問題
建物賃料の増減請求に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
キーボード:1〜5で選択・Enterで次へ
答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
えらぶと、この端末に記録します(登録はいりません)
解説
正答はエです。
賃料増減請求を巡って協議がまとまらない場合は、すぐに訴訟を起こすことはできず、まず調停を申し立てなければなりません(民事調停法24条の2の「調停前置主義」)。エが正しい記述です。
不増額特約(賃料を増額しない旨の特約)は有効です(イは誤り)。借地借家法32条1項但書が「一定の期間賃料を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」と規定しています。不減額特約については、普通借家では特約があっても減額請求権は排除できませんが、定期借家では借賃改定の特約として有効です(38条9項。ウはこれを逆にしており誤り)。
増額請求後に裁判で増額が認められた場合の差額には年10%の利息が付きます(オは誤り)。
賃料増減請求の規律(借地借家法32条):
| 特約 | 内容 | 効力 |
|---|---|---|
| 不増額特約 | 一定期間増額しない旨 | 有効(32条1項但書) |
| 不減額特約(普通借家) | 減額しない旨 | 無効(賃借人保護) |
| 不減額特約(定期借家) | 減額しない旨 | 有効(38条9項:借賃改定の特約があれば32条を適用しない) |
調停前置主義(民事調停法24条の2):
賃料増減請求は「金銭の支払い」ではなく「賃貸借の条件変更」に関する紛争であるため、民事調停法24条の2が適用されます。調停申立→調停不成立→訴訟という手順を踏む必要があります。
裁判確定までの賃料処理(32条2項・3項):
| 場面 | 賃借人の取扱い |
|---|---|
| 増額請求された場合 | 増額を相当とする額(従前賃料等)を支払う。裁判確定後に差額+年10%利息を支払う |
| 減額請求した場合 | 減額を相当とする額を支払う。賃貸人は裁判確定後に差額+年10%利息を返還する |
各選択肢:
- ア(誤): 増額請求には「土地・建物の租税の増加、近隣との比較等」の要件があり(32条1項)、必ず応じる義務はない。
- イ(誤): 不増額特約は32条1項但書により有効。
- ウ(誤): 記述が逆。普通借家は不減額特約があっても減額請求できる(32条1項は「契約の条件にかかわらず」請求できると規定)、定期借家は有効(38条9項)。
- エ(正): 調停前置主義が正しく適用されています。
- オ(誤): 差額には年10%の利息が付きます(32条2項)。
【賃料増減請求権の全体構造・不増額特約の射程・サブリースの特殊問題・実務処理の詳細】
1. 賃料増減請求権の法的性質
借地借家法32条の賃料増減請求権は、形成権(一方的な意思表示で効力が生じる権利)です。増額または減額の請求が相手方に到達した時点で、賃料改定の意思表示が成立します。ただし「増額後の具体的な賃料額」は当事者合意または裁判確定まで確定しないため、暫定的に従前賃料等で支払い・受領が行われます。
2. 不増額特約の有効性と限界
不増額特約は32条1項但書により有効です(イが誤りの理由)。ただし、次のような場合には特約の効力が制限されることがあります:
- 特約期間が著しく長期にわたる場合(公序良俗違反の問題)
- インフレ率・市況の変動で特約期間中の賃料が著しく均衡を失した場合(信義則・事情変更の法理)
実務では不増額特約の期間を「契約期間中」と定めているケースが多く、更新後は新たな合意で対応します。
3. サブリース契約における賃料減額請求の問題(最判平成15年10月21日)
サブリース(一括借上)契約において、サブリース業者(特定転貸事業者)が家主(オーナー)に対して賃料の減額を請求できるかが問題になりました。最高裁は「サブリース契約も建物賃貸借であり借地借家法32条が適用される」と判示しました。
| 問題 | 最高裁の立場 |
|---|---|
| 30年一括借上の特約 | サブリース契約も借地借家法の適用あり |
| 「30年間賃料保証」の契約文言 | 32条1項の適用を排除できない(減額請求権は存在する) |
| 「減額しない」旨の特約 | 普通借家のサブリースでは不減額特約は無効 |
この判決は「30年一括借上」の勧誘トークにあった「ずっと定額を保証」という説明の虚偽性を示したものとして重要です。業法上の「誇大広告禁止」「不当勧誘禁止」(賃貸住宅管理業法28〜30条)の立法背景にもなっています。
4. 調停前置主義の実際の手続
民事調停法24条の2に基づく調停前置:
1. 管轄の簡易裁判所に調停申立
2. 調停委員会による調整(3回程度の期日が多い)
3. 調停成立→調停調書が確定判決と同じ効力
4. 調停不成立→2週間以内に訴訟を提起(自動移行なし)
5. 調停申立なしで訴訟を提起→裁判所は職権で調停に付す
実務では調停申立書に「相当賃料の額」を主張することが重要で、専門家(不動産鑑定士)の意見書を添付するケースが多いです。
5. 裁判確定後の差額処理(32条2項・3項)
増額が認められた場合、賃借人は「不足額(差額)+年10%の利息」を遅滞なく支払わなければなりません。この「年10%」は民事法定利率(民法404条・3年ごとに見直す変動制)とは異なる特別規定です。賃料増減の場合のみ適用される特則であることを押さえてください。
- 借地借家法第32条e-Govで原文を読む
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律e-Govで原文を読む
- 民法第404条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 借地借家法第32条(建物賃料の増減)・民事調停法第24条の2 確認日: 2026-06-10 出典: e-Gov 借地借家法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=403AC0000000090 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達・ガイドラインは改正されることがあるため、最新の内容は一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会・国土交通省の公式情報をご確認ください。本サイトは協議会と一切関係ありません。
執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

