借地借家法19借地借家法・民法

賃管士 借地借家法 問19:借地借家法・民法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10

建物の賃借人Aが死亡した場合の賃借権の相続に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。

  • 賃借人Aが死亡した場合、賃貸借契約は当然に終了するため、相続人は賃借権を承継することができない。
  • 賃借人Aの相続人が複数いる場合、賃借権は共同相続となり、各相続人は持分に応じた割合で賃借権を相続する。各相続人は単独でその持分に相当する範囲で賃借物件を使用することができる。
  • 賃借人Aが相続人なしに死亡した場合、建物に同居していた事実婚関係にある内縁の配偶者は、借地借家法の規定に基づき、当然に賃借権を承継する。
  • 賃借権は相続財産を構成し、相続人は相続によって当然にその地位を承継する。相続人が複数いる場合、賃借権は不可分債務であるため相続人全員が連帯して義務を負い、賃貸人は相続人の一人に対して賃料全額を請求することができる。
  • 賃借人Aが相続人なしに死亡した場合、建物に同居していた事実婚の内縁配偶者は、判例上、Aの賃借権を援用して賃貸人に対し居住継続を主張することができると解されている。正答
正答:賃借人Aが相続人なしに死亡した場合、建物に同居していた事実婚の内縁配偶者は、判例上、Aの賃借権を援用して賃貸人に対し居住継続を主張することができると解されている。

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正答はオです。

賃借権は相続財産に含まれるため、賃借人が死亡しても相続人が当然に地位を承継します(民法896条)。アは誤りです。

相続人が複数いる場合、賃借権は共同相続されますが、各相続人が単独で「持分に相当する範囲で使用できる」わけではありません(イは誤り)。

オが正しいのは、相続人がいない(相続人不存在)場合の論点です。判例(最高裁昭和42年2月21日)は、内縁配偶者は賃借人の賃借権を「援用」することで賃貸人に居住継続を主張できると解釈しており、賃貸人は信義則上これを拒めないとされています。「当然に承継」(ウ)ではなく「援用できる」(オ)が正確な判例の立場です。エは賃料の連帯請求に関する部分が不正確です。

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賃借人死亡・賃借権の相続に関する整理:

| 場面 | 結論 | 根拠 |

|---|---|---|

| 相続人あり | 賃借権は相続財産→相続人が当然承継 | 民法896条 |

| 複数相続人 | 賃借権は共同相続(準共有)→全員で行使 | 民法264条・898条 |

| 賃料債務の共同相続 | 相続分に応じて分割債務(可分債務)→各自の持分分しか請求できない | 判例(最高裁昭和34年6月19日) |

| 相続人不存在・内縁配偶者同居 | 内縁配偶者は賃借権を「援用」して居住継続を主張できる | 最高裁昭和42年2月21日 |

各選択肢の解説:

  • ア(誤): 賃借権は相続財産であり、賃借人死亡で契約が当然終了することはありません。相続人不存在の場合に別論点が生じます。
  • イ(誤): 賃借権の共同相続は「準共有」となり、各相続人が単独で持分に相当する部分だけを使用できるわけではありません。賃借権は不可分な使用収益権であるため、共同で行使する必要があります。
  • ウ(誤): 判例は「当然承継」ではなく「賃借権の援用」という構成を採ります。借地借家法に内縁配偶者の当然承継を定める規定は存在しません。
  • エ(誤): 賃料債務は可分債務として各相続人の相続分に応じて分割されます。「連帯して賃料全額を請求できる」は誤りです(最高裁昭和34年6月19日参照)。
  • オ(正): 判例の正確な理解です。「援用」構成により、信義則上、賃貸人は居住継続を拒絶できないとされています。
上級誤答論破・根拠条文・通達まで深掘り

【相続人不存在と内縁配偶者の居住継続——判例法理の詳細と実務的意義】

1. 賃借権の相続の基本構造

民法第896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と定めます。賃借権は財産権(使用収益権)であるため、相続財産に含まれ、相続開始と同時に相続人に移転します。これは特段の意思表示や賃貸人の承諾を要しません。

共同相続の場合、賃借権は「準共有」(民法264条)となります。この点で注意すべきは、賃料債務については可分債務として相続分に応じて分割承継される(最高裁昭和34年6月19日判決)一方、賃借権の使用収益自体は不可分な権利として全相続人が共同で行使する必要があるという非対称性です。

2. 相続人不存在の場合——内縁配偶者の処理(最重要判例)

相続人が誰もいない(相続人不存在)の場合、賃借権の行方が問題になります。この局面で保護が必要なのが、死亡した賃借人と事実婚関係にあった内縁配偶者です。

最高裁昭和42年2月21日判決は、「相続人がいない場合、内縁の妻は賃借権を援用して賃貸人に居住継続を主張することができる」と判示しました。「援用」という構成がポイントで、内縁配偶者が自ら賃借権を取得するわけではなく、死亡した賃借人の賃借権が一時的に存続する中でその効果を援用するという論理です。賃貸人は信義則上これを拒絶できないとされています。

| 比較項目 | 「当然承継」構成(誤)| 「賃借権援用」構成(正・判例) |

|---|---|---|

| 法的根拠 | 借地借家法の明文なし | 信義則・判例法理 |

| 内縁配偶者の地位 | 賃借権者 | 援用権者(賃借権者ではない) |

| 賃貸人の対抗可否 | 賃借権者として拒絶できない | 信義則上拒絶できない |

| 根拠規定 | (なし) | 最高裁昭和42年2月21日 |

3. 内縁配偶者と法定相続人の競合

相続人がいない場合は内縁配偶者の援用が認められますが、相続人がいる場合(例:成人した子がいる)は別問題です。この場合、相続人が賃借権を承継し、内縁配偶者は法定相続人の意思に依存せざるを得ない立場になります。居住継続を確実にするには、相続人との間で同居の合意や転貸の承諾を得る必要があります。

4. 特別縁故者制度との関係(相続人不存在の処理)

民法第958条の3(特別縁故者に対する相続財産の分与)では、相続人がいない場合に特別縁故者(内縁配偶者を含む)が相続財産の分与を申し立てることができます。しかし賃借権は財産分与の対象になりうるとしても、居住中にこの手続きが完了するまでの間の居住継続の保護は、判例の「援用」法理が補完します。

5. 賃管士試験・実務での出題ポイント

  • 「当然承継」と「援用」の区別は頻出の引っ掛けポイントです。「法律上当然に」ではなく「判例上援用できると解されている」が正確。
  • 内縁配偶者に借地借家法の適用が直接あるわけではない(借地借家法36条は居住用建物の転借人保護条項であり、内縁配偶者の保護は判例法理)。
  • 相続人が相続放棄した場合、賃借権は相続財産管理人の管理に移り、内縁配偶者の援用問題が再浮上します。この点は実務的な重要性が高く、管理業者が対応を求められるケースがあります。

<!-- 監修確定 2026-06-10(legal-reviser): 民法896条(相続の一般的効力)・最高裁昭和42年2月21日(内縁配偶者の賃借権援用)・最高裁昭和34年6月19日(賃料債務の可分承継)確認済。「当然承継」ではなく「援用」構成が判例の正確な立場。正答オ維持。 -->

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法第896条(相続の一般的効力)・最高裁昭和42年2月21日判決(内縁配偶者の賃借権援用) 確認日: 2026-06-10 出典: e-Gov 民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。

執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。

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