問題
労働者災害補償保険法に規定する二次健康診断等給付に関する次のア〜エの記述の正誤の組み合わせとして正しいものはどれか。 ア. 二次健康診断等給付は、「一次健康診断において、血圧測定・血中脂質検査・血糖検査・腹囲またはBMIの測定の4項目の検査すべてに異常があると診断された場合」に請求できる。 イ. 二次健康診断等給付の請求は、一次健康診断を受けた日から2年以内に行わなければならない。 ウ. 二次健康診断等給付は、脳血管疾患・心臓疾患の発症の予防のために行われる「二次健康診断」および「特定保健指導」の2種類の給付からなる。 エ. 一次健康診断の結果その他の事情により、既に脳血管疾患または心臓疾患の症状を有すると認められる者は、二次健康診断等給付の対象とならない。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はエ(ア正・イ誤・ウ正・エ正)です。
イが誤りです。二次健康診断等給付の請求期限は、一次健康診断を受けた日から3か月以内です(施行規則第18条の19第4項)。設問イの「2年(2年)以内」は誤りです。2年は療養補償給付や休業補償給付の請求権の消滅時効期間であり、二次健診等給付とは別の期限です。
ア(4項目すべてに異常で対象)・ウ(二次健康診断と特定保健指導の2種類)・エ(既に脳・心臓疾患の症状がある人は対象外)はいずれも正しい記述です。
二次健康診断等給付は過労死・脳心臓疾患の予防を目的とした給付であり、すでに疾患が発症している場合は対象外です(発症後は通常の療養補償給付等が適用されます)。
二次健康診断等給付の概要(第26条〜第28条):
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 給付の目的 | 脳血管疾患・心臓疾患(過労死等)の発症予防 |
| 対象者 | 労働安全衛生法の定期健康診断等(直近のもの=一次健康診断)を受けた労働者 |
| 請求条件 | 一次健診で4項目すべてに異常所見+既に脳・心臓疾患の症状を有すると認められないこと |
| 4項目の内容 | ①血圧測定 ②血中脂質検査(LDL等) ③血糖検査(空腹時血糖・HbA1c等) ④腹囲またはBMIの測定 |
| 給付の種類 | ①二次健康診断(医師による健康診断・1年度につき1回) ②特定保健指導(医師又は保健師による面接指導・二次健康診断ごとに1回) |
| 請求期限 | 一次健康診断を受けた日から3か月以内(施行規則第18条の19第4項。天災その他やむを得ない理由があるときは例外) |
| 請求先 | 健診給付病院等(社会復帰促進等事業として設置された病院・診療所又は都道府県労働局長の指定する病院・診療所)を経由して、所轄都道府県労働局長に請求書を提出(施行規則第11条の3第1項・第18条の19第1項) |
各記述の詳細分析:
- ア(正): 4項目(血圧・血中脂質・血糖・腹囲またはBMI)のすべてに異常所見がある場合に対象。1項目でも正常であれば対象外(4項目すべての異常を要件とする点が重要)。
- イ(誤): 請求期限は一次健康診断を受けた日から「3か月以内」(施行規則第18条の19第4項)。「2年(2年)以内」は療養補償・休業補償等の消滅時効(第42条)であり、二次健診等給付の期限とは別。起算点は「結果の通知を受けた日」ではなく「受けた日」なので、結果が届くまでの日数も3か月に含まれる。
- ウ(正): 二次健康診断(空腹時の血中脂質・血糖、負荷心電図又は胸部超音波、頸部超音波等の検査を行う医師による健康診断。施行規則第18条の16第2項)と特定保健指導(医師又は保健師による面接指導。法第26条第2項第2号)の2種類。
- エ(正): 法第26条第1項括弧書により、一次健康診断の結果その他の事情で既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められる者は対象外。発症後は療養補償給付等の通常の保険給付の問題となる。
二次健診等給付の請求の流れ(実務上のポイント):
一次健診(定期健診)で4項目すべて異常→一次健診を受けた日から3か月以内に請求書を作成(一次健診の受診年月日・結果について事業主の証明が必要。施行規則第18条の19第3項)→健診給付病院等を経由して所轄都道府県労働局長に提出→二次健康診断実施→特定保健指導
【二次健康診断等給付の制度的背景:過労死・脳心臓疾患への予防的対応】
二次健康診断等給付制度は、2001年(平成13年)の改正労災保険法で新設されました。この制度が生まれた背景には1980〜90年代以降の「過労死」問題があります。
