社労士 労働一般常識 問14:労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。
- ア2015年(平成27年)9月の改正法施行により、労働者派遣事業は「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」の区分が廃止され、全ての労働者派遣事業が許可制(一般労働者派遣事業の許可と同じ基準の許可制)に統一された。
- イ同一の派遣先事業所に対して派遣できる期間の上限は、原則として3年とされる(事業所単位の期間制限)。派遣先は、3年を超えて同一事業所で派遣労働者を受け入れるためには、その事業所の過半数組合等に対して意見聴取を行う必要がある。
- ウ労働者派遣法における「個人単位の期間制限」とは、同一の派遣労働者が同一の派遣先の「同一の組織単位(課・グループ等)」において派遣として就業できる期間の上限が3年であることをいう。この3年の期間制限は、派遣先が変わっても引き継がれる。正答
- エ2015年の法改正により、派遣元事業主は派遣労働者に対して、雇用が安定するよう「雇用安定措置」を講じることが義務付けられた。派遣期間が3年間となった派遣労働者に対して、派遣元は同一の派遣先への直接雇用の依頼等の措置を講じなければならない。
- オ労働者派遣法は、派遣元と派遣先の間で締結される「労使協定方式」により、派遣労働者の待遇(賃金等)を厚生労働省が公表する同種業務の一般賃金水準以上とすることを認めている。この方式を採用する派遣元は、派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇の適用が免除される。
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正答はウ(誤っている記述)です。
「個人単位の期間制限」における3年の上限は、同一の派遣先の同一の組織単位(課・グループ等)での通算期間です。ウの誤りは「3年の期間制限は、派遣先が変わっても引き継がれる」という点です。個人単位の期間制限は同一の組織単位に限定されます。異なる派遣先(別の会社・別の事業所)に移った場合や、同一の派遣先でも別の組織単位(別の課)に異動した場合は、期間はリセットされます。「派遣先が変わっても3年の期間が引き継がれる」という理解は誤りです。
ア(全許可制統一)・イ(事業所単位3年・意見聴取)・エ(雇用安定措置)・オ(労使協定方式)はいずれも正しい記述です。
派遣法の2段階の期間制限(最重要整理):
| 制限の種類 | 対象 | 上限 | 延長の方法 |
|---|---|---|---|
| 事業所単位の期間制限 | 同一の派遣先事業所 | 3年(原則) | 過半数組合等への意見聴取(反対でも延長可だが手続き必須) |
| 個人単位の期間制限 | 同一派遣先の同一組織単位 | 3年(上限) | 延長不可(3年経過後は同一組織単位での継続不可) |
「個人単位の期間制限のリセット」条件(ウの誤りの詳細):
個人単位の3年制限は以下の場合にリセット(または起算点が変わる)されます:
- 別の派遣先(別会社・別事業所) に移った場合→ 新たに3年カウント開始
- 同一派遣先の別の組織単位(別の課・グループ) に異動した場合→ 組織単位が変わるためリセット
- 直接雇用(有期雇用含む)後に再度派遣 となった場合→ 一定期間経過後にリセット
「派遣先が変わっても引き継がれる」という記述は誤りです。
「常用代替防止」の意義(2015年改正の背景):
2015年改正前は「専門26業務(IT・通訳・秘書等)」が期間制限なし・その他が原則1〜3年という複雑な区分でした。改正後は「業務の種類を問わず全派遣が3年制限」に統一され、同時に「雇用安定措置」「均等・均衡待遇」「労使協定方式」が新設されました。改正の核心は「派遣の固定化(いつまでも派遣のまま)による常用雇用代替を防ぐ」という政策目的にあります。
労使協定方式の概要(オの根拠):
派遣元が「過半数組合または過半数代表者」との間で労使協定を締結し、厚生労働省が公表する「同種業務の一般労働者の賃金水準」以上の賃金を設定する方式です。この方式を採用すると、派遣先の通常労働者との均等・均衡待遇(派遣先均等均衡方式)の適用が免除されます。
【2015年改正で何が変わり、「常用代替防止」の理念が実現できているか】
2015年(平成27年)9月施行の派遣法改正は、昭和61年の派遣法制定以来最大規模の改正とされます。改正前の「特定労働者派遣事業(届出制)/一般労働者派遣事業(許可制)」という二重構造が廃止され、全ての派遣事業が許可制に統一されました(移行期間3年)。
改正の3本柱と実務への影響:
