社労士 労働安全衛生法 問12:労働安全衛生法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働安全衛生法に規定する総括安全衛生管理者の選任に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア常時100人人以上の労働者を使用する林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業等の事業場では、総括安全衛生管理者を選任しなければならない。
- イ常時300人人以上の労働者を使用する製造業(物の加工業を含む)・電気業・ガス業・熱供給業・水道業・通信業・各種商品卸売業・家具等小売業・各種商品小売業・ホテル業等の事業場では、総括安全衛生管理者の選任が必要である。
- ウ総括安全衛生管理者は、その事業場において、事業の実施を統括管理する者(事業場の長に相当する地位にある者)のうちから選任しなければならない。
- エ総括安全衛生管理者は、安全管理者・衛生管理者・産業医の中から選任することができる。正答
- オ総括安全衛生管理者を選任した事業者は、選任後遅滞なく、所轄の労働基準監督署長に報告書を提出しなければならない。
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正答はエ(誤っている記述)です。
総括安全衛生管理者は、「その事業場において事業の実施を統括管理する者」すなわち事業場のトップ(工場長・支社長等)から選任しなければなりません(安衛法第10条第1項)。安全管理者・衛生管理者・産業医などの専門職から選任するものではなく、現場の最高責任者が兼務する形の制度です。
選任が必要な事業場の規模は業種によって異なります。林業・鉱業・建設業等は100人人以上、製造業・電気・ガス業等は300人人以上、その他の業種は1,000人人以上が基準です。
総括安全衛生管理者の選任要件(安衛法第10条・安衛令第2条):
| 業種区分 | 選任義務が発生する事業場規模 |
|---|---|
| 林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業 | 常時100人人以上 |
| 製造業・電気業・ガス業・熱供給業・水道業・通信業・各種商品卸売/小売業・家具等小売業・ホテル業 | 常時300人人以上 |
| その他の業種(上記以外の全業種) | 常時1,000人人以上 |
「事業の実施を統括管理する者」の意味:
総括安全衛生管理者は「その事業場で事業を統括管理する者」でなければならず、事業場の最高責任者(工場長・支店長・院長等)から選任されます。安全・衛生の専門家から選ぶ制度ではなく、経営的な意思決定権限を持つ者に安全衛生の最高責任を持たせる設計です。
各選択肢の精査:
- ア(正): 100人以上・林業等→安衛令第2条第1号。
- イ(正): 300人以上・製造業等→安衛令第2条第2号。
- ウ(正): 「実施を統括管理する者」から選任→第10条第1項。
- エ(誤): 安全管理者・衛生管理者・産業医から選任するものではない。実質的に別の職責(管理者・医師)とは機能が異なる。
- オ(正): 選任後遅滞なく様式第3号で所轄労基署長に報告→安衛則第2条第2項。
【総括安全衛生管理者制度の設計思想:安全衛生管理の「経営責任」化】
総括安全衛生管理者は1972年の安衛法制定時に創設されました。それ以前は労基法第42条の「工業的事業の附属建設物の安全保持」規定程度しかなく、安全衛生の責任が現場任せになっていました。安衛法は安全衛生管理体制を「経営トップの責任」として位置づけ、①最高位の経営者(総括安全衛生管理者)が統括、②安全管理者・衛生管理者・産業医が専門的サポート、③安全委員会・衛生委員会で労使が協議、という三層構造を設計しました。
【業種別の規模要件(100/300/1000人)の設定根拠】
3区分の背景には「業種ごとのリスクの高さ」があります:
- 100人以上(林業・鉱業・建設・運送・清掃): 死傷災害頻度が最も高い危険業種。小規模でも安全統括責任者が必要。
- 300人以上(製造・電気・ガス・水道・ホテル等): 機械・設備による危険や大規模施設での事故リスクがある中危険業種。
- 1000人以上(その他・小売・サービス・金融等): 身体的危険は比較的少ないが、大規模になれば統括管理が必要な業種。
この区分は安衛令第2条に定められており、業種分類は日本標準産業分類に基づきます。
【「事業場の統括管理者」選任と「兼任」の実務問題】
大規模工場では「工場長が総括安全衛生管理者」となることが典型例ですが、実務では以下の問題が発生することがあります:
1. 組織再編時の更新忘れ: 工場長が交代したのに総括安全衛生管理者の変更届出を忘れるケース。選任変更後も遅滞なく労基署への報告が必要。
2. 「名目」選任の問題: 工場長を名目上選任しているが実際の安全衛生管理を別の担当者が実質的に行い、工場長が安全衛生活動に関与しないケース。これは安衛法の「統括管理」を形骸化させるものとして行政指導の対象。
3. グループ会社・派遣の場合: 事業場に派遣労働者が多数いる場合でも、総括安全衛生管理者は「当該事業場(派遣先)の統括管理者」が選任する(派遣元は対象外)。
【安全委員会・衛生委員会との関係:総括安全衛生管理者の議長役】
総括安全衛生管理者は安全委員会(第17条)・衛生委員会(第18条)の議長を務めます(安全委員会は安全管理者が議長の場合もあり)。委員会の審議結果を踏まえて安全衛生計画を立案・実行する義務があります。社労士は顧問先大規模事業場の委員会規程の整備・議事録管理・改善計画フォローアップを支援することがあります。特に規模要件を超えているのに総括安全衛生管理者未選任の事業場への指摘は、衛生管理者選任状況の調査と並行して行われます。
根拠: 労働安全衛生法第10条、同法施行令第2条、同法施行規則第2条(報告義務)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第10条(総括安全衛生管理者)、同法施行令第2条 <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): エが誤り。総括安全衛生管理者は「その事業場において事業の実施を統括管理する者(いわゆる事業場のトップ)」から選任するものであり、安全管理者・衛生管理者・産業医から選ぶものではない(安衛法第10条第1項)。安全管理者や産業医と兼任することも原則できない(実質的に別人が担う)。ア(100人以上・林業等)・イ(300人以上・製造業等)・ウ(実施を統括管理する者から選任)・オ(遅滞なく労基署長へ報告)はいずれも正しい。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。