社労士 労働安全衛生法 問9:労働安全衛生法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
労働安全衛生法に規定する安全委員会・衛生委員会・安全衛生委員会に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア安全委員会は、常時50人以上の労働者を使用する事業場であっても、農業・林業・水産業・鉱業・建設業・製造業等の一定業種にのみ設置義務があり、金融業・医療業・教育業等の非製造業には設置義務がない。正答
- イ衛生委員会は、常時50人以上の労働者を使用するすべての業種の事業場に設置義務があり、安全委員会と衛生委員会の両方の設置義務がある事業場は、統合して安全衛生委員会を設置することができる。
- ウ安全委員会・衛生委員会(または安全衛生委員会)は毎月少なくとも1回開催しなければならず、その議事で重要なものの概要は、各作業場の見やすい場所に常時掲示する等の方法により労働者に周知しなければならない。
- エ衛生委員会の調査審議事項には、労働者の健康障害を防止するための基本対策・健康の保持増進を図るための基本対策・労働災害の原因および再発防止対策・その他重要事項が含まれる。
- オ安全委員会・衛生委員会の議事録は作成義務があり、3年間保存しなければならない。
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正答はア(誤っている記述)です。
安全委員会の設置義務業種は、林業・鉱業・建設業・製造業(一部)・運送業(一部)・自動車整備業・機械修理業・清掃業等(安衛令第8条第1項・別表第1)で、農業・水産業は含まれません。アが「農業・林業・水産業・鉱業・建設業・製造業等」と農業・水産業を含めている点が誤りです(林業は含まれるため林業の記載自体は誤りではありませんが、農業・水産業の記載が過剰)。
イは正しく、衛生委員会は全業種50人以上で義務があり、安全衛生委員会への統合も可能です。ウは正しく、月1回以上の開催・周知義務があります。エは正しく、衛生委員会の調査審議事項が正確に述べられています。オは正しく、議事録の3年間保存義務があります(安衛規則第23条第4項)。
安全委員会・衛生委員会の設置要件比較:
| 委員会 | 設置義務規模 | 対象業種 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 安全委員会 | 常時50人以上 | 安全管理者選任対象業種のみ(鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・熱供給業・水道業・通信業・各種運送業・自動車整備業・機械修理業・清掃業等) | 安衛法第17条・安衛令第8条別表第2 |
| 衛生委員会 | 常時50人以上 | 全業種 | 安衛法第18条 |
| 安全衛生委員会 | 両方の設置義務がある場合 | 安全管理者選任対象業種の50人以上 | 安衛法第19条 |
「農業・林業・水産業」の位置付け(社労士試験の頻出ひっかけ):
- 林業: 安衛令第2条第1号により総括安全衛生管理者100人以上・安全管理者50人以上(安衛令第3条)・安全委員会50人以上で義務(安衛令第8条第1項第1号)。
- 農業・水産業: 総括安全衛生管理者・安全管理者・安全委員会のいずれの選任義務業種にも該当しない(衛生委員会のみ全業種50人以上で適用)。
林業と農業・水産業の扱いの違いは混同しやすく、社労士試験で頻出のひっかけ論点です。
委員会の委員構成(安衛法第17条・第18条):
| 委員 | 衛生委員会(第18条)の例 |
|---|---|
| 議長 | 総括安全衛生管理者またはそれに準ずる者(事業者が指名) |
| 産業医 | 産業医(選任されている場合) |
| 衛生管理者 | 衛生管理者(1人) |
| 労働者代表委員 | 過半数組合(ない場合は過半数代表者)が推薦した者(半数) |
議事録の取扱い(安衛規則第23条):
- 委員会の都度作成(義務)
- 3年間保存(義務)
- 概要の周知:各作業場の見やすい場所への掲示・書面配付・電磁的記録開示等の方法で周知
各選択肢の解説:
- ア(誤・正答): 「農業・水産業」は安全委員会の設置義務業種に含まれない(安衛令第8条)。林業は含まれるため、農業・水産業を併記したアの列挙が過剰で誤り。
- イ(正): 衛生委員会は全業種50人以上(第18条)。安全衛生委員会への統合可能(第19条)。
- ウ(正): 月1回以上の開催(安衛規則第23条第1項)・周知義務(同第3項)。
- エ(正): 衛生委員会の調査審議事項(第18条第1項各号)が正確。
- オ(正): 議事録3年間保存(安衛規則第23条第4項)。
