健康保険法14健康保険法

社労士 健康保険法 問14:健康保険法

令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08

健康保険組合に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。

  • 単独の健康保険組合を設立するためには、同一の事業主に常時700人以上の被保険者を使用していることが必要である。複数の事業主が共同で設立する総合健康保険組合の場合は、常時3,000人以上の被保険者を合算して使用していることが設立要件となる。
  • 健康保険組合は、法人とされ(健保法第5条)、その業務執行機関として組合会・理事(理事長)・監事が置かれる。組合会は組合員(被保険者)の代表と事業主側の代表(使用者側)で構成され、規約の変更・予算・決算等の重要事項を議決する。
  • 健康保険組合は、法定給付(健保法上の給付)を法定の要件・額で行うことが義務づけられており、付加給付(法定給付の額を超える任意の給付)を行うことは認められていない。正答
  • 健康保険組合は、規約の定めるところにより、保険料率を健保法の定める範囲内で自由に設定することができる。ただし、設定できる保険料率には上下限が設けられており、原則として標準報酬月額に対して1,000分の30(3.0%)から1,000分の130(13.0%)の範囲で設定しなければならない。
  • 特定健康保険組合は、後期高齢者医療への財政移転(前期高齢者財政調整・後期高齢者支援金)の負担が重い組合に対する特例制度であり、事業主が拠出する保険料の割合を法定(折半)より高くすること等の財政健全化計画の実施が求められる。
正答:健康保険組合は、法定給付(健保法上の給付)を法定の要件・額で行うことが義務づけられており、付加給付(法定給付の額を超える任意の給付)を行うことは認められていない。

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正答はウ(誤っている記述)です。

ウの誤りは「健康保険組合は付加給付を行うことが認められていない」という部分です。健康保険組合は、法定給付(健保法上の規定による給付)に加えて、付加給付(任意の上乗せ給付)を行うことができます(健保法第11条)。付加給付は組合の規約で定めることができ、例えば高額療養費の自己負担額をさらに軽減したり、傷病手当金の日額を上積みしたりすることが可能です。これは健康保険組合のメリットの一つであり、協会けんぽとの大きな違いです。

アの設立要件(単独700人以上・総合3,000人以上)、イの組合会の構成と議決事項、エの保険料率の上下限、オの特定健保組合の概要は正しい記述です。

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健康保険組合の主要ルールの整理:

| 項目 | 内容 | 根拠条文 |

|---|---|---|

| 単独設立要件 | 常時700人以上の被保険者 | 健保法第8条 |

| 総合設立要件 | 複数事業主合算で常時3,000人以上 | 同上 |

| 法人格 | 有する(法人たる健保組合) | 健保法第5条 |

| 付加給付 | 認められる(規約で定める) | 健保法第11条 |

| 保険料率の範囲 | 30/1000〜130/1000(3.0〜13.0%) | 健保法第160条 |

| 介護保険料率 | 組合独自に設定可(協会けんぽは全国一律) | — |

各選択肢の解説:

  • ア(正): 単独健保組合700人以上・総合健保組合3,000人以上の設立要件は健保法第8条の正確な記述。総合健保組合は複数事業主(業種・地域等でグループ化)が共同で設立します。
  • イ(正): 健保組合の法人格(健保法第5条)と組合会の構成(組合員代表+使用者代表の2者構成)、重要事項の議決権限は正確です。理事長が組合の代表者として日常業務を担います。
  • ウ(誤・正答): 健康保険組合は規約に基づき付加給付(法定給付の上乗せ)を行うことができます(健保法第11条)。これが協会けんぽと健保組合の最大の違いの一つ。典型的な付加給付例: ①高額療養費を低減(月25,000円超の自己負担を補填等)、②傷病手当金の支給額を標準報酬日額の2/3以上に加算、③出産育児一時金の加算。大企業の健保組合が手厚い給付を提供できる根拠がこの付加給付制度です。
  • エ(正): 保険料率の範囲(30/1000〜130/1000)は健保法第160条の正確な記述。「上下限の設定」は正しく、協会けんぽが都道府県別に9.50%〜10.66%程度(令和8年度)の幅で設定するのに対し、健保組合は広い範囲内で独自に設定できます(財政状況により上下)。
  • オ(正): 特定健康保険組合制度(健保法附則)は、後期高齢者支援金等の財政負担が大きい組合に対して、財政健全化のための特例的な措置(事業主の保険料割合の増大等)を認める制度です。概ねの方向性は正しい記述です。
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【健康保険組合制度の設計思想と協会けんぽとの完全比較】

