問題
労働組合の組織形態に関する次のア〜オの記述のうち、誤っているものはどれか。なお、令和8年度試験の法令基準日(2026年4月10日)時点の制度・用語法を前提とすること。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは「合同労組は労働組合法上の『労働組合』には該当せず、団体交渉権を行使することができない」という部分です。正しくは、合同労組(コミュニティユニオン)も労働組合法第2条・第5条の要件(①労働者が主体・②自主性・③民主的運営等)を満たせば、法律上の「労働組合」として認められます。法令上の「労働組合」であれば、企業に対して団体交渉権を行使でき、不当労働行為(団体交渉拒否等)に対して労働委員会への救済申立ても可能です。
日本の労働組合の代表的な4形態は「企業別組合」「職業別組合(クラフトユニオン)」「産業別組合(インダストリアルユニオン)」「合同労組(ゼネラルユニオン・コミュニティユニオン)」であり、いずれの形態でも法的要件を満たせば労組法上の「労働組合」になれます。
労働組合の4形態の比較(本問の全肢根拠):
| 形態 | 加入範囲 | 主な発達地域/時代 | 日本での存在 |
|---|---|---|---|
| 企業別組合 | 同一企業・事業場の労働者 | 日本(戦後・高度成長期に主流化) | 大多数 |
| 職業別組合(クラフトユニオン) | 同一職種・技能の労働者(企業横断) | 欧米(特に英国・19〜20世紀初頭) | 少数(海員組合・芸能人組合等) |
| 産業別組合(インダストリアルユニオン) | 同一産業の全労働者(職種横断) | 欧米(20世紀初頭〜)・日本の上部団体 | 私鉄総連・自動車総連等(企業別の上部連合体) |
| 合同労組(ゼネラルユニオン・コミュニティユニオン) | 地域の全労働者(産業・職種・雇用形態横断・個人加入) | 欧米・日本(1980年代以降) | 非正規・外国人労働者を中心に増加 |
合同労組の法的地位(エの誤りの核心):
合同労組が労組法上の「労働組合」であるかどうかは、形態(合同・地域組合)ではなく実質的要件(労組法第2条・第5条)で判断されます。
労組法第2条の要件(主なもの):
- ①労働者が主体となって組織されていること
- ②自主的に労働条件の維持改善・地位向上を目的とすること
- ③使用者(使用者利益代表者・経費援助)が介入していないこと
合同労組(例:○○地域ユニオン)がこの要件を満たせば、企業別組合と同様に:
- 使用者に対して団体交渉を申し入れる権利を行使できる
- 使用者が正当な理由なく団体交渉を拒否した場合→不当労働行為として労働委員会に救済申立て可
- 労働協約を締結する権限を持つ
企業別組合の特徴と日本的労使関係(アの根拠・深化):
日本の企業別組合の特徴:
- 職種・技能に関係なく「同一企業の正社員」が加入(ブルーカラー・ホワイトカラー混合型が多い)
- 終身雇用・年功序列と親和性が高い
- 企業ごとに交渉するため「企業内分配」に特化した交渉が行われやすい
課題:
- 非正規労働者が組合に加入しにくい(企業別組合の組合員は正社員中心)→非正規の労働条件の交渉代表が不在になりやすい
- 産業全体の底上げ(産業別最低賃金・産業横断的な労働基準引上げ)には効果が出にくい
【日本の企業別組合の形成過程と「三種の神器」との関係】
日本の企業別組合が主流となった歴史的背景:
1. 戦後の占領期(1945〜1952年): GHQの民主化政策のもと、産業別・企業横断的な組合運動が活発化したが、1950年前後の「赤い組合」に対する経営側の反発と第二組合運動により、企業内の協調的な企業別組合が主流化
2. 高度成長期(1955〜1973年): 終身雇用・年功賃金・企業別組合の「日本的経営の三種の神器」が確立。企業の成長と組合の賃上げ要求が一体となった「スプリング闘争(春闘)」が定着
企業別組合の「強み」と「弱み」:
| 観点 | 強み | 弱み |
|---|---|---|
| 情報の非対称性 | 経営情報へのアクセスが高い(会社の経営状況を把握して交渉) | 企業利益への過度の依存(「会社が倒れたら困る」発想) |
| 交渉の効率性 | 同一企業内での一括交渉・迅速な合意形成 | 非正規・派遣労働者の排除・産業横断的な賃金水準引上げに限界 |
| 組合員の帰属意識 | 企業への帰属感と重なり安定した組合員基盤 | 組合費・活動への動機づけが「企業益」に偏る |
【合同労組の台頭と「個人加盟組合」が担う現代的役割】
1980年代以降、非正規雇用の拡大とともに、企業別組合に加入できない労働者のための「合同労組(コミュニティユニオン)」が増加しました。
合同労組の典型的な活動:
1. 解雇・雇い止め紛争の団体交渉: 非正規労働者が解雇された場合に、個人として合同労組に加入→合同労組を通じて企業に団体交渉を申し入れ→解雇撤回または退職金増額で合意
2. ハラスメント・賃金未払い事件: 職場でのハラスメント・残業代未払いを個人で合同労組に相談→合同労組が使用者と交渉
3. 外国人労働者・技能実習生の支援: 言語・文化の壁を超えた支援を提供する合同労組が増加
【組合組織率の動向と「労一」試験での統計論点との連携】
`2.5%`(完全失業率2.5%)・`1.25倍`(有効求人倍率1.25倍)という労働市場の指標と並んで、「組合組織率」は社労士試験の「労一」で頻出の統計論点です。
組合組織率の動向は厚生労働省「労働組合基礎調査」(毎年公表)で確認します(推定組織率は長期的に低下傾向。具体的な数値は最新の公表資料で確認)。
「なぜ組合率が低下しているか」の論点:
- 非正規雇用の増加(企業別組合への加入困難者増加)
- 大企業から中小・零細への雇用シフト(中小は組合設立困難)
- 若年層の「組合離れ」(個人主義・企業への帰属感の低下)
【上位資格(特定社労士・人事院・労働審判員)との接続】
特定社会保険労務士(特定社労士)は、個別労働関係紛争(解雇・ハラスメント等)において「あっせん代理人」として個人を代理できます。合同労組の活動(団体交渉・労働委員会への申立て)は特定社労士業務とは異なりますが、紛争解決において合同労組・特定社労士・労働審判員が連携する場面があります。
社労士が「労働組合法」を深く理解することは、集団的労使関係(団体交渉・団体行動・不当労働行為)において企業顧問として適切な助言を行うための基礎です。企業が合同労組から団体交渉を申し入れられた際に「当社の組合員でないから交渉に応じなくてよい」という誤った助言をしないために、合同労組の法的地位(労組法上の労働組合)の正確な理解が不可欠です。
- 労働組合法第2条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働組合法第2条(労働組合の定義)・第6条(交渉委任)・第7条(不当労働行為) 合同労組の法的地位: 合同労組は労働組合法の要件(第2条・第5条)を満たせば法令上の「労働組合」として認められ、団体交渉権・不当労働行為の救済を受けることができる 一次ソース: 厚生労働省 労働組合の法律的定義 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukumiai.html ・e-Gov 労働組合法第2条 https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000174 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