| 改正内容 | 制度の概要 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| 全面許可制統一 | 特定派遣(届出制)の廃止・全社が許可制へ | 中小派遣会社の許可取得負担増・許可要件(財産要件・事業運営要件)の厳格化 |
| 3年ルールの統一化 | 業務不問で事業所単位・個人単位各3年制限 | 専門26業務の期間制限なし特例廃止→IT・英語秘書系も3年後に直接雇用等の対応が必要 |
| 均等・均衡待遇/労使協定方式 | 派遣先均等均衡 or 労使協定方式の二択 | 派遣元の賃金設定・教育訓練計画の整備義務が生じる |
「常用代替防止」が実現できているかという論点:
3年ルールの導入により「3年経過後に直接雇用or別の派遣先へ」という移動が発生することは確かです。しかし実態では、「3年経過→一定期間をおいて同じ派遣先に再度派遣(別の組織単位または事業所単位の意見聴取後)」というサイクルが生じるケースも見られます。「3年たったら直接雇用が増えたか」という実証的な問いに対しては、直接雇用よりも「別の派遣先への移動・有期の直接雇用への転換→また別の派遣」というルートが多いという指摘もあります。
この「常用代替防止の形骸化問題」は、社労士試験の advanced レベルではなく政策評価の話ですが、試験で「雇用安定措置の義務内容(直接雇用の依頼・新たな就業機会の提供・無期雇用への転換・キャリアアップ支援)」が問われる際の背景知識として理解しておくと正確な理解につながります。
雇用安定措置の具体的内容(エの深掘り):
派遣元が講じるべき雇用安定措置(派遣法第30条の3)の内容は以下の通りです(義務・努力義務の区分あり):
| 措置の種類 | 義務/努力 | 対象 |
|---|---|---|
| 派遣先への直接雇用の依頼 | 義務(3年見込者) | 同一事業所・組織単位で3年に達することが見込まれる者 |
| 新たな就業機会(派遣先)の提供 | 義務(上記が不調の場合) | — |
| 無期雇用(派遣元との無期労働契約) | 義務 | 3年達見込者 |
| その他安定した雇用の継続に資する措置 | 努力義務 | — |
社労士実務における派遣法対応の核心:
社労士は「派遣先企業(受入側)」「派遣元企業(送出側)」双方のコンサルティングを担います。
- 派遣先: 事業所単位の3年カウント管理・意見聴取の実施手続き・派遣先責任者の選任・均等均衡待遇情報の提供
- 派遣元: 雇用安定措置の実施記録・労使協定の作成・一般賃金水準の収集(職業安定局発表データの活用)・キャリアアップ教育訓練計画の作成義務
特に「抵触日管理」は派遣元・派遣先双方の義務であり、抵触日を管理できていない場合には行政指導の対象となります。社労士の1号業務(派遣労働者の雇用保険・健保取得届等の代行)と合わせて、派遣法コンプライアンスの総合支援が社労士事務所のサービスの核となります。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者派遣法第35条の3(個人単位の期間制限・同一の組織単位3年)・第40条の2(事業所単位の期間制限・原則3年・意見聴取で延長可)・第30条の3(雇用安定措置)・第30条の4(労使協定方式・厚労省公表の一般賃金水準以上)・2015年改正附則(全許可制移行) 施行日: 2015年9月30日(許可制統一・3年ルール統一) 一次ソース: e-Gov 労働者派遣法 https://laws.e-gov.go.jp/law/360AC0000000088 ・厚労省 派遣可能期間ガイド https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000196406.pdf <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 一次ソース突合。①2015年改正で特定/一般の区分廃止・全許可制統一(派遣法第5条等)→ア正しい。②事業所単位3年制限・延長は派遣先過半数組合等への意見聴取(派遣法第40条の2)→イ正しい。③個人単位3年制限は「同一の派遣先の同一の組織単位」に限定(派遣法第35条の3)。**派遣先(別会社・別事業所)が変われば新規にカウント開始**で「引き継がれる」ことはない(クーリング期間3か月超でリセット可だが、意図的なクーリングは脱法行為として行政指導対象)→ウ「派遣先が変わっても引き継がれる」は明確な誤り=正答。④雇用安定措置(派遣法第30条の3)→エ正しい。⑤労使協定方式・派遣先均等均衡方式の選択(派遣法第30条の3・第30条の4)→オ正しい。正答ウで確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。