問題
健康保険における高額介護合算療養費に関する次のア〜オの記述のうち、正しいものはどれか。
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答え合わせ
- ア
- イ
- ウ
- エ
- オ
自信の3択
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解説
正答はエです。
高額介護合算療養費は、1か月ではなく1年間(毎年8月1日〜翌年7月31日)を計算期間として、健康保険の自己負担と介護保険の自己負担を合算し、年額の基準額を超えた分を両制度の自己負担額の割合で按分して、健康保険の分を支給する制度です(健保法第115条の2・健保法施行令第41条の2・第43条の2・第43条の3)。介護保険の分は介護保険から高額医療合算介護サービス費として支給されます(介護保険法第51条の2)。エはこの年間計算期間と按分の仕組みを正確に記述しています。
アは「1か月間」としている点が誤り(正しくは「1年間」)。イも同様に月単位という誤り。ウは被扶養者の自己負担も合算の対象に含まれるため誤り。オは「一律67万円」という誤りで、実際には所得区分・年齢区分により異なります(70歳未満では区分ウ67万円・区分エ60万円・区分オ34万円等。施行令第43条の3)。
高額介護合算療養費の全体構造:
| 項目 | 高額療養費(月額) | 高額介護合算療養費(年額) |
|---|---|---|
| 計算期間 | 1か月(暦月) | 1年間(8月1日〜翌7月31日) |
| 合算対象 | 健保の自己負担のみ(世帯合算可) | 健保(被保険者+被扶養者)+介護保険の自己負担 |
| 支給額 | 自己負担額−月額上限(超過分) | (年間合算額−年額の基準額)×按分率(健保の分) |
| 申請先 | 健保(保険者) | 健保(保険者)。介護保険の分は市町村(介護保険者) |
| 所得区分による上限の差 | あり(70歳未満: ア〜オの5区分) | あり(70歳未満/70歳以上×所得区分) |
年額上限(令和8年度・健保施行令第43条の3・介護合算算定基準額):
| 区分 | 70歳未満の年額の基準額(介護合算算定基準額・施行令第43条の3第1項) |
|---|---|
| 標準報酬83万円以上(区分ア) | 212万円 |
| 標準報酬53〜79万円(区分イ) | 141万円 |
| 標準報酬28〜50万円(区分ウ・一般) | 67万円 |
| 標準報酬26万円以下(区分エ) | 60万円 |
| 住民税非課税(区分オ) | 34万円 |
各選択肢の解説:
- ア(誤): 「1か月間」ではなく「1年間(8月1日〜翌7月31日)」が計算期間。高額療養費(月次)と混同させる典型的な誤肢。
- イ(誤): 計算期間が「1か月」という誤りに加え、「高額療養費と異なる計算を別途行う必要はない」も誤り。高額介護合算は別途の申請手続き(年1回)が必要で、高額療養費(月次)とは完全に別制度です。
- ウ(誤): 合算の対象は被保険者本人に限らず、被扶養者(家族)の健保自己負担も合算の対象となります(健保法第115条の2・施行令第43条の2で被保険者と被扶養者の自己負担を合算)。さらに介護保険も同一世帯の自己負担を合算します。
- エ(正): 計算期間は「毎年八月一日から翌年七月三十一日までの期間」(施行令第41条の2)。支給額は、合算額から介護合算算定基準額を控除した額に「介護合算按分率」を乗じた額です(施行令第43条の2第1項)。なお、超える額が事務費を勘案した「支給基準額」以下なら支給されません(同項)。
- オ(誤): 一律67万円ではなく、所得区分・年齢区分により異なります。67万円は70歳未満の「区分ウ(一般区分・標準報酬月額28〜50万円)」に相当する年額上限の目安値ですが、全区分で一律ではありません。また70歳以上の高齢受給者には別の上限額が設定されています。
【高額介護合算療養費の設計思想:「2つの保険の壁」を越えた支援】
高齢化の進展により、同一世帯で医療費(健保)と介護費(介護保険)の両方を支出するケースが増加しました。高額療養費(月次)だけでは医療費の負担軽減のみで、介護費との合計が家庭を圧迫する問題があり、2008年(平成20年)の後期高齢者医療制度発足と同時に「高額介護合算療養費」制度が創設されました。
制度のポイント:
- 1年間(8月〜翌7月)を通算期間とすることで、長期療養・介護の複合負担に対応
- 健保(世帯の被保険者+被扶養者)と介護保険(世帯の第1号・第2号被保険者)の自己負担を世帯単位で合算
- 合算の順序: まず各制度内での「高額療養費」「高額介護サービス費」を適用し、残った自己負担額を合算 → 年額上限を超えた分を支給
