賃管士 借地借家法 問29:民法・借地借家法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-10)
賃料の供託に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア賃貸人が賃料の受取りを拒否した場合、賃借人はいつでも直ちに賃料の支払義務を免れる。賃貸人が拒否した事実を第三者に証明できれば、実際に供託しなくても債務の消滅を主張できる。
- イ賃借人は、賃貸人が賃料の受取りを拒否した場合、債権者不確知(オーナーチェンジで新賃貸人が不明等)の場合、または受領不能の場合に、供託によって賃料支払義務を免れることができる。正答
- ウ賃料を供託する場合、供託所は賃借物件の所在地を管轄する登記所(法務局)に限られ、他の供託所には供託できない。
- エ賃貸人が賃料の受取りを一度拒否した後、次月から受取りを再開した場合でも、最初の拒否後に行った供託の効力は遡及して無効となる。
- オ賃借人が供託を行った後、賃貸人が供託を受諾せず「供託は無効だ」と主張して賃料未払いを理由に契約解除を通告してきた場合、賃借人は供託の効力を争うことができるが、解除通告が到達した時点で賃貸借契約は解除される。
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正答はイです。
賃料の供託(法務局への賃料の預け入れ)は、賃貸人が賃料の受取りを拒否した場合(受領拒絶)、賃貸人が誰かわからない場合(債権者不確知)、または受け取れない状態の場合(受領不能)に認められます(民法494条)。供託を正当に行えば、賃料支払義務を免れ、滞納として解除されるリスクを回避できます。イが正しい記述です。
アは誤りで、実際に供託しなければ支払義務は消滅しません。ウは供託所の管轄についての記述で、賃借物件の所在地を管轄する供託所が一般的ですが、厳密には「債務の履行地」を管轄する供託所です。エは誤りで、有効な供託の効力が遡及して消えることはありません。
賃料供託の根拠と要件(民法494条):
| 供託原因 | 内容 |
|---|---|
| ① 受領拒絶 | 賃貸人が賃料の受取りを正当な理由なく拒否 |
| ② 受領不能 | 賃貸人が長期不在・認知症等で受領できない |
| ③ 債権者不確知 | オーナーチェンジで新賃貸人が不明・相続人が確定しない等 |
供託の効果:
有効な供託が行われた時点で、賃借人の賃料支払義務は消滅します(民法494条1項)。供託後に賃貸人が「受取りを拒絶した事実はない」と争うことはできますが、供託自体を無効にするためには供託取消の申立て(供託法8条)が必要で、賃借人は供託した事実を主張して賃料支払をしている旨を立証できます。
各選択肢:
- ア(誤): 実際に供託しなければ義務消滅なし。単なる「拒否の主張」は不十分。
- イ(正): 受領拒絶・債権者不確知・受領不能の3原因を正確に列挙。
- ウ(誤): 供託所は「債務履行地を管轄する供託所」(供託法4条・法務局)。「賃借物件所在地に限る」は不正確(通常は一致するが厳密には別要件)。
- エ(誤): 有効な供託の効力は消滅しない。一度有効に行われた供託は賃貸人が後から受取りを再開しても遡及して無効にはならない。
- オ(誤): 有効な供託があれば解除原因(賃料不払い)が存在しないため、解除通告は効力を生じない。「通告が到達した時点で解除される」は誤り。
【賃料供託の詳細手続・受領拒絶の具体的場面・供託の有効性争いの実務・供託と解除の関係】
1. 供託制度の意義
民法494条の供託は「債務者が債務の目的物を供託所に寄託することにより、債務を消滅させる制度」です。賃料支払いの場面では、賃貸人が受取りを拒否したり不明になったりした場合に、賃借人が賃料を供託することで「賃料を支払った」と扱われ、滞納リスクを回避します。
2. 受領拒絶の具体的場面
賃貸借で受領拒絶が問題になる典型的場面:
- 賃貸人が「賃料が低すぎる」として増額要求中に受取りを拒否
- サブリース契約で特定転貸事業者が賃料を支払わず家主への支払いを拒否
- オーナーチェンジの通知なく新旧どちらに払えばよいかわからない
- 相続が発生し誰が賃貸人かわからない(債権者不確知)
3. 供託の手続(実際の流れ)
1. 供託書の作成(供託原因・被供託者(賃貸人)・供託金額を記載)
2. 供託物(金銭)を供託所(法務局)に持参または振込
3. 供託受理→供託通知書が発行される
4. 被供託者(賃貸人)への通知(義務ではないが実務上は送付)
5. 供託の効力:供託完了時に賃借人の支払義務消滅
4. 供託所の管轄
供託法4条は「債務の履行地を管轄する法務局等」を供託所としています。賃貸借の賃料は「賃貸人の住所地」を履行地とするのが原則(民法484条・持参債務)ですが、当事者間に特約がある場合はそれに従います。実務上は物件所在地の法務局が多いですが、ウの「賃借物件所在地に限る」という記述は厳密には不正確(履行地が異なる場合があるため)。
5. 供託の有効性と解除の関係
賃貸人が「供託は無効だ」と主張して契約解除を通告した場合の処理:
| 場面 | 結論 |
|---|---|
| 供託が有効(要件充足) | 賃料は支払済み扱い→解除原因(賃料不払い)なし→解除無効 |
| 供託が無効(要件不充足) | 賃料は未払い扱い→相当な催告を経て解除可能 |
供託の有効性は事後的に裁判で判断されます。賃借人としては供託が有効であることを主張し(供託書・受理通知で証明)、解除が無効であることを裁判で求めます。オが「解除通告到達で解除される」としているのは誤りです。
6. 供託後の賃貸人の選択肢
賃貸人は供託を受諾(還付請求)するか、供託無効の確認訴訟を提起するかを選択します:
- 還付請求→賃貸人が供託金を受け取る(供託を事実上受諾)
- 供託無効確認訴訟→供託の要件(受領拒絶の有無等)を争う
7. 継続的供託の実務
賃貸人が受取りを拒否し続ける場合、賃借人は毎月供託を継続する必要があります。一度の供託で以後の賃料も免除されるわけではなく、月ごとに供託する義務があります。賃料増減請求が係争中の場合は、賃借人が相当と認める額を毎月供託し続けることが実務上求められます。
<!-- 監修確定 2026-06-10(legal-reviser): 民法494条(供託の3原因・受領拒絶・債権者不確知・受領不能)・供託法4条(供託所の管轄)確認済。有効な供託があれば解除原因なし(解除無効)の論理を確認。正答イ維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 民法第494条(供託) 確認日: 2026-06-10 出典: e-Gov 民法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-10)。
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執筆・監修:Zawa Lab(合格ナビ運営者情報) / 賃貸住宅管理業法・サブリース新法・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づきオリジナル問題と段差性のあるAI解説を作成しています。