問題
健康保険における移送費・訪問看護療養費・入院時食事療養費に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はウです。
入院時食事療養費は、被保険者が保険医療機関に入院中の食事に対して保険給付が行われる制度です(健保法第85条)。食事療養に要した費用の全額を保険が負担するのではなく、「費用から標準負担額(被保険者の自己負担部分)を控除した額」が支給されます。標準負担額は、所得の状況等を勘案して厚生労働省令で定める者(住民税非課税世帯等)については別に定める低い額(減額)が適用されます(第85条第2項)。ウはこの仕組みを正確に記述しています。
アは誤りで、移送費は転院搬送にも認められます。イは誤りで、訪問看護療養費は被保険者本人(居宅にある者)が対象であり被扶養者限定ではありません。エは誤りで、第85条第2項は所得の状況等により「別に定める額」を置いており、全員同一ではありません。オは誤りで、実費全額ではなく「最も経済的な通常の方法の額を限度に実際の費用」が支給されます。
3給付(移送費・訪問看護療養費・入院時食事療養費)の比較整理:
| 給付名 | 根拠条文 | 支給対象 | 支給額の算定 |
|---|---|---|---|
| 移送費 | 第97条 | 緊急・やむをえない事情で移送された場合(搬送先・転院含む) | 最も経済的な通常経路の費用を限度に実費支給 |
| 訪問看護療養費 | 第88条 | 居宅にある被保険者(本人)が主治医の指示に基づく訪問看護を受けた場合 | 費用から一部負担金相当額を控除した額 |
| 入院時食事療養費 | 第85条 | 保険医療機関等に入院した被保険者 | 食事療養費から標準負担額を控除した額 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 移送費は「傷病が発生した現場から保険医療機関へ」の搬送だけでなく、保険医療機関間の転院搬送(病状悪化・専門的治療が必要な他院への転送等)も対象となります(健保法第97条)。「現場から病院へ」に限定する記述は誤り。
- イ(誤): 訪問看護療養費(健保法第88条)の対象は、居宅にある被保険者(本人)が主治医の指示に基づく訪問看護を受ける場合です。「被扶養者(家族)が要介護状態にある場合に限る」は誤り(被保険者本人が対象。被扶養者に対しては「家族訪問看護療養費」が別途あります)。また「要介護状態に限る」という限定も誤りで、疾病・負傷により療養中の居宅療養者が対象。
- ウ(正): 食事療養に要した費用の額(厚生労働大臣が定める基準により算定した額。現にかかった費用がそれより少なければその額)から標準負担額を控除した額が支給される仕組み(第85条第2項)と、所得の状況等による減額(同項括弧書き)は正確です。なお療養病床に入院する、65歳に達する日の属する月の翌月以後の被保険者(特定長期入院被保険者・第63条第2項第1号)は入院時食事療養費の対象から除かれ、入院時生活療養費の対象になります(第85条第1項・第85条の2)。
- エ(誤): 食事療養標準負担額は「平均的な家計における食費の状況…を勘案して厚生労働大臣が定める額」ですが、「所得の状況その他の事情をしん酌して厚生労働省令で定める者については、別に定める額」とされています(第85条第2項)。所得にかかわらず全員同一の額ではありません。
- オ(誤): 移送費の支給額は「最も経済的な通常の経路および方法により移送された場合の費用により算定した額(現に要した費用の額を超えるときは現に要した費用の額)」です(第97条第1項の「厚生労働省令で定めるところにより算定した金額」。支給は保険者が必要と認める場合に限る・同条第2項)。実際の費用が限度額を超える場合は限度額までしか支給されないため、「実際にかかった費用の全額」が常に支給されるわけではありません。
【移送費の支給要件の詳細:「緊急やむをえない」の解釈】
移送費(健保法第97条)の支給要件として「緊急やむをえない事情による移送」が必要とされますが、保険者(協会けんぽ)の実務では以下の基準で判断されます:
1. 傷病発生場所から保険医療機関への初回搬送: 救急車による搬送(最も典型的なケース)
2. 転院搬送(保険医療機関間の移送): 病状が悪化して高次医療機関への転送が医学的に必要な場合
3. 離島・僻地からの搬送: 保険医療機関がない離島等から本土の医療機関への移送(ドクターヘリ等を含む)
支給限度額の算定:
- 「最も経済的な通常の経路および方法」=実際の移送手段に相当する経済的な移動手段
- 民間救急車・ドクターヘリ等の費用は実際の費用が高額になるが、「最も経済的な通常の経路の費用」を限度に保険から支給
移送費と現物給付(療養の給付)の違い:
移送費は現金給付(被保険者がいったん費用を払い、後から保険者が支給)です。ただし、一部の救急搬送は「保険医療機関等が移送に係る費用を立て替え、後日保険者に請求する」仕組みで処理されることもあります。
【訪問看護療養費と介護保険の訪問看護との関係(優先関係)】
訪問看護療養費(健保法第88条)は居宅にある被保険者への訪問看護に対する給付ですが、65歳以上の要介護者(第1号被保険者)が訪問看護を受ける場合は、原則として介護保険が優先されます(介護保険法第7条・健保法第55条)。
訪問看護が健保から支給される場合:
- 40歳未満(介護保険の被保険者でない者)
- 40〜64歳で介護保険の特定疾患以外の疾病
- 要介護者等であっても、厚生労働大臣が定める疾病等(末期の悪性腫瘍等)の場合や、急性増悪時の特別訪問看護指示期間の場合(医療保険から給付)
この「健保と介護保険の優先関係」は社一(社会保険一般常識)との横断問題として重要です。
【入院時食事療養費の標準負担額の変遷と試験対策】
標準負担額の決まり方(第85条第2項):
- 一般: 平均的な家計における食費の状況と、特定介護保険施設等における食事の提供に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める額
- 所得の低い者等: 所得の状況その他の事情をしん酌して厚生労働省令で定める者については、別に定める(低い)額
金額そのものは厚生労働大臣の告示で定められ、食材費の上昇などを受けて近年段階的に引き上げられています。改定が続いているため、金額は受験する年度の法令基準日時点のものを、厚生労働省の告示・公表資料で確認して覚えてください。
【被扶養者への家族給付との対応関係】
健保法では被保険者への給付と対応する被扶養者(家族)への給付が並列して規定されています:
| 被保険者への給付 | 被扶養者への家族給付 |
|---|---|
| 移送費(第97条) | 家族移送費(第112条) |
| 訪問看護療養費(第88条) | 家族訪問看護療養費(第111条) |
| 入院時食事療養費(第85条) | 家族療養費に含まれる(第110条) |
これらの家族給付は、給付の種類・額の算定方法は本人給付と同様ですが、支給先は被保険者(扶養者)であり被扶養者本人ではありません(例外: 直接給付契約)。
- 健康保険法第85条・第97条・第88条・第55条e-Govで原文を読む
- 介護保険法第7条e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第97条(移送費・額は厚生労働省令で定めるところにより算定)・第88条(訪問看護療養費)・第85条第1項・第2項(入院時食事療養費・食事療養標準負担額。所得の状況等をしん酌して厚生労働省令で定める者は別に定める額) 確認日2026-09-30 出典: e-Gov 健康保険法第85条・第88条・第97条 https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

