社労士 健康保険法 問11:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
健康保険法における日雇特例被保険者制度に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア日雇特例被保険者とは、日々雇い入れられる者または2か月以内の期間を定めて使用される者で、所定の適用除外要件に該当しない者をいう。一定の場合には任意加入の届出をすることで通常の被保険者(一般被保険者)として取り扱われる場合もある。
- イ日雇特例被保険者の保険料は、日々の賃金に応じた「健康保険料率ごとの標準賃金日額」に保険料率を乗じた額が事業主から徴収される。事業主は、日雇特例被保険者に係る健康保険印紙(日雇健保印紙)を購入し、被保険者の日雇特例被保険者手帳に貼付することで保険料を納付する仕組みとなっている。
- ウ日雇特例被保険者が療養の給付を受けるためには、受診月の前2か月間において通算して26日分以上の保険料が納付されているか、または受診月の前6か月間において通算して78日分以上の保険料が納付されている必要がある(受給資格の要件)。
- エ日雇特例被保険者が継続して2か月以上同一の事業主に使用されると見込まれる場合は、その事業主による健康保険の強制被保険者(一般の被保険者)となり、日雇特例被保険者の資格を喪失する。正答
- オ日雇特例被保険者の疾病・負傷に係る療養の給付は、日雇特例被保険者手帳に受給資格が確認された場合にのみ提供される。この手帳に基づく給付は都道府県単位で管理され、被保険者は手帳を持参して全国どこの保険医療機関でも受診することができる。
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正答はエ(誤っている記述)です。
エの誤りは、日雇特例被保険者が「継続して2か月以上同一の事業主に使用されると見込まれる場合」という部分にあります。日雇特例被保険者が一般の被保険者(強制被保険者)に転換するのは、「継続して2か月を超えて同一の事業主に使用されるに至った場合」(健保法第3条第2項ただし書)です。「見込み」の段階ではなく、実際に2か月を超えて使用されたことが事実として確認された時点で転換します。
ウの「前2か月間に通算26日分以上」または「前6か月間に通算78日分以上」という受給資格の要件は正しい記述です。イの健康保険印紙による保険料納付の仕組みも正しいです。
日雇特例被保険者制度の主要ポイント:
| 項目 | 内容 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 対象者 | 日々雇い入れられる者・2か月以内の期間を定めて使用される者 | 健保法第3条第2項 |
| 一般被保険者への転換 | 継続して2か月を超えて同一事業主に使用されるに至ったとき | 健保法第3条第2項ただし書 |
| 受給資格 | 前2か月に通算26日分以上 OR 前6か月に通算78日分以上の保険料納付 | 健保法第123条 |
| 保険料納付方法 | 健康保険印紙を日雇特例被保険者手帳に貼付(事業主が実施) | 健保法第126条 |
| 管理主体 | 全国健康保険協会(協会けんぽ)が全国一元管理 | — |
各選択肢の解説:
- ア(正): 日雇特例被保険者の定義(日々雇い入れられる者・2か月以内期間設定者)は正確。適用除外要件(同一事業主に2か月超継続・1か月以上の期間で月16日以上使用される等)を除いた者が対象。任意加入の届出についての記述も一般論としては存在します(任意加入は一定の条件下で可能)。
- イ(正): 健康保険印紙(日雇健保印紙)を購入して日雇特例被保険者手帳に貼付する納付方法は正しい。印紙は標準賃金日額の区分に対応した9種類(甲・乙区分)があり、事業主が使用日ごとに購入・貼付する。
- ウ(正): 受給資格の2パターン(前2か月間で通算26日分以上 OR 前6か月間で通算78日分以上)は健保法第123条の正確な記述。「通算」という点が重要で、単一の事業主での勤務日数ではなく複数事業主をまたいだ通算日数でカウントします。
- エ(誤・正答): 一般被保険者への転換要件は「見込み」ではなく「2か月を超えて使用されるに至ったとき」(事実として超えた時点)。健保法第3条第2項ただし書の正確な要件は「2か月を超えて引き続き使用されるに至ったときから、その被保険者の種別を変更する」という構造。契約時点での見込みが2か月超であっても、実際に超えるまでは日雇特例被保険者のままです。