【安全委員会・衛生委員会の二本立て構造の立法趣旨】
安全委員会と衛生委員会を別立てにしている(統合を任意とした)設計には理由があります。安全(機械・設備の危険による労働災害)と衛生(化学物質・健康障害・メンタルヘルス)は、専門性の方向が異なります。安全は工学・機械・建設の専門知識が必要であり、衛生は医学・化学・心理学の専門知識が必要です。同一委員会に両方を混在させると、それぞれの専門的議論が薄まるリスクがあります。安全衛生委員会への統合を「任意」としているのは、この専門性の違いを尊重した設計です。
ただし現実には、中小企業(50〜300人)では「安全委員会・衛生委員会の両方を個別に運営する人的余力がない」として安全衛生委員会に統合するケースが大多数です。社労士はこの統合運営のメリット(効率化)とデメリット(議論の専門性低下)を顧問先に説明した上で、委員会の実質化を支援します。
【「月1回以上の開催」要件の実務的な落とし穴】
「毎月少なくとも1回開催」という要件は、暦月ごとに1回以上開催することが必要です。「4月に2回開催したから5月は免除」ではありません。また、開催したとしても:
- 開催の記録(出席者・審議内容・決議事項)がないと「開催したこと」の証明ができない
- 議事録の作成・3年保存を怠ると第120条違反(30万円以下の罰金)
実務上、年間の委員会スケジュールをあらかじめ確定し、開催案内→会議→議事録作成→周知という一連のフローをルーティン化することが月1回要件の確実な履行に直結します。
【衛生委員会の調査審議事項の範囲(近年の拡大)】
安衛法第18条第1項で定める衛生委員会の調査審議事項は以下のとおりです:
1. 第1号: 労働者の健康障害防止の基本対策
2. 第2号: 労働者の健康の保持増進を図るための基本対策
3. 第3号: 労働災害の原因・再発防止対策(衛生に関するもの)
4. 第4号: 前3号のほか、労働者の健康障害防止・健康保持増進に関する重要事項
「第4号」の包括規定により、法令で明示されていない事項(例:テレワーク中の健康管理・感染症対策・高ストレス者フォロー・育児・介護による健康影響)も衛生委員会の審議事項として取り扱えます。これは社会情勢の変化に委員会制度が追随できるための設計です。
近年、ストレスチェック制度(安衛法第66条の10)との連携も衛生委員会の重要テーマです。ストレスチェックの集団分析結果の評価・職場環境改善策の策定は衛生委員会で審議することが推奨されており(厚生労働省ストレスチェック指針)、委員会の実質的な機能向上が求められています。
【産業医との委員会連携(2019年改正以降の実務)】
2019年4月改正で産業医の衛生委員会関与が強化されました:
- 産業医の勧告内容・経緯を衛生委員会に報告する義務(安衛法第13条第6項)
- 産業医が行った面接指導・健康相談の結果の委員会へのフィードバック(任意報告が推奨)
- 個人情報保護との均衡(集団分析は可・個人特定は不可)
社労士はこの産業医-衛生委員会の情報連携の枠組みを顧問先で整備し、「記録に残らない口頭指示・個別対応」から「委員会審議→議事録→周知」という透明なプロセスへの転換を支援することが、安全衛生コンサルティングの核心です。
根拠: 労働安全衛生法第17条(安全委員会)・第18条(衛生委員会)・第19条(安全衛生委員会)・第19条の2、労働安全衛生規則第23条(委員会の招集・議事録・周知・保存)、安衛令第8条別表第2(安全委員会の設置対象業種)。確認日2026-06-08。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 労働安全衛生法第17条(安全委員会)・第18条(衛生委員会)・第19条(安全衛生委員会)・第19条の2(議事録の周知・保存)、労働安全衛生規則第23条(委員会の運営)・第24条(議事録の保存3年間)、労働安全衛生法施行令第8条(安全委員会設置事業場) <!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 安衛令第8条により安全委員会設置義務業種は「①50人以上=林業・鉱業・建設業・特定製造業(木材木製品/化学/鉄鋼/金属製品/輸送用機械器具)・運送業の一部(道路貨物・港湾)・自動車整備・機械修理・清掃 ②100人以上=それ以外の製造業・電気・ガス・熱供給・水道・通信等」。**農業・水産業は安全委員会の設置義務業種に含まれない**(総括安全衛生管理者の対象でもない)。設問アは「農業・水産業」を含めて列挙しているため誤り肢として成立。議事録3年保存は安衛則第23条第4項(条文番号確認済)。正答「ア」確定。 --> 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。