労働一般常識17労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)

社労士 労働一般常識 問17:労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision

労働組合法第7条が定める不当労働行為に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度を前提とすること。

  • 労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入しようとしたこと、または労働組合を結成しようとしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いをすることは、不当労働行為として禁止される(労組法第7条第1号前段)。
  • 使用者が労働組合に加入しないこと、または労働組合から脱退することを雇用条件とする「黄犬契約」を締結することは、不当労働行為として禁止される(労組法第7条第1号後段)。
  • 使用者が、労働組合の代表者または労働組合から委任を受けた者と、労働協約の締結その他の事項について団体交渉をすることを正当な理由なく拒むことは、不当労働行為として禁止される(労組法第7条第2号)。ここでいう「正当な理由」の有無は、交渉事項・交渉要求の手続き・使用者の交渉態度の相当性等を総合的に考慮して判断される。
  • 使用者が労働組合の運営のための経費の支払につき援助を行うことは、すべての場合において不当労働行為として禁止される(労組法第7条第3号)。労働者が労働時間中に使用者と協議し、または交渉することを使用者が許すことも同号の経費援助に当たる。正答
  • 労働者が労働委員会に対して不当労働行為の申立てをしたこと、または中央労働委員会に対して再審査の申立てをしたことを理由として、当該労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすることは、不当労働行為として禁止される(労組法第7条第4号)。
正答:使用者が労働組合の運営のための経費の支払につき援助を行うことは、すべての場合において不当労働行為として禁止される(労組法第7条第3号)。労働者が労働時間中に使用者と協議し、または交渉することを使用者が許すことも同号の経費援助に当たる。

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正答はエ(誤っている記述)です。

エの誤りは「すべての場合において不当労働行為として禁止される」という点です。労組法第7条第3号は、使用者が組合の運営のための経費の支払につき援助することを原則禁止していますが、ただし書(例外規定)により一定の援助は禁止されません。

ただし書に該当する例外(不当労働行為とならないもの):

  • 労働者が労働時間中に使用者と協議・交渉することを使用者が許すこと(賃金を支払うことも含む)
  • 組合の福利・厚生事業に対する使用者の寄附
  • 最小限の広さの事務所の供与

つまり経費援助の全てが禁止されるわけではなく、「支配介入につながる経費援助」が禁止されています。

標準試験対策の基準レベル

不当労働行為の4類型(最重要整理):

| 号 | 類型名 | 内容 |

|---|---|---|

| 第1号前段 | 不利益取扱い | 組合員・組合加入者・組合結成者を理由とした解雇等の不利益取扱い |

| 第1号後段 | 黄犬契約 | 非加入・脱退を雇用条件とする契約 |

| 第2号 | 団体交渉拒否 | 正当な理由なく団体交渉を拒否・誠実交渉義務の違反 |

| 第3号 | 支配介入・経費援助 | 労働組合の組織・運営への支配・介入、経費援助(ただし書の例外あり) |

| 第4号 | 申立てを理由とした不利益取扱い | 労働委員会への申立てを理由とした不利益取扱い |

第3号の「経費援助」の詳細(エの誤りの核心):

第3号が禁止する経費援助の目的は、使用者が組合の財政的基盤を支配することによって組合の自主性を損なうことを防ぐためです。「組合費や活動費を全額使用者が負担する」「組合活動に必要な経費を使用者が管理する」ようなケースが典型的な禁止事例です。

ただし書の3つの例外(エの根拠):

1. 労働時間中の協議・交渉許可: 使用者が、労働者が労働時間中に時間または賃金を失うことなく使用者と協議・交渉することを許すこと(ただし使用者側の都合のよいことを話し合う「御用組合化」のための供与は例外に当たらない)

2. 福利・厚生への寄附: 組合員の福利・厚生事業への寄附(自主的な組合の福祉活動への援助)

3. 最小限の事務所供与: 最小限の広さの事務所の供与(組合活動の場所を確保する程度)

「誠実交渉義務」の内容(ウの根拠):

第2号の「正当な理由なく団体交渉を拒む」の禁止は、単に交渉の場に出席することだけを義務付けるのではなく、誠実に交渉する義務(誠実交渉義務)を含みます。合理的な理由を示さずに一方的な主張を繰り返すだけで妥結を求めない「形式的交渉(見せかけの交渉)」も第2号違反となります。

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【不当労働行為制度の「行政救済」と「司法救済」の二本立て】

