賃管士 借地借家法 問10:借地借家法(借家契約の基本)
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10)
借地借家法31条(建物賃貸借の対抗要件)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア建物の賃貸借は、その登記がなければ第三者(新オーナー等)に対抗することができない。
- イ建物の賃貸借は、登記がなくても建物の引渡しがあれば、その後に建物について物権を取得した第三者に対抗することができる。正答
- ウ建物の引渡しとは、登記識別情報の交付を受けることを意味する。
- エ賃借人が対抗要件(建物の引渡し)を備えた後で、賃貸人が建物を売却した場合、賃借人は新オーナーに対して賃借権を対抗できるが、賃料を新オーナーに支払うためには新オーナーから移転登記を備えてもらう必要がある。
- オ定期借家契約では建物の引渡しによる対抗要件が認められず、登記が必要である。
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正答はイです。
借地借家法31条「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる」が正確な記述をしています。
民法605条は「登記が対抗要件」というのが原則ですが、建物賃貸借については借地借家法31条で「建物の引渡し」が登記に代わる対抗要件として認められています。
アは「登記がなければ対抗できない」という原則的記述で、借地借家法31条の例外(引渡しで可能)を無視しており誤りです。
ウの「登記識別情報の交付」は所有権移転登記の手続きの話であり「引渡し」とは異なります。引渡しとは鍵の受渡し・入居の実現等です。
借地借家法31条(対抗要件)の整理:
| 方法 | 対抗要件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 賃借権の登記 | あり(民法605条) | 賃貸人の協力が必要 |
| 建物の引渡し | あり(借地借家法31条) | 賃貸人の協力不要(鍵の受渡しで足りる) |
「物権を取得した者」への対抗の意味:
31条は「建物の引渡し後に物権(所有権・抵当権等)を取得した者に対して」賃借権を対抗できると規定。
→ 新オーナー(買主)が後から物権を取得した場合でも、引渡し済みの賃借人は賃借権を主張できる。
各選択肢の整理:
- ア(誤): 31条により「登記がなくても引渡しがあれば対抗可能」。「登記がなければ対抗できない」は誤り。
- イ(正): 借地借家法31条の条文通り。
- ウ(誤): 「建物の引渡し」=実際に建物の占有・使用収益が可能な状態への移転(鍵の受渡し等)。登記識別情報は所有権登記手続きの話。
- エ(部分的に正しいが複雑): 賃借人が対抗要件(引渡し)を備えていれば新オーナーに賃借権を対抗できるのは正しい。「賃料を新オーナーに支払うためには移転登記が必要」という部分は民法605条の2第3項(新オーナーが賃借人に賃貸人たる地位を主張するには登記が必要)を逆から言っているような意味で、正確性に欠ける。
- オ(誤): 定期借家契約でも31条は適用される(「建物の賃貸借」一般に31条が適用)。登記は不要(引渡しで足りる)。
【31条の対抗要件の理論的根拠と実務的な注意点—引渡しの意味・空室期間の問題】
借地借家法31条が「建物の引渡し」を登記に代わる対抗要件として認めた理由は「賃借人が賃貸人に登記協力を求めることが実際上困難であるため、引渡しという賃借人が単独で達成できる行為を対抗要件とすることで賃借人を保護する」というものです。
「建物の引渡し」の意味(実務的解釈):
「引渡し」とは法的には以下の4類型があります:
1. 現実の引渡し: 実際に鍵を渡して占有を移転(最も一般的)
2. 簡易の引渡し: すでに占有している者(例:試用中の賃借人)がそのまま本引渡しを受ける
3. 占有改定: 引渡しをせずに賃貸人が「自分のために」占有する状態の変更
4. 指図による占有移転: 第三者を通じた占有の移転
賃貸借での「引渡し」は通常「現実の引渡し」→鍵の受渡し・入居の実現です。
「引渡し前の期間」の問題(入居前に物権変動があった場合):
賃貸借契約は締結したが、まだ入居(引渡し)していない間に建物が第三者に売却された場合:
- 賃借人は引渡し(対抗要件)を備えていない→新オーナーに賃借権を対抗できない可能性
- 新オーナーが「この建物は賃貸借契約なしで私が買った」と主張できる余地がある
管理会社の実務での対応:
- 賃貸借契約締結後、速やかに入居(引渡し)を完了させる
- 引渡し前の期間が長い場合(リフォーム中等)はリスクを認識した管理
「建物の引渡しを受けた賃借人」と抵当権との関係(重要な競合問題):
抵当権が設定された建物を賃借する場合:
- 抵当権が先に設定→競売で新所有者が登場→賃借権は原則として対抗できない(抵当権者の方が先)
- 引渡しが抵当権設定登記より先→31条の対抗要件を先に備えたとして、賃借権が抵当権に優先する場合がある
ただし「短期賃貸借制度の廃止」(H15年改正)により、競売後の賃借人保護は限定的です。競売で取得した買受人への「6ヶ月明渡猶予(民法395条)」が賃借人の最低限の保護です。
管理会社として「抵当権付き物件の賃貸借」を取り扱う場合は、賃借人への適切な説明(競売リスクの開示)が宅建業法の重要事項説明義務の観点からも必要です(業法35条)。
根拠: 借地借家法31条(e-Gov 法令検索)、民法395条・605条(e-Gov 法令検索)。確認日2026-06-10。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 借地借家法31条(e-Gov 法令検索)、民法605条の2第3項(e-Gov) 試験範囲の根拠: 賃貸住宅管理業法第64条/賃貸不動産経営管理士協議会公表 本問は賃貸不動産経営管理士試験の出題範囲に基づきgoukaku-navi.jpが独自に作成したオリジナル演習問題です(協議会発行の本試験問題の転載ではありません)。 確認日: 2026-06-10 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。