長時間労働・過重な業務負担が蓄積した結果、「突然の脳梗塞・心筋梗塞による死亡」という過労死事案が社会問題化しました。従来の労災保険は「業務上の傷病・死亡が発生した後の補償」が中心でしたが、「発症してからでは遅い」という認識が高まり、「業務上の過重負担が背景にある場合は、発症前の予防段階から介入する」という予防的アプローチを採用したのが本制度です。
【4項目すべての異常を要件とする理由:複合リスクファクターの重視】
二次健康診断等給付の対象が「4項目すべてに異常所見」という厳格な要件を課している理由は「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)のリスクファクターとの対応」です。
高血圧・高脂血症・高血糖・腹部肥満(または過体重)という4つのリスクファクターが複合した状態(メタボリックシンドローム)は、単独のリスクファクターよりも心血管疾患・脳血管疾患の発症リスクを飛躍的に高めることが医学的に確認されています。
1項目の異常だけでは「脳心臓疾患の予防的介入が緊急に必要な高リスク状態」とは言えないため、給付の対象を「4項目すべての異常」に絞ることで、「真に業務上の過重負担と相まって発症リスクが高い労働者」に集中的に予防介入する設計になっています。
【3か月という請求期限の設計理由と実務上の問題点】
二次健診等給付の請求期限「3か月以内」は、一般の労災給付の消滅時効(2年または5年)と比べて著しく短い期限です。脳心臓疾患の予防介入は「異常を発見してから早期に生活習慣を改善する」ことに意味があり、一次健診から時間が経つほど予防の効果が薄れる、という給付の性格に沿った期限と理解できます。
【起算点は「受けた日」— 通知の日ではない】
3か月は「一次健康診断を受けた日から」数えます(施行規則第18条の19第4項本文)。結果の通知を受けた日から数えるのではない点が、試験でも実務でも狙われます。実務上は次の点に注意が要ります:
- 通知までの日数も期限に含まれる: 健診機関から事業主、事業主から労働者へ結果が届くまでの日数も3か月の中に入るため、結果が届いた時点で残りが短くなっていることがある
- 例外はただし書だけ: 「天災その他請求をしなかつたことについてやむを得ない理由があるとき」は3か月を過ぎても請求できる(同項ただし書)。単に制度を知らなかったことがこれに当たるかは、条文からは読み取れず個別の判断になる
- 事業主の証明: 請求書に書く一次健診の受診年月日と、4項目すべてに異常所見があったことを示す書類には、事業主の証明が必要(同条第2項・第3項)。社労士は顧問先に、定期健診の結果を速やかに労働者へ伝え、4項目すべてに異常所見があった者に制度を知らせるよう助言することが重要
【特定保健指導の内容と「社労士が知っておくべき」ポイント】
特定保健指導は、二次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患・心臓疾患の発生の予防を図るために医師又は保健師が面接で行う指導で、二次健康診断ごとに1回に限られます(法第26条第2項第2号)。二次健康診断自体は1年度につき1回です(同項第1号)。また、二次健康診断の結果、既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められる労働者には、特定保健指導は行われません(同条第3項)。
名前が似ている高齢者医療確保法の「特定健診・特定保健指導」(医療保険者が行うもの)とは別の制度です。社労士の実務では両者を混同せず、顧問先企業の健康管理担当者・産業保健スタッフと連携した支援が求められます。
令和の「健康経営」推進の観点からも、「定期健診の異常所見に素早く対応する体制(二次健診等給付の活用・特定保健指導との連携・産業医の活用)」は企業のリスク管理と生産性向上の両面で重要な課題となっています。
根拠: 労働者災害補償保険法第26条(二次健康診断等給付)・第42条(消滅時効)、同法施行規則第11条の3第1項・第18条の16・第18条の19(請求書の提出先・請求期限3か月)。e-Gov 現行条文で確認 2026-09-30。
- 労働者災害補償保険法第26条e-Govで原文を読む
- 労働安全衛生法e-Govで原文を読む
- 高齢者の医療の確保に関する法律e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働者災害補償保険法第26条(二次健康診断等給付)、同法施行規則第11条の3第1項(健診給付病院等)・第18条の16第1項(一次健康診断の4項目)・第18条の19第1項・第4項(請求書の提出先・一次健康診断を受けた日から3か月以内) 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

