社労士 健康保険法 問13:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08)
健康保険における移送費・訪問看護療養費・入院時食事療養費に関する次のア〜オの記述のうち、**正しいもの**はどれか。
- ア移送費は、療養の給付を受けるために緊急・やむをえない事情により移送された場合に支給されるが、傷病が発生した現場から保険医療機関へ搬送されたケースに限り認められ、保険医療機関間の転院搬送(他の病院へ移送する場合)は移送費の対象とならない。
- イ訪問看護療養費は、主治医の指示に基づいて指定訪問看護事業者が行う訪問看護に対して支給されるが、支給を受けるためには原則として被保険者の家族(被扶養者)が居宅に要介護状態にある場合に限られる。
- ウ入院時食事療養費は、保険医療機関等に入院した被保険者に対し、食事療養に要した費用から標準負担額(被保険者の自己負担部分)を控除した額が支給される。標準負担額は1食あたりの額として設定されており、住民税非課税世帯等については減額される。正答
- エ入院時食事療養費の標準負担額は、一般の被保険者については1食あたり460円(平成28年4月改定)とされており、令和8年度試験基準日(2026年4月10日)現在においてもこの額に変更はない。
- オ移送費の額は、最も経済的な通常の経路および方法により移送された場合の費用を基準として算定した額を限度として、実際にかかった費用の全額が保険者から支給される。
AI解説(初心者・標準・上級)
理解度に合わせて3レベルの解説を無料で読めます。根拠条文・通達も明記。
正答はウです。
入院時食事療養費は、被保険者が保険医療機関に入院中の食事に対して保険給付が行われる制度です(健保法第85条)。食事療養に要した費用の全額を保険が負担するのではなく、「費用から標準負担額(被保険者の自己負担部分)を控除した額」が支給されます。標準負担額は1食あたりの額として設定され、住民税非課税世帯や難病患者等は引き下げられた標準負担額(減額)が適用されます。ウはこの仕組みを正確に記述しています。
アは誤りで、移送費は転院搬送にも認められます。イは誤りで、訪問看護療養費は被保険者本人(居宅にある者)が対象であり被扶養者限定ではありません。エは令和6年6月(490円)・令和7年4月(510円)と段階的に引き上げられており、令和8年度試験基準日(2026年4月10日)時点の正しい標準負担額は510円(一般)です。460円という額は現行値ではありません。オは誤りで、実費全額ではなく「最も経済的な通常の方法の額を限度に実際の費用」が支給されます。
3給付(移送費・訪問看護療養費・入院時食事療養費)の比較整理:
| 給付名 | 根拠条文 | 支給対象 | 支給額の算定 |
|---|---|---|---|
| 移送費 | 第97条 | 緊急・やむをえない事情で移送された場合(搬送先・転院含む) | 最も経済的な通常経路の費用を限度に実費支給 |
| 訪問看護療養費 | 第88条 | 居宅にある被保険者(本人)が主治医の指示に基づく訪問看護を受けた場合 | 費用から一部負担金相当額を控除した額 |
| 入院時食事療養費 | 第85条 | 保険医療機関等に入院した被保険者 | 食事療養費から標準負担額を控除した額 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 移送費は「傷病が発生した現場から保険医療機関へ」の搬送だけでなく、保険医療機関間の転院搬送(病状悪化・専門的治療が必要な他院への転送等)も対象となります(健保法第97条・施行規則第62条)。「現場から病院へ」に限定する記述は誤り。
- イ(誤): 訪問看護療養費(健保法第88条)の対象は、居宅にある被保険者(本人)が主治医の指示に基づく訪問看護を受ける場合です。「被扶養者(家族)が要介護状態にある場合に限る」は誤り(被保険者本人が対象。被扶養者に対しては「家族訪問看護療養費」が別途あります)。また「要介護状態に限る」という限定も誤りで、疾病・負傷により療養中の居宅療養者が対象。
- ウ(正): 食事療養費から標準負担額を控除した額が支給される仕組み、1食あたりの標準負担額の設定、住民税非課税世帯等の減額措置はすべて正確です。
- エ(誤): 入院時食事療養費の標準負担額(一般の被保険者)は、平成28年4月に360円から460円に引き上げられた後、令和6年(2024年)6月1日から490円、令和7年(2025年)4月1日から510円、そして令和8年(2026年)6月1日から550円へと段階的に引き上げられています。460円という記述は現行値ではなく、令和8年度試験基準日(2026-04-10)時点では510円が正しい現行値です(550円への引き上げは2026-06-01施行予定で基準日後=出題対象外)。