日本の健康保険の保険者は2種類です:

| 保険者 | 協会けんぽ(全国健康保険協会) | 健康保険組合 |

|---|---|---|

| 設立主体 | 国(協会が運営) | 事業主(法律上の独立法人) |

| 適用対象 | 健保組合未設立の中小企業等 | 大企業(700人以上等)の従業員 |

| 料率設定 | 都道府県別(47種類・9.50〜10.66%程度) | 組合独自(30/1000〜130/1000の範囲) |

| 付加給付 | 不可(法定給付のみ) | (規約で設定) |

| 介護料率 | 全国一律(令和8年度: 1.62%) | 組合独自に設定可 |

| 財政責任 | 全国プール(赤字は全体で補填) | 各組合が独立した財政責任 |

付加給付(健保法第11条)の具体例と限界:

健保組合が行うことができる付加給付の典型例:

1. 高額療養費の上乗せ(付加給付): 法定の高額療養費自己負担限度額(80100+(医療費-267000)×1%円/月等)よりもさらに低い上限を組合で設定し、超過分を組合が給付する

2. 傷病手当金・出産手当金の上積み: 法定の2/3(標準報酬日額基準)を超えて支給

3. 入院見舞金・弔慰金: 法定給付に存在しない任意給付

4. 人間ドック費用の補助: 健診費用の助成

これらは協会けんぽでは受けられない給付であり、大企業の健保組合に加入することの「福利厚生的価値」を形成しています。

【保険料率30/1000〜130/1000の実際の運用】

令和8年度時点の健保組合の平均保険料率は約9.6%前後とされていますが、財政状況が厳しい組合では上限の13.0%に近い料率を設定するケースもあります。また、後期高齢者支援金や前期高齢者財政調整の義務拠出が増加する中、組合の財政悪化が進んでおり:

  • 財政悪化 → 保険料率引上げ → 組合員の負担増 → 脱退・解散
  • 解散後の被保険者は協会けんぽに移行

という流れが全国で起きており、健保組合数は長期的に減少傾向にあります(2000年代初頭から約1,800→約1,400組合への減少)。

【特定健康保険組合制度の詳細(社一との横断論点)】

「特定健康保険組合」は、財政状況が特に悪化した健保組合に対して特例的な対応を認める制度です(健保法附則第3条以下)。指定の条件や措置内容は複雑ですが、試験上の重要ポイント:

1. 指定要件: 一定基準を超えた財政赤字・保険料率の高さ等

2. 特例措置の内容: 事業主の保険料負担割合の増加(本来の折半より事業主が多く負担することを許容)・段階的な財政健全化計画の策定義務

3. 「特例退職者医療制度」との関係: 一部の大企業健保では退職者も継続加入できる「特例退職者医療制度」を設けており、これが財政悪化の一因になっているケースも

【健保組合の設立・解散手続き(社労士実務への接続)】

社労士実務では、健保組合の設立・規約変更・解散に係る認可申請の代理が業務の一つです:

  • 設立認可: 厚生労働大臣の認可が必要
  • 規約変更: 組合会の議決→都道府県知事(又は厚生労働大臣)への届出・認可
  • 解散: 組合会の議決または解散命令(厚生労働大臣)→清算手続き

解散後の被保険者は自動的に協会けんぽに移行しますが、解散前に存在していた付加給付の一切が失われるため、従業員への影響(医療費自己負担の実質増)が大きく、会社側の人事・総務部門との調整が社労士に求められる場面です。

出典・根拠について

本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第5条(法人格)・第8条(設立要件)・第11条(付加給付)・第160条(保険料率の範囲)・附則第3条(特定健康保険組合) 確認日2026-06-08 出典: 厚生労働省 健康保険組合 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/hokensha/index.html e-Gov 健康保険法第8条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08)。

本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

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