- オ(正): 日雇特例被保険者手帳による給付の受付と全国での受診可能性は正しい記述です。ただし管理は「都道府県単位」ではなく「全国健康保険協会(協会けんぽ)が全国一元管理」で行われます(設問が「都道府県単位で管理」と述べているのは誤解を招く記述ですが、主設問の誤りはエです)。
【日雇特例被保険者制度の設計思想と現代的な意義】
日雇特例被保険者制度は、日々の雇用関係を基礎とする「日雇労働者」の医療保障を確保するために設けられた特別制度です。通常の被保険者制度では「継続する雇用関係」を前提として保険料を月単位で徴収しますが、日雇労働者は雇用関係が日ごとに変動するため、特別な保険料徴収方法(健康保険印紙)と受給資格確認方法(日雇特例被保険者手帳)が採用されています。
健康保険印紙の仕組み:
健康保険印紙(日雇健保印紙)は郵便局や一部の保険代理所で購入でき、標準賃金日額に対応した区分があります。事業主は被保険者を使用した日ごとに印紙を購入して日雇特例被保険者手帳に貼付します。これにより:
1. 保険料の日次納付が実現(翌月精算という滞納リスクがない)
2. 被保険者が複数の事業主で働いても印紙の貼付枚数が積み上がる(通算受給資格の基礎)
3. 手帳の提示により受給資格を医療機関が確認できる
受給資格の2トラック(前2か月26日 vs 前6か月78日):
| トラック | 受給資格の条件 | 設計上の趣旨 |
|---|---|---|
| 前2か月トラック | 受診月の前2か月間に通算26日分以上 | 直前の安定就業者への対応 |
| 前6か月トラック | 受診月の前6か月間に通算78日分以上 | 不定期就業者でも長期的な参加実績で受給資格を確保 |
「通算」とは複数の事業主での就業日数を合算できることを意味します。これが制度の重要なポイントで、特定の一事業主に週3日しか使用されなくても、別の事業主での就業日数と合わせて26日に達すれば受給資格を得られます。
【一般被保険者への転換要件の正確な理解】
健保法第3条第2項の「2か月を超えて引き続き使用されるに至ったとき」という転換要件は、いくつかの重要な含意を持ちます。
1. 転換のタイミング: 2か月超の使用が「事実として発生した日」から転換(見込みではない)
2. 転換後の扱い: 一般の強制被保険者として月単位の保険料徴収に移行
3. 期間の計算: 「2か月」は暦月でカウントし、例えば4月1日採用なら6月1日に2か月超となります
試験では「見込まれる場合に転換」という誤りの選択肢が頻出します。実際の法律は「事実として超えた時点」での転換なので、この区別が正誤を分けます。
【日雇特例被保険者制度と現代のギグエコノミーとの関係】
近年、フードデリバリーや単発派遣・スポットワーク等「ギグワーク」が拡大しています。これらの就業者は法律上の「労働者」性が問われる場面がありますが、仮に「日々雇い入れられる労働者」と判断された場合は日雇特例被保険者制度の適用対象となりえます。
2021年以降の特別加入制度の拡大(フリーランス・ITエンジニア等)と日雇特例被保険者制度の適用範囲は重複しない(特別加入は労災、日雇特例は健保)ため、ギグワーカーの医療保障としては:
- 健保被保険者(労働者性あり・継続的な雇用なら一般被保険者)
- 日雇特例被保険者(労働者性あり・日々雇用なら日雇特例)
- 国民健康保険(個人事業主・フリーランスとして働く場合)
という振り分けが実務上の問題になります。社労士試験では、こうした現代の雇用形態の多様化と制度の適用関係が社一(一般常識)との横断問題として出題可能性があります。
【日雇特例被保険者手帳の一元管理(協会けんぽ)】
日雇特例被保険者は日本全国どこの保険医療機関でも手帳を提示して受診できます。この一元管理は全国健康保険協会(協会けんぽ)が担当しており、都道府県ごとに管理が分断されているわけではありません(オの「都道府県単位」という表現が誤解を招くポイント)。手帳は原則1人1冊で、どの事業主での就業分も同一手帳に印紙が貼付されていくため、全国での就業履歴が一元管理されます。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第3条第2項(日雇特例被保険者の定義)・第123条(受給資格)・第126条(保険料の納付)・第39条(一般被保険者への転換) 確認日2026-06-08 出典: 厚生労働省 日雇労働者の健康保険 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/hihokensha/index.html e-Gov 健康保険法第3条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。