合算の計算の具体的な流れ:
1. 1年間の月ごとに高額療養費を適用(月額限度額超過分を給付)
2. 同じく1年間の介護保険の高額介護サービス費を適用(月額上限超過分を給付)
3. 上記適用後の残余自己負担額を健保・介護で合算
4. 合算額が年額上限を超えた場合、健保保険者と介護保険者が按分して支給
【年額上限(区分別)の詳細と「一般区分67万円」の根拠】
年額上限は健康保険の所得区分に連動していますが、70歳以上(高齢受給者)の上限は70歳未満と異なる低い設定になっています:
| 区分 | 70歳未満 | 70〜74歳(一般・現役並み所得) | 70〜74歳(一般・住民税非課税等) |
|---|---|---|---|
| 標準報酬83万円以上(区分ア・現役並みIII) | 212万円 | 212万円 | — |
| 標準報酬53〜79万円(区分イ・現役並みII) | 141万円 | 141万円 | — |
| 標準報酬28〜50万円(区分ウ・現役並みI) | 67万円 | 67万円 | — |
| 標準報酬26万円以下(区分エ・一般) | 60万円 | 56万円 | — |
| 住民税非課税(区分オ・低所得II) | 34万円 | — | 31万円 |
| 低所得I(70歳以上のみ) | — | — | 19万円 |
70歳以上は高額療養費の月額上限自体が低くなる(現役並みでない一般区分は2026年8月1日から外来〔個人〕22,000円・世帯61,500円。改正前は18,000円・57,600円)ため、年額合算上限も相対的に低くなります。「67万円が一律」という誤りは、区分ウ(一般区分・70歳未満)の値を全区分に当てはめたものです。
【申請手続きの実務と社労士への接続】
高額介護合算療養費の支給の流れ(条文の構造):
1. 基準日=計算期間の末日(7月31日)時点の加入状況で、支給を受ける被保険者(基準日被保険者)が決まる(施行令第41条の2・第43条の2)
2. 計算期間中に別の健康保険の保険者や国民健康保険に加入していた期間の自己負担も合算対象になる(施行令第43条の2第1項第2号〜第5号)
3. 合算額から介護合算算定基準額を控除し、健保分・介護分の自己負担額の割合(介護合算按分率)で按分
4. 健保分は健保の保険者から高額介護合算療養費として、介護分は市町村から高額医療合算介護サービス費として支給(介護保険法第51条の2)
社労士実務では、高齢の家族を抱えた従業員から「医療費と介護費の合計が大変」という相談を受けた際に、この制度を案内できることが大切です。70歳以上の人がいる世帯は、70歳以上の人の分だけで先に計算する仕組み(施行令第43条の2第2項)がある点も押さえておきます。
【後期高齢者医療制度との関係(社一・社会保険一般常識との横断)】
75歳以上は後期高齢者医療制度の被保険者となり(健保から離脱)、後期高齢者医療にも同様の「高額介護合算療養費」制度があります(後期高齢者医療広域連合が支給)。世帯内に健保被保険者(74歳以下)と後期高齢者医療被保険者(75歳以上)が混在する場合は、それぞれ別の計算となり合算できないため、世帯構成によって制度適用が変わることを理解しておく必要があります。
この点は社一(後期高齢者医療確保法)の後期高齢者医療制度との横断論点として毎年のように出題されます。
- 健康保険法第115条の2e-Govで原文を読む
- 介護保険法第51条の2e-Govで原文を読む
- 高齢者の医療の確保に関する法律e-Govで原文を読む
出典と作り方
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第115条の2(高額介護合算療養費)・健康保険法施行令第41条の2(計算期間=毎年8月1日から翌年7月31日まで・基準日=計算期間の末日)・第43条の2(支給要件及び支給額・介護合算按分率)・第43条の3(介護合算算定基準額)・介護保険法第51条の2(高額医療合算介護サービス費) 確認日2026-09-30(e-Gov 現行条文) 出典: 厚生労働省 高額介護合算療養費制度 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/juuyou/kougakuiryou/index.html 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和9年度(2027年度)試験に向けて2026年10月1日時点の現行法令の数値を反映(令和9年4月の法改正で変わる箇所は試験前に更新・数値確認日 2026-10-01)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。

