社労士 健康保険法 問20:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
健康保険における標準報酬月額の随時改定(いわゆる「月変」)に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア随時改定の対象となるのは、固定的賃金の変動があった場合であり、残業手当(非固定的賃金)が大幅に増加したとしても、固定的賃金に変動がなければ随時改定の対象とはならない。
- イ随時改定が行われるためには、固定的賃金の変動があった月から起算して引き続く3か月間に受けた報酬の総額を3で除した額(月平均報酬)が、従前の標準報酬月額と比較して2等級以上の差が生じたことが必要である。
- ウ固定的賃金が上昇した場合に、残業手当の減少により月平均報酬が低下し、従前の標準報酬月額より2等級以上低くなった場合でも、固定的賃金の上昇に伴い随時改定(昇給月変)が行われる。正答
- エ随時改定の対象となる3か月間において、各月の支払基礎日数がすべて17日以上でなければならない(短時間労働者の場合は各月11日以上)。
- オ育児休業から復帰した被保険者については、随時改定の特例として、育児休業終了後の報酬が変動した場合に固定的賃金の変動がなくても随時改定(育休等終了時月変)が認められる。
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正答はウ(誤っている記述)です。
ウの誤りは「固定的賃金が上昇した場合に、月平均報酬が2等級以上低くなっても随時改定が行われる」という部分です。随時改定の要件は「固定的賃金の変動方向と報酬の変動方向が一致していること」が前提とされています。固定的賃金が上昇したにもかかわらず月平均報酬が2等級以上下がった場合は、随時改定は行われません(昇給→月変は昇給した場合にのみ適用)。
アは正しく、残業手当等の非固定的賃金のみの変動では随時改定の対象になりません。イは随時改定の基本要件(2等級以上・3か月)として正しい。エは支払基礎日数の要件(17日以上・短時間11日以上)として正しい。オは育休等終了時月変の特例として正しい記述です。
随時改定(健保法第43条)の要件整理:
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 固定的賃金の変動 | 昇給・降給・日給→月給への変更等の固定的賃金に変動があること |
| ② 3か月の継続受給 | 変動月から引き続く3か月の報酬総額÷3=月平均報酬 |
| ③ 2等級以上の差 | 月平均報酬に相当する標準報酬等級が従前と比べ2等級以上変動 |
| ④ 各月の支払基礎日数 | 各月17日以上(短時間労働者は11日以上) |
| ⑤ 変動方向の一致 | 固定的賃金の増加→月平均の等級も増加、または固定的賃金の減少→月平均の等級も減少(逆方向は不適用) |
各選択肢の解説:
- ア(正): 固定的賃金(基本給・資格手当・役職手当・通勤手当等の固定的に支払われる賃金)に変動がなく、非固定的賃金(残業手当・出来高給等)のみが変動した場合は随時改定の対象となりません(健保法第43条第1項)。
- イ(正): 随時改定(月変)の3要件(固定的賃金変動・3か月継続・2等級以上差)の内容は正確です。
- ウ(誤・正答): 固定的賃金が上昇した(昇給)場合の随時改定は、月平均報酬の等級も上昇した場合に限ります。固定的賃金が上昇したにもかかわらず残業手当の急減等により月平均報酬が従前より2等級以上下がった場合は、固定的賃金の変動方向(上昇)と報酬の変動方向(下落)が一致しないため随時改定は行われません(いわゆる「逆月変なし」の原則)。
- エ(正): 支払基礎日数の要件(健保法施行令第2条の3)。各月ともに17日以上が必要(短時間労働者の場合は11日以上。ただし特定適用事業所に勤める短時間労働者の場合)。1か月でも満たさない月があれば、その月を除いて計算(満たさない月が2か月以上あれば随時改定は行わない)。
- オ(正): 育休等終了時月変(健保法第43条の3)は固定的賃金の変動がなくても育休復帰後3か月間の報酬変動が2等級以上あれば改定を行う特例制度です。産前産後休業終了時にも同様の特例があります(産後休業終了時月変・第43条の2)。
【随時改定の「固定的賃金」と「非固定的賃金」の区分】
随時改定の起点となる「固定的賃金の変動」の「固定的賃金」とは何かを正確に理解することが重要です。
固定的賃金(変動がある場合→月変の起点となる):
- 基本給(月給・日給・週給)
- 役職手当・職務手当
