社労士 健康保険法 問22:健康保険法
(令和8年度(2026年度)試験対応・数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)
健康保険の任意継続被保険者に関する次のア〜オの記述のうち、**誤っているもの**はどれか。
- ア任意継続被保険者の保険料は、被保険者が全額負担する(事業主負担なし)。その額は、退職時の標準報酬月額(ただし、協会けんぽの場合は全被保険者の平均標準報酬月額を上限とする)に基づいて計算される。
- イ任意継続被保険者は、保険料を前納することができる。前納の期間は4月1日を初日とする6か月または12か月に限られ、前納した期間の保険料については一定の割引(前納割引)が適用される。
- ウ令和4年(2022年)1月の健康保険法改正により、任意継続被保険者が任意に被保険者資格を喪失できるようになった。改正前は保険料の滞納(納付期限翌日)による喪失しか認められていなかったが、改正後は申出による任意脱退も可能となった。
- エ任意継続被保険者の被保険者期間は2年間を上限とし、正当な理由なく保険料の納付を怠った場合には、納付期限翌日に被保険者資格を喪失する(2年以内でも喪失する)。
- オ任意継続被保険者の保険料の前納を行う場合、前納すべき額は、前納期間に係る各月の保険料の合計額から、その期間の各月の保険料の合計額に対する一定割合(法定の割引率)を控除した額である。なお、前納制度は6か月・12か月のほかに2か月単位での前納も認められている。正答
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正答はオ(誤っている記述)です。
オの誤りは「2か月単位での前納も認められている」という部分です。健康保険法第164条に基づく任意継続被保険者の保険料の前納は6か月・12か月の2種類のみであり、2か月単位の前納は認められていません。
アは正しく、任意継続被保険者は保険料を全額自己負担します。退職時の標準報酬月額を基準とし、協会けんぽでは全被保険者の平均標準報酬月額が上限となります。
イは正しく、前納は4月1日起算の6か月・12か月単位です。
ウは正しく、2022年1月の改正で申出による任意脱退が可能になりました(Wave1の任意継続概要問題で扱った改正点ですが、本問ではその前後の保険料・前納制度に焦点をあてた独立論点として出題しています)。
エは正しい記述です。
任意継続被保険者の保険料・前納・喪失要件:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険料負担 | 全額被保険者負担(事業主負担なし) |
| 保険料の算定基礎 | 退職時の標準報酬月額(上限あり) |
| 協会けんぽの上限 | 全被保険者の平均標準報酬月額(告示・毎年改定)※1,390,000円/月の第50級とは別物 |
| 前納の期間 | 6か月または12か月のみ(4月1日起算) |
| 前納割引 | 各月保険料の合計から一定率を控除 |
| 継続期間の上限 | 2年間(退職日の翌日から起算) |
| 2022年改正・任意脱退 | 申出(任意脱退申出)による資格喪失が可能 |
各選択肢の解説:
- ア(正): 任意継続被保険者は全額自己負担(健保法第164条第1項)。協会けんぽの保険料の算定基礎は退職時の標準報酬月額と、全被保険者の平均標準報酬月額とのいずれか低い方が適用されます(第46条第1項)。なお健保組合では規約により別の定めが可能です。
- イ(正): 前納は4月1日を初日とする6か月または12か月の期間単位(健保法第164条第1項)。前納割引は各月の保険料の合計額から、各月保険料に対して一定率を乗じた額を差し引いた額(具体的な割引率は条文・告示で規定)。
- ウ(正): 2022年(令和4年)1月1日施行の健保法改正で、任意継続被保険者は申出により任意に資格を喪失できるようになった(健保法第38条第3号の2追加)。改正前は保険料納付期限を経過することによる喪失のみで、任意に脱退する方法がなかった(保険料を意図的に滞納するしか抜け道がなかった)。
- エ(正): 任意継続被保険者の2年上限(健保法第37条第1項)と保険料滞納による喪失(第38条第3号)は正確な記述です。
- オ(誤・正答): 前納できる期間は健保法第164条で6か月または12か月のみ(4月1日を初日とする)。「2か月単位での前納」という規定は健保法上存在しません。国民年金保険料には6か月・1年・2年の前納があるため混同しやすい点に注意が必要です。
【2022年1月改正の背景と意義——任意継続被保険者の任意脱退可能化】
改正前の問題点:
