賃管士 民法 問29:民法(敷金・原状回復)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10)
敷金返還請求権に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア賃借人の賃貸人に対する敷金返還請求権は、賃貸借が終了し賃借物の返還(明渡し)を受けた後でなければ発生しない。
- イ賃借人は、明渡し前でも将来発生する敷金返還請求権を第三者に譲渡することができる。正答
- ウ敷金返還請求権が差し押さえられた場合、差押えは賃借物返還前に発生した敷金返還請求権の発生(明渡し完了後)に及ぶ。
- エ賃借権がオーナーチェンジ(物件の売却)によって賃貸人の地位が移転した場合、敷金は当然に新賃貸人に承継される。
- オ賃借人が賃借権を適法に第三者に譲渡した場合、旧賃借人が支払った敷金は原則として旧賃借人に返還され、新賃借人(譲受人)は新たに敷金を支払う必要がある。
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正答はイです。
「明渡し前に将来の敷金返還請求権を第三者に譲渡できる」という記述が誤りです。
最高裁昭和48年2月2日判決は「敷金返還請求権は、賃貸借終了・目的物返還の時に未払賃料等を控除した残額として初めて発生する。明渡し前の段階では返還請求権はまだ発生していないため、譲渡の対象とならない(少なくとも有効な譲渡として賃貸人に対抗できない)」という立場を示しています。
アは622条の2第1項1号の正確な記述。エはR2改正で条文化された605条の2第4項の通り。オは622条の2第1項2号の通りです。
敷金返還請求権の性格と権利変動の整理:
| 場面 | 処理 |
|---|---|
| 明渡し前の敷金返還請求権の発生 | まだ発生していない(発生するのは明渡し時) |
| 明渡し前の権利の譲渡 | 最判昭48.2.2により、少なくとも賃貸人に対抗できない(有効な譲渡として認めない立場) |
| オーナーチェンジ時の敷金承継 | 新賃貸人が当然承継(民法605条の2第4項・R2改正で明文化) |
| 賃借権の適法な譲渡時 | 旧賃借人に返還・新賃借人は新たに積む(622条の2第1項2号) |
各選択肢の整理:
- ア(正): 622条の2第1項1号の規定通り(明渡し受領時に返還義務発生)
- イ(誤): 最判昭48.2.2の判旨に反する。明渡し前の将来の敷金返還請求権の賃貸人への対抗は認められない。
- ウ(正): 差押えは「発生した後の返還請求権」に及ぶ(明渡し後に改めて差押えの効力が及ぶ)
- エ(正): 605条の2第4項(R2改正)「前二項の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について登記をしなければ、賃借人に対抗することができない」と「敷金及び担保の承継」が規定される
- オ(正): 622条の2第1項2号「賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき」に旧賃借人への返還が規定
【敷金の承継問題—オーナーチェンジ・賃借権譲渡での実務処理】
敷金の承継問題は、物件の売買・賃借権の移転が絡む場面で実務上重要な処理が必要となります。
オーナーチェンジ時の敷金処理(R2改正で明文化):
改正民法605条の2第4項は「賃貸不動産を第三者に譲渡した場合、賃貸人の地位の移転に伴い、敷金及び担保は移転時に新賃貸人に承継される」ことを明文化しました。
実務的な流れ:
1. オーナー(売主)と購入者(買主)の間で敷金の承継を売買契約に明記
2. オーナーが購入者に「敷金預り金(各賃借人の敷金合計)」を引き渡す(または売買価格から控除)
3. 管理会社は「オーナーが変わりました・新オーナー○○様です」を賃借人に通知
問題事例: オーナーが敷金を費消していた場合:
オーナーが賃借人から受け取った敷金を費消(使ってしまっていた)場合、購入者(新オーナー)は実際には敷金相当の資金を受け取っていない可能性があります。この場合でも、賃借人は新オーナーに対して敷金の返還を請求できます(新オーナーが承継した義務には敷金返還義務が含まれる)。
→ 購入者(新オーナー)は売買の際に敷金の金額・承継の有無を確認し、売買価格に織り込む必要があります。不動産仲介業者(宅建業法35条)は敷金の状況を重要事項説明書に記載する義務があります。
管理会社(管理受託業者)は、物件売却時に「全賃借人の敷金残高一覧」を整理して新オーナーに提供することが管理業務の一環として重要です。
賃借権の適法な譲渡時の敷金処理:
賃貸人の承諾を得て賃借権が適法に譲渡された場合:
旧賃借人→賃貸人に敷金返還請求(622条の2第1項2号):
- 旧賃借人の賃料等の債務を控除した残額が旧賃借人に返還される
新賃借人(譲受人)→新たに敷金を積む:
- 旧賃借人の敷金は新賃借人には「引き継がれない」(旧賃借人固有の担保)
- 新賃借人は別途敷金の支払いが必要
この区分は「賃借権の譲渡」と「物件の売買(オーナーチェンジ)」で逆の処理になるため、混乱しやすいポイントです:
- オーナーチェンジ→敷金は新オーナー(新賃貸人)が承継(賃借人に変動なし)
- 賃借権の譲渡→敷金は旧賃借人に返還・新賃借人は新たに積む(賃貸人に変動なし)
敷金管理の法令上の義務(賃貸住宅管理業法との関係):
賃貸住宅管理業法16条は「管理受託契約における賃借人からの敷金・賃料等は、賃貸人(オーナー)の資金と分別管理する義務がある」と規定しています(分別管理義務)。
これにより管理会社は:
- 預かった敷金を自社資金と混在させない(専用口座での管理が推奨)
- オーナーごとの敷金残高を帳簿で明確に管理
- 退去時に速やかに精算・返還できる状態を維持する
分別管理義務違反は業法22条の業務改善命令・23条の登録取消しの対象となります。
根拠: 民法622条の2・605条の2第4項(e-Gov 法令検索)、最判昭48.2.2(敷金返還請求権の譲渡・判例)、賃貸住宅管理業法16条(e-Gov 法令検索)。確認日2026-06-10。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法622条の2・605条の2第4項(e-Gov 法令検索)、最判昭48.2.2(敷金返還請求権の譲渡) 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法第64条/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。