計調査であり、常用労働者10人以上の民営事業所を対象として、労働者の賃金の実態を産業・職種・性別・年齢・学歴・勤続年数等の属性別に明らかにすることを目的とする。
- イ令和5年の賃金センサスによると、一般労働者(男性)の月間現金給与額(所定内)の平均は、一般労働者(女性)を上回っており、女性の賃金は男性の賃金の概ね7割前後の水準にある。
- ウ賃金センサスにおける「所定内給与額」は、時間外・深夜・休日手当・通勤手当・家族手当等の諸手当を含む月間の総支払賃金額を指す。正答
- エ賃金センサスによると、産業別にみると「金融・保険業」「情報通信業」等は全産業平均より賃金水準が高く、「宿泊業・飲食サービス業」「農林水産業」等は全産業平均より賃金水準が低い傾向にある。
- オ賃金センサスの調査対象期間は毎年1月であるが、毎月勤労統計調査とは異なり、一般労働者の賃金構造(賃金カーブ・勤続年数別賃金等)の把握に特化した調査である。
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正答はウ(誤っている記述)です。
「所定内給与額」とは、所定内労働時間(通常の所定労働時間)に対して支払われる賃金のうち、時間外・休日・深夜の割増賃金を除いた額です。ウは「時間外・深夜・休日手当を含む」と記述していますが、「所定内給与額」にはこれらの割増手当は含まれません。なお、通勤手当・家族手当等の定期的な諸手当は「所定内給与額」に含まれる場合と含まれない場合があり、定義の厳密な理解が必要です。
ア・イ・エ・オはおおむね正しい記述です。特に男女格差(女性は男性の概ね7割前後)は試験頻出の数値感覚として把握しておく必要があります。
賃金構造基本統計調査の概要(重要整理):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施機関 | 厚生労働省(毎年実施・基幹統計) |
| 調査時期 | 毎年1月の賃金(1か月分) |
| 対象 | 常用労働者10人以上の民営事業所(産業・職種・性別・年齢・学歴等) |
| 公表時期 | 翌年2〜3月(速報)・4月以降(確報) |
| 主な指標 | 所定内給与額・年間賞与・月間労働時間・勤続年数別賃金カーブ・男女格差比率 |
賃金の用語定義(ウの誤りの根拠):
| 用語 | 含む内容 | 含まない内容 |
|---|---|---|
| 所定内給与額 | 基本給・職務手当・通勤手当・家族手当等(定期的支払のもの) | 時間外・休日・深夜割増賃金 |
| 月間現金給与総額 | 所定内給与額 + 時間外等割増手当 | 賞与・一時金(別途集計) |
| 年間賞与その他特別給与額 | 賞与・決算手当等の特別給与の年合計 | 月例賃金 |
男女賃金格差の実態(イの根拠):
令和5年調査では一般労働者の所定内給与額(月額)について、男性の平均に対する女性の平均の比率は概ね75〜76%前後(男性を100とした場合)です。「7割前後」という表現はこの水準感を指します。女性の賃金が男性を下回る背景には、勤続年数の差・管理職比率の差・産業構成の差等、複合的な要因があります。
産業別賃金の高低(エの根拠):
賃金水準の高い産業(全産業平均超): 「電気・ガス・熱供給・水道業」「金融・保険業」「情報通信業」「学術研究・専門技術サービス業」
賃金水準の低い産業(全産業平均未満): 「宿泊業・飲食サービス業」「生活関連サービス業」「農林水産業」「教育・学習支援業」(非正規比率が高い産業)
【賃金センサスが測れないものと「ジェンダーギャップ指数」との乖離】
賃金構造基本統計調査(賃金センサス)は賃金の実態を詳細に把握できますが、いくつかの「測定の限界」があります。
「管理職・非正規の分離計上」問題:
賃金センサスは「一般労働者(フルタイム)」と「短時間労働者(パートタイム)」を分けて集計します。女性は短時間労働者(パートタイム)の比率が男性より高いため、「一般労働者のみ」で比較した場合の男女格差よりも「全労働者(正規+非正規)」で比較した場合の格差の方が大きくなります。
また、管理職(部長・課長等)は一般労働者の集計に含まれますが、女性の管理職比率が低いため(厚労省 雇用均等基本調査によると令和5年度の女性管理職比率は約14〜15%)、管理職を含めた集計では賃金格差がさらに大きく見えます。
女性活躍推進法との連動(令和8年度試験での改正ポイント):
2022年7月から改正された女性活躍推進法により、常時雇用労働者301人以上の企業は「男女の賃金差異」を毎年公表することが義務付けられました(2022年7月〜)。この「男女賃金差異の公表義務」は賃金センサスとは異なり、各企業が自社の男女賃金格差を開示するものです。社労士は事業主がこの公表義務を適切に実施するための支援(計算方法の確認・対外発信の補助)を行います。
ジェンダーギャップ指数(WEF)と賃金センサスの関係:
世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数において日本は経済分野のスコアが特に低く(146か国中118位・2024年)、「経済への参画」の指標に「賃金格差」が含まれています。ただし、WEFの指標は就業率・管理職比率・賃金格差等を複合させた総合スコアであり、賃金センサスの数値と直接対応するわけではありません。社労士試験では国内統計(賃金センサス)の数値が問われますが、advanced な視点としてWEFの国際比較の文脈も理解しておくと「なぜ日本の男女賃金格差是正が政策課題なのか」の背景が深まります。
同一労働同一賃金とパート有期法(賃金格差是正の法的枠組み):
2020年施行(大企業)・2021年施行(中小企業)のパートタイム・有期雇用労働法(パート有期法)は「均等待遇(差別的扱いの禁止)」と「均衡待遇(不合理な格差の禁止)」を規定します。本法の施行後、非正規労働者の賃金水準は一部改善しています。賃金センサスの「短時間労働者の賃金」は、パート有期法の施行効果を測る指標としても注目されています。
社労士試験での賃金センサス問題の対策:
社労士試験(労一)での賃金センサス問題は「男女格差の比率(女性は男性の概ね7割前後)」「調査の対象・時期(1月・10人以上)」「所定内給与額の定義」「産業別の高低(金融・情報通信は高い、宿泊・飲食は低い)」が頻出です。数値は年次更新のため、本サイトのVolatileBoxで最新値に自動更新されます。前年比の「方向性(拡大か縮小か)」と「産業別の相対的な高低関係」を押さえることが効率的な学習です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:統計: 厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況(令和6年2月公表)https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html 統計調査概要: 統計法第2条に基づく基幹統計(指定統計) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。