日本の不当労働行為制度には、行政救済(労働委員会への申立て)と司法救済(民事訴訟)の二本立てが存在します。

| 救済方法 | 申立先 | 特徴 |

|---|---|---|

| 行政救済 | 都道府県労働委員会(初審)→ 中央労働委員会(再審査) | 迅速・専門的。救済命令が出やすい。履行確保に行政力(過料・公表)が活用可 |

| 司法救済 | 地方裁判所(民事訴訟) | 時間・費用がかかるが、損害賠償請求・地位確認訴訟が可能 |

行政救済は「救済命令」という形で、解雇の場合は「原職復帰+バックペイ(不利益期間中の賃金相当額)」が典型的な内容です。会社が救済命令に従わない場合は過料・企業名公表等の制裁があります。

【「黄犬契約」の現代的展開】

労組法第7条第1号後段が禁止する「黄犬契約(yellow dog contract)」は、歴史的に組合壊滅のために使用された手法です。明示的な「組合に加入しないこと」を雇用条件とする古典的な形態だけでなく、以下のような現代的な形態も第1号違反とされる可能性があります:

  • 採用面接で「当社には組合がないが、もし組合を作ろうとした場合は解雇する」と告知して採用する行為
  • 配転・降格・評価の低下など、組合活動を理由とした「嫌がらせ的」不利益取扱い(直接的な「理由」の明示がなくても状況証拠で第1号違反と認定される)

労働委員会の不当労働行為審査では、使用者が「組合活動と無関係の理由で解雇した」と主張しても、タイミング・前後の経緯・使用者の組合嫌悪の証拠等から不利益取扱いの推認が行われることがあります。

【「ユニオンショップ協定」と第1号の関係】

ユニオンショップ協定(特定の組合に加入しないと解雇される旨の協定)は、一見「黄犬契約」の逆(非加入者を解雇する側面)として問題になります。最高裁(三井倉庫港運事件・1989年)は「ユニオンショップ協定は、当然に別組合員または組合非加入者を解雇する効力まで使用者に付与するものではない」と判断しています。すなわち、特定の組合に加入を強制するユニオンショップ協定は有効な範囲がありますが、「組合から除名された者を使用者が解雇することまでは義務付けない」という解釈が確立しています。

【経費援助禁止の「支配介入」との関係:実務上の問題点】

第3号「支配介入・経費援助」は、経費援助と「支配介入(組合の自主性を損なう介入)」を並列で禁止しています。実務上問題になりやすいケース:

1. チェックオフ(組合費の給与天引き)の廃止: 会社が一方的にチェックオフ協定を破棄することは、組合財政への打撃を通じた支配介入として第3号違反になる可能性があります

2. 御用組合への便宜供与: 会社が特定の組合(御用組合)にのみ大きな事務所・交通費・情報提供を行い、他の独立組合には一切便宜を図らない場合、独立組合への「差別的支配介入」として問題になります

3. 労使協議での情報非対称: 情報を会社が独占し、組合に不利な情報のみ開示する交渉態度は「誠実交渉義務(第2号)」違反に問われる可能性があります

【社労士実務:不当労働行為申立ての代理と「使用者側の防御策」】

社労士は組合(1号業務)または使用者(1号業務)の代理として労働委員会の審査に関与できます。使用者側の社労士として重要な実務論点:

  • 解雇・配転・降格の決定プロセス(人事評価記録・就業規則との整合性)を事前に整備する
  • 団体交渉要求への対応は「拒否せず・誠実に対応する」記録を残す
  • 使用者側の発言(組合嫌悪・排除意図を疑わせる発言)は記録から排除し、中立的な文書を作成する

不当労働行為の「疑いを持たれない」人事管理こそが、社労士が企業に提供できる最大の価値の一つです。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働組合法第7条各号(不当労働行為の類型)・第7条第3号(支配介入・経費援助の禁止)・第7条ただし書(経費援助の例外規定) 第7条第3号ただし書: 「労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すこと」「組合の福利その他厚生事業に対する使用者の寄附」「最小限の広さの事務所の供与」は第3号に違反しない 一次ソース: e-Gov 労働組合法第7条 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000174 ・厚労省 不当労働行為制度の概要 https://www.mhlw.go.jp/churoi/about/torikumi/futourodokoui.html <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): ア正しい(第1号前段・組合員であること等を理由とした不利益取扱禁止)。イ正しい(第1号後段・黄犬契約禁止)。ウ正しい(第2号・誠実団交義務・正当な理由なき拒否禁止)。エ誤り(第7条第3号ただし書により、労働時間中の交渉協議を使用者が許すこと・組合福利厚生への寄附・最小限の広さの事務所供与は第3号違反ではない→「すべての場合において禁止」は誤り)。オ正しい(第4号・申立てを理由とした不利益取扱禁止)。正答エ確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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