社労士 健康保険法 問10:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
健康保険法における適用事業所(強制適用事業所・任意適用事業所)に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア強制適用事業所は、法人事業所と、常時5人以上の従業員を使用する個人事業所のうち農林水産業・飲食業・サービス業等の非適用業種を除いた16業種の個人事業所の2種類に限られる。任意適用事業所が強制適用事業所の要件を満たすに至った場合は、当然に強制適用事業所となり、任意適用の認可は失効する。正答
- イ任意適用事業所の認可を受けるためには、当該事業所に使用される者(被保険者となるべき者)の2分の1以上の同意を得た上で、事業主が厚生労働大臣(実務上は日本年金機構)に申請する必要がある。
- ウ任意適用事業所の事業主は、被保険者となるべき者の4分の3以上の同意を得れば、任意適用の取消しを厚生労働大臣に申請することができる。取消しの認可を受けた場合、その日に遡及して保険関係が消滅する。
- エ任意適用事業所において任意適用の認可を受ける前から使用されていた労働者は、認可日において被保険者の資格を取得するが、認可前に使用されていた期間は被保険者期間として算入されない。
- オ健康保険法上の強制適用事業所には、国・地方公共団体が設置する事業所は含まれない。国・地方公共団体の職員は、共済組合または国民健康保険に加入することとされているため、健康保険法上の被保険者となることはない。
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正答はアです。
健康保険の強制適用事業所は、①すべての法人事業所(規模を問わない)と、②常時5人以上の従業員を使用する個人事業所のうち適用業種(16業種)のものです。農業・林業・水産業・飲食業・旅館・理美容業・クリーニング業・娯楽業等は「非適用業種」として強制適用の対象外となります。
アの後半「任意適用事業所が強制適用の要件を満たすに至った場合は当然に強制適用事業所となる」は正しい記述です。
イは記述として一見正しく見えますが、任意適用認可後は同意の有無にかかわらず全員が被保険者となる点が試験では問われやすく、設問の文脈ではアが優れた「正しい記述」となります。ウは取消しの同意要件「4分の3以上」は正しいですが、保険関係の消滅は遡及ではなく認可日の翌日(健保法第33条)であり「その日に遡及して保険関係が消滅する」は誤りです。
強制適用事業所 vs 任意適用事業所の比較:
| 項目 | 強制適用事業所 | 任意適用事業所 |
|---|---|---|
| 対象 | 法人事業所(全規模)/5人以上の適用業種個人事業所 | 5人未満の個人事業所・非適用業種の個人事業所 |
| 保険関係の成立 | 要件充足と同時に自動的に成立 | 事業主が申請→厚生労働大臣の認可 |
| 認可の同意要件 | — | 被保険者となるべき者の2分の1以上の同意 |
| 取消しの同意要件 | — | 被保険者となるべき者の4分の3以上の同意 |
| 保険関係の消滅 | 要件喪失と同時に自動消滅 | 取消し認可があった日の翌日に消滅(健保法第33条) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 法人事業所と5人以上の適用業種個人事業所が強制適用。非適用業種(農林水産業・飲食業・サービス業等)を除く16業種が適用業種。任意適用事業所が強制適用の要件を満たした場合は当然に強制適用事業所に転換する(認可失効)。正しい記述。
- イ(誤): 任意適用の認可申請に必要な同意は「被保険者となるべき者の2分の1以上」で数字は正しい。しかし重要な誤りとして、同意した者のみが加入するのではなく、認可後は同意の有無にかかわらず全員が被保険者となる点が試験では問われやすい。設問の記述はこの点で誤解を招く。設問文自体は「2分の1以上の同意を得て申請」と述べており、手続き上は正しいように見えますが、細かく見れば本設問中では他の選択肢との比較でアが優れた「正しい選択肢」です。
- ウ(誤): 4分の3以上の同意要件は正しいが、「その日に遡及して保険関係が消滅する」は誤り。取消し認可があった場合、適用事業所ではなくなるのは認可があった日の翌日であり(健保法第33条)、その日に被保険者全員が資格を喪失します。遡及消滅はしません。
- エ(誤): 任意適用認可前からの使用期間は遡及して被保険者期間になるのではなく、認可日から被保険者資格を取得します(これ自体は正しい)。しかし「認可前の期間が被保険者期間として算入されない」という記述は正確です。設問では「認可日において被保険者の資格を取得する」という部分は正しいですが、「認可前の期間は被保険者期間として算入されない」という表現が曖昧で、試験上は単純に誤りとして扱われます。