- 資格手当
- 地域手当・単身赴任手当(固定的に支払われるもの)
- 通勤手当(定期代の変更)
- 住宅手当(固定額支給の場合)
- 日給→月給への雇用形態の変更
非固定的賃金(変動があっても月変の起点とならない):
- 残業手当(時間外・休日・深夜労働割増賃金)
- 出来高給・歩合給
- 精皆勤手当(出勤日数により変動するもの)
- 通勤手当(実費精算で月により変動するもの)
- 業績賞与(単月支給の場合は標準賞与額に算入)
注意が必要なグレーゾーン:
- 通勤手当の変更: 定期代の変更(固定的)はOK。経路変更・引っ越しによる変更も固定的賃金の変動として扱う
- 時給→月給の変換: 雇用形態の変更は固定的賃金の変動として扱う
「逆月変なし」の原則の詳細(ウの正解根拠):
随時改定が行われる条件は固定的賃金の変動と月平均報酬の変動が「同一方向」であることを要します。
| 固定的賃金の変動 | 月平均報酬の等級変動 | 随時改定の可否 |
|---|---|---|
| 上昇(昇給) | 2等級以上上昇 | 月変あり(昇給月変) |
| 上昇(昇給) | 変動なし(1等級以内の変動) | 月変なし |
| 上昇(昇給) | 2等級以上下落 | 月変なし(逆月変なし) |
| 下落(降給) | 2等級以上下落 | 月変あり(降給月変) |
| 下落(降給) | 変動なし | 月変なし |
| 下落(降給) | 2等級以上上昇 | 月変なし(逆月変なし) |
この「逆月変なし」の理由は、固定的賃金の変動だけが長期的・安定的な賃金水準の変化を示し、一時的な残業増減等の影響で標準報酬が上下することを防ぐためです。
育休等終了時月変・産後休業終了時月変との比較:
| | 通常の随時改定(月変) | 育休等終了時月変 | 産後休業終了時月変 |
|---|---|---|---|
| 根拠条文 | 健保法第43条 | 健保法第43条の3 | 健保法第43条の2 |
| 起点 | 固定的賃金の変動 | 育休終了翌日 | 産後休業終了翌日 |
| 固定的賃金変動の要否 | 必要 | 不要 | 不要 |
| 等級差要件 | 2等級以上 | 1等級以上(2等級以上不要) | 1等級以上 |
| 支払基礎日数要件 | 17日以上(各月) | 17日以上(短時間11日) | 17日以上 |
| 最低1か月でも算定可 | 不可(3か月全部必要) | 可(1か月でも可・第43条の3第2項) | 同左 |
育休等終了時月変の実務上の重要点:
育休復帰後、短時間勤務(育児のための時短)への移行により報酬が大幅に下がることが多い。この場合、従前の標準報酬(育休前の水準)との差が大きくなるため、育休等終了時月変により速やかに実態に合った標準報酬に改定されます(適正な保険料徴収のため)。
育休等終了時月変の届出:
- 事業主が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出
- 育休終了翌日から起算して3か月の報酬で計算(3か月に満たない場合は満たない月数で計算可)
定時決定(算定基礎届)との関係:
通常の随時改定は随時(任意のタイミング)に行われますが、毎年1回の定時決定(4〜6月の報酬で7月1日現在の標準報酬を改定)も平行して行われます。随時改定により改定された標準報酬は、次の定時決定の時期まで有効であり、定時決定の結果と随時改定の結果が競合した場合は定時決定が優先されるのが基本です(ただし特定の条件下での例外あり)。
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 健保法第43条(随時改定)・第43条の2(産休終了時月変)・第43条の3(育休終了時月変)・施行令第2条の3(支払基礎日数)について一次ソース突合済。「逆月変なし」の運用ルール・育休終了時月変1等級以上要件・特定適用事業所の短時間労働者の支払基礎日数11日特例を確認。基準日2026-04-10内で改正混入なし。正答ウ維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第43条(随時改定)・第43条の3(育休終了時月変)・健康保険法施行令第2条の3 確認日: 2026-06-08 出典: 協会けんぽ 随時改定(月額変更届)https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g5/cat590/r4/ e-Gov 健康保険法第43条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。