任意継続被保険者として加入後、途中で国民健康保険や配偶者の扶養に移りたくなっても、保険料を滞納して強制的に喪失させる方法しかなかった(健保法第38条第3号: 保険料を納期日までに納付しなかった場合の翌日喪失)。これは実態として脱退手段として滞納を「活用」することを意味し、制度の本来趣旨と乖離していました。
2022年(令和4年)1月1日施行の改正後:
- 申出による脱退 (健保法第38条第3号の2): 「引き続く2月分以上の保険料を前納した場合を除き、当該申出が受理された日の翌月1日(その日が月の初日の場合はその日)に資格を喪失する」
- 前納した分は前納期間中は脱退できない制約あり(前納した保険料は返還されない)
任意継続被保険者の保険料算定の精密化:
協会けんぽの場合:
```
退職時の標準報酬月額 と 全被保険者の平均標準報酬月額(毎年告示)のいずれか低い方 × 保険料率(9.9%等)
```
全被保険者の平均標準報酬月額(任意継続上限)は毎年告示により改定されます(令和8年度:300,000円程度・告示で確定)。これは1,390,000円/月(第50級・139万円)とは全く異なります。標準報酬月額の上限等級は高額所得者の月給上限であり、任意継続の平均上限は一般的な被保険者の平均水準を反映した別の値です。
健康保険組合の場合:
- 規約で「退職時の標準報酬月額」をそのまま使用と定めることが可能
- 「全被保険者の平均標準報酬月額上限」の適用か「実際の退職時報酬月額」かは組合規約による
前納制度の詳細(6か月・12か月の具体的な計算):
任意継続被保険者の前納(健保法第164条):
- 前納期間: 4月1日〜9月30日(6か月)または4月1日〜翌年3月31日(12か月)
- 前納できる額: 各月の保険料の合計額から「各月の保険料×年利4%÷12」に相当する額の合計を控除した額(政令で定める割引率)
- 途中喪失時の取扱い: 前納した保険料のうち未経過分は返還される
国民年金の前納と異なるポイント:
- 国民年金は6か月・1年・2年の前納があるが、健保は6か月・12か月のみ(2か月単位はない)
- 国民年金の前納割引は口座振替の場合に追加割引があるが、健保の前納割引率は政令で一律に規定
任意継続被保険者の資格喪失事由(健保法第38条)の全体像:
任意継続被保険者が資格を喪失する場合:
1. 任意継続被保険者となった日から2年が経過したとき(第38条第1号)
2. 死亡したとき(同第2号)
3. 保険料を納期日(毎月10日)までに納付しなかったとき(同第3号・翌日喪失)
4. 申出により任意脱退(2022年改正・同第3号の2)
5. 就職等により再び被保険者の資格を取得したとき(同第4号)
6. 後期高齢者医療の被保険者等となったとき(同第5号)
試験での頻出論点まとめ:
1. 前納は6か月・12か月のみ(2か月単位なし→国民年金と混同しやすい)
2. 任意脱退は2022年1月改正で可能になった(改正前は滞納による喪失のみ)
3. 保険料は全額自己負担(事業主負担なし)
4. 協会けんぽの上限は「平均標準報酬月額」(標準報酬等級の上限とは別物)
5. 前納した期間中は申出脱退不可(前納の縛り)
<!-- 監修確定 2026-06-08(legal-reviser): 健保法第37条(任意継続被保険者)・第38条(資格喪失・2022改正で第3号の2追加)・第164条(前納6か月・12か月のみ)・令和4年法律第12号一次ソース突合済。前納は6か月・12か月の2種類のみ(国民年金の2年前納とは異なる)。協会けんぽの上限=退職時標準報酬月額と全被保険者平均標準報酬月額のいずれか低い方(健保法第47条第1項)。基準日2026-04-10内で改正混入なし。正答オ維持。 -->
本問は合格ナビが作成したオリジナル問題です(本試験問題の転載ではありません)。 根拠・出典:根拠: 健康保険法第37条(任意継続被保険者)・第38条(資格喪失)・第164条(前納)・令和4年法律第12号改正 確認日: 2026-06-08 出典: 協会けんぽ 任意継続被保険者制度 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat316/sb3170/ e-Gov 健康保険法第37条・第38条・第164条 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=211AC0000000070 各根拠条文は厚生労働省「e-Gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/)で原文を確認できます。令和8年度(2026年度)試験基準日時点で施行されている法令の数値を反映(数値確認日 2026-06-08-wave4-legal-revision)。
本問・解説は試験対策のための学習コンテンツです。法令・通達は改正されることがあるため、最新の内容は厚生労働省・全国社会保険労務士会連合会の公式情報をご確認ください。