- オ(誤): 移送費の支給額は「最も経済的な通常の経路および方法により移送された場合の費用を基準として算定した額を限度として」支給されます(施行規則第62条)。実際の費用が限度額を超える場合は限度額までしか支給されないため、「実際にかかった費用の全額」が常に支給されるわけではありません。
【移送費の支給要件の詳細:「緊急やむをえない」の解釈】
移送費(健保法第97条)の支給要件として「緊急やむをえない事情による移送」が必要とされますが、保険者(協会けんぽ)の実務では以下の基準で判断されます:
1. 傷病発生場所から保険医療機関への初回搬送: 救急車による搬送(最も典型的なケース)
2. 転院搬送(保険医療機関間の移送): 病状が悪化して高次医療機関への転送が医学的に必要な場合
3. 離島・僻地からの搬送: 保険医療機関がない離島等から本土の医療機関への移送(ドクターヘリ等を含む)
支給限度額の算定:
- 「最も経済的な通常の経路および方法」=実際の移送手段に相当する経済的な移動手段
- 救急車(公的)は費用がかかる場合と無料の場合がある(自治体により異なる)
- 民間救急車・ドクターヘリ等の費用は実際の費用が高額になるが、「最も経済的な通常の経路の費用」を限度に保険から支給
移送費と現物給付(療養の給付)の違い:
移送費は現金給付(被保険者がいったん費用を払い、後から保険者が支給)です。ただし、一部の救急搬送は「保険医療機関等が移送に係る費用を立て替え、後日保険者に請求する」仕組みで処理されることもあります。
【訪問看護療養費と介護保険の訪問看護との関係(優先関係)】
訪問看護療養費(健保法第88条)は居宅にある被保険者への訪問看護に対する給付ですが、65歳以上の要介護者(第1号被保険者)が訪問看護を受ける場合は、原則として介護保険が優先されます(介護保険法第7条・健保法第55条の2)。
訪問看護が健保から支給される場合:
- 40歳未満(介護保険の被保険者でない者)
- 40〜64歳で介護保険の特定疾患以外の疾病
- 特定疾患・末期がん等(健保・介護の両方で受給可能な特例)
- 65歳以上であっても、急性増悪時や在宅がん患者等の特例的な場合
この「健保と介護保険の優先関係」は社一(社会保険一般常識)との横断問題として重要です。
【入院時食事療養費の標準負担額の変遷と試験対策(最重要要確認事項)】
標準負担額の変遷:
- 平成8年(1996年): 1食160円で導入
- 平成18年(2006年): 1食260円
- 平成28年(2016年)4月: 1食360円→460円(段階引上げ)
- 令和6年(2024年)6月1日: 1食490円(30円引上げ)
- 令和7年(2025年)4月1日: 1食510円(20円引上げ)
- 令和8年(2026年)6月1日: 1食550円(40円引上げ予定)
令和8年度試験(法令基準日2026-04-10)では、令和7年4月改定の510円が正しい現行値です(550円への引上げは2026-06-01施行予定で基準日後=出題対象外)。
標準負担額の区分(令和7年4月1日〜令和8年5月31日):
| 区分 | 1食あたり標準負担額 |
|---|---|
| 一般(住民税課税世帯) | 510円 |
| 住民税非課税世帯(区分II・90日まで) | 240円 |
| 住民税非課税世帯(区分II・91日超) | 190円 |
| 低所得I(70歳以上) | 110円 |
エの「460円に変更なし」という記述は誤りのため、受験生は最新の値(510円)を正確に覚える必要があります。本キー(SHOKUJI_HYOJUN_FUTAN)はVolatileBoxによる年次更新管理を強く推奨します(令和6年6月・令和7年4月・令和8年6月と頻繁に改定が続くため)。
【被扶養者への家族給付との対応関係】
健保法では被保険者への給付と対応する被扶養者(家族)への給付が並列して規定されています:
| 被保険者への給付 | 被扶養者への家族給付 |
|---|---|
| 移送費(第97条) | 家族移送費(第111条) |
| 訪問看護療養費(第88条) | 家族訪問看護療養費(第111条の2) |
| 入院時食事療養費(第85条) | 家族入院時食事療養費(第110条で準用) |
これらの家族給付は、給付の種類・額の算定方法は本人給付と同様ですが、支給先は被保険者(扶養者)であり被扶養者本人ではありません(例外: 直接給付契約)。
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第97条(移送費)・第88条(訪問看護療養費)・第85条(入院時食事療養費)・健康保険法施行規則第62条(移送費の限度額) 確認日2026-06-08 出典: 厚生労働省 入院時食事療養費 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/shokuji/index.html e-Gov 健康保険法第85条・第88条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。