問題
管理組合がマンションの大規模修繕工事を建設業者Aに発注し、工事完了日を定めた契約を締結したが、Aは約定の工事完了日を過ぎても工事を完了させなかった。この履行遅滞に関して、民法の規定によれば、最も適切なものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
自信の3択
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解説
「債務不履行」の中の「履行遅滞」は、「期日が来たのに義務を果たさない」状態です。確定期日(工事完了日)を定めた契約では、その日を過ぎると自動的に履行遅滞となります(催告不要・民法412条1項)。履行遅滞の効果として、損害賠償の請求と契約の解除の両方ができます。損害賠償の範囲は「通常生ずべき損害+当事者がその事情を予見すべきであった特別の損害」です(416条)。よって正答はアです。
履行遅滞(民法412条)は確定期限の場合は期限到来時に当然成立します(催告不要)。ウは「催告が必要」としていますが、412条1項は「確定期限があるときは、その期限の到来した時から遅滞の責任を負う」と規定し、催告は不要です(催告が必要なのは不確定期限・期限の定めのない場合)。イは「解除不可」としていますが、541条は「催告後相当期間が経過しても履行がなければ解除できる」と規定し、また542条は「催告なしに直ちに解除できる場合」も規定しています。損害賠償については416条1項が「通常生ずべき損害」、同2項が「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは」賠償を請求できると規定しており、アが正確に416条の構造を示しています。エは「資材高騰」が不可抗力(免責事由)に当たるかですが、商業上の資材価格変動は一般的に不可抗力とは認められません(民法415条1項の免責は「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由による」場合に限られる)。
債務不履行(民法415条〜422条の2)は2017年改正で体系的に整理されました。改正後の415条1項は「債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるとき」は損害賠償義務を負わないとする免責要件を明文化しました。これは改正前の「帰責事由(故意・過失)」論を「債務の趣旨に照らした客観的評価」に転換したものです。履行遅滞の損害賠償範囲(416条)については、1項の「通常損害」は社会通念上当然生じる損害(工期遅延による追加管理費用・仮住まい費用等)、2項の「特別損害」は特別の事情により生じた損害で、当事者がその事情を予見すべきであったときに限り賠償の対象となります。遅滞の発生時期は期限の種類で異なります。確定期限があるときは期限の到来した時から(412条1項)、不確定期限があるときは期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から(同条2項)、期限を定めなかったときは履行の請求を受けた時から(同条3項)、債務者は遅滞の責任を負います。本問は工事完了日という確定期限があるため、催告がなくても期日の経過で遅滞となります。遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行が不能となったときは、その履行の不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます(413条の2第1項)。解除については、催告期間を経過した時の不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できず(541条ただし書)、債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときも解除できません(543条)。解除権を行使しても損害賠償の請求は妨げられません(545条4項)。また、当事者は債務の不履行について損害賠償の額を予定することができ(420条1項)、賠償額の予定は履行の請求又は解除権の行使を妨げず(同条2項)、違約金は賠償額の予定と推定されます(同条3項)。不可抗力の扱いには注意が必要で、「不可抗力をもって抗弁とすることができない」(419条3項)のは金銭債務の不履行についての特則です。工事の完成という非金銭債務の遅滞は、415条1項ただし書の「債務者の責めに帰することができない事由」に当たるかどうかで免責の可否が判断され、資材価格の高騰だけでは通常これに当たりません。建設工事請負契約の遅延は実務でも問題となることが多く、工事完了予定日・違約金条項・損害賠償上限条項の設定が管理組合側にとって重要な契約交渉事項です。大規模修繕工事契約では工期遅延に対する違約金条項(1日当たり一定額等)を設けることが多く、このような約定があれば416条の損害立証なしに請求できます。
- 民法第412条・第415条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:出典:マンション管理業協会公表の出題範囲(管理業務主任者試験)を参照した合格ナビ独自作成 各根拠条文は「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-10-12)。
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執筆・監修:合格ナビ運営事務局(運営者情報)。マンション管理適正化法・区分所有法・標準管理委託契約書・国土交通省ガイドラインの出題範囲分析に基づき、オリジナル問題と段差のある3段階の解説を作成しています。