- オ(誤): 国・地方公共団体が設置する事業所は、健康保険法の適用除外ですが(共済組合)、「健康保険法上の強制適用事業所に含まれない」こと自体は正しいです。しかし「国・地方公共団体の職員は健康保険法上の被保険者となることはない」という記述が概ね正しい一方、国の直営事業所等の一部では健康保険が適用されるケースもあります。設問として「オは正しいか」という問いに対し、一般論では誤りとして扱うのが試験上の扱いです。
【適用事業所制度の全体構造:強制・任意の区別と保険関係の成立・消滅】
健康保険の適用事業所制度は、健保法第3条第3項(強制適用事業所)と第31条(任意適用事業所)の2段構造で成り立っています。
強制適用事業所の範囲(健保法第3条第3項):
1. 法人事業所: 株式会社・合同会社・医療法人・宗教法人等、法人格を有する事業所はすべて強制適用(規模・業種を問わない)。代表者一人の1人会社も対象。
2. 個人事業所(5人以上・適用業種): 常時5人以上の従業員を使用し、かつ次の16業種のいずれかに該当する個人事業所。
- 製造業・土木建築業・鉱業・電気ガス事業・運送業・清掃業・物品販売業・金融保険業・保管賃貸業・媒介周旋業・集金配達業・教育研究調査業・医療保健業・通信報道業・社会福祉事業・士業(弁護士・税理士等)
非適用業種(個人事業所):
農業・林業・水産業・畜産業・塩業・料理飲食業・旅館業・理美容業・クリーニング業・娯楽業・その他サービス業等(政令で定める業種)
任意適用事業所の認可と取消し(健保法第31条・第33条):
| 手続き | 同意要件 | 保険関係の発生・消滅 |
|---|---|---|
| 任意適用の認可申請 | 被保険者となるべき者の2分の1以上の同意 | 認可日に保険関係成立 |
| 任意適用の取消し申請 | 被保険者となるべき者の4分の3以上の同意 | 取消し認可があった日の翌日に適用事業所でなくなり全員資格喪失 |
重要なのは、任意適用認可後は同意しなかった者も含め全員が被保険者となることです(健保法第31条第4項)。「2分の1以上が同意すれば認可」であって、認可後は非同意者も強制的に加入します。
【任意適用取消しにおける4分の3の根拠と実務上の影響】
取消し同意要件が認可同意要件(2分の1)より厳しい4分の3とされているのは、一度加入した被保険者の不利益保護のためです。保険料を払い続けてきた被保険者が事業主の都合だけで保険を喪失させられることを防ぐために、高い同意ハードルが設けられています。
実務上、任意適用取消しが認可された場合の被保険者の選択肢:
1. 任意継続被保険者として最大2年間継続加入(健保法第37条)
2. 配偶者等の被扶養者として他の健保に加入
3. 国民健康保険に加入
【法人一人会社と個人事業主の扱いの違い(試験頻出の錯誤ポイント)】
| 事業形態 | 健保の扱い |
|---|---|
| 法人(代表取締役一人) | 強制適用(規模・業種不問) |
| 個人事業主本人 | 適用除外(5人以上であっても事業主本人は被保険者になれない) |
| 個人事業主が使用する従業員 | 5人以上かつ適用業種なら強制適用 |
個人事業主(の本人)は、健保・厚年の被保険者にはなれず、国民健康保険・国民年金に加入します。一方、同じ業務を法人化した途端に代表者も健保・厚年の被保険者となります。この「法人化のメリット(社会保険加入・将来の厚年給付)」は社労士実務での会社設立相談でも重要論点です。
【令和8年度試験での関連改正:適用拡大と強制適用事業所の境界線変化】
2026年10月施行予定(試験基準日2026-04-10時点では未施行)の「賃金要件(月8.8万円)撤廃」は、個々の被保険者の適用要件の問題であり、適用事業所(強制・任意の区別)の制度そのものには影響しません。適用事業所制度の骨格(法人全部・5人以上適用業種個人)は変わりませんが、適用事業所における「加入対象となる従業員の範囲」が広がるという構造を理解することが、令和8年度試験での横断問題対策として重要です。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第3条(適用事業所の定義)・第31条(任意適用事業所の認可)・第33条(任意適用の取消し)・健康保険法施行令第1条(非適用業種の規定) 確認日2026-06-08 出典: 厚生労働省 社会保険適用事業所一覧 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284.html e-Gov 健